44話「所在地不明の古戦場」
「おお……?」
「なんじゃこりゃ」
「これはまた……」
転移した私達の前にあったのは——戦場だった。
ヒュルルルルル……という風を切る音と共に、前に広がる荒れ地に黒い物体が落ち、そして爆炎が上がった。
爆風吹き荒れる荒れ地には、無数の死体が転がっている。それは人であったり獣であったり機械だったりで様々だ。
空を見上げた。
そこに巨大な物体が浮いている。節だった鉄の塊が、昆虫の羽のような薄い翼をはためかせて浮いている姿はゲーム内だと分かってはいても異様に感じる。
まるで龍のようにその巨体をくねらせ、宙を泳ぐその姿にミリーが呆れた声を出した。
「空中戦艦とはまあ……はは、ここの運営はほんま……クレイジーやな!」
「あれは……敵か? まさかあれも狩り対象か」
「さてな。ただのお邪魔オブジェクトかもしれん。墜とせたら……まあ間違いなくポイントは高いやろな」
「とにかくここは離れよう? さっきの爆弾がまた落ちてくるかもしれないし」
「せやな」
私の提案に二人が乗ってくれた。
私達は背後にある、森だったであろう場所を走る。
木々は全て黒焦げで、焼き払われている。
「グギャアアア!!」
上からの咆吼。
「任せろ」
蔵人さんが地面を蹴って、飛翔。
上から襲ってきたのは、猿のような姿の魔獣だった。【バーバリアンモンキー】と表示されたその魔獣は禍々しいほどに反り返った曲刀を装備している。
それを振り下ろしながら落ちてくる猿を蔵人さんは上昇しながらすれ違いざまに切り裂く。
一撃で死んだ猿がエフェクトを撒き散らせながら消失。蔵人さんが着地するのと同時に、視界の端に10ポイント入手との表示が出た。
「他愛もない」
「1匹だけならな!」
ミリーがそう言いながら身構える。
ミリーの視線の先に、猿の群れがこちらへと向かってきているのが見えた。
「頑張るよ!!」
私は斧槍を構えて疾走。対多数なら私の出番だ。
猿の群れと接近した瞬間に私は斧槍を回転しながら薙ぎ払った。自身のダメージは気にせず、とにかく倒す事を意識。
「ピギャアア」
断末魔を挙げる猿達。頭上から迫る奴を蔵人さんが斬る。そこにミリーが突っ込んできて、私が斬りそこねた猿を狩っていく。
「っ! 回避!」
ミリーの声と共に聞こえるのはあの風切音。
私達は全力疾走で、右の方で横向きに倒れている巨木の陰へと飛び込む。
その瞬間に爆音と衝撃波。
「あっぶな!」
「ちんたら留まっての戦闘は危険だ! ここは離れた方がいい!」
「了解!」
大木の陰から飛び出すと、私達はこの黒い森の先に見えるボロボロに崩れた何かの建物跡へと走る。
「多分要塞ちゃうかな! 誰がおるか分からんけど、ここで爆死よりはマシや!」
「行こう!」
進んでいる最中で、前方の土が盛り上がる。
「gyリュアaアrア!!」
ノイズのような声を撒き散らしながら地面から現れたのは、骨のドラゴンだった。
ただし、その骨は鉄で出来ているしボルト止めされた顎、目には無機質なガラス玉が嵌められている。
【スチールフレームドラゴン(Broken)】という名前の通り下半身が千切られたかのように損壊していて、今にも壊れそうだけど……それでも私達に敵意を剥き出しで襲いかかってきた。
「邪魔やな!」
「俺に任せてくれ」
「やったれ!」
私とミリーが左右に分かれて、蔵人さんが鉄骨ドラゴンへとまっすぐに突っ込む。
「斬鉄か……」
蔵人さんが笑いながら、刀を鞘に収めた状態で手を柄へと滑らせた。
「gyaガガguギャア!」
上半身だけの鉄骨ドラゴンが右前脚を蔵人さんに向けて振り下ろす。
「鉄を斬るのは——経験済だ!」
身体を沈めた蔵人さんが腰を捻る。まだ、刀は抜いていない。
「天古流居合術白ノ型……“魂魄流転”!」
蔵人さんが捻った腰を一気に解放した。銀閃が走り、鉄骨ドラゴンの右前脚が切り飛ばされる。
だけど、それで蔵人さんの動きは終わらない。
「“斬心”——」
刃がまるで逆再生のように鞘へと収まり、蔵人さんが地面を蹴って弾丸のように鉄骨ドラゴンの顔へと飛翔。
「——“鴉裂”!」
そのまま、黒い翼で飛翔しながら、更に居合の一閃。
鉄骨ドラゴンの首が切断されて、そのままHPゲージが消え、消失。
「今ので1200ポイントか。中々だな」
蔵人さんが地面に降りると同時に遠くで、何かを撃つ音が聞こえた。
「走るで!」
またあの風切り音! そして一拍おいて後ろで起こる爆発。
「全くなんちゅうイベントや!」
ミリーの叫びはまさに私達の心の代弁だった。
これは……思ったよりも大変そうかも。
私は近付いてきたその要塞の壁に真っ赤なペンキで落書きがしてあるのが見えた。
そこにはこう書かれていた。
【Welcome to Unlocated HELL!!】
BGM♪〜東方鬼形獣四面道中【アンロケイテッドヘル】
ステージギミックが鬼畜なゲームは好きですか?
私はだーいすきです。




