第12話
時刻は12時を過ぎた頃になったのでそろそろ動こう。
ママとパパは……うん、眠っているみたいだね。
明日も探すって言っていたからそのために早めに休んでいるんだろう。
「ご苦労様。また何かあったらよろしくね」
失せ物探しの時に便利だから契約したその辺のクモさんなので、いつまで生きているか分からないけど……まあ、長生きしてくれるといいね。
使い魔召喚は三種類存在する。
一つは、手近な存在を強制的に召喚し従えるというもの。
これは従える存在を選べない上にきちんと従えさせられるか分からないという欠点があるが、一番手軽。
二つ目は事前に契約しておいて有事の際には召喚して従えるというもの。
これのいい点は従える存在を任意で選べるということ。
悪いところは事前に契約する必要があり、契約していないと当然だが使うことはできない。
三つ目は契約した使い魔の霊体をこちら側に具現化するというもの。
欠点は契約するためには相手が霊体である必要があるので、時と場合によっては生者から霊魂を抜き取って霊体にしなければならないということ。
すなわち、相手に死んでもらう必要があるのだ。
そのため、契約してくれる可能性が極めて低い。
だが、その欠点を補ってあまりある利点があり、死んでもいいと思ってくれる相手なので全力で力を貸してくれるという点だ。
命を賭してでも守りたいと思ってくれなきゃ、自ら命を投げ捨ててはくれないからね。
後は、本体が霊体なので肉体をやられても問題ない点かな。
先の二つは死んだらそれまでだから。
そして、さっきまで使っていたのが二つ目の奴だね。
残念ながら、前世の使い魔達は私が死んだ時に契約が切れてしまっているから呼び出すことが出来ない。
まあ、私が死ぬまで支えてくれた子達だ。
異世界でまで手伝ってくれなんて、言えないよね。
私のように、どこかで転生して幸せになってくれることを願っておこう。
それよりも今は、風夏の足跡を辿るのが重要。
こういう時に使えそうな魔導は……あれかな。
「いざという時のために、準備しておいてよかった〜。さて、早速始めましょうかね」
机の引き出しを入れる隙間の上の部分に貼りつけて保管していた風夏の髪の毛を取り出すと、それを紙の上に乗せる。
そして、その紙を魔法陣を描いた紙の上更に乗せる。
『汝は空駆ける偶像。されどその軌跡は迷いを払う道標なり。魂の断片を辿り我を導きたまえ』
魔法陣が輝き、魔法陣の上に置いた紙が風夏の髪の毛を中心に据えるようにして折りたたまれていき、鳥の形になる。
最初は山田さん家の犬を一時的に使い魔にしようかとも考えたけど、警察も警察犬を使って捜索しているだろうから匂いでのアプローチは意味がないでしょう。
それに対して今回使った魔術、【導きの偶像】は探す対象の一部……今回は髪の毛ですね。
その対象の一部に残った残留魔力から同じ魔力を持った存在、即ち本体の場所まで飛んでいって教えてくれるというもの。
これはほぼ確実に対象の場所が分かるけど、残留魔力は一月もすれば霧散してしまうので逐次交換しないといけないという欠点があります。
今使った髪の毛は前に遊びに来た時に拾ったものだから一月経ってないので問題はありませんがね。
飛び立とうとしている【導きの偶像】の為に窓を……と、その前に暗めの色をした服に着替えて、と。
そして改めて窓を開けて、飛んでいく【導きの偶像】を追いかけて私も空を飛ぶ。
無詠唱での飛行魔法です。
この体は5歳児のそれなので普通に走ったのでは追いつけないので。
その為に目立たないであろう暗めの色の服に着替えたのです。
さて、風夏を攫った相手の顔を拝みに行くとしますかね。




