57話「忍び寄る悪魔——side自由の鐘」
ひゃっはあ! と喚きながら、ナイフ男が迫る。
「時間稼ぎ任せたです」
そう言いながら狭倉が羽を羽ばたかせながらふわりとバックステップ。細かい青い粒子のような鱗粉がそれと共に宙にまかれた。
「逃げたい!」
「あいつら倒したら逃げられるから頑張ってよ!」
迫るナイフ男にジンパパがノコギリ剣を横に薙ぎ払う。逃げたいと言いつつもテマリがその一撃を回避したナイフ男へと持っている逆さ剣の柄の部分をハンマーのように振る。
「当たらないね!」
ナイフ男が器用にナイフでその攻撃を捌いた。
「ばーか、本命はこっち!」
剣を振り抜いた勢いでくるりと回りながら、テマリの蹴りがナイフ男の胸へと叩き込まれた。
「ぐふっ」
HPゲージが少し削れ、ナイフ男が後退。代わりに重戦車のように突撃してきた斧男が大上段から斧を振りかぶった。
「よくも相棒を! ふんぬううううう」
斧男は狙いも付けず、ただ戦斧を振り下ろした。
「っ!」
テマリがバックステップで回避し、間一髪、目の前を戦斧が通り過ぎた。叩き付けられた戦斧の衝撃で鉄橋が揺れる。
「無理! 逃げる!」
文字通り背後で揺れる尻尾を巻いて、鉄橋の縁へと逃げるテマリ。
「こらああああ逃げるなあああ!」
叩き付けた戦斧を今度は上へと振り上げながら突撃する斧男を躱したジンパパが慌てたように叫ぶ。
「全然時間稼いでないですよ!」
鉄橋の縁でただパタパタと羽を仰ぎ、青い鱗粉を辺りに漂わせていた狭倉が呆れたように逃げてきたテマリに声を掛けた。
「早くあれ使って!」
「ここで使ったら巻き込まれる!」
「ああもおおおお!」
2対1では分が悪いジンパパも駆け寄ってくる。後ろから2人組が迫る。
「2人とも降りるよ!!」
駆けてきたジンパパがそのまま2人を抱えるように鉄橋から身を投げた。
「ぎゃあああああああああこれ降りるじゃなくて落ちるでしょおおおお」
「ちょうちょアレ!!」
「むちゃくちゃです!」
鉄橋から飛び降りながら、狭倉が上へとボーガンの狙いを付けた。
「自殺しやがった! 馬鹿め! ゲホゲホ!」
「これはポイント入るのか相棒……ゲホゲホっ! なんだこの青い粉!」
鉄橋の縁に立つ2人は狭倉が残した鱗粉で満たされた空間で咳き込む。
「まさか毒か?」
「ふふふ〜吸い込みましたね……ただの鱗粉だと思っていましたか?……まあただの鱗粉なんですけどね」
そう不敵に笑いながら、狭倉がボーガンから矢を放つ。
油断していた斧男の鎧へとその矢がぶつかった瞬間に火花が散った。
「ただの鱗粉ですが——可燃性なので注意してくださいね?」
彼女の放った矢の鏃には細かい溝が掘ってあり、それが金属などに当たると火花が散りやすい構造になっていた。
結果、
「は?」
「へ?」
2人組の周りを満たす鱗粉に着火。
爆音と共に炎が爆ぜた。
肺の中を炎で満たされた2人組のHPゲージが削れ、エフェクトをまき散らしながら消失。
「倒しました!?」
「倒したっぽい!」
「ぎゃあああああ地面がせまるうううううう」
落ちながら叫ぶ3人。
「間に合え!【化石化】!」
ジンパパがそう言いながら、一緒に落ちる2人を掴む。
「あ、私は飛べるんだっ——……」
「ぎゃああもう帰——……」
2人の声が突如止み、ジンパパと同時に石化。そのまま地面へと激突した。衝撃音と共に地面から土や砂が舞う。
しかし、3人の少女全員にダメージは入っていない。
土埃が落ち着いたその場所には3人の抱き合う少女の石像があった。
前世【アノマロカリス】を持つジンパパの特殊スキル【化石化】の効果によって3人はダメージを受けずに済んだのだったが……。
「おい、見ろよ、なんか石化した美少女が落ちてきたぜ!」
「おー本当だ。どうする?」
「とりあえず、たたき割るか」
そう言いながら現れたのは3人組だった。それぞれが真新しい武具を装備しており、全員に【暴王】という群体名が付いていた。
1人の男が戦槌を担いで石像へと近付いてきた。その武器を振り被った瞬間。
「見ぃ付けたあああああああ!!」
「ぐはあああ!!」
「ぐええええ」
少女の声と断末魔が響き、斬撃と共に後方の2人が倒れた。
「っ!! お前は!」
戦槌を持った男が、振りかぶった武器をの狙いを変えて、目の前へと迫るその少女へと叩き付ける。
「プレイヤーは全員——ぶっ殺ーす!」
振り下ろした戦槌の一撃を、軽く腕で受け止めた少女が不吉な言葉を吐きながら笑った。
少女が構えるのは、一本の凶悪なルックスの斧槍。
岩のような鎧を身に纏う少女を見て男はようやくその正体に気付いた。
「お前は——!!」
それが男の最後の言葉だった。
というわけで前世を提供してくださった、テマリ様、狭倉朏様、ジンパパ様、ありがとうございました!
次話もゲスト登場予定です! お楽しみに!




