21話「アキコ」
ミリーのまっすぐな視線。
ぎゃああああやっぱり私が【アキコ】だってバレてるぅぅぅ!!
「あたしね、このゲームを始めたのはね【アキコ】のおかげなん」
「私?」
柔らかい笑みを浮かべながらミリーが語る。
「そう。最初のきっかけは、動画。【アキコ】がさ、もう気持ち良いぐらい暴れててさ、あたしもやりたいなあって思って、お兄ちゃんのアカウントで無理矢理やったんよ。そんで覚えてる? あの最後の戦い。あのサーベルタイガー動かしてん、あたしやってん。あれがさ、あたし忘れられなくてさ。すっごく楽しかった。負けちゃってめちゃくちゃ悔しかった。だから、このVerAでは絶対に、リベンジするって決めてた」
私だって覚えてる。あの戦いは楽しかった。途中からみんなごちゃ混ぜになってお祭りみたいだった。
そっか、さっきランキング二位って言ってたから、ミリーはあの【ビリけん】だったんだね。
「あたし、ログインしてからずっと拠点の近くで【アキコ】を探してた。絶対にいるはずだった。だけど、いなかった。名前だけだと分からないから、いきなり襲いかかってさ。でもほとんどの人が弱かったし、そもそも【アキコ】じゃなかった。中には強い人もいたし負けた。【アキコ】って名前の明らかな偽物もいた」
「うん、まあその頃、私はここでずっと生産してたしそもそももう【アキコ】って名前はやめたしね。え? 偽物?」
そんな物好きがいるの?
「一週間ほど前かな、あたしはある女性を見付けたんだ。あたしはピンと来たんよ。この人だって。その人は堂々と【アキコ】っていう名前でやってて、ラノアみたいな恐竜の尻尾が生えてた。何より、凄く強かった」
え? あたしと同じ尻尾で【アキコ】?
「だけどね、なんか違ったの。あのVerβの【アキコ】となんか違うなあって思ってたんよ。でも、やっぱりあの時と同じで勝てなかった。対プレイヤーなら負ける気しなかったあたしが完膚なきに負けた。だから悔しくて、いっぱいプレイヤーを倒した」
ミリーが下を向いたまま語る。
「だけど、最近は勝てへんくなったん。だってみんなストーリー進めて装備を強くしてるし、前世も強化してる。プレイヤースキルだけじゃ限界やって気付いた。だから、今日ラノアが誘ってくれなかったらきっと、あたしから誘ってたと思う」
ミリーが顔を上げた。なぜかその大きな瞳には涙が溜まっていた。
「だけど、今分かった。ラノアに会って分かった。あいつは偽物や! あの【アキコ】は偽物! だって前世スピノサウルスのラノアと確かに尻尾は似ているけど——ヒレがなかったもん! やのにあたし勝てへんかった。偽物にも勝てへん、それが悔しくて……もう負けないって決めてたのに」
あースピノサウルスと言えばヒレだからねえ。ミリーはどうやらよっぽど負けた事が悔しいみたいだ。
「その【偽アキコ】やけど、まるで自分がVerβの【アキコ】やったかのように言いふらして、今仲間を集めててな。最近はそいつらがいつも拠点の周りを張っていて、あたしを見付けるとすぐ寄ってたかって倒しにくるんよ。最近は拠点からも出られなくなって困ってた……」
自警団を自称して、プレイヤーを襲うプレイヤーを、倒す(PKK? って言うらしい)行為を集団でしてまわっているらしい。
それに目を付けられてミリーはそいつらにいじめられてようだ。
「ひどい……」
「まああたしも関係ないプレイヤーいっぱい襲ってたから……なんかね、ストーリー進めると、【群体】っていう要素が解放されて、クランを結成できるようになるの」
れぎおん、くらん。なんだろ?
「……なんか未だにラノアが【アキコ】だって信じられない……こんなぽわぽわ系女子があのスピノサウルスだなんて」
「ぽわぽわ……」
「まあ簡単に言えばチーム。パーティは4人までなんだけど、この【群体】は100人まで所属できるの。【群体】対抗のイベントもアナウンスされてるし、どこかに入れて貰わないと……参加できない」
「イベント!」
ミリーが目をゴシゴシと拭いた。
「【偽アキコ】も【群体】を結成してる。そして次のイベントのランキングで再び一位を狙ってるって宣言してるんよ」
「ランキングあるの!?」
私はガバッと食い付いた。そう、このVerA、前と違いランキングがないのだ。そのせいでなんかイマイチやる気というか、攻略する気力というか、そういうのが出て来なかった。
「ラノア、目、輝いてるで?」
「ランキングは一位取りたい!」
「でしょ? あたしはあの【偽アキコ】を【群体】ごとぶっ倒して、ラノアが真の【アキコ】だって証明したい!」
えーいや、それはちょっと。
でも、私の名を騙って、そんな弱い者いじめしている人がいるなら嫌だなあ……。
「私が【アキコ】っていうのはほら、ともかく……目的は一致したね」
「うん! というかこの場所さえあれば、武器作り放題やろ?」
「そだよー。あとバフ効果かかる料理とか、アイテムもいっぱいあるよ?」
「あはは! やっぱりラノアは【アキコ】だ。あたし達とやってることの次元が違うや」
「それ褒めてる?」
「あんまり!」
「こらー!」
ぴゅーんと逃げるミリーを私は追い掛けた。
まあ、何にせよ、ずっと引き籠もってた生活は終わりだ。
ランキングがあるイベントが始まるまでに、レベル上げとストーリーを進めて——仲間集めだ!
私は目指せランキング一位。
ミリーは打倒【偽アキコ】。
それぞれの目標に向けて私とミリーの冒険が、リリース二週間目にしてようやく——始まるのだった。
☆☆☆
【アキコ厨】前々前世オンライン【消えろ】 Part756
167 名前:前世は負け犬
アキコ厨まじ空気読めよ
採掘場占領とかまじでイミフ
ミスリルないと上位武器作れねえ
168 名前:前世は負け犬
>>167
別に全部を占領してるわけじゃねえだろカス
169 名前:前世は負け犬
VerAから始めたけど、そのアキコってそんな有名なプレイヤーなん?
170 名前:前世は負け犬
>>169
神。今回も相変わらず強いし、めちゃくちゃカリスマある事が分かった
171 名前:前世は負け犬
>>170
信者消えろよ
つうかあれ絶対偽物だろ
前世スピノサウルスじゃない時点で違うやん
172 名前:前世は負け犬
前世スピノサウルスとかいう雑魚より強いんだよなあ
173 名前:前世は負け犬
このスレアキコの群体メンバー大杉
しかし群体対抗イベとかこのままだとアキコ一強で盛り上がらん
174名前:前世は負け犬
信者はマジで別スレ立ててそっちでやれ
175 名前:神聖猫姫天使@前世やってます
ミリーたん最近露骨に攻撃されてて可哀想……にゃん
あの子未だにレベル上げてなさそうだし
そろそろワイちゃんが助けにいったるかにゃん
176 名前:前世は負け犬
>>175
おっさん座ってろ
しかしなんか……βと違ってあんまり楽しくねえな
アキコもなんか変わったし
クラン要素の弊害か……
…………
ミリーは負けず嫌い。ここから二人の旅が始まります!




