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風邪2


「あーん」



 ここで恥ずかしがったら負けだ。ひまりに食べさせてもらって口に入れたお粥はホッとする優しい味わいだった。



「ありがとう、美味しいよ」



「ムー」



 頬を膨らませて不満げな表情のひまり。多分、僕から思ったような反応を得られなかったからだろう。



「どうしたの?」



「別に…ほら、あーん」



 確かに少し恥ずかしいけれども…美少女からのあーんはご褒美だ。



 食後にひまりが買ってきてくれた風邪薬を飲んでもう一度眠りにつく。








・・・







「ふふっ、可愛いなぁ」



 目の前で無防備に寝ている彼を見て思う。病人の前で言うのは不謹慎かもしれないけど。



 まぁ、しょうがない。私、佐藤ひまりは目の前で寝ている橋本ひかるのことが好きなのだから。



 私とひかるは幼稚園が一緒の幼馴染だ。ひかるは私のことなんてこれっぽっちも憶えていなかったけど…



 まぁ、それは無理もない。

 私は小学校3年生の時に親の転勤が理由で引っ越してしまったのだから。



 当時は引っ越すのが嫌で「お父さんなんて大嫌い」と父に言ったら膝から崩れ落ちてショックを受けていたのを覚えている。



 幼稚園の頃からひかるにくっついて私はいつの間に彼のことを好きになっていた。

 いつも私が困っている時に助けてくれたのもひかるだった。



 迷子になった私を見つけてくれるのも、犬に追いかけられて泣いていた私を助けてくれたのもひかるだった。



 だから高校に入学してひかるを見つけた時には運命だって思った。ましてや、同じマンションの隣人だなんて。

 すぐにでもひかるに話しかけようと思った……でも…ひかるは私のことなんて全然憶えていなくて…



 だから話しかける勇気が出なかった。それに、私だけが憶えていて彼が憶えていないことにムカつきもした。



 とはいえ、昔の私と今の私とでは見た目が全員違うからひかるが憶えていなくてもしょうがないのだけど。



 小学生時代の私はまんまると太っていた。クラスの男の子にブタという呼ばれ方をされるぐらいに。

 だけど、転校したのをきっかけに私はダイエットに取り組んだ。その結果、自分で言うのもなんだけど…ブタから一変して美少女になることに成功した。



 自分で言うなって?

 大丈夫。これは私の主観ではなく客観的な事実だから。

 何たって中学の頃はかなりの男子に告白された。高校に入ってからも2か月たらずで5回は告白されている。



 これはもう自分の容姿に自信を持ってもいいだろう。

 それに巨乳のお母さんからの遺伝子が私にもしっかり受け継がれているからスタイルも抜群だ。



 とはいえ、きっかけが無ければひかるとは話すことさえできない。

 どうしようかと悩んでいる時にまた奇跡が起こった。



 なんと、体調不良で倒れた私をひかるが保健室まで運んでくれたのだ。

 これを理由にして私はひかるの家に入り込むことに成功した。



 ふふっ、私なしでは生きていけない体にしてやるんだから!



「好きだよひかる…大好き」



 そうして私は寝ている彼に愛を囁く。こんなセリフは起きているひかるには言えない。



 でも、いつか意識のある貴方に愛を囁くから待っててねひかる。

 他の女なんて目に入らないぐらい私に夢中にさせてあげる。


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