第0話
懲りずにネット小説大賞用に書く。
ちまちまと書いてはいるもののまだ4話しか書けてないという見切り発車っぷり……。
毎日や定期的にとはいかないまでもちゃんと書いていくつもりです。
異世界転生というものをご存知だろうか?
今自分が居る世界、空間、次元が異なる、世界の理、法則さえも全く違う世界に死んだ後魂となって渡り……そして前世の記憶を持った赤子として新たに生まれ変わる。
それが異世界転生だ。
転生する先も文明の発展具合、魔術体系の有無やその差異、神が管理をしている世界かどうかといった様々な違いがある。
そんな異世界転生をした者も実は意外と多くいたりするのだ。
大体は地球系列世界から魔法のある世界へと転生し、転生した世界で地球で得た知識や発想、技術で……あるいは神に与えられた力で命の価値が軽い世界を楽々イージーモードで謳歌している。
稀になんの力も与えられずに転生することもあるが、それは本当に稀で、そういった者もなんだかんだありつつも幸せに過ごしている。
だがしかし、ここで1つ疑問に思わないだろうか?
地球系列世界から魔法文明のある世界へと転生する話ばかりで、何故異世界から地球系列世界への転生はないのかと?
その答えは否だ。
もちろんあるに決まっている。
その1つの事例がこれから語られる男の……いや、元男のお話だ。
◇
我、ふっかーつ!
フハハハハハハハハハ!
どうやら詰めが甘かったようだな、聖女イリスよ。
何が邪教の徒だ。
我はただ魔導の深淵を探究しているだけだというのに禁忌だなんだと、全く愚かとしか言いようがない。
ぬ?
何故声が出ぬのだ?
それに、見慣れぬここは……?
「はーい、華琳ちゃーん。ご飯の時間でちゅよ〜」
カリンとは誰だ?
というかなんなんだこの巨女は……って待て!
我に何をする気だ!?
ええーい、女が気安く胸をはだけさせるな!
恥を知れ!
ま、待て!
我は見知らぬ女子とそのような事は……ふむぐっ!
あ、甘い……。
それになんだ、この幸福感は……?
く、口が止まらぬ……。
「けぷっ」
むぅ……急に眠気が……。
◇
どうやらここは我のいた世界とは異なるようだ。
この世界で初めて目が覚めた時から1月が経っている。
流石にそれだけの時間を過ごせば色々と分かってくるというもの。
しかしまさか、市井で流行っていた異世界転生という娯楽小説と同じ体験をする羽目になるとは思いもよらなんだ。
確か噂では魔導の無い世界に転生し、その世界で唯一転生によって魔法の力を持つ事が出来た主人公が成り上がるというのが主流だったな。
おおかた魔法の才のないものが考えた妄想話だと思い鼻で笑っていたが、実在するとはなぁ……。
まあ、我が両親に魔法の素養が無いだけかも知れぬが、おそらくそれもあり得ぬだろう。
魔導を使うのに必要な世界に漂う魔力の源、すなわち魔素が無いわけではない。
あちらの世界に比べて少しばかり少ないが、使えぬほどではない。
しかし魔素があるのにカデンセーヒンなる絡繰に魔素を用いている様子もない事から魔法文化の無い世界なのだろうと考えられる。
今の我ならばこの世界に魔法を根付かせる事も出来るであろうが……やめておこう。
元々魔導の深淵を探究していたのも、あの人に少しでも近付きたいが故のものだったしな……。
あの人のおらぬ世界で魔導魔導言うてもな。
幸いこの世界は平和なようであるし、第二の人生ではのんびりと暮らすとしよう。