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第22話

燕尾服の男が「お連れの子の場所まで案内します」と言ったので言われるがままについて行くものの、果たして本当に風夏はいるのでしょうか?

教祖? が亡くなっていた部屋と繋がっていた通路を歩いているわけですが、もしやこの先は教祖の私室で教祖は死んでいなかったのでは?

全ては侵入者である私を捕らえるために……。

いえ、まだ決まったわけではありません。

ですが、警戒は怠らないようにしましょう。


「そんなに警戒しないでください。さっきも言いましたが、あなたを害するつもりはありませんから」

「それなら何故教祖とやらの部屋の先に行くの?」

「この先に懲罰房がありそこに入れられているからですよ。ああ、先に言っておきますが、まだ何もしていませんよ。捕らえたばかりでしたので。それと懲罰房が何故教祖……黒川の執務室の先にあるかといえば、逃げようとした場合あの部屋を通らなければならず、大抵は黒川か私か、あるいは猫田が居ますので逃げられません。なので、この先に懲罰房があるのですよ」

「教祖の黒川とやらに脱走を止められるとは思えないんだけど?」


怪しげな宗教団体とはいえ、宗教のトップであるならばあのような太り方をすべきではないのでしょうが……彼の体型では女子供くらいしか捕まえられないように思う。

それだってもしかしたらで、一度距離を取られれば追いつけないくらい鈍臭そうな気がする。


「彼も異能者でしたから。黒川の異能は治癒の異能と精神的に貸しがある相手を支配する異能がありました。治癒の異能によって奇跡を演出し、その貸しをもって相手を支配するという形でこれまで教団を大きくしていきました。猫田の場合はあの異能でしょう? 異能の存在がバレて、親からも周りからも化け物として恐れられ、迫害され、露頭を彷徨いました。別に何かをしたわけではありません。誰も傷つけていません。ですが、人は自分の理解の及ばない存在を恐れ排除しようとする生き物です。心身共にボロボロになっていた彼を黒川は保護し育てました。完全な打算によるものでしたが、それは猫田にとっては正に救いでした。そうして、支配の異能によって猫田は従順な飼い犬となったわけです」


あの時の激昂はそういう事ですか。

そんな過去があれば面白いと言われて怒るのも無理はないでしょう。


「こちらにいますが、私が抱えますので少々お待ちを」


確かに私では風夏を抱える事は難しいでしょう。

ですが、これでは風夏を人質に取られたようなもの。

迂闊な行動は取れなくなってしまいました。


「では、車の場所まで行きましょう」


車が停めてあるという場所は教祖の部屋に一度戻り、そこから別の扉から出てすぐのところにあった。

ちなみに、教祖の部屋だが私が入ってきた扉のほかに懲罰房への扉と車のある場所への扉、それ以外にもう1つ扉があるという変わった作りになっていました。

そのもう1つの扉に異能者が隠れていない事を願うばかりです。


意外な事に、燕尾服の男は風夏を助手席ではなく後ろのシートに乗せて、丁寧にシートベルトを締めていた。

そして私も後ろのシート。

人質にするなら助手席? 家族で出かける時ママがいつも座っている席野方がいいと思うけど……本当に害するつもりがない?

いや、風夏を助けるために疑って疑いすぎるということはないはずです。


「では出発しますよ。道案内よろしくお願いします」

「わかっ……いや、警察署まででいい」

「これはまたかなり警戒されていますね。ですが、分かりました」


随分あっさりと受け入れるんですね。


「これは聞き流してくれてもいいんですが、ある男の話をさせていただきますね。ある男は生まれながらにして超能力が使えました。その男が使えた超能力は触れたものを浮かせて操ることが出来るという、いわゆるサイコキネシスと呼ばれるものでした。幼かった男は何も考えることなく、触れたものを浮かせ、それを親に見られました。そして、親に叱られました。その力を人に見られたら、いじめられるよ。だから使ってはいけないと」


ん?

猫田……だっけ? あの犬の小童は迫害されて、それが自然だと言っていなかったっけ?

それがなんで叱られただけなの?


「その男の両親は、男が超能力を……異能を持っていても変わらず愛しました。男もまた、親の愛を受けてすくすくと成長しました。しかし、ある日の事、学校の友達と喧嘩になり能力を制御出来ずに異能を使ってしまいました。周りからは化け物だと言われ、恐れられ、迫害され、住んでいた街にはいられなくなりました。似たような事が数回あり、その度に引っ越しを余儀なくされて、両親はその度に仕事を変えて男を懸命に育てました。愛ゆえに。男もまた、そんな両親を愛していましたが、何度も仕事を変えて一から仕事を覚えて年下の上司の元で働くというのは心身に大きな負担を強いました。両親は無理が祟り若くして亡くなりました。男は荒れました。愛してくれた2人が亡くなったのですから。そんな時に、黒川が現れました」


ね、眠い……流石に、限界が近いです。

前世があっても、この体は5歳児のそれで、無理を押してここまで来ましたが……かなり辛いです。

今多分この男にとって大事なことを話している気がします。

必ずしもこの話の男がこの男とは限りませんが、今この時に話すのですからおそらくは……しかし、眠い……。

小さな振動とこの男の静かな語り口調が眠気を誘ってきます……。


「もう3時半ですし、眠いのも仕方ないですね。では簡単に説明しますと、察してはいると思いますがその男は私です。黒川と出会い、一度は救われましたが、教団の実態を知り、支配の異能から脱して教団から抜ける隙を狙っていたところにその子とあなたが現れた。私はそれに便乗して黒川を殺したというわけです。あとはこの手柄を持って警察の暗部組織にでも厄介になろうかと思っております。黒川は知りませんでしたが、私は色々と雑用を任されていまして、その時に警察の対異能者用暗部組織の存在を知りましたので」


あ、もう……無理……。

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