みんないっしょのなのかめー!
TSの醍醐味、生理現象回です。(オブラートには包みましたが下ネタが出ます、ご注意ください)
簡易の寝床で起床した。見たことない天井である。
昨夜も昨夜で変なテンションになってわちゃわちゃと何も意味の無い話をして寝るのが遅かったが、体感朝10時頃に目が覚めた。
天気は……この湿度から考えると多分晴れ。
窓の光がめちゃくちゃ差し込んで来ているので、この眩しさで起こされた感じがする。
とはいえ目はパッチリ覚めてしまった。ベッド硬かったかな。
なお、なぜかアタシは二段ベッドの上をゲットしてしまっている。正式な間取りが決まるまで暫くはこの部屋で三人寝起きする予定だ。
二段ベッドの二階って、真っ先にドラゴさんが陣取りそうなモンだが、寝返り打った時に地味に揺れるのが嫌で諦めたそうな。
……まぁ、身長デカすぎ体格クソデカだから二段ベッドじゃ足がはみ出てたけど、その上揺れられたら余計心許なくなるか。
そんなわけで、反対側のロフトベッドはハーツさんがゲットしていた。
ちなみに、現在着ている服はゲームの夏祭りイベントで入手した甚平である。パジャマ兼室内着にちょうど良かったので装備欄から引っ張り出した。
色はアタシが濃い赤、ドラゴさんが黒、ハーツさんが白。
パンツ? 風呂ついでに洗ってベッドの柵に干してるよ。さすがに乾いただろうから早く履こうと思います。
軽く伸びをして、今日は何からすべきかな、と考えながら起き上がったその時、なんとも言えない違和感に気付いた。
「………………んんん?」
これは、まさか。
お布団を捲って現状を確認。そして目頭を押さえて悩んだ。
あー、なるほどー、そういう……あー、はいはいはいはい。なるほどぉー。
何したらいいんだっけこういうとき。頑張れアタシ、記憶を探れ。対処法……、アカン!
ハーツさんに見せられた薄い本でアッー! ってなってるかされてるかそんなんしか出てこん!
「んん……ユーリャさん起きたん?」
「あ、ドラゴさんおはよ」
下のベッドから聞こえてきためちゃくちゃ眠そうな声に挨拶をすると、ロフトベッドで寝ていたハーツさんももそもそ起き上がった。
「ハーツさんもおはよ」
「おはよぅ、ございます……」
二人ともめちゃくちゃ眠そうである。
ドラゴさんは多分変温動物的な低血圧の眠気で、ハーツさんの場合は心の疲れによる際限ない眠さなんだろうと思う。
「……ねぇねぇ、なんか自分、股間がテント張ってる」
「こっちはせっかく言わんようにしてたのになんでそっちは言っちゃうンかな」
言いそうだなとは思ってたけど本当に直球だなこの人ァ。
「わあ、ほんとですね……。BL的展開ですね……」
「じゃあ受けのひと決めなきゃ……」
「二人ともポヤポヤしながらそんな会話すんな。起きろ」
リアクションから察するに三人ともテントしてんなコレ。ノーパンで寝たからかな。ちくしょう早急にパンツをストックせんと。
つーか受け攻めとか決めなくていいから。まったく不必要だから。これっぽっちも必要ねェから。
それ以前に朝からなんつー会話してんだ。
「ふぁあ……でもこれってほっといて大丈夫?」
「あぁ、大丈夫ですよ。ウチの兄はそういうとき静かにゆっくりしてたらだんだん大人しくなってくれるって言ってました」
「家族に何聞いてんの?」
知ってる? それ逆セクハラって言うんだよ。
「……ねぇねぇ、このテント、ヤバくない?」
「うわぁ、なんですかそれ、ペットボトルでも入れたんですか?」
「見えなくて良かった」
大人しく言われた通りに静かにしているので、真下のドラゴさんの様子はまったく分からないのである。やったぜ。
「えっ、見る?」
「見ない」
爽やかな朝が台無しなんよもう。
「…………ヴッ、おぇ……」
「ドラゴさん? どしたンすか?」
「グロい……」
「しかたないね」
嫌悪感からの吐き気なのか、真下のドラゴさんから酷い声が聞こえた。
いや、そんななるくらいならなんで見たん?
つーかそんなヤバそうなの見せようとしたんかお前。
「まぁ、健康ってことなので、よしとしときましょう」
「この状態でトイレ行くのヤダー……」
「ドラゴさん、ハーツさんの話聞いてあげて」
「へ?」
脈絡が無さすぎて会話として成立してないんよそれ。
「まぁ、大丈夫ですよ。どうしても無理な時はトイレ行って出すもん出せば大人しくなるはずです。もちろん、大とか小とかの方です」
「言い方」
もうちょいなんとかならんかったんか。
「トイレといえば……、まだ行ったことないんですよね、実は」
ハーツさんの言葉で、ふと気付く。
「……そういやアタシもトイレ全然行ってねェな……」
「えぇー、そんなまさかぁ」
さすがにドラゴさんが訝しげな声を上げているが、しかたない気はする。生理現象が無いって意味がわからんからね。
「……じゃあドラゴさん、街でトイレ行きました?」
「えぇ? 行ってないよ、だって全然トイレにならないもん……あれ?」
ハーツさんの促されるような問いで気付いたらしいドラゴさんが首を傾げた。
「…………おいワタナベェ!」
『はいっ! お呼びですか!? もしくはなにか問題が!?』
どうせ近くに居るんだろうと思って声を上げたら、案の定近くに居たワタナベさんが慌てて部屋へ飛び込んで来た。
お前今、ドアすり抜けて来なかった? 気のせい?
そしてそんなワタナベさんにドラゴさんが声をかける。
「ねぇねぇワタナベさん、トイレ行ってないの大丈夫なのこの体」
『ひゃああなんですかそれ……! 凶器ですか!?』
「いや聞けよ」
しかし、ドラゴさんの子ドラゴさんがテント張ってる所を見てしまったらしいワタナベさんから変な声が上がった。
うん、あのねドラゴさん、仕方ないと思うよソレ。あんまり責めないであげて。
だがしかし、ワタナベさんなんか妙に嬉しそうな声出てない? 気のせい?
『トイレ……あぁ、ご安心ください。正常ですよ!』
「は?」
正常とは?
『レベルが高いと便意などがほとんど無くなるんです。排泄物というよりは老廃物に近くなるんですね』
なるほどわからん。
「つまりどういうことなんです?」
『トイレは大体週に一回あったりなかったり、または食べ過ぎたり飲みすぎたりした時、って感じになってます』
はぇー。
「……それはそれで困りそうっすね……」
「トイレの存在忘れそう……」
「現に忘れてましたしね」
それな。
『大丈夫ですよ。普通に便意が来ますから』
「なるほど」
それなら少しは安心出来るかな。とは思ったものの、ふと気付く。
「……ん? じゃあ、今後似たようなことがあったらどうしたら?」
この股間の化け物たちをどう対処すればいいの?
困ってピカピカ光るワタナベさんの方を見たら、なんかいきなりワタナベさんの光がピンク色に変わった。
『わたくしで宜しければ皆さんのお相手を』
「おっ、萎んだ」
『えっ?』
ワタナベさんの言葉を聞いた瞬間、股間のテントがなくなった。
一瞬過ぎて見逃しそうなくらいあっという間の出来事だった。なんということでしょう。こんなことあるんやね。
「あっ、ほんとだ! やったー! ありがとうワタナベさん!」
『え』
ドラゴさんのこの喜びようである。どうやらそっちも通常状態へと帰還を果たしたらしい。
ハーツさんもどこかほっとしていることから、あちらの股間テントもめでたく撤去されたようだ。
「助かりましたねぇ」
「良かった良かった。あ、パンツ履くから出てけ」
ボーゼンとしてそうな雰囲気のワタナベさんの首根っこぽいところを摘んで、ぺいっと部屋の外へ放り出し、ドアを締めながら三人はさわやかに笑った。
「お腹すきましたねー」
「朝ごはん作ろうかー」
「やったー」
『どうして……』
外から小さい声でそんな悲しげな言葉が聞こえた気がした。
うん、どうしてもこうしてもねェんだわ。




