国とのつながり
大変お待たせして申し訳ございませんでした!
先日もう一作の方を徹夜で書いたのにポイントが伸びないという出来事がありまして、心身ともに大分参っていたのです……。もう少し体に気を遣った方が良いですね……。
「あのぉ、ローレンツさんでしたっけ? なんであなたがギガースを倒した事になってるんです?」
「ん? 君は先ほどのインチキ商人じゃないか。どこへ行ったかと思えば、聖剣がギガースを倒すところを見ていなかったのかい?」
インチキ勇者にインチキ商人と言われても、全く心が痛くないもんなんだな。
俺は新たな気付きを得ながらも、言い聞かせるように言った。
「それを言ったら、あなたこそ空飛ぶ少女と影に入る少女がギガースと戦っていたところを見てたでしょう? 別に手柄の横取りは攻めませんから、せめて素材は半分とか回収して良いでしょうか?」
「そうまでして施しが欲しいのか……。君には恥というものがないのかい?」
「あ、こいつガチでダメな奴にゃわん。これがちょっと不快くらいで済んでるとか、変な奴に会い過ぎで感覚がおかしくなってるにゃわんよライア……」
俺と一緒に自称勇者に会ったレオナは、完全に顔を顰めていた。いや、確かに今のはヤバかったと思うけど……。
「ふっ。そんなに言うなら、街の人にも聞いてみるといい。誰が見てもあの巨人は聖剣の力で倒れたと言う筈だ……」
「どこからその自信が来るんだよ……。分かりました、じゃあちょっと聞いてみますよ!」
俺はイライラするのを必死にこらえながらそう答え、近くにいる女性に聞いてみ
た。
さっきから騒動を眺めていた人だったので一部始終を見ている筈だ。さっさと答えをもらって自称勇者に納得してもらおう、と思っていたが……。
「は、はいぃ……。あの巨人は、聖剣によって倒されたと思いますぅ……」
なんと俺が聞いた相手は、汗を垂らしながらも首を横に振ったのである!
俺が驚きに目を見張っていると、後ろからドヤ顔のローレンツが近づいてきた。
「言っただろう? ギガースを倒したのは僕なのさ。あまり難癖をつけてくるようだと、衛兵のお世話になってしまうよ?」
「嘘だろ……!?」
この人が見逃していた、というにはフィラ達の動きは派手すぎた。それに他の人に聞いても、巨人は勇者によって討ち取られたという答えしか帰ってこなかった。
これは流石に、おかしい。俺は訳が分からなくなりながらも、これ以上は衛兵を呼ばれるという脅しが効いて何も言えなくなった。
「ははは、衛兵の権力に屈するようでは、まるで自分から後ろめたい事がありますと言ってるようなものじゃあないか」
「あ、ローレンツ様! 良いところに! 先ほど国の方より命令があり、至急このクエストに迎えとの事です」
「ば、馬鹿っ! よりによってこんなタイミングで伝言を伝える奴があるかっ!」
すると、ギガースの後処理に回っていた衛兵の内一人がローレンツのところまで来て伝言を伝えた。
衛兵の権力に屈してるどころか、国にどっぷり染められてるじゃん……。
なるほど、他の人が勇者を立てているのは、バックに国がいるからというわけか。さっきから勇者らしさの欠片もないし、何よりきな臭くなってきたな……。
俺とレオナが国の傀儡に憐みの目を向けると、彼は慌てふためいた。
「ま、まぁそういうわけだ。僕は【夜明けの剣】とかいう逆賊との決戦に向けて、力を蓄えておかなければいけないからね。これにて失礼するよ」
「ぎゃ、逆賊!?」
こんなところで【夜明けの剣】の名前が出るとは思わず、俺は動揺を露わにする。そもそも逆賊ってなんなんだ。
というかさっきまでフィラが戦ってたのに、こいつは俺達が【夜明けの剣】だと気が付いてないのか?
問いただそうとしたが、彼は聖剣の光を閃光弾のように使ってその場から立ち去った。聖剣の光を安売りしすぎだろ。
俺達が呆気に取られていると、さっきまでギガースと戦っていたメイとフィラが俺達の方へと歩いてやってきた。
「二人とも遅かったにゃわんね。どうしたにゃわん?」
「何故か衛兵に絡まれて、大分足止め喰らったんすよぉ……。あとはフィラが衛兵を叩き潰さないように頑張ってたっす」
「ごめんなさいぃ……」
「やっぱりあの勇者、国とグルだってことか……。あと、フィラを止めてくれてありがとう……」
フィラが縮こまっているが、まぁ意味も分からず素材とられたらそりゃ怒りもするよな。分かる。
「あと素材も衛兵に取りおさえられちゃったっすけど、なんとか右腕だけは影に収納してゲットしたっすよ!」
「おお、それはナイスだ! ギガースは正直、腕以外使うつもりもなかったしな。それならギガースはもう衛兵に任せて大丈夫そうか」
遺恨がなくなった俺は、さっきから考えていたことを言った。
「じゃあフィラもメイも戻ってきたことだし、さっきの勇者を追うにゃわん?」
俺達は元素竜の力さえ総動員して、さっきの怪しい勇者を尾行することに決めたのだった。




