76話【クリアそして……】
「あとちょっとやで!」
「どうせこっから本気出してくるにゃん!」
このフィールドのボス、【冥界の瞳セレナ】と戦いはじめて5分。
私達はシャチ本体ではなく、上半身だけのあの少女の部分や砲台を集中的に攻撃して順調にボスのHPを減らしていた。
ボスのHPゲージを半分削ったところで機械クジラを墜としたあの大技が来たぐらいで、行動パターンは変わらなかった。
しかしゲージが三割を切った時、変化が起こった。
「キュオオオオオン」
ボスが赤く光りながら発光し咆吼。
「雑魚召喚パターンか!」
蔵人さんが上を見ると、空からあのヤドカリが振ってくる。
「向こうからも来るで!」
ミリーが指差す先から機械サメが何匹か泳いでくる。
「めんどくさい!」
思わず私はそう叫んでしまった。
「ラノア、そろそろ……ええんちゃうか? これ早くボス倒さな、じり貧になりそうや」
「だね」
私は視界の左端のゲージを確認した。ずっとここまで溜めてきたのでゲージをマックスで維持出来ている。
シャチが全砲台をこちらへと向けて撃ってこようとするのが見える。
「じゃあ、雑魚は任せた!! 私はボスは倒す!!」
そして私は、獣化ゲージを使用した。
光が溢れ、身体が大きくなっていく。
「ギュオオオオオオ!!」
スピノサウルスとなった私は咆吼しながら、持っていた斧槍を薙ぎ払う。足場から吹き飛ばされたヤドカリがピラミッドの斜面を転がって落ちていく。
「援護するにゃん!」
ユーナちゃんが足下にせまるヤドカリにデバフを掛けていく。
シャチの一斉砲撃を私は肉薄して全弾を自分の身体で受けて、背後にいるみんなに当たらないようにする。
ゲージは減るけど、大した量じゃない。どうやらHPにポイントを振ったせいでスピちゃんの耐久力もかなり上がっているみたいだ。
そのまま私はシャチの額部分の少女へと斧槍を振り下ろす。
クリーンヒットしてシャチが悶える。そのまま連撃を叩き込もうとするけど、シャチは翻って空中へと逃げた。
「っ!! 大技が来るで!!」
ミリーの声と共にシャチが発光しつつ顎を開けてその中にある砲台をこちらに向けた。
「ラノア!!」
蔵人さんが私へと疾走し、そのまま跳躍、私の斧槍へと飛び乗った。
私は渾身の力でそれを上空で攻撃をしようとしているシャチへと振りぬいた。
弾丸のように放たれた蔵人さんが背中の黒翼で更に加速。あっという間にシャチへと迫る。
「はあああああああ!!」
そのままシャチに着地すると同時に、刀を突き刺す。そして刀を刺したまま尻尾の方へと疾走。まるで豆腐みたいに斬れていく背中部分に、シャチが悶えて攻撃を中断。
そのままシャチは浮力を失ったように落ちてきた。
「やっぱり大技キャンセルでダウンや!」
巨大な質量が足場へと落ちて、震動と衝突音を起こす。
ボスのゲージは残り一割。
「とどめを刺すにゃん!」
私は床を蹴って跳躍。ダウンしているシャチへと向けて、斧槍を掲げ——重力と渾身の力を乗せて振り下ろした。
激しい衝撃音と共に、ボスが断末魔を上げた。
「倒した!!」
同時に私の獣化が解ける。
「んーやっぱりスピノサウルスなってからの火力がえぐいなあ」
ボスの経験値とドロップアイテムが視界の端で表示される。
ボスがポリゴンと共に消えると、その場に、あの少女が再び現れた。
「ありがとう。これで……海に帰れます」
その少女はそれだけ言うと、スッと消えていった。
「何か落ちてるぞ」
蔵人さんがそう言って、拾ったのは、小さな指輪だった。あの少女の瞳のような宝石が嵌まっている。
「【冥界の瞳】ってアイテムだな。とりあえずラノアに渡しておこう」
私はそれを受け取り、そっと指に嵌めてみた。
すると、目の前の空間が裂けて、奥に違う景色が現れた。
「これが……次のフィールド?」
「山だね。凄い綺麗」
「山やけど……浮いてるな」
「これが【宙に沈みし神の山城】にゃん?」
その裂け目の先には空が広がっていた。
そして、その空には、一面桜に覆われた山が浮かんでいた。よく見れば、その山の頂上に鳥居のような物が見える。
「和風フィールドっぽいなあ」
「とりあえず行ってみるか?」
「いっぺん帰ってアイテム補充とかした方がいいにゃん」
「せやな……あたしもそろそろ勉強せなあかんしなあ」
「うん、学業優先!」
こうして私達は新フィールド、【デザート・ナイト・フライト】を無事クリアしたのだった。
☆☆☆
「んーどうしよっか……」
「まあ仕方ないにゃん。リアルはそれぞれにゃん」
私のマイホームに戻ったあと、その日は解散。
次の日に集まると、ユーナちゃんしかその場にはいなかった。
その理由は分かっている。
ミリーは、受験勉強が忙しくなり、私達に教えてもらいながらも塾に通う事にしたそうだ。おかげでゲームをやる時間がないみたいだ。
蔵人さんは、なんとVR剣術の世界大会に出るらしい。前々から出たかったそうだが、晴れてその出場権を得たらしい。なのでしばらくそちらの練習と、海外遠征が主になるとか。
「四人そろって新フィールドは難しいかー」
「かくいうユーナも仕事がちょっと忙しくなってこれまでみたいにイン出来ないにゃん」
「そっかー。まあ仕方ないよね」
「だけど……ある意味丁度良いにゃん」
「ふえ?」
「新フィールド。ネットで情報を見る限り、これまでと全然違うにゃん」
「そうなの?」
「にゃん。まず、パーティで挑戦出来ないニャン。強制的にソロになるにゃん」
強制的にソロ!? それはまた思い切った事を……。
「しかも、プレイヤー全員が敵のサバイバルフィールドらしいにゃん。ボスはいなくて、ここでのプレイヤー討伐数やら何やら独自にポイントが入ってそのポイントで素材や武器が貰えるらしいにゃん」
「それって……」
「Verβにそっくりにゃん。しかもここでは、獣化ゲージが、常に溜まっているそうにゃん。HPについてはステータスから割り出されるそうにゃん」
「!! って事はもしかして!!」
私はそれが意味する事に気付いて歓喜の声を上げた。
だってそれはつまり……。
「アキコ、アゲインにゃん」
そんな感じで、いよいよラストが近付いています。
テーマは原点回帰。
ハイファン新作連載開始!
かつては敵同士だった最強の魔術師とエルフの王女がざまあしつつ国を再建する話です! こちらもよろしくお願いします。
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平和になったので用済みだと処刑された最強の軍用魔術師、敗戦国のエルフ姫に英雄召喚されたので国家再建に手を貸すことに。祖国よ邪魔するのは良いがその魔術作ったの俺なので効かないし、こっちの魔力は無限だが?
良ければ読んでみてくださいね!




