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第87話 三者三葉

 「グローサー・ランサー」

 「ガツン、ガツン、ガツン、ガツン、ガツン」

 吸血鬼となった元S級冒険者、キャリング・アーサーは第五聖騎士団、団長ティック・リターンに対して、右手の槍から重さを乗せた五連続突きを繰り出した。


 「カン、カン、カン、カン、カン、・・・シュン」

 リターン老は重い攻撃をわざと受ける。


 受けた右手の槍を上手く十文字槍で絡め取り、引き寄せ槍の背で払った。

 体制を崩したアーサーに対して鋭い突きを放った。

 

 「ズバン」

 アーサーの右肩に十文字槍が突き刺さる。

 しかし、深手負ったように見えるが、傷口が瞬時にふさがった。

 貫通した鎧ごと回復する。


 「おかしい。

 何故だ。

 何故、俺の攻撃が何故先読みされる。

 それに、その十文字槍、何故我が神武器で受けきれる。

 すでに破壊されていてもおかしくは無いダメージを受けているはずだ」

 「神武器だと! 

 所持している様子には見えないのだが・・・

 !

 そうかもしやお前さんは、神武器の能力でそのような姿に変わっているのか。

 魔物になったとしては、おかしいと思っていたが、神武器の能力で変化していたのだな」

 「・・・

 答えろ、何故だ。

 何故、俺の攻撃が当たらない」

 「それはな、儂の長年の功ってやつだろうよ。

 お前と違い経験の差が有るから見きれるのじゃよ」

 「・・・」

 「それにな、アーサーよ。

 お前さん、その姿になったせいで弱くなっておらんか?

 最初に会った時から妙に疲弊しているのが分かっていたぞ。

 神武器の能力を使い、弱くなってはどうしようもないだろうが」

 「・・・

 それは、違うな。 

 最初に、神武器を使って投棄攻撃をした。

 そのせいで魔力が枯渇していたのだ。

 その上に、この形態に変わったのでな。

 慣れないでいる。

 ただ、それだけと言う事だ」

 「どうやら、お前さんは、本当にアーサーでは無くなってしまったようだな。

 あの慎重深いアーサーとはえらい違いだ。

 いや、馬鹿になったと言って良いほどだ」

 「ご老人よ。

 如何に俺が寛容だとしても、その言い草、感に触るぞ」

 「そうかい。

 自らの手の内を話すなど、滑稽だと思ってな」

 「・・・

 そうか、確かにそうだな。

 それで、お前の持っている十文字の槍は、なぜ壊れぬ。

 それに、その槍に触れると体力を奪われる効果があるのか?

 硬く、鋭さもある。

 いったい何なんだその槍は」

 「質問攻めじゃのう。

 そういうこだわりが有るところは変わっておらんのか。

 こちらの手の内をばらす事などできる訳ないだろう。

 お前さんが死んでから話すとしようかのぉ。

 三叉三激」

 リターン老は連続攻撃を繰り出す。


 「シュン、シュン、シュン」


 「ご老人、いかにその長槍でもこの間合いでは届かんよ」

 アーサーは十文字槍の射程を見きり、後ろに僅かに引いてかわすが、槍が突然グンと長く伸びてきた。


 それでも、アーサーは済んでで交わすことが出来た。

 しかし槍が引いた時に十文字の刃が大きく伸び、引きぎわに右横脇腹を切り裂いてしまう。


 「くう、やるな。

 まさか穂先の刃まで伸びるとはな。

 十文字槍、槍の中で最強の形状を取っていると言われる。

 突いてよし、引いて切っても良い。

 突きが交わされたとしても、引いて左右にあるの刃で切り裂くことが出来る。

 その独特の十字の形状の為、いくつもの技のバリエーションもある。

 並みの槍の中では最強と言って良いな。

 特徴は分っていたが、まさか槍自身も伸びるとはな。

 それも十文字の刃先まで伸び縮みできるとは驚いたよ。

 しかし、何故だ。

 何故、今まで使わなかった。

 どうして今になって使いだしたのだ」

 「アーサーよ。

 お前さん、本当におしゃべりになったな。

 無口な奴だったのに。

 なぁに、見れば分かるとおり儂は歳だからのぉ。

 長く戦わないと使えんのだよ」

 「?

 逆では無いのか。

 歳がとれば体力的に劣り疲弊する。

 体力が持たなくなるのではないのか?

 ・・・

 !

 そうか、分かったぞ。

 先ほど受けた傷で我が体内にある神武器、グンニ・グルが言ってきた。

 お前が持っている槍も神武器だとな」

 「ほほう、お前さん体内に取り込んでいる神武器と意志の疎通ができるのか。

 面白い事をするのぉ。

 それも神武器、グンニ・グルとはたいそうな代物を手にいれたのだな」

 「・・・

 !

 ゲイ・ボルグ。

 なるほど神武器、黒棘槍・ゲイ・ボルグ。

 お前が持っている槍はそれだな」

 「ご名答、名前までは教えてやるが、その他の能力は言わずといわんがな」

 「・・・

 言わなくとも、俺が所持する神武器・グンニ・グルが教えてくれた。

 相手を切り裂くごとに体力を奪い自分に付加できる。

 伸縮自在に形状を変え、我がグンニ・グルよりも投棄槍に優れた、棘投機槍言われる代物だ」

 「半分だけ正解だな。

 他にもいろいろあるんじゃよ。

 儂もお前さんと同じように少しだけだがゲイ・ボルグと意志疎通ができるんでな。

 お前さんの槍の情報は聞いたぞ。

 赤炎槍・グンニ・グル、使い手と融合し自らの身体を炎の槍とかす。

 なるほどな。

 その魔物のような身体はそのせいでなったと言う訳か。

 炎系の属性魔法を行使できるようじゃな。

 制作した者が同じ神で、ゲイ・ボルグと双子の双槍だと言う事だな。

 どれ、儂が貴様を倒し、兄弟仲良く使ってやるとするかのぉ」

 「馬鹿か、お前が俺を倒すなどありえん話だ。

 そのゲイ・ボルクはお前を殺して、俺が使うまでだ」


 ・・・

 ・・・

 ・・・


 「スターダスト・レイン」

 「シュン、シュン、シュン」


 「ダン、ダン、ダン」

 「くう、貴様卑怯だぞ。

 剣士だったら地に降りて、剣を交わえ」

 第四聖騎士団、団長ウォエレス・アイリスは神が作ったとされるマジックアイテム、エンジェル・ウイングを使い光の羽を背に生やして空中を自由に飛ぶことが出来る。


 また神武器、星剣・ソウルキャバリーを使い衝撃破攻撃を遠距離で放ち、吸血鬼となった元A級冒険者のシカバネ・イクサバを翻弄していたのだ。


 「あらあら、剣士が地上で戦うなんて誰が決めたの?

 剣を交わえなんて。

 交わえなくても十分戦えるでしょう」

 「お前は、本当に剣士か」

 「ん、どうかな。

 剣を手にして戦っているから剣士ではないのかな。

 それに貴方、吸血鬼になったんでしょう。

 吸血鬼って、蝙蝠の羽を生やして飛べるのではなかったのかしら。

 それだったら私の元に飛んできて剣を交わえなさいよ」

 「くうう。

 吸血鬼が全員飛べるとはかぎらないだろうが」

 「あらあら、そうだったかしら。

 それでは貴方は飛べない部類の吸血鬼に入るのね。

 残念な吸血鬼さん、なのね」

 「プチン。

 殺す、殺してやるよ。

 月弧衝刃」

 イクサバは神武器から、弧を描いた冷気の含んだ衝撃刃を放った。


 「ソウル・リフレクト」

 星剣・ソウルキャバリーの能力で飛翔してきた冷気の刃を吸収した。


 「ウフフ、返すわね。

 ソウル・リターン」

 アイリス譲は星剣・ソウルキャバリーで吸収した冷気の刃をそのままイクサバに返した。


 「ザシュン」

 「くう、なんて卑怯な」

 イクサバは自ら放った攻撃と同じ技を返されダメージを受けてしまう。


 「元A級冒険者、二刀使いの剣士、シカバネ・イクサバ。

 聞いた話だと貴方と手合わせして、生き残った者がいないそうね。

 その名のとうり屍が続出している。

 しかし、その噂は話どうやら嘘のようね。

 それとも自分より弱い相手を選んで相手して勝っていただけなのかしら。

 今までの剣技を見てもたいした事はないと思うんですけど。

 ・・・

 と言いますか私、思うんですけど、もしかして貴方吸血鬼になって弱くなっていない?

 刀を扱うには繊細な技巧が必要よ。

 それなのに見た限り力まかせで振り回しているだけ。

 力の制御がもしかして出来ないのでは?」

 「・・・

 この神武器もどきの、レプリカの雪月花氷剣ではイマイチ私の手には馴染まないのだ。

 炎刀・阿修羅に雷刀・帝釈天があれば、お前などに遅れは取らないと言うのに・・・」

 「あらら、なんて言い訳がましい。

 武器のせいにするとは、貴方は本当に剣士なのですか」


 ・・・

 ・・・

 ・・・


 「ドカン」

 「バキン」

 「ドラゴン・ブリッド」

 虎王、白虎丸は一端間を取り、第二聖騎士団団長、ベルゼウォークに正拳突きを右手で繰り出した。


 右手には神の防具竜の籠手が装備して有り、拳を放った瞬間に水色の龍の頭をかたどった魔法気が放たれ、ベルゼウォークを襲った。


 ベルゼウォークは神武器、鬼神の斧で魔法気を真っ二つに切り裂く。


 切り裂き魔法気を交わしたのが良いが、鬼神の斧で地面まで切り裂き、引く抜く瞬間を捉え、白虎丸は左の拳で殴りつけてきた。


 「ブースト・ナックル」

 ベルゼウォークはまともに拳を食らい身体をのけぞらせる。

 

 鼻血を出すが倒れず、そのまま鬼神の斧を置き、白虎丸を右手で殴りつけた。


 「グワアー」

 ベルゼウォークの右拳は、白虎丸のみぞおちに入り、悶絶する。


 戦い当初から、二人は力と力のぶつかり合いの戦いを繰り広げていた。

 その圧巻な迫力には、周りで戦っている者も委縮してしまっている。

 横槍を入れようものなら、巻き込まれ潰されてしまう事が当然の事ながら分かるのだ。


 「ふん、白虎丸よ。

 ずうたいがでかいだけで、そんなもんか。

 全然俺には効いていないぞ」

 「歳の割には、良く動けますね。

 感心しますよ」

 「人を爺いよばりするではない」

 「そうですかね。

 叔父上と同じ年だと聞きましたが、違うのですかね。

 見た目だけ若くなっていると思いましたよ」

 「奴は老いたか。

 俺は鍛え方が違うのでな。

 斑とは違うのだよ。

 そうれもう一発食らえ」

 「ドガン」

 ベルゼウォークが白虎丸の顔を殴りつけ吹飛ばしてしまう。


 「どうだ、降参かな。

 降参して軍門に下れば命だけは助けてやってもいいぞ。

 もちろん竜神の籠手は俺が戴くがな」

 「ご冗談を、戦いはまだまだこれからですよ」


 白虎丸はすぐさま立ち上がり、ベルゼウォークの周りを凄い速さで回りだした。


 残像が何人も分かれて見えるほど凄まじい速さで回り続ける。


 「三下のやり口だな。

 俺の周りを回って、惑わし隙を伺い攻撃する。

 それではこういうのはどうだ。

 大車輪切り」

 ベルゼウォークは鬼神の斧に気を乗せ、振り回した。


 自分の周りを回っている白虎丸の残像を捉える。


 「何。

 !

 どういうことだ」

 回転切りで、すべての残像を捉えたように見えたが、白虎丸にはまったく当たらなかった。

 

 「タイーガー・シュート」

 白虎丸はベルゼウォークの大車輪切りを仕掛けた瞬間に上空へ飛び跳ねていた。


 上空から強烈な蹴りを放つ。


 「ドガン」

 ベルゼウォークは白虎丸の蹴りを食らい、吹っきとばされてしまう


 吹飛ばされたベルゼウォークはすぐさま立ち上がろうとするが、片膝をついたまま、立ち上がれないでいる。


 「デット・リー・クラッシュ」

 白虎丸は、片膝をついて立ち上がろうとしているベルゼウォークに対して瞬時に近づき、連続攻撃を繰り出した。


 「おら、おら、おら、おら、おら、これで止めだ。

 バースト・ナックル」

 ベルゼウォークに連続攻撃をたたみ込み、止めの一撃で、右手に気を乗せた爆発する拳を繰り出した。


 「ドガーン」

 ベルゼウォークの顔面を捉え拳が爆発した。


 しかし、ベルゼウォークは不動のままに倒れないでいる。


 「馬鹿な」

 「にやり」

 ベルゼウォークはにやりと笑いながら、カウンターで拳を白虎丸の顔面に殴りつけた。


 「ドガン」

 白虎丸は吹っ飛んで背から地に伏せた。


 「くそう、あの連続攻撃を食らって反撃するとは」

 白虎丸は立ち上がろうとするがなかなか起きられないでいる。


 「ハア、ハア、ハア、ハア、ハア」

 ベルゼウォークも両手を膝に付き、息をきらして動けない状態でいる。


 しかし、白虎丸が立ち上がった瞬間に、ベルゼウォークは突進し第二ラウンドを開始するのであった。


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