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cherie  作者: 田村64
第一章
1/1

.

 さんさんと地面へと降り注ぐ太陽が俺のヒットポイントをがんがんと削る。


太陽光が集中的に俺に照射されているんじゃなかろうか。


そんな気さえするくらいとてつもなく暑い。そんな日。


俺は、てくてくと舗装された道を行く。片手には重い荷物を抱えて。

中身は買出しの食材たちであり、量も相当数。


「今晩はカレーにするかぁ・・・」


というのは、今晩の調理担当談。


ていうかカレーてこんなに材料必要だったっけ?と荷物を視認しながら思う。

まぁ、作ってもらうんだしこれくらいの労働は歓迎だ。


てくてく・・・。てくてく・・・。


果てし無く続くと思ってしまうような道を歩いていく。側道の公園では、子供たちの元気な声がこだましていている。


「元気いいなぁ・・・日本の未来は明るいなぁ・・・」


なんてどうでもいいことをぼそぼそとこぼす。この暑さにはホントまいる。


家までは後5分程度で着く。だが、しかしだな・・・。

と、そこで目の前に自販機が見える。


「・・・あそこの自販機でジュース買うか」


こうあつっい日に自販機を見たらそりゃもうやることはひとつ。買うでしょ。


自販機の前まで行き、重い荷物を下ろし手持ちの財布から小銭を投入する。そして流れる様な所作で「こおら」のボタンを押して・・・。


「・・・・・・」


ん?


誰かから凝視されている気がして、後ろを振り返る。

勿論というか、なんというか、そこには誰もいなかった。


「・・・?」


確かに視線は感じた。


再度振り返ってみてみる。やはり誰もいない。誰もいない。

・・・・・・怖えっ。


気にしないようにして再度「こおら」のボタンを押そうとする。


「・・・・・・」


・・・・・・。


やはり、誰かから見られている。見られているときに感じる特有の感覚だ。

皆様方も感じたことはあるだろう。


「・・・・・・」


ん?


俺がボタンを押そうとしている腕の下に何かを感じてパッと見る。


・・・・・・えっ?


「じー・・・・・・」


女の子がいた。それも小さい。


夏らしい服装をしていて麦わら帽子を目深に被っている女の子がじっとこちらを見ていた。


「・・・えーっと、どうしたのかな?」


なるべく動揺を悟られないように笑顔でその凝視している女の子にやさしい声色で語りかける。

・・・なんか不審者っぽいかな?


「・・・・・・あの」


麦わら帽子の下からのぞかせている大きなくりくりとした目で凝視されながらその子は喋った。


「ズボンのチャック・・・・・・開いてるよ」


え?


その子が指を股間の方に示しているので見てみると、確かにチャックが全開でトランクスが中からはみ出ているのが見えた。


「うわっ」


思わず声が出てしまう。


俺と対面に立っている小さい女の子から「社会の窓全開だよ」と指を指されながら指摘されるなんて今まで生きてきた中で始めてだ。しかも知らない子から。


急いでチャックの上げる。


「・・・ごめんね、言ってくれてありがとうね」


一応礼儀としてお礼の言葉をその子に述べる。


「いいえ、いいの」


その子は「別に・・・」とでも言いたげな興味のなさげな風体だった。


「それより・・・」


「それより?」


「お兄ちゃん、私と遊んで」


わお、急転同地なびっくりサプライズ。


ジュースを買おうとしたら幼女に社会の窓を指摘された挙句、一緒に遊んでほしいとな。


「お・・・僕と?」


突如のことでとまどってしまった・・・・・・。

そりゃそうだろ?俺以外の奴らだって俺と同じ反応をするに決まってる。


「うん、そうだよ。お兄ちゃんと遊んでほしい」


目を輝かせながらそうのたまうどこぞの幼女。ひとつの迷いもない。

これで断ったとしたら絶対かわいそうなことになること請け合いだ。賭けてもいい。


「どうして?」


俺と自動販売機の隙間に挟まっている幼女にそう理由を尋ねる。


「・・・どうしても」


理由になってないがな。


「なぜに」


「・・・どうしても、お兄ちゃんと遊びたい!」


何かこれ以上押し問答しても無意味な気がしてきた。


えーっと、まずこういうときは状況の整理に限る。事件があった際の警察だってそうする。

俺は、買い物の荷物をこさえて自宅まで戻る最中、喉が渇き近くの自販機で飲み物を買おうとする。


すると、何度か視線を感じて不思議がっていると突如眼下に幼女参上。


そしてチャック全開を指摘された上で「一緒に遊びたい」とせがむ。←イマココ


これは一体どうしたことだろう。


「……駄目?」


いつの間にか涙目になっていた幼女が再度尋ねてくる。

・・・何か、考えるのもめんどくさくなってきた・・・。


でも、これで俺がもし幼女と遊んでいるのを近隣マダムたちに見られでもしたら、どう思われるだろうか。


仲の良い兄弟・・・?


いや、俺はここいら界隈では一人っ子として名の通っている。


仲の良い従妹・・・?


・・・これが一番しっくりくるか?


「遊んでくれないの・・・?」


いい加減幼女の目のダムが決壊しそうな勢いだ。・・・見るからにホントに可愛そうになる。


「ねぇ、キミ・・・」


おずおずと声をかける。


「ん?」


「キミの名前って何ていうの?」


人と人とのファーストコンプレッションは名前を尋ねることからだ。


「ゆき……」


「ん?」


「ゆき」


「雪?」


どうやらこの子の名前らしい。…雪ねぇ……。


「じゃあ、雪ちゃん。お兄さんね、一旦家に荷物を置いてくるからそれから遊ぼうか」 


「……」


雪ちゃん?は、こちらを茫然とした様子で見ていたが、俺の言葉の意味を飲み込めたようで、


「うんっ!」


とキラキラとした目で頷いた。


……





だよ(僧籍)

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