27話「1・2・3」
「っ!!」
「は? 何言うてんのラノア」
私の言葉に目を丸くする、蔵人さん。
そう、あの突き、どこかで見たことがあると思った。あれは、Verβでの最後の戦いで、あの巨猿が放ってきた突きと一緒だった。
「なんで俺のVerβのHNを。誰にも言ってないし、姿も違うのに」
「あはは〜私結構記憶力良い方なんだ」
「……偶然にしては出来すぎやな。とはいえ、はは、おもろ! ランカー三人が揃い踏みか!」
「うん、なんかね、縁を感じてる」
「まさか……え? 【アキコ】と【ビリけん】……か?」
「私がアキコで」
「あたしがビリけんや」
目を見開いたまま、蔵人さんの視線が私とミリーの間を何往復もした。
「え、お前ら……女だったの?」
「あたしは半分以上はお兄ちゃんがやってたけど」
「私はまんま本名だったよ?」
「そうなのか……まさか年下の女子二人だったとは……やべえ俺かっこ悪い」
顔に手を当てる蔵人さん。やっぱりこうやって話してみると、悪い人じゃない。
「ねえミリー」
「あたしは賛成だ」
私が言わんとすることを理解してくれたミリー。流石相棒!
「あの、蔵人さん。その刀やっぱり上げる。何ならもっと良いのも作る」
「は? いやしかし」
「その代わりに——私達の【群体】に入らない? まあまだ作ってないので、作ってからになるけど」
私はそう言って、手を差し出した。隣でミリーがウンウンと頷いている。
「いいのか? 俺は確かに戦闘には自信はあるが、こういうゲームは慣れてない。Verβは単純だったから良かったが、ちょっとこれは複雑すぎて。ダンジョン間違える奴だぞ?」
「大丈夫私も分かってないし!」
「頼れるのはあたしだけかあ」
あちゃあと言った感じでリアクションするミリー。
「だって——上位ランカー三人が、【群体】組むなんて最高に最高じゃない!?」
私の言葉に、ミリーがにやりと笑った。
蔵人さんも、口角を上げた。
「ははっ! 確かに……確かに最高だ! 分かった、どうせ行く当てもない。【SEFIROSU】改め、蔵人だ。よろしく頼む」
「私は、アキコ改めラノア! 前世はスピちゃん!」
「あたしはミリー。前世はまだサーベルタイガーちゃうけど、いずれそうする」
「ああ、そうか。俺は前々世に変えたから、前世も猿から鳥に変わった。鴉だな」
そう言って、蔵人さんくるりと回って背中を見せた。そこには小さな黒い翼が生えている。
「なんか羽ちっちゃいね」
「まだ強化前だからな。もう少し大きくなれば一定時間は飛べるようになる……そうなったらもっと俺は強くなれる」
「よーしじゃあ、三人で、鉱山を解放しよう!」
「おっけー」
「なら、この刀は一旦借りておく」
こうして私達元ランカーPBの三人がパーティを組んだのだった。
目指すはダンジョン最奥。
☆☆☆
暗い部屋の中。
一人の女性が、椅子に座りながら目の前のウィンドウに流れるチャットを見つめていた。
【群体:暴王】
『チャットスペース』
『ああああああああああああ』
『やばい! 第三ライン突破された!』
『勝てるかあんなん!』
『落ち着けお前ら、どうなってる!?」
『ついに有力【群体】が徒党を組んだか?』
『何やってんだお前ら! たった三人じゃねえか!』
『ソロの侍みてえな奴一人じゃなかったのか?』
『仲間がいた! 一人はあのミリーだ。くそ、装備を新調してやがる』
『いや、あれ、ミスリル製より強くない?』
『まさか、違う採掘場所が見付かった?』
『いや、ネット検索しても出ない』
『ミスリル防具が紙みたいに千切られていくんだが』
『俺、抜けるわ』
『アキコさんはインしてないのか?」
『おい、幹部は何してんだよ!』
騒がしいチャットを見つめていて、女が顔を歪ませた。
「来た……来た! やっときた……もういないと思ってたけど……あはは……ああ……きっと【アキコ】に違いない……」
女がブツブツと呟きながら、チャット画面に文字を打ち込んでいく。
『全員傾聴』
『アキコさんだ!』
『アキコさんやばいっす! 俺らじゃ勝てないっす!』
『ヒラタケさんとかビッグさんとか何してるんすか!』
『ああ第二ラインが……』
『全員——死ぬまで戦え……客人を盛大にもてなせ……それが我ら暴王の流儀だ』
『イエスマム!』
『イエスマム!』
『イエスマム!』
「あはは……まだ……まだまだ……もっと……もっともっと力がないと……」
女はいつまでもいつまでもその歪んだ笑いを浮かべていた。
新しい仲間が加わった! こういう瞬間を書くのが一番好きです。




