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ドラゴさんのみっかめそのろーく。

 


「この剣は……!」

「うん、ただのミスリルソードだね」


 親方さんが、めっちゃ目を輝かせながら、なぜか出来てしまったミスリルの片手剣を眺めている。

 いや、それそんな顔して見るようなモンなの?

 あと鉄どこいったんだろ。


「ただのミスリルソードなものか! こんなもの、ドワーフ族でも作れるかどうか……!」

「……そうなんだ……」


 ドワーフってアレだよね。なんか、小さくて鍛冶得意な、なんかそんなやつだったような。ゲームだと確か武器とか防具とか売ってる人とかがそうだった気がする。


 とか考えてたら、親方さんがなぜか目の前で土下座していた。


「たのむ……、俺に鍛冶を指導してくれないか……!?」

「ごめん無理」


 なんか知らんけど、それは無理なので諦めてほしい。


「何故だ!?」

「自分には、欠点があってね……」

「欠点……?」


 真面目な顔で、真面目に答える。


「自分は、説明がとってもヘタクソなんだよ……!」


 それはもう、壊滅的に。


「……な、……くっ……、それでもいい、たのむ、俺に鍛冶を教えてくれ……!」

「…………わかった、どうなっても知らんよ」

「あぁ、構わない……!」


 なんかこういうの、ファンタジーのラノベで見た気がするなぁ。




「ちょっとアンタら、何してんだい!?」


 色々と頑張ってたら、村長さんが現れた。


「親方、なんか燃え尽きちゃった」

「おれは……おれはもうだめだ……」


 ぐったりした親方さんを眺めつつ、村長さんが呆れたように腰に手をあてながら肩をすくめる。


「何があったんだい……、というか、依頼されてた武器を作ってたんじゃないのかい? 街の冒険者組合に納品予定の……」

「あぁ、それならそこにある……」


 親方さんが指差した方向には、たくさんの剣やら槍が置いてある。

 それって依頼品だったんだ知らんかった。


「えっ!? この二時間で作ったのかい!?」

「短時間で高クオリティに作ると、経験値増えるんだ」


 ゲームと同じなら、だけど。


「死んじまうよそんなの……」

「死なないよ。ていうか親方、スキルあるのになんで使ってなかったの」

「……スキルってのは、戦闘職にだけ存在するもんだってのが、常識だったんだ……」


 えぇー、なにその常識。


「いや、戦闘職にあるなら生産職にもあるに決まってんじゃん」

「……おれがいままでやってたことは……無意味だったんだ……」


 何を燃え尽きてるのかと思ったら、そういう感じで落ち込んでたから燃え尽きてたの親方さん。


「いやいや、製作しないとスキル増えないし、レベルも上がらないから無意味ってことはないよ?」

「だが、一年に1回上がるだけだった俺のレベルが、この短時間で五つも上がったんだぞ……!?」


 へぇー。ゲームだと二時間やったらそのくらい普通だったから分からん。


「まぁ、そりゃそうだよ。“大地の祝福”ってスキルはレベルが低ければ低いだけ経験値増えるもん」

「おれがいままでやってたことはいったい……」


 いや、なんでそんなに落ち込んでるのかな。


「だーかーら、無意味じゃないって。地道な努力があったからこそ、クオリティゲージと経験値がめちゃくちゃ上がりやすくなってるんだよ親方」

「……そう、なのか?」


 ゲームと同じなら、ボーナスタイムみたいなのが発生してるよそれ。


「そーだよ。だから今のうちにめっちゃスキル使って作れば、ミスリルの規定レベルなんてすぐ来るよ」

「だが、材料が……」


 チラッと剣やら槍の群体に視線をやって、また落ち込み始めた親方さん。だがしかし。


「いらんやつ溶かしてもっかい打てばいいじゃん」

「……そ、そうか、おい、ライア!」


 言われて気付いたらしい親方さんが村長さんに声を掛ける。


「はいはい分かったよ。店に並べてる古いのを持ってくればいいんだろ」

「すまん、たのむ」


 ちゃんとお願い出来るだけ親方さんはいい人だな。うんうん。

 とか思ってたら、村長さんはこっちに声をかけてきた。


「ドラゴさん、アンタはそろそろ帰んな」

「へっ?」

「もう夕方だよ。シル婆さんが心配するから、そろそろ帰っておやり」

「分かった。晩御飯も作らなきゃなぁ」


 もうそんな時間かぁ。あっという間だなぁ。

 何作ろうかな。おばあちゃんがきっと薬草スープ作ってくれてるから、それに硬くなったパンをちぎって突っ込んだらいいよね。うさぎ肉がちょっと残ってるからそれも入れようかな。味薄くなるかな……?


「おい、アンタ、これ持ってけ」


 突然、親方さんにさっき自分が作ったミスリルソードを渡された。


「え、でもこれ……」

「……いいから持ってってくれ。それが手元にあると焦り過ぎて手元が狂いそうだ」


 それなら仕方ないか。


「わかった。あ、そうだ、鞘作っていい?」

「木材ならそこにあるから好きにしろ」

「ありがとー」


 金槌を借りて、とんてんかん、シャキーン。

 いや、本当になんでこれで出来るんだろう。こわ。


 出来上がった鞘にミスリルソードを突っ込んだら、無駄にちょうどでさらに怖かった。自分のことだけど、引くなぁ……。

 見なかったことにしよ。


「んじゃ帰るね」

「すまないね。ダンナがこんな状態じゃ、次はいつ、とか全然わからないよ」

「んー、まぁ気が済むまで打たせてあげればいいよ。今すごく楽しいと思うから」

「……ほどほどで止めさせないと飯も食わなさそうだね」


 あー、仕方ない気はする。


「職人だねぇ」

「まぁ、こっちのことはこっちで何とかするさ。なんかあったらまた呼びに行くから、しばらくはのんびりしとくれ」

「わかった」


 そんな感じで鍛冶屋さんからは帰宅したのだった。

 初仕事ってこんなんでいいのかな。




 その後、おばあちゃんの家に帰り、ロンちゃんとお話をして、夕食を作った。

 そろそろうさぎ取りに行かなきゃなぁと考えながら、おばあちゃんが用意してくれた寝床に転がる。

 寝床といってもリビングの床にタオルみたいなの敷いて、タオルみたいなのを布団代わりにしただけだけど、ぜんぜん辛くないのが不思議だ。


「あ、そうだ、寝る前にユーリャさんに報告しとこう」


 ふと思い立ち、メニュー画面からチャット画面を立ち上げる。

 今回はフレンドチャットじゃなくてパーティチャットだ。


 空中に浮かんだ透明のキーボードでポチポチと文章を打つ。

 すると、すぐに会話が始まった。


 ──────────────

 ドラゴ・アイス:ねぇねぇ、なんか自分伝説って言われたー

 ユーリャ・ナーガ:さすが。全然前後関係がわからん

 フレア・ハーツ:こんばんは

 ──────────────


「ハーツさんだ!」


 ──────────────

 ドラゴ・アイス:ハーツさんだ!

 フレア・ハーツ:ハーツさんですよ~

 ユーリャ・ナーガ:ハーツさんとはなんとか合流出来たんで、次はドラゴさん迎えに行くっすよ。

 ドラゴ・アイス:わーい

 ユーリャ・ナーガ:で、何があったんすか?

 ──────────────


「えーと」


 ──────────────

 ドラゴ・アイス:鍛治職人の人から言われた

 ユーリャ・ナーガ:うん。だから何があってそうなったんすか

 フレア・ハーツ:さすがドラゴさんさっぱり分からない

 ドラゴ・アイス:えーとね、剣打ったらシャキーンってなって、カンカンカン、パーン! てなった!

 ユーリャ・ナーガ:何

 フレア・ハーツ:わぁ

 ドラゴ・アイス:したらね、スキル出て来てピカーって

 ユーリャ・ナーガ:うん。それは伝説だね

 フレア・ハーツ:そうですね。伝説ですね

 ──────────────


「えっ」


 ──────────────

 ドラゴ・アイス:自分……伝説だったんだ……

 フレア・ハーツ:もう伝説でいいと思いますよ

 ユーリャ・ナーガ:うん、もう伝説っすよそれは

 ドラゴ・アイス:そっかぁ

 ユーリャ・ナーガ:それはともかく、明日迎えに出発しますんで

 フレア・ハーツ:たぶん夕方になる前には到着すると思います

 ドラゴ・アイス:わかった! まってるね!

 ──────────────


「よし、寝よ」


 満足したので画面を全部閉じて、ついでに目も閉じたのだった。

 早くみんなに会いたいなぁ。



 

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― 新着の感想 ―
アッ三人チャットで喋ってるだけでなんか良い……仲良し……ほんわか気分になります……!
[良い点] ドラゴさんが可愛い。 [一言]  ドラゴさんはスキルは本能で使ってる感覚なんでしょうね。 あと天才肌?  アインシュタインは数学とか答えは出せるけど、その証明は難しかったと聞いたことがあり…
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