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12/12

夏祭り



 どうしよう…

 ばっちり聞いてしまった。



 いや、もしかしたら…ほんのちょびっとだけひまりは僕のことが好きなんじゃないかって思ってはいたよ。



 でも、まさかひまりみたいな美少女が本当に僕の事を好きだなんて…









・・・








「お待たせ、待った?」



「・・・」



 そこには浴衣に身を包んだとびっきりの美少女がいた。あまりの可愛さに返事を返すのも忘れて見惚れてしまう。



 今日は2人で近所の夏祭りに行く約束をしていた。

 学校の帰りにポスターが貼ってあるのを見てひまりを誘ったのだ。



 ひまりが着ている浴衣は紺色の生地に白と水色の乱菊柄で大人っぽい雰囲気を醸し出している。

 そのせいかひまりと目を合わすことができないし、なんだか普段よりもドキドキする。



 普段から顔がいいなーとは思っていたけど…浴衣を着たひまりはより一層美しい。



「もしかして…私の可愛さに言葉を失っちゃった?」



 上目遣いで少しニヤニヤした表情で僕をからかおうとするひまり。

 そんな子どもらしい姿も大人びた浴衣とのギャップですごく萌える。



 もう、どんな要求にも答えてあげだくなるくらい魅力的だ。



「うん…その浴衣すごく似合ってるよ。ひまりのあまりの可愛いさに言葉が出なかったよ」



「ち…ちょっとひかる…! そ…そんな素直に…返事を返されたら…私が恥ずかしいじゃない…バカ…」



 僕をからかおうとして返り討ちにあって恥ずかしがるひまりも可愛いな。

 こんな可愛くて世話焼きな女の子が僕のことを好きなんて今でも信じられない。



 きっと僕の幸運は全部使い切ってしまったことだろう。



「じゃあ、行こっか」



「うん」



 まだ顔がほんのり赤い彼女と屋台を見てまわる。たこ焼きに焼きそば、フランクフルトや焼き鳥なんかのしょっぱい食べ物。

 それからかき氷にチョコバナナ、いちご飴や綿菓子といった甘いものと定番の食べ物がいっぱいだ。



 同じ料理を売る屋台が何個もあるからどの場所で買おうな悩む。



「やっぱり人の数が多いな」



「夏祭りって感じだね」



 どこを見ても人、人、人と大盛りあがりで、カップルや子ども連れで賑わっている。



 普段とは違うひまりの雰囲気にドキドキしていたけど、いざ話し始めれば最初の緊張は何処へやら純粋に祭りを楽しんでいる僕がいた。



「何食べる?」



「とりあえずたこ焼き!」



「いいね! 2人で分けて食べない?」



「いいね!」



 そうして僕たちはたこ焼き、焼きそば、ポテト、焼き鳥と食べたいものを買っていった。

 その他にも2人で分けれない食べ物は個別に買った。ひまりはいちご飴とチョコバナナ。僕は牛タン串とフランクフルト。




「美味しい!」



 チョコバナナを食べながら頬を緩めるひまり。彼女が嬉しそうだと、なんだか僕まで楽しい気持ちになってくる。



 2人でたこ焼きや焼きそばを食べてお腹も膨れたところで花火を見るために移動する。

 


「ただいま〜」



「ここはひまりの家じゃあ無いけどね」



 僕とひまりは夏祭り会場からマンションに戻ってきていた。実は僕の部屋からでも花火をいい感じに見ることが出来る。

 穴場スポットを見つけることが出来なかったため、彼女と相談して家に帰って花火を見ることにした。



 予定時刻になり花火が空に打ち上がる。赤、青、緑と色とりどりの花火が勢いよく夜空に打ち上がりとても綺麗だ。



「キレイだねひかる」



「うん」



 隣ではひまりが無数の花火を見て目を輝かせている。

 そんな彼女とは対照的に僕は花火なんて気にならないぐらい緊張していた…



 何故かって…?

 僕が今からひまりに告白をするからだ。



 花火を見ながらの告白なんてムードもあってロマンチックなんじゃないだろうか。

 安直かもしれないけれど、僕は花火大会のポスターを見てこの日に告白することを決意した。


 


 本当はとっくに自分がひまりのことを好きなことに気が付いていたけど…フラれるの怖くて…言い訳をして気付かないフリをしていた。



 でも、彼女はこんな僕を好きだと言ってくれた。それが分かっていて告白しないのは男じゃない。



 まあ、相手の好意が分かってから行動に移すのは情けないかもしれないけど…



「ひまり」



「うん? どうしたの?」



 僕の真剣な表情を見て不思議そうな顔をするひまり。



「料理を作る後ろ姿、表情豊かで一緒にいるといつも僕を笑顔にしてくれるところ、世話焼きなところ、笑顔が可愛いところ」



「き、急にどうしたのひかる…?」



「ずっと好きでした! 僕と付き合って下さい!!」



「ウソ!? なんかの冗談…?」



「ウソなんかじゃないよ! 僕はひまりの事を愛してる」



「じゃあ夢なのかな…? こんな私に都合のいいことが現実で起こるなんて」



 むしろひまりを好きにならない方がおかしい。

 毎日手料理を食べさせてくれる美少女とか、それなんてギャルゲーですかって感じだ。そんなの好きにならないわけがない。



「好きだよ…愛してる」



 僕はひまりを抱きしめる。心臓がうるさいぐらいにバクバク言っている。



「私も…」



「うん」



「私も、ひかるが大好きだよ…!!」



 そう言ってひまりは花が咲くような笑顔で僕を抱きしめてくれた。



 そうしてお互いの顔を見つめ合う僕たち。

 その唇はどんどん近づいていき…



 祭りのラストを飾る特大の花火を背景にしてお互いの唇が触れ合った。

 ここまで本作品にお付き合いいただきありがとうございました。


 

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