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第9話 戦略的撤退

 

 さて、チェックアウトと言う撤退をするか。


 しかし気になるな。目の前に大きく書いてある天使の絵画が気になる。

 なぜこの宿屋はこんな部屋に俺を通したのだろうか?


 神様が見てるのかな? 気持ち悪く感じてきた。

 この世界でどういう意味があるのだろう?


 神様と一緒にいる事が大変光栄な事であり、ぜいたくな事と考えがあるのだろうか?

 いまいち異世界の事情はわからない。


 俺には神様を信じていないので相いれはしないだろう。


 紅茶を飲み終えたので席を立ち近くにいた従業員のメイドさんに声をかけた。


 「帰る」

 日本語で言ったのだが、どうやら俺の言動がわかったみたいで大きな扉を開けてくれた。


 従業員のメイドさんに入って来た入口のカウンターに案内される。


 チェックアウトだ。

 俺の荷物が入っていた宝箱をカウンターに持っきてあったようで、渡された鍵で開けて荷物を取り出す。


 預けていた荷物には特に問題はないだろう?

 ここでは確認はしない方が良いな、仮にも高級宿屋だ、失礼にあたる。信用しておこう。


 合鍵が作ってあって開けられ、中の物をくすめ取られてしまう可能性もあるが、さすがにそんなことはしないだろうな。


 海外ではたまにあるって聞いたことがある。

 特に先進国では預けた物の中がなくなっている事がよくあるらしい。


 それも店側が知らずに従業員が隠れてやっているから、たちが悪い。

 日本でもまれにあるってはなしだからな、預け物は気がかりだったけど大丈夫そうだな。


 荷物を受け取り帰ろうと外へ出ようとしたら、従業員一同が店先に並んで頭を下げて見送ってくれた。


 いやはや本当にすごいサービスだな。ここまで徹底しているとはね。


 どうやら呼び止められないな。追加料金は取られそうにないみたいだ。でもそれでいいのか?


 金貨一枚で良かったのかな?

 それで良かったのならこちらとしては助かった。


 店の支配人が一番手前で頭を下げていたので、俺は日本語で声をかけた。

 

 「有難う、お世話になりました」

 支配人さんは顔をあげにっこりほほ笑んでいた。


 俺は靴代として財布から金貨を1枚取り出し、渡そうとしたのだが、間違えて500円硬貨を出してしまった。


 大きさが金貨と同じだったので見間違えしてしまった。

 さすがにこの対応を受けて緊張して焦ってしまい、取り間違えてしまったよ。


 出したお金を引っ込めるのは何だと思ったので、そのまま支配人に500円硬貨を渡した。


 支配人から見て、俺が外国語でしゃべっているのだから、外国のお金と勘違いして受け取ってくれるかも知れない。


 異世界だから使えないけど気持ちだから良いだろう。

 案外ここではレアもの扱いになったりしてね。

 金貨よりも見た目は奇麗だからアンティークとしてだったら良いだろうな。


 ここのお金って金貨でもいびつで大きさが均等でなく汚れているんだよ。


 両面に人物像が入っているけど、あんまりうまい肖像ではないしそれに金貨なのに汚れていて、川で洗ったけど落ちなくて不衛生な感じがしたんだよ。


 海外では確か銀行員がお札を扱っている業務で、本人は何もしていないのに性病にかかった話とか聞いたことがあるからな。

 それと同じことありそうなので、あの時川の水でよく洗ったんだよな。


 今更思い出したが、もしかして昨日の夜の事でそんなことにはならないよね。

 つい欲望にのせられしてしまったけど大丈夫だったのかな俺の息子は、あとから痒くなったり痛くなるのは勘弁だよ。


 一度、経験してひどい目に合っているからな。

 大学の時に遊びすぎたせいであの嫌な思い出が浮かび上がる。


 今更思い出しても遅いか、仕方ないな。

 良い思いをしたのだから後から罰が当たる可能性も高いな。

 そうなった時に考んがえよう。

 対策などはないんだけどな。


 店の支配人は500円硬貨をにっこりした顔で受け取った。

 それから深々と頭を下げて何かを言ってきたが言葉がわからなかった。


 たぶん言葉の内容は検討つくので、このまま宿をあとにすることにする。


 日差しが眩しいな、昨日は夢心地の夜だった、これからはどうなるのだろう。


 靴も手に入れられた、身なりも奇麗になったので、これで町中を見てまわれる、ほんとうに助かったよ。


 結構広い街だから時間がある限り散策してみても良いだろう。昨日いけなかったところをまわってみるかな。


 そういえば他の種族の人とか居た時、観察していたがファンタジーにありがちな剣や槍などの武器を所持していた。

 武器と防具の店も探してみるか、定番の異世界ものだ、冒険者組合とかありそうだから行ってみても面白そうだ。


 セオリーとして異世界人がまずやることは冒険者になる事だろう。

 問題は言葉が通じないのでそれをどうクリアできるかだが。

 今日は1日この町を探索することにしよう。



 (高級宿屋店舗側)

 「どうやら事なきことに帰ってくれたようだな」

 支配人は安堵する。


 貴族がらみの奴らには神経を使う。

 金を払わないのはあたり前、気にいらなければ、難癖付け金品を強奪してくる。

 

 あたかもここが我がもののように扱うのだからな。

 下手をすれば暴力を振るい、怪我人や死人まででてもおかしくはない。


 最悪、全財産を奪われ、営業許可を取り消し店じまいだ。命だって持っていかれることもある。


 だから貴族用に拵えた特別な部屋が用意されている。

 大天使の肖像画をもちいふにした、部屋を用意してあるのだ。

 

 神の使徒である、大天使の絵があれば貴族共も何も言わないだろう。


 貴族どものために、ここまで気を使わないといけないのは嫌なのだが。


 どうやら今回来られた貴族、いやあの若者は、王族関係の方だったのかも知れない。

 身なりも違うしそこらへんの貴族と違って教養もある感じがした。


 確か今まで取引がなかった東の外れの国と貿易するとか、話を聞かされている。

 もしかしたら視察のために、お忍びでやって来た方だったのかも知れない。


 最初は嫌味に外国の言葉を話していると思ったが、本当に言葉がわからなかったのかも知れない。

 

 それについてはこちらとして悪い事をしたのかも知れない。


 辞めてしまった言葉の魔法を使える魔術師が居ないのが悔いが残る。新たに魔術師を探すしかないのか。


 しかし貴族なのに金まで払ってくれている。他国は違うのだろうか?


 いや、やはり貴族は貴族、王族は王族だ。

 神の下に定めた特権階級だ、誰も文句は言えない。


 あの若者、この店に訪れた前に何かあったのだろうか? 


 この町周辺は盗賊が多くなったからな。

 特に西南の地域には新しく奴隷を売り買いするザルバの街ができたそうだ。


 そのために最近は治安が悪くなってきたようだ。

 そこに売られる人間は、この町の中から出ているのかも知れない。


 私も気を付けなくてはいけないな。

 貴族が難癖付けて奴隷に貶める良くある話だ。


 まったくあんな町ができなければこのギレンの町も領主が治めるアドリスの街に行く中継地点でしかなかったのに。


 新たに変わった領主ガスタリア子爵の政策だ誰も文句は言えん。


 まったく、くそ野郎なのにな。

 おっとこれは口にさけても言えないな。


 誰かに聞かれて通報されたりしたら私はそこで終わりだ。


 しかしあの若者、本当にどういった者だろう。


 あの服装は私と洗濯長で仕上げしたが、最初は難しい工程をしなくては洗えないと思ったのだが、まさかそのまま水をつけて洗えるとは思いもよらなかった。


 乾かしている最中自然と皺が取れてしまい、魔法での対応も必要なかった。

 それにこの国では考えられないくらい丈夫な繊維で織られている。


 東は魔獣が多い国と聞く、もしかして未知なる魔獣の毛や繭を採取して織りあげた逸品なのかも知れない。


 私も長年この宿屋で取り扱いして見てきたが、あんな素材見たことなかった。


 それに先ほど戴いたこの硬貨だ。これが東の国の通貨だろうか?


 硬貨は国王の顔を模した物が描かれていると思ったのだが、この硬貨は全く違う。


 こんな異国の文字や草花をあしらった細工のされた硬貨など見たことがない。

 それも両面に別々に描かれた硬貨の端まで細かく細工された模様が刻まれている。


 白金色に輝いていてまったくもって、正確な円形で細工も均等に掘られており硬く美しいものだ。


 私のスキル鑑定で調べて見ても、何の材質で出来ているのかもわからない。

 金、白金ではない事はたしかだが、鑑定でわからないのははじめての出来事だ。


 何の金属でできているかも不明とは、もしかしてこれは古代文明の遺跡から発掘されたアーティファクトではないのか?


 何万年も前の姿形を維持されているアイテムとかあるらしいからな。


 これは異国の通貨ではなくどこかで手に入れたアークファクトの類かも知れない。


 こんな貴重な物を私に戴けるとは、よほどこの町に来られた時に困っていたのだろう。

 身なりが汚れていたからな。


 この戴いた硬貨は我が宿屋の家宝にしなくてはいけないな。


 今度来た時はもっと質の良いサービスをしてやらないといけないか。


 奴隷の女に金を渡すといい、王族だから嗜み程度で渡したのかもしれない。貴族ではそんなことは絶対しないからな。


 気に入ってもらえたようだから、あの女の借金をちゃらにし奴隷の証も解いてやった。


 何事もなかったのだ。借金分の損はあるが事なきに終えて良かったのだろう。


 さて徹夜になったので私は眠い。

 あとは部下に任せて休ませてもらおうとするか。


 貴族相手にするとは面倒なことになったな。

 こんなことまたあるのだろうか?


 奴隷の街ができたせいでだいぶ変わってきてしまった。

 それに東の国とも貿易品が入ってくる。


 他国から王族、貴族の馬鹿どもが訪れることが多くあるかも知れない。


 今日を教訓にして、対応しないといけないな。



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