告白
「す、好きです…! 付き合って下さい!」
放課後の屋上。
校庭には部活をやっている生徒たちの姿が目に映る。
そして、僕……橋本ひかるは現在進行形で好きな女の子に告白をしている。多分…今日は今までの人生で一番の勇気と恐怖を味わっている。
心臓はバクバクしているし、緊張しすぎて地に足がついている感じがしない。
僕はパニック状態になっているのかもしれない。
今日のことを考えると朝起きたときから不安でしょうがなかった。
彼女の机にバレないように手紙を入れるのも、屋上に呼び出して告白をするのも想像するだけで怖くてしょうがなかった。
何度も屋上に行かず今すぐにでも逃げ出そうと思った。
それに、正直なところを言えば僕は彼女にフラれるとも思っている。
なんたって僕が告白している相手はうちの中学で高嶺の花と言われている霧島美波さん。
文武両道な彼女はテストの順位も1番で成績もオール5。体育祭や球技大会でも高い身体能力を活かして大活躍している。
そんな彼女は人付き合いも上手で、いつもクラスの中心にいて皆んなに好かれている。
対して僕は生まれてこの方彼女が出来たこともないデブバカ童貞。
成績も悪ければ運動も出来ない最底辺にいる誰からも好かれてないどうしようない奴だ。
誰がどう考えても告白が成功すると思う人はいないだろうし、クラスメイトに知られたら「身の程をわきまえろデブ」とバカにされるに決まっている。
それでも、こんなに勝率の低い勝負に出ているのには理由がある。
ありきたりかもしれないけど、僕はダメな自分を変えたい。
人前に立てば緊張で足が震えるような自分、人と会話をする機会があっても上手くコミュニケーションを取ることが出来ない自分。
なにより、友達もおらず人の顔を伺いながら生きている情けない自分を変えたい!
僕だって本当は仲のいい親友がほしいし、可愛いくて優しい彼女がほしい!
そういう意味ではフラれると分かっていて自分の成長の為に告白をする僕は不誠実なのかもしれない。
それでも彼女が好きなのは本音だ。それに実は僕にだってワンチャンあるんじゃないかと思ってもいる。
授業で一緒の班になった時には目が合ったし、僕なんかにも笑顔で話しかけてくれた。
それに、彼女は僕のことを見ていることが時々ある。
僕が見つめかえすと恥ずかしかったのか、そっぽを向いてしまうけれども。
彼女と付き合えるなんて都合のいい妄想だと分かっている。それでも行動しなければ可能性は0のままだ。
それに、僕の見ている経営者の人気インフルエンサーも「とにかく行動しろ」と言っていた。
好きなスポーツ漫画でも「一番恥ずかしいのは勝負から逃げることだ」と叫んでいた。
彼らが僕に勇気を与えてくれた。だからこそ逃げることだけはしたくない、ちゃんと霧島さんに僕の想いを伝えるんだ!
「笑顔が可愛いところも、何でもそつなくこなすところも、優しいところも好きでした!」
もう、緊張やら興奮やらで自分でも何を話しているのか分からない。
「・・・」
「僕と付き合って下さい!」
告白と同時に頭を下げて手を差し出す。
彼女の返事は…
「私も橋本くんの事が好きです。これからよろしくお願いします」