第9話
熱も下がり、頭がぼーっとするのも治まりましたが、念の為もう一日だけ様子を見るとの事で安静にして過ごす事に。
今日は土曜なので幼稚園もないのが救いですかね。
いくら風邪を引いたからといって休み続けるのは気が引けますし。
熱自体は下がっているので寝たきりでいる必要はないですが、どうしましょう?
何もすることがありません。
いつもなら公園に行ったり、風夏と遊んだりしているのですが流石に外出するわけにも行きませんので。
そうなると途端に暇になる私……。
あれ? もしかして、私ってつまらない人間なのでしょうか?
やりたい事がないなんて、貴方、つまらない男ね……。って、ママの見ていたドラマの女の人が言っていたし……どうしよう?
私、つまらない人間なんだ……いえ、落ち着くのよ。
前世ではあんなにやりたい事があったんだし、つまらない人間じゃないはず。
今はちょっと、目標がなくなっただけでつまらない人間じゃないはずです。
だから、ほら何か探せばきっとやりたい事が出来るはず。
……そういえば最近は少し子供っぽい感じになっていますし、少しは前世の感じを取り戻した方がいい気がします。
少し、緩みすぎな気がしますし、気をつけましょう。
「華琳ちゃ〜ん。気分はどうかな〜?」
「あ、パパ。大丈夫だよ」
「本当に? ごめんねぇ、普段お仕事でなかなか話せないからねぇ」
「ううん。気にしてないよ」
「それはそれで傷つくんだけど……でも、今日は休みだから一日中遊べるよ。ゲームとかどうかな?」
「うん、やるー!」
……明日から。
明日から頑張るから。
だってゲームだよ!?
前世には存在しない未知の娯楽にして人類が生み出した至高の玩具。
何をどうしたらキャラクターを操作してストーリーを擬似体験しようという発想になるのか……それだけじゃなくてこれがどういう原理で動くようになっているのか全くわからない。
分からないけど、それでも凄いということだけは分かる。
本当に凄いんだよ!
「どれやる?」
「これ! マリコカート!」
「本当に華琳ちゃんはそれが好きだよね」
「うん。これなら手加減しなくても互角の試合になるからね」
「言ってくれるなぁ……その通りなんだけどさ」
パパ、ゲームをたくさん買ってるけど、そんなに上手くないんだよね。
確か下手の横好きとか言ったかな。
下手くそだけど熱心にやったりする事を言うらしい。
パパが良く言ってる言葉。
この言葉っていいよね。
才能があろうがなかろうが関係なく、好きな事をやっていいんだって言ってくれてるみたいで。
まあ、前世の私は才能もあった上で好きな事をやっていたんですけどね。
「くらえ、緑甲羅!」
「ちょっ!? 華琳ちゃん狙うの上手すぎない!?」
「ふふん。これくらい余裕です。って、ああ!? 誰雷落としたの!? うわぁ!? 更に青甲羅がぁ!? おまけにミサイルに轢かれたぁ!?」
「あ、またミサイル出た。ラッキー!」
「ああ!? パパにも抜かされた!」
この手のゲームって、どうしていい調子で走っていると連続で被弾したりするのかな!?
ミサイルで一位に躍り出たパパを緑甲羅で狙い撃ちして一位になったまではよかった。
そこから連続で被弾しておまけにパパにまで抜かれてしまった。
なんとか巻き返そうと奮闘するもその度にCPUから妨害されて結局四位と微妙な順位で終わってしまった。
パパは二位だった。
せめてそこは一位になってて欲しかった。
「パパの勝ちだね♪」
「アシスト付きの癖に……」
「うぐっ!?」
このゲームは家族で遊べるようにという事なのか、コースアウトしそうになると落ちないように自動で動くアシスト機能がある。
多分子供と大人の差を無くすためなんだろうけど、パパは下手くそだからこれが無いとまともに走れないのだ。
ちなみに私は外してる。
とはいえ、負けは負け。
今はその事実を受け止めて、次にいかそう。
ひとまず、調子に乗っているパパをボッコボコにしたいと思います。




