第21話
大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした
今回の話はニ案浮かんだもののどちらにしようかと悩みに悩んだ結果遅れました
小童が出てきた扉の奥へと進んでいくと、【導きの偶像】が指し示す場所は大きくて華美な装飾の施された扉だった。
見た目からして、普通の部屋だとは思えません。
これって小童が言っていた教祖様とやらの私室なり執務室なりするのではないでしょうか?
風夏が逃げ出せないように手元に置いているのでしょうか?
それともこの先の部屋の更に先にいるのでしょうか?
わかりませんが、踏み込むしかないのでしょうね。
他に通り道があるのかもしれませんが、生憎とそんな道を探しているだけの時間もありません。
なので、意を決して中へと踏み込む事に。
意外な事に、扉に鍵はかかっていなかった。
【導きの偶像】を再び仕舞い込む。
1人目であれだったのだ。
2人目3人目がいると思われるし、1人目よりも強い相手が出てくる可能性が十分ある以上、風夏への唯一の道標を失うわけにはいかなかったから。
そして、意を決して中へと踏み込むとそこには白く豪華な法衣を身につけた男性の、死体が転がっていました。
「……え? どういう事……?」
格好からしてかなり高位のそれこそ教祖様と呼ばれた存在という可能性もある男性が、何故か既に殺されていた。
これは一体どういうことでしょうか?
「これはまた随分と可愛らしい侵入者ですね」
「誰?」
部屋の左隅にある扉から人が出てきました。
その人は燕尾服を身に纏った執事や秘書のような知的な雰囲気を醸し出している男性です。
穏やかな語り口調のはずなのに、不思議と警戒心を抱かせてきます。
「そんなに警戒なさらないでください。これでも私はあなたに感謝しているのですよ」
「感謝……?」
「はい。私はそれを殺す機会をずっと伺っていたんですよ。そこにあなたが侵入し、猫田を誘き出してくれたおかげで楽に殺す事が出来ました」
「猫田……?」
「犬神憑きの男ですよ」
「犬神憑きなのに、猫田なの?」
「はい。彼は私の異能とは相性が良くないので、あなたが排除してくれて助かりました」
この人も異能とやらを持っているらしい。
犬神憑きとやらが魔法のようには思えなかったことを考えるに、この人の力も魔導とはまた違った別の能力の可能性は十分あるでしょう。
得体がしれませんし、警戒しておいて損はないでしょうね。
「警戒するのも分かりますが、私に敵対の意思はありません」
「それを信じるとでも?」
「信じてもらわなくてもいいですが、私は役に立ちますよ。子供2人で夜道を歩いて行くつもりですか? 車、出しますよ」
「…………。」
「それに、いつ猫田が目を覚ますか分かりませんよ? まだここには教団員が何人もいますよ? 眠った子供を連れたままそれらを相手に出来ると?」
「……怪しい行動をしたらすぐに殺すから」
「そうですか。でも、何もするつもりはないのでなんの問題はないですね」
あっけらかんと言ってのけるこの男が不気味で仕方がない。
それでも、この男の提案に魅力を感じている。
風夏を浮かせて飛ぶにせよ、抱えて飛ぶにせよ、どちらもかなりの魔力を消費するのは間違いなく、途中で魔力切れになる可能性もある。
しかし、車で行けるのならいざという時に応戦する事も出来る。
問題はこの男が信用出来るかどうか、それだけに尽きます。
この男とこのあとのことを天秤にかけて、私は提案に乗る事にした。
それと同時に、何があろうと風夏を護ると決意します。
たとえ、その過程でこの男を殺す事になったとしても。
私にとって1番大事なのは、風夏なのですから。




