表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

定番で改革

 炭焼きで成功したなら、次は料理だ。


 俺は単純に、そう決めた。


 同じモノにこだわる必要は、全くない。

 むしろ、各分野に喧嘩を売って、スキル至上主義がどれほどツマラナイことかを示してやりたい。


 スキル至上主義は明らかに、この世界の発展を(むしば)んでいるのだから。



「「「「先生……これ何すかぁ?」」」」


 仲間たちが気味悪そうに覗くボウルの中身は、卵の黄身とレモン汁、オリーブ油、酢、そして少量の塩とハーブの混合物…… すなわち。


「まぁ、くってみろ」


「「……!」」 「「う……!」」 「うめぇっす!!」


 マヨネーズ、である。



 さらに。


「「「「先生……こ、これは……っ!?」」」」


「まぁ、くってみろ」


「「……!」」 「「う……!」」 「うめぇぇぇぇ!!」


 味噌と、その上澄みから作り出した、醤油の原型、とでもいうべきもの。


 最初に 「なんすかソレ!?」 と気持ち悪そうに聞かれつつ麹作りから始め、完成までに実に1年近くがかかったが、やはり、この味は何にも変えがたい。



 ちなみに、味噌と醤油を完成させるまでの間に、前世の記憶と知識を頼りに、 『料理革命』 とでも呼ぶべき数々の発明も、行っている。



 海から昆布に似た海藻をとってきてダシにしたり。


 肉を保存のきくソーセージやハムに加工してみたり。

 冬の寒波を利用した氷室を建て、熟成肉だって作ってやった。

(これは瞬く間に貴族御用達となった。)


 そして、この度の味噌と醤油の発明である。



「先生……っ!」 「うめぇっす……!」 「天才す……っ!」


「「「「「一生ついていきます……っ!」」」」」



 こうして俺と仲間たちは、稀代の名料理人となった。

 レストランは毎日大儲けである。


 弟子になりたい、とやってくる料理人も後を絶たない…… が。



「え……」 スキルなし、と聞くと、誰もが引き、侮蔑の眼差しを投げ掛けた。


「どんなズルをした?」 と尋ねられ、ひどいときには 「詐欺師」 と罵られる。


 スキル至上主義の闇は、深い。


 結局、誰1人として弟子にはならなかった。


 それどころか、 『料理スキル』 持ちたちはこぞって、俺と仲間の悪口を言うようになった。


 ……しかし、 『インチキ』 と言われたところで料理の味が落ちるワケはもちろん無く、HLF(ハルフ)の料理店は相変わらず大盛況だった。……




 放火されて、全て焼け落ちるまでは。



 …… またしても、か。 ……


 呆然と佇む俺の肩を、ぽん、と叩く者がいた。アマンダだ。


 彼女はニヤリと笑って、こう聞いてきたのだった。



「先生。次は、何にする?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ