26話「狂瀾怒濤」
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「——下がってろ」
そう言いながら、蔵人さんが刀を抜いた。
「へ? 自分何言うて——」
ミリーが聞き返そうとした時には蔵人さんが疾走。
「ああ? 尻尾巻いて逃げたくせに、仲間が来たら強気かてめえ!」
「おいよく見れば、後ろの二人可愛いぜ」
「ひゃっはあいじめるぜええ」
【暴王】のメンバーが三人、小物臭いセリフを吐きながら武器を構えたけど——遅い。
「スキル使うまでもないな」
蔵人さんの刀が翻る。
「……凄い」
その動きは、速いとか、鋭いとか、そういうのじゃなくて……綺麗だった。
人はあそこまで美しく動けるのかと、私はただただ感じていた。
蔵人さんの刀が銀の線を描き、左に立つ男の胴を切り飛ばした。そのまま返す刀で、正面を薙ぎ払う。
「こいつさっきと動きが全然違……ぐは」
「武器が壊れる心配がないと——楽だな」
正面の男のHPゲージが削れ、エフェクトを散らしながら消失。
「くっそおおおおお」
最後の男が、がむしゃらに攻撃すると見せかけて、バックステップ。
「疾っ!」
それを追うように風すらもえぐるような突きを放つ蔵人さん。
「見え見えだ!」
それを予期していたのか横に躱す男。
「見え見え? 馬鹿が……突きってのは横薙ぎに派生するんだぜ?」
っ! あの動き!
蔵人さんの突きがそのまま男が避けた方へと払われた。男はとっさに持っている剣でガードするが、
「うそ……だろ」
おそらくミスリルで出来ているであろうその剣が、真っ二つに切れた。そのまま驚愕する男の顔が半分に切断された。
そのまま男は消失。
あっという間だった。
「……あれ、AIアシスト使こてないな」
私と同じく蔵人さんの戦いを見ていたミリーがぽつりと呟いた。
「AIアシスト?」
「そうや。当たり前やけど、あたしらは剣やら斧やら爪やらを振ったことなんてないやろ? だからゲーム内ではAIが動きをアシストしてくれてるんや」
「あー確かに、斧なんて初めて触ったのになんとなく身体が動く」
「便利な機能なんやけど……弊害もあってな。あくまでAIがやってるから、臨機応変さはないんよ。例えば、敵が三人いたとして、一人の動きに合わせて攻撃することを出来ても、三人全員の動きを把握して動くことは出来ない」
なるほど、1対1なら上手い具合に働くけど、対複数となると確かにぎこちなさを私は感じていた。あーそっちから攻撃が来てるのに反応できない! ってことはよくあった。
「せやから、AIアシストをオプションで切ってしまうプレイヤーもいるんや。あたしはそうしてる」
「そうなんだ!」
「その代わり、全部自分で動かせなあかんのやけど……あの蔵人って人も一緒や。刀なんて扱い難しいもんをあっこまで動かせるなんて……なにもんだろ」
刀を鞘に納めた蔵人さんがこちらへと歩み寄ってきた。
「刀……助かった。これは、一体どこで手に入れた? ミスリル製の武具が斬れたぞ?」
「あー私が作……んん!」
「まあそれは秘密や」
私は言葉の途中でミリーに口を塞がれた。
「いや、そうだな。俺だってこんなもん手に入れたら人には話さない。だから……返す」
蔵人さんがそう言って刀を差しだしてきた。
「え? いやそれは武器を壊したお詫びで……」
「折れたのはただの脇差しだ。それだと釣り合わないだろ」
蔵人さんが険しい表情のまま刀を突き出している。
「あーあのさ、蔵人……さん、自分、一人でここを攻略しようとしてたん?」
「ああ。ずっとソロでやってる。ここのストーリークエストクリアすると【群体】? が作れるらしいから来たんだが……ちょっと難しいな。まさかPKしてくるプレイヤーがこんなにいるとは思わなかった」
「はい?」
蔵人さんはいたって真面目な顔でミリーの質問に答えた。え? ストーリークエスト?
「あーもしかして、ダンジョン間違えてない? ここはフリーダンジョンやからここをクリアしてもストーリーは進まんと思うけど」
「……まじで?」
あ、今、蔵人さんの素が少し出た。この人、見た目は武士! って感じだけど中身は案外普通の人かも。
何より、あの動き。ミリーは気付いているかな?
「うん、このダンジョンの奥ではミスリルが取れるんだけどそこを【暴王】が占領してて、みんな困ってるんだって。だから私達は、ここを解放させようとして来たんだけど」
「ストーリークエストのダンジョンはこの山の裏側の方やで?」
「……俺……めっちゃ馬鹿みたいじゃないか」
若干落ち込んでる蔵人さん。
うん、悪い人じゃなさそうだし……何より、偶然とはいえ、三人が揃った。
「あの、実は提案があるんですよ蔵人さん——いえ【SEFIROSU】さん」
な、なんだってー!?()




