表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート11月~

信号

作者: たかさば

俺の目の前に、信号が、ある。


赤色か。

渡ったら、駄目だな。


駄目だとは、思うけど、周りのやつらは、何人か…渡っているぞ。

危ないなあ、なにを考えているんだろう。


ぼんやり、信号を、見つめながら。


ここは、どこだったかな。

何で、俺は、ここにいるのかな。


信号が、変わった。


青色か。

渡らないと、いけないな。


周りのやつらは、続々と、渡っている。

そうだな、信号は守るべきなんだ。


渡ろうとしたとき、ふと思った。


信号の色ってさ、緑色だよな。

何で、青って、いうのかな。

たしか、青色野菜が、どうたら、こうたら。


ぼんやり、そんなことを考えていたら、信号が変わった。


黄色か。

注意したら、渡れるけど。


周りのやつらは、走って渡っている。

一目散に、渡っているな。


注意して渡るというよりも、急いで渡る人の方が多い。


何で人ってのは、そんなに急いでしまうんだろう。


ぼんやり、そんなことを考えていたら、信号が変わった。


赤色か。

渡ったら、駄目だな。


周りに、人影は、もう、ない。


ぼんやり、信号を、見つめながら。


この信号は、渡らないといけないのかな。

何だろう、渡りたくない気がしないでも、ない。


信号が、変わった。


青色か。

渡らないと、いけないな。


周りに、人影は、もう、ない。


渡ろうとしたとき、ふと思いだした。


そうだ、青信号の意味は。


「進んでも良い」だった。

「進め!」という命令では、ない。


じゃあ、渡らなくてもいいか。


ぼんやり、そんなことを考えていたら、信号が変わった。


黄色か。

注意して、渡る必要はないな。


周りに、人影は、もう、ない。


もう、ここにいる必要も、ないな。


俺が、信号に背を向けて、一歩進むと。


黄色い信号が、変わったらしい。


赤い、光が、俺を、照らす。


ぼんやり、目の前の地面に広がる、信号の、赤い、光を、みつめる。


俺は、赤信号の光を、背に受けている。


自分の影のまわりが、赤い光を、まとっている。


赤い、光が、ジワリと、影に、染み込む、浸み込む、沁み込む、滲みこむ…。




「お兄ちゃん!!!!!!」

「せ、先生!!先生呼んできてっ!!!!」


ここは、どこ、だ・・・?


やけに、白い空間が、俺の目の前に、広がる。


ここは、病院、か・・・?



俺は、繁華街の交差点で、爆発事故に巻き込まれたらしい。


全身にガラス片を浴び、出血多量で、一時意識不明の重体だったと、妹から、聞いた。


死傷者は30名を越えたらしい。


「良かった…お兄ちゃんまでいなくなったら、私…。」


涙ぐむ妹を見て、俺は全身の痛みに悶えつつも…今の状況を、うれしく、思った。


もし。


俺が。


信号を渡っていたら。


俺はここには、いなかったのかも、知れない。


―――いーい?青信号はね、「進んでも良い」だからね?「進め!」っていう命令じゃ、ないからね?

―――黄色だからって、急いで渡る必要はないんだぞ!ゆっくり待って、青で渡ったら良いんだ!


幼い日の、両親の声が。


…ふわりと。



俺の頭の中に、響いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ほう、女性ですか。それは興味深い。
[良い点] 深いです。 [一言] ぼくも同じこと考えたことあります。そうですよね、青信号って、進め、じゃないですよね、赤は止まれ、なのに。なんかおかしい感じがしますよね。たかさばさんは男かな、シンパシ…
[良い点] 不思議な感覚ですね。これは考えたことなかったです。 [気になる点] しっかしこれは、まるで現実味がないですね。歩行者用信号に黄色はない。亡霊ですね、無限ループですね [一言] 比喩表現がう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ