22話「装備を変えました」
「ちょっと確認したいんやけど」
マイホームで、武器防具をどうするかミリーと話していると、彼女が突然そんな事を言いだした。
「ラノアは、この拠点で、二週間毎日ずっと生産してたんやんな?」
「そうだよ〜。ゲーム内時間と現実の時間の差を考えると……この拠点に二ヶ月ぐらいいた計算になるかな」
そう、VRゲームには特長があって、ゲーム内時間の方が流れが速いのだ。現実では1時間でもゲーム内では数倍の時間が過ぎている。
「二ヶ月……そりゃあどのスキルもマックスのlv5になるわけだ……」
【鍛冶】や【武器職人】【防具職人】についてミリーが調べた結果、スキル自体はさほど珍しくないというか誰でも取れる。実際私も簡単に取れた。
「ただ……出来る武器や防具の性能が、スキルレベルと制作者のステータス依存なんよ」
「ステータス?」
「そう。だから本来ならレベル1のラノアじゃいくらスキルレベルを上げてもこんなに高性能な武器や防具では作れないのだけど……はあ……スピノサウルスって本当にチート」
ミリー曰く、スピノサウルスは【スタートダッシュ型】と呼ばれる前世らしく、最初から高ステータスだが伸びが悪く最終的には抜かれてしまうタイプ、らしい。
なので、今のところサービス終了の予定がないVerAではVerβほどのチート感はないらしいのだけど……。
「リリース当初は当然他のプレイヤーよりも強い……既に二週間経ってるからステータスの差は埋まりつつあるんやけど……まさか、それを生産職に使うとはなあ」
「んーなんか私やっちゃいました?」
「いや、多分運営サイドもここまで予想してなかったと思う……」
ステータスとスキルレベルで性能が決まる、プレイヤー製の武器防具。
どちらかが低ければ当然性能は下がるのだけど——私はスピちゃんの高ステータス補正のおかげでレベル1でもそれなりのステータスがあって、ストーリークエストも進めずひたすら生産をしていたせいで、スキルレベルも上がった。
もちろん、そもそも素材が一定時間で沸く上に生産できるツールがあるマイホームを初期段階で手に入れられたというのも大きい。
「まあそういう偶然というかなんというか……そんなんの積み重ねで、こうなったわけね」
「あはは〜」
「普通のプレイヤーはストーリー進めて、拠点を手に入れても、多分そこまでしないんやないかな。その時点でのステータスで作れる物もたかが知れてるし。そこから二週間かけてスキルレベルカンストさせたら、今度はレベルも置いていかれるし前世の強化もできない。そもそもこういうゲームって生産職ってのは極める人が少ないから貴重なんやけどな」
「そうなの? えへへ〜私生産職頑張って極めるね!」
「ほんま……味方やと頼もしいな……」
こうして私とミリーは装備を新調して、試し切りに出かけたのだった。
☆☆☆
「ラノア、そっち行ったよー」
「おっけー、おりゃああ」
「ナイス〜」
私とミリーの和やかな会話。
それと共に散っていく、プレイヤー達。全員が、ミスリル程度のしょぼい素材を使った装備しかしておらず、名前の後ろに、【群体】所属の証である群体名が付いている。
今倒した全員が、【暴王】という群体名を付けていた。
「っ!! お前ら! ふざけんな! なんだその武器! 有り得ないだろ!? こっちは最新のミスリル製だぞ!」
最後の一人がそう叫びながら逃げようとしていた。
「はいはい、ミスリルミスリルすごいすごい、ほな殺すで?」
「うわあああああ」
逃げるそのプレイヤーは背中にコウモリみたいな羽が生えている。飛ばれたら厄介だ。
と思った瞬間にそいつは弓を構えながら空へと飛翔。
「ミリー!」
「いつでもおっけー!」
私が、自分よりも大きい闇色の大戦斧を地面に置くと、ミリーがジャンプしてその刃の上に音も無く着地。
「とおりゃああ!」
私が思いっきり大戦斧を振り上げると、その勢いでミリーが空へと舞った。
「うそだろ……?」
目の前に迫るミリーに愕然とするプレイヤー。
「ほな!」
ミリーの腕に装着された黒い金属で出来た爪がプレイヤーの首の前で交差された。
「うぎゃああ」
エフェクトを散らしながら、プレイヤーが消失。
「いやあ、快適快適。装備とバフ整えるだけで楽勝や」
そう言いながらストンと着地するミリー。
その格好も前と変わっている。関節や胸の部分は金属で覆われているが、相変わらずおへそは出てるし、動きやすさ重視の下半身も金属板を張ったミニスカートにスパッツだ。靴には、軽いミスリルと重いアダマンタイトを混合させた物を使用している。
私の持っていた金属と、フィールドで狩った魔獣の毛皮を合わせて防具を作成できるようになったのだ。武器ほどのスキルレベルはないので、比べるとさほど数値は高くないけど、それでも初期装備よりはずっとマシだ。
ちなみに私はと言うと、金属と魔獣の毛皮を合わせた軽鎧で、ミリーほど露出はしていないものの、太ももなんかは露わになっていて若干恥ずかしい。
本当は全部隠したかったけど、ミリーが可愛くないから駄目だって……。
ミリーは軽装で瞬発力と人型に対する特攻による攻撃力でヒットアンドアウェイ。私は、スピちゃん補正の高いステータスと高火力武器でゴリ押しスタイル。
更に二人とも料理によるバフを掛けているせいで、2時間の間、
・HPを常に微量回復
・攻撃力を上昇(中)
・防御力を上昇(中)
・ラックを上昇(大)
・素早さを上昇(中)
が常時発動している。ミリーがこれを知った時、チートや……ってぼやいていた。
ちなみにラックというのはどうやら隠しステータスのようで、色んな物に関わってくる、らしい。
これについては、ゲーム内で詳しい説明がないので、私もミリーもどういう効果があるかイマイチ分からなかった。
「ラック……つまり運やから普通やと急所率がアップとか、レア素材のドロップ率が上がるとかやけど……このゲームやしなあ」
ゲーマーなミリーでも分からないなら私にも分からない。
「ところで、ラノア、ちょっと相談があるんよ」
ミリーの声と眼差しには真剣さが含まれていた。
RPGで一番楽しい時間は、苦労して作った新装備で試し切りする時だと勝手に思っています




