ギルド試験
「……なぜ、だ……っ!」
俺の目の前で膝を折り、呻いているのは、剣スキルレベル30のイケメン冒険者。
武術系スキル皆無の俺を、あからさまに舐めてかかってきたのだが…… 結果は、ご覧の通りだ。
上段から振り下ろされた剣を見切ってかわし、間合いに踏みこんで股間を膝蹴り。
一撃で、沈めた。
やることがえげつないと言われそうだが、こっちはスキルゼロのせいで鍛えても筋力のつきにくい子供。
翻って、相手はスキル持ちのイケメンである。
これくらいは、神が許さなくても全世界のフツメンが許すと思う。
「ふっ……」 俺は剣士の前で大見得を切った。
きっとクール美女な受付嬢も、見直してくれていることだろう。
「甘いんだよ……お前の攻撃は。
どんなに早くても、力強くても、全て見切れるし、避けられるぜ!」
そう。この世界では、スキルが全て。
しかし、スキルに頼り切った動きには、工夫もなければ個性もない。
予想通りの場所に正確無比にやってくる攻撃を躱し、相手が予想できないような反撃を加えるのは、さして難しいことではなかったのだ。
……こうして俺は、ギルドの先輩5名を、瞬く間に沈めていった。
「合格……です……」
受付嬢の呆然とした通知を聞きながら、俺は、これまで 『武術系スキル』 で俺を苛めてくれた近所の悪童どもに、密かに感謝したのだった。