48話「地下に潜みし者」
「突進!」「突進!」「もういっちょ突進!」
私はスキル【突進】を連打しながら無理矢理ロボ鎧の包囲を抜ける。
自傷ダメージは気にせず、邪魔する奴はノックバック効果で吹き飛ばして道を作ってそこへと身体をねじ込ませる。
というかこのロボ鎧、こんだけ密集したら攻撃もしづらいだろうに……。
「ううー邪魔だああ」
目の前を塞ぐ一体を吹き飛ばして、そのまま全力ダッシュ。幸いこの敵は飛び道具は持っていないのか、背後からは追い掛けてくるだけで攻撃の気配はない。
廊下の先には扉が開け放たれており、その先には階段が見えた。地下と二階へと続く二つの階段がある
「とりあえず上に行こうかな?」
そう思い、扉を潜った瞬間に、またあの糸が切れる感触。
「あっ」
今度は爆発が頭上で起こり、二階へと続く階段が倒壊。
「ああもおお!!」
爆発によって崩れてくる階段を避けるには、一旦戻るか、地下に行くかの二つだ。
背後に迫るロボ鎧の群れに戻る気になれない。
「絶対こっちにミリー達はいないよね!?」
そう言いながらも私は地下へと続く階段の方へと転がるように回避する。
衝撃御と破砕音が鳴り響き、私は階段を転がり落ちた。
その勢いのまま、階段が続いている地下の部屋の壁へと激突。
「あいたたた……うう……なんか酷い目にしかあってない……」
ぶつけた頭をさすって、私は階段の方へと振り返った。階段は倒壊した天井で埋まっており上に戻れそうにない。
「参ったなあ……」
ミリー達がこの地下にいるとは思えない。となると、自力で地上へと戻るしかない。
「……よっしがんばろ!」
私は右手の腕輪に触れてインベントリを表示。ハイポーションを3つほど出して、がぶ飲みする。
色も味もメロンソーダみたいだけど、炭酸はないので飲みやすい。
結構減っていたHPゲージが満タンになったのを確認して、私は改めて武器を握り直した。
「なんだか久々に一人だなあ」
最近はいつもミリーや蔵人さんと行動していたから、工房以外でこうやって一人で歩くのは久しぶりだ。
階段の部屋の扉の先へと進む。
「うわあ……」
私は思わず絶句して立ち止まってしまった。
その先は広い空間になっており、すり鉢状になった洞窟のような場所だった。人工物はところどころで頼りなさげに光を放っているトーチぐらいだ。岩肌がそのまま露出した壁。上を見れば、天井にはつららみたいな鍾乳石が並んでいる。
すり鉢状になった地面は段々になっており、その段や横の壁のいたるところに穴があいている。
段同士にははしごも掛かっており、どうやらそれで上り下りするようだ。
一番下を覗いてみても、底が見えない。かなりの深さがありそうだ。
ただ、私のいる反対側を見ると、同じように部屋があり、微かに階段が見える。
「よし、あそこまで行けば上に戻れるかな?」
とりあえず目標は出来た。さっさとあそこまで行って上に戻ろう。
「あーそうだ、メッセージだけ送っておこ」
私はミリーと蔵人さんに、今地下にいて上に戻る階段がないので別方向から上に戻る事を伝えた。
返信がないところを見ると、二人は今戦闘中かもしれない。
「とにかく急ごう!」
私は下を確認して、飛び降りた。下も段になっていて、向こう側の近くまで続いている。
着地して、どうすればあの反対側までいけるかを模索していると、下から地響きが聞こえてくる。
「……ただの地震……ってわけないよね!」
地響きと共に咆吼。
「キュアアアアア!!」
地下の穴から姿を現したのは、ミミズのような形をした巨大な化物だった。ジャンボジェット機を思わせるほど太い胴体。身体の先は穴の奥まで続いており、長さは分からない。
【穿孔するウィルム】という名前が頭上に表示されている。よく見れば身体は鱗で覆われており、手足も目も無い。
「まさかボス!?」
イベントフィールドにボスいるの!?
その巨大ミミズが顔と思わしきところを宙へと掲げると再び顎を開いて咆吼。口内には上下左右に無数の牙が並んでいる。
その超音波みたいな咆吼によって再び地響きが鳴る。
私は、それが自分の立っている段の横に開いている穴から聞こえてきている事に気付いた。
「やな予感がする!」
私は武器を構えて、バックステップ。した瞬間に、目の前に巨大ミミズを小さくしたような姿のミミズが飛び出してきた。
【クロウリングワーム】という名前の魔獣らしい。
「キュイエエエ!!」
そのワームが甲高い叫び声を上げた。それに呼応するように、そのすり鉢状の地面に開いている穴という穴からそのワームが顔を出して咆吼をあげている。
「ここ、こいつらの巣だったのね……」
なんでそんなやばいところに要塞を立てるんだ! という理不尽な怒りを抑え込み、私は、目の前のワームに斧槍を叩き付けた。
「ギュアアア!!」
怒ったワームがこちらへと口を開けて突進してくる。あれに食べられたくはない!
「邪魔!」
地面を蹴って、飛翔。横の壁を蹴って更に上昇。真下を通り過ぎるワームへと全力で振りかぶった斧槍を叩き付けた。
「ギ……」
ワームがエフェクトを撒き散らし消失、どうやらさほどHPは高くないようだけど……。
また地響きが鳴り、今倒したワームが出現した穴からその震動が伝わってくる。
どうやら、倒してもキリはなさそうだ。私は、そのままその穴を通りすぎて、最短経路であの階段を目指す。
「ボスの相手なんてしてる暇ないの!」
ワーム天国! このDay1のイベントフィールド【所在地不明の古戦場】にはいくつかプチダンジョンがあり、それぞれにボスが配置されています。倒しても倒さなくてもどっちでも良いのですが、倒せば当然高ポイントです。ただし討伐に時間がかかるとかえって効率が悪かったりします。
オビ1さんは当然地下のワームの巣は把握済でしたが、そこにプレイヤーを誘導して殺す為のトラップぐらいにしか思っていません。
それが……まさかあんな事になるなんて……




