51話「合流」
2020/03/29
VRジャンル日間1位、週間2位、月間ランキング10位になりました!
感謝です! もっと伸びろ!
「さよならオビ1さん」
そう言いながら私は取り出した投擲爆弾のピンを抜いて下でぶら下がっているオビ1さんへと爆弾を落とした。
投げれば対象に当たった衝撃で爆発するし、ピンを抜けば手を離してから3秒後に勝手に爆発するこのアイテム。
爆弾はオビ1さんの目の前を通り過ぎ、下から顎を開けて昇ってきているワームとの間で爆発。
なぜか笑っている彼が爆炎に飲まれたかに見えた。
「うおおおおおおおお!!」
オビ1さんが爆発の瞬間に筋力だけで鉄骨から、横の壁へと爆発の勢いに任せ身体を飛ばす。爆発をまともに受けているはずなのに、HPゲージがミリ程度残っている。
「嘘!?」
その後、オビ1さんの身体が光に包まれた。
ふさふさの尻尾に細長い胴体、可愛らしい顔。それはどこかで見たことがある姿……たしかイタチだったかな?
それはスルスルと器用に壁を垂直に登ると、崩れた瓦礫の隙間へと消えていった。
「キュアアア!!」
爆発によってひるんだボスが咆吼をあげながら再び上昇。
「っ!」
今度は私がピンチだ。急いでターンすると部屋の中へと回避。
さっきまで私の立っていた位置が床ごとボスに食われた。
「ああもう!」
部屋から続く廊下の方へと逃げる。後ろから、壁を破壊しながら迫るボスに私は嫌になっていた。
なぜオビ1さんがあの爆発でも耐えられたのか、それは知るよしもないけど、今のところ状況は全然改善されていない。
廊下を進むと、下りの階段があった。そこへと飛び込み、飛び降りるように階段をおりる。
階段上部が緑色の毒液にとって切断される。同時にそれによって何かの罠が発動したのか、上のほうで爆発。
よし、決めた。とりあえず一旦この要塞から出よう。ここは色々ともう危険過ぎる!
「そういえばミリー達は大丈夫かな……」
メッセージの返信はない。向こうは向こうで忙しいのだろうけど、とにかく早く合流しないと。
辛うじて、崩れかけた階段を降りて一階部分の窓から外へと飛び出す。
空は暗く赤色の雲が渦巻いて、相変わらず空中戦艦があちこちに爆弾を降らしている。
もうやだこの場所。
どうやらあのボスは要塞の外までは追ってこないようだ。
要塞の外周から、ミリー達と別れた場所までひとまず戻ってみる。
全力で走っていると、ミリーから通信が来た。
『ラノア! 無事!?』
ミリーの声を聞いて、私の緊張感が一気に切れた。
「うわーーーんミリー!! もう聞いて!! 爆弾があれで壁がどかーんで階段がこわれて地下にはワームの巣があっ——」
『わかったわかったあとで聞くから! 今どこや? あとオビ1ってプレイヤー見た?』
「今、最初の入口に戻ってる! オビ1さんは倒しかけたけど獣化して逃げられた! 倒したと思ったのに〜」
『うちらもそっち向かう! まあちょっと人数増えたけど……』
「え?」
『会ってから話す!』
「分かった!」
5分も掛からないうちに、入口へと辿り着いた。
ミリー達と別れた場所に、ミリーと蔵人さんと、あと見知らぬ3人のプレイヤーが立っていた。
蔵人さんは刀を抜いており、その3人の後ろでいつでもそれを振れるように身構えていた。
「みんな!!」
「ラノア!。派手に暴れたみたいやな!」
ミリーが手を振っている。ミリーに飛び付こうかと一瞬思ったけど、謎の3人がいるので、自重して手前で立ち止まった。
3人の頭上を見ると、それぞれ、【エンザ:ソーレス】【カルナ:ソーレス】【由犀:ソーレス】と表示されていた。
「その人は……オビ1さんの【群体】の人?」
「せや。まあ2対3で戦闘になったんやけど……色々あってな」
「おい! 話が違うぞ!?」
由犀という名前の少年がミリーへと怒声をあげた。
「うっさいぞ少年。あたしも色々と想定外やけど、結果、誰も死んでないからええやろ」
「そうだよ由犀。忘れないで、私達は——生かされてるの」
「まあまあみんな生きてて良かったじゃーん」
ミリーをフォローする、エンザという長身うさ耳の女性と、耳辺りにヒレが生えて背の低い少女のカルナ。
「うーん、状況が理解できない」
「すまんな。とにかく、まあ一時停戦って奴だ」
蔵人さんが一分の隙も見せずにそう声を掛けてくれた。
「ほら、自分らもさっさとオビ1に連絡し」
「はーい」
カルナさんがウィンドウを開き、何やらメッセージをオビ1さんへと送ってる。
「あの人、用心深いから、私からのメッセージでもすぐには現れないとおもうよ〜」
「ほな、1人ずつ首を飛ばすか」
「やってみろ!」
ミリーの冗談に少年——由犀君がつっかかる。
「俺は一向に構わんが? こいつらを生かしておくのはミリー、甘いぞ」
「冗談や。ジョークの通じん男やなあ君ら」
「あ、返ってきた。今からそっち向かうって」
「ほな話が早いな」
ミリーが安心していると、由犀という少年が突然喋りだした。
「あ、オビ1さん! すみません! いやこいつらめっちゃ強くてですね……え? スピーカーモードにしろって? はい……はい。分かりました——おい、オビ1さんからの通信。そっちの群体長と話したいとさ」
どうやら由犀君宛にオビ1さんから通信が来ていたようだ。
ミリーと蔵人が辺りを警戒していても、その姿は見えない。
『あー聞こえてるか?』
「サーベラスの長のラノアです。よくあれ生き延びましたね」
『切り札は隠しておくものだろ? まあ……こんな始まって早々使う羽目になるとは思わなかったけどな。……そちらの条件を聞こう。こちらの条件はそちらの3人を無傷で返してもらうことだ」
私は、ミリーへと視線を送った。
「参謀に代わります。彼女が私の代理です。ミリー」
「はいよ。よおオビ1。Verβ以来やな」
『ビリけん……いやミリーか。兄は元気か?』
「ぼちぼちや。さて、ほな条件やけど、もちろんこいつら3人は返す。ただし——」
『ただし?』
オビ1さんにミリーはこう返したのだった。
「このイベント……いや【Day1】だけでいい。同盟を組もう」
ブラ=サガリを駆使したオビ1さんやっぱり生きてた。
なんで生きてんねん! っていうツッコミがありますが、これは、前世イタチ持ちが所有するスキル「ラストファート」が発動した為です。
このスキルは体力が一定量以上ある時に致死量ダメージを受けると、それを無効化しHPを1だけ残った状態にするというスキルで、これで最期のあがきをしても良いし、獣化して逃げても良いのでかなりの強スキルです。オビ1さんは、このスキルを重要視している為、あえて前世をイタチから進化させていないんですね。好きでイタチ耳を付けているわけではない! ただし、リキャスト時間は長い、連続ヒットする攻撃には弱い等のデメリットはあります。




