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戦う生産ギルドの現状

 エレメントドラゴンを倒してから、三日後くらいの話。


 ギルドホームを建てるために1000万ゴールドを目指していた俺達だが、街を救った褒賞金はなんと800万ゴールドにも上った。地面の弁償代などを引けば少し減りはするが、それでも貸家で販売を始めてからの利益や【鍛冶嵐】からの製造権料を合わせれば、余裕で目標額に届く。


「え……これって……お店立てられるって事ですか?」

「にゃはは、まさかまさかー。お店なんてそんな簡単に作れるものじゃないにゃわんよー。フィラは気が早いにゃわんねー」

「そ、そうですよね! 流石にそんなうまい話はありませんか……」

「いや、これ普通に足りてるぞ……。てか、ちょっと我慢したら一等地に店を立てられる額だ」


 報奨金の額に動揺を隠せていなかったレオナ達に、俺もちょっと声を震わせながら教えてあげた。


「うびゃああああああああっ!」

「レオナ!?」


 店が建てられると分かったレオナは、聞いた事もないような声を上げて後ろに卒倒する。

 一瞬マジで体調悪いのかと思ったけど、床に倒れたまま涙を流す姿を見たらすぐに彼女が感涙にむせび泣いてるのだと分かった。


「うぐぅぅぅぅ。ここまで頑張ってきて、良かったにゃわんぅぅぅ」

「ははは、いくらなんでも泣きすぎだろレオナ……」

「そんな事言って、ライア殿の目からも滝のように涙が流れてるっすよ」

「えっ!?」


 メイに指摘されて初めて気が付いたが、俺も目の下に手をやったらぐちゃぐちゃに濡れていた。レオナが号泣しすぎたから、貰い泣きもえげつない事になってる!


「生産ギルド始めてから、ここまで大変な事多かったですからねぇ」

「思わず泣いちゃうのも仕方ないっすよ」


 分かったような事を言いながら、フィラとメイもちょっと涙目だ。

 色々な事が多すぎて涙脆くなってる俺達だけど、それがまた俺達らしいと思うのであった。






 という風に感動ムードで店を立てたわけであるが、その完成品は感動とは似ても似つかぬ物騒な外見になった。


 一等地に立てなかった代わりに広い敷地を有し、屋根には砲台も有し、ついでに竜の攻撃を耐える装甲も有する要塞。

 無骨過ぎてウケが悪いかと思ったが、ここの商品なら命を守ってくれる気がするという安心感があるそうでむしろ売り上げ増えた。この街の人、割と疲れてるね?


 まぁ順調なのは良い事なので、俺は店を片付けながら状況を確認する。


「よし、戦う生産ギルド計画は着々と進んでるな。今のところ【白亜の洗礼】と【鍛冶嵐黒服隊】と【ライア教】が俺達の戦闘部隊として契約を交わしてくれて、【東亜商会】も忍者軍団の一部を貸し与えてくれてるわけか」

「【ライア教】って荒くれ冒険者達のことにゃわんよね? ライアを崇めるあいつらの目、ちょっとヤバいと思うにゃわんけど……」


 メタルハーピー戦で助けた荒くれ冒険者達はずっと従順だったが、とうとう宗教まで始めやがった。何故か俺が崇められているらしいが、自分でもびっくりするほど嬉しくない。命の恩人であるレオナを崇めてるっているなら分かるし、それならちょっと入信するか迷ったかもしれないが。


 まぁそれはともかく、関わりのあるギルドは【夜明けの剣】の傘下に入るという形で俺達に協力してくれていた。彼らの仕事は、端的に言えば冒険者ギルドの手が届かない戦闘を遂行する事だ。


「冒険者ギルドがもっとしっかりしてくれていれば、拙者らがここまで武装集団にならなくても良かったんすけどねぇ」


 冒険者ギルドは誰かがお金を払って仕事を依頼し、それを冒険者に紹介する事で仲介料を得るギルドだ。逆に言えば貧乏人の仕事は決して請け負わないし、たとえ仲介したところで冒険者達も割の合わないクエストを受ける事はない。

 だが俺達の目指す戦う生産ギルドは、たとえ大金を積まれなくとも強い魔物の駆除などを請け負う事にしているのだ。かかった費用は魔物の素材を独占する事で補い、【夜明けの剣】の評判も上がっていく。


「まぁ俺達の生活は、俺達が守ればいいだけさ。ここの傘下に入りたいって言ってるギルドも多いし、これからも拡大していけるからな」

「あとは、魔王さえ討伐されれば今度こそ完全な平穏が訪れるんですね……」


 閉店後の処理をしながら、フィラがポツリと呟く。


 武器屋の癖に平和を望むのは間違っているのかもしれないが、俺もレオナや、ギルドの皆が傷つく姿をこれ以上見たくはなかった。本当の平和が訪れたら、その時はその時で何を作るか考えればいい。


 賑やかに商品を整理するレオナ達や戦闘訓練に余念がない黒服達を見ながら、俺はそんな事を思った。室内で戦闘訓練するなよとも思うけど。


「伝令! 伝令! 隣の城下町にて、大型の魔物が発生しました!」


 そうして感傷に浸っていると、他の街にいた伝令役の忍者から連絡が来た。現在【夜明けの剣】は要塞のような本店だけでなく、【鍛冶嵐】が運営する支店やうちの商品を販売する店などもあるため、情報は行き渡りやすいのだ。

 連絡によると、どうやら隣にある城下町の方でまたも事件があったらしい。


 幸いエレメントドラゴン程の脅威ではないらしいが、一人でも犠牲を減らすためにこちらは全力で立ち向かう。真っ先にフィラが空を飛び、魔術砲撃部隊も攻撃を開始した。


「俺も出るか――……ん? お前は……」


 店を出た先で、【新星団】ギルド長の顔を見かける。


 新星団も【夜明けの剣】の戦闘部隊に入って欲しいと思っていたので、この非常時でなければ色々と言葉を交わしたかったが。

 彼は俺の顔を見るなり背を向けて駆け出し、途方に暮れてしまう。


「何だったんだ、あいつ……」


 少し不穏な気配を感じつつも、街に遅れるわけにもいかず城下町の方へと向かった。どうせフィラが一瞬でやっつけていそうだが、【夜明けの剣】ギルド長が出向かないわけにも行かなかったのだ。




 だが城下町でこれから会う男の事を思えば、ここで出向いたのは悪手だったのかもしれないが……それを知る術は、この時の俺にはなかった。

明日は弟と一緒に「この〇ば」の映画を見に行くので、恐らく次回は明後日になってしまいそうです!申し訳ありません!


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