19話「ラノアちゃん正気に戻る」
2020/04/03
ミリーのセリフを一部修正しました
「どう? 【前世】は?」
田辺社長がそう私に聞いてきて、私は驚いていないふりをして、答えた。
「た、楽しんでますよ!」
「ならいいの。なんか、とっても活躍しているみたいね。鈴木さんはなぜか首を捻っていたけど」
ちなみに、【前世】とは前々前世オンラインの略語で、社内で【前世】と言えばこのゲームを差す。
えーっとしかし、活躍? したっけな……?
私は、初日にログインしてあのマイホームを手に入れて以来、ずっとあそこで生産に勤しんでいた。
いや、言い訳をするわけじゃないけど、どうしても一時間経つとそれぞれの採取ポイントが復活するのが分かってるから、一時間以上放置しておくのが勿体なくて……。
要するに、私は生産沼にハマってしまったのだ。
おかげで素材アイテムはそれこそ山のようにある。スキルレベルも上がったし、料理もかなりの数を作れるようになった上に、あの便利鍋を使わず手動で作ると更に効果が上がるという技を見付けてしまった。
ふふふ……もはや私は採取マスター、料理マスターだ。
午前の業務が終わり、お昼休憩を挟んで私は会社にあるプレイルームへと移動。
早速ゲームをスタートする。
目の前に、いつものマイホームの光景が広がる。スタート地点をここにしたせいで、わざわざあの拠点にいく事はなかった。
んー。ストーリークエスト、いい加減進めないとかなあ?
ピロンという通知音と共に、メッセージ。
おー【ミリー】からだ。
『やっほーラノア。今日は学校休みだからインしてるよ〜』
ミリーからログインしていると良くメッセージが飛んできた。
私はミリーを一度ここに招待しようかな? と思ったけど、プレイヤー狩りが楽しいらしく誘いづらかった。
Verβの時の醍醐味は何かと聞かれて、プレイヤー狩りと答えてから、より一層ミリーはそれに精を出すようになった。
ラノアは何やってるの〜って聞かれても、色々としか答えなかった。ストーリークエストはやってないと言った時は、『一緒やね〜。ストーリーやるときは一緒にやろう』、と約束をしていたのを思い出した。
「そろそろストーリークエストやるかなあ」
流石にここに引き籠もってるってバレたら怒られそうだ。鈴木さんは分かってる? っぽいけど。
私はミリーへとメッセージを送った。
『そろそろストーリークエストやろうと思うけど、一緒にどう?』
よし、送信。
さて、返事待ちまでの間に持って行くアイテムと武器を選ぶかな。
バフは何をかけようかな〜
なんて思っているとすぐに、すぐにミリーから通信がかかってきた。
目の前に半透明のミリーが映る。ミリーはあの白いワンピースではなく、まだら模様の獣の皮で出来た腰巻きと、同じ素材で胸を巻いただけの姿だった。両手には、これまた獣の手のような小手を装備していた。
いや、ちょっと露出多くない!?
「やっほーミリー久しぶり!」
「ラノアひさしぶり! あれ? ラノア、初期装備?」
「え? あーうん。他持ってないし」
「そうなん? まあいいやそしたらリズナの掲示板前集合にする?」
「いいよー」
「じゃあ今から飛ぶね」
通信が切れる。私もウィンドウを開く。こないだ初めて気付いたのだけど、どうやらこのウィンドウから行ったことのある場所は飛べるようだ。
といっても私は二カ所しかないんだけど。
私は、【リズナ:中央広場】をタップする。
すると、ヒュンという音と共に転移。気付けば目の前にはあの広場があった。
「おーなんだか懐かしい」
見ると、歩いている人達の様子もがらっと変わっている。
みんななんだか強そうな防具を装備しているし、武器もなんだかゴツかったり装飾が付いていたりと派手になっている。
「おーいラノア」
ブンブン手を振っているのはミリーだった。
「ひさしぶり〜」
「おひさ! そういえばなんで初期装備のままなん? 縛りプレイ?」
「え、縛り? 何ソレ?」
「え?」
私達は二人してキョトンとしていた。
あーそういえば武器変えてなかったから、最初にもらった斧槍のままだ。
「変え忘れ? かな?」
「あーなるほど」
「それよりミリーちゃん……なんかワイルドになったね」
さらしと腰巻きだけの姿のミリーちゃんは元々の可愛さと相まってなんかこう……えっちだ!
「これが動きやすいんよね。ストーリー進めてないから店売りもないし、これ自分で作ったんよ」
「すごい! 私はまだ武器しか作ってないや〜」
「へ? 武器?」
「うん。防具は布とか毛皮いるから作れなかった」
ミリーが首を傾げた。あれ、私なんか変な事言った?
「武器って作ったの? ストーリークエスト進めてないのに?」
「マイホームで作れるよ? 鍛冶スキルいるけど」
「……マイホーム?」
「あ! 武器変えたいし一度マイホーム行こうよ! ミリーを一度招待したかったから!」
「おっけ! でどやっていくの?」
「えっと、どうだったっけ」
確か、【箱庭の鍵】を取り出して、何処でもいいから適当に刺すとそこが扉になって、マイホームに転移、されるだっけ。これ、ミリーも一緒にいけるのかな?
「とりあえずパーティ組もっか」
ミリーがそう言うと、ピロンという通知音と共に、
『ミリーからパーティへと招待されました』
という表示が出たので、はいをタッチ。
おお〜、自分のHPゲージの左下にミリーの名前とHPゲージが表示された。
「よっしじゃあパーティも組めたし、そのマイホーム? に連れていって!」
「うん、ええっとこうやって」
私が広場のにある民家の壁に鍵をさすと、そこが一瞬で扉へと変わった。
「え? なにそれ?」
「いいからいいから!」
私はその扉を開けると、ミリーの手を取って中へと入った。
生産職に実は適性があった主人公。MMOとかでも生産職極められる人は尊敬する……




