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ギルドを不当解雇されました

本日8月27日、二作同時連載始めました! テンポが早いのをお求めの方はそちらもどうぞ!

「さっきダンジョンで思ったんだけどよぉ……。こいつ、もう要らねぇよな?」


 ギルドにあてがわれた一室に、やたらと大きな声が響く。ギルド長のレギアが俺を見ながら放ったその言葉の意味を、俺は咄嗟に理解することが出来なかった。


 きっと自分が作った消耗品か武器が要らなくなったのだろう。俺はギルドの皆に迷惑をかけたくないので、すぐに出来の悪かったアイテムがどれか尋ねる。


「えっと、何か使えないアイテムがあったのか? 不備があるなら、言ってくれれば改善するけど……」

「ちげぇよ、お前がもうパーティーに要らねえっつってんの」


 善意からの提案は、しかし悪意しかない言葉によってバッサリと切り捨てられる。


 【新星団】という名のこのギルドで、俺は調合師として七年間働いてきた。レギアは二年前から入った新参者なのに、実力で俺より出世してギルド長になったのだ。そして今、後輩である彼の目には侮蔑の色が浮かんでいる。


「このギルドが弱小だった頃は調合師も役に立ったかもしれないけどさぁ、大きくなった今は邪魔なだけなんだよな。どうして何もしてない奴に報酬を分配しなきゃいけねぇんだよ」

「なっ……、俺だってアイテム作って戦闘に貢献してるだろ!? 何もしてないってどういうことだよ!」

「だからさ、そのアイテムってのも道具屋に行けば買えるじゃんか。アイテムの材料までお前に分配してたら、割に合わねぇんだよ」


 存在を真っ向から否定するような事を言われ、俺は思わず呆気に取られてしまう。

 だがすぐに気を取り直して、俺は猛烈に反論した。


「そんな! 俺はギルドのために改良を重ねて、武器や鎧まで作ってきたんだぞ!? 市販のアイテムなんかで代用出来るかよ!」

「うるせぇ、アイテムに大きな違いなんかねぇんだよ。そんなこだわり、誰も求めてねぇの」


 レギアが言い切ると、周りのギルド員からもギャハハと笑い声が上がった。俺と同期のメンバー達は流石に笑わなかったが、彼らも微妙な立場にいるのかレギアを止めもせず顔を伏せていた。


 もし初代のギルド長がいてくれれば、俺の価値をちゃんと認めてくれただろう。しかしこの場には、もう俺の味方はいなくなっていたのだ。五年前に戦死したギルド長の顔を思い浮かべながら、俺はギリギリと歯を食い縛って屈辱に耐える。


「分かった。そんなに言うならギルドなんかやめてやるよ! 俺が作ったアイテムや武器は回収させてもらうぞ!」


 俺は自分の調合室から作成中だったアイテムや武器を拾い集め、逃げ出すように走る。実を言えば、本当に俺がやめようとすれば誰かが止めてくれるのではという期待もあった。


 だがそんな淡い期待も、すぐに裏切られる。レギアがひょいと出した脚に引っ掛けられて、俺は前のめりに床へ倒されてしまったのだ。そして周りのギルドメンバーは、怒るどころかレギアを讃えるように笑い出す。


「おいおい、そこら辺のアイテムは俺らが集めた素材で出来てんだぞ? 余所者が持ち逃げしてんじゃねぇよ。自分の装備以外は全部置いてきな」

「……。クソッ!」


 ギルドルームを埋め尽くす笑い声を聞きながら、俺は涙を流して逃げた。


 これまで俺は、何のために頑張ってきたんだ……。ギルドを飛び出した俺の心は、人生への絶望で埋め尽くされていた。




 だが、この時点では誰も気づいていなかった事がある。

 俺のこれまで培った経験や努力は決して無駄ではなく、誰にも真似できない生産技術としてしっかりと身に付いていたのだ。

 それはもはや調合師の枠に収まらず、魔装職人と呼べる域まで達していた……。


全財産

・18000ゴールド

・伸縮槍(未完成)×1

・布の服×1

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