第82話 それぞれの思惑
や、やばいな。
勘違いされていないかな?
つい自分が鍛えていくと面白いように筋肉がつくので、他人の筋肉も気になってしまった。
男性なのか分からなかったので、つい確認の為に触ってしまったのは不味かったか。
華奢な成りをしていたから、本当に男性だと分からなかったんだよ。
あきらかにサレンさん達は変な目で俺を見ているぞ。
俺は、そっち系の趣味は無いからね。
誤解しないで下さいよ。
とりあえず言い訳がましいが弁明しとくかな。
そうでないと勘違いされたままだろう。
「えーとその、サレンさん達、なんか変な目で俺を見ているけど勘違いしてないよね」
「勘違いですか。
私達はご主人様がどのような趣味を持っていようと気にしませんよね、アニス」
「そうですわ。
人それぞれ趣味が有りますんのでご気になさらくとも良いのではないですか」
「そうですよ。
ですが、婚約者であるターナを傷つける事はご遠慮願いたいですね。
もし、そのような趣味に没頭されるなら、婚約解消も視野に入れた方が良いと思います。
まだ、ターナは未成年ですので、早めにご決断をする事をお勧めします」
「趣味!
そんな趣味していないよ」
「・・・
ご主人様は私が嫌いですか?」
「・・・
いや、そんな事はないよ。
勘違いだよ。
ターナさん勘違いだからね。
誤解しないでね」
「それだったら、私の事も触って下さいませんか」
「えっ、それは」
「・・・
嫌なのですか、ぐすん」
「嫌ではないけどサレンさん達の目が有るから」
お触りが宜しいのだったら、今まですでに触っているよ。
サレンさんとアニスさんの厳しい眼が有るんだよ。
変なところ触ったら大問題だろう。
何処を触れば良いと言うんだよ。
!
そうか、頭を髪を撫でる行為は許されるだろうか。
エルフにとってどういう意味合いが有るのか分からないけど、定番な愛情表現と言って良いだろうな。
頭は重要な部分だ、本能的に受け付けるかどうか反応するだろう。
イケメンが髪を撫でるだけで、すべてのおこないが許して貰えるとかそんな事が有るからな。
俺には無理があるだろうか。
とりあえず、お尻とか触るとあとあと二人から問題行動を指摘されては怖いので、髪を撫でる事にしよう。
これで、許してくれ。
サレンさん達がターナさんに直接触ると俺がどうなるか分からないんだよ。
今夜寝る時に、いたずらしてあげるからね。
俺はターナさんの頭を軽く撫でた。
金色の髪がサラサラで触っていて気持ちが良い。
ターナさんは顔を赤らめ、猫が気持ち良いようなうっとりとした顔になった。
よし成功だこれで良いだろうな。
サレンさん達は冷ややかな目で俺を見ているが、なんとか大丈夫だろう。
髪の毛を撫でる行為はOKらしいので、なんか会った時にはこの方法を取ろう。
でも、ターナさんは素直で良い子だから、サレンさん達みたく我が儘言わなそうだから大丈夫だと思うけど。
「ご主人様、有難う御座います。
私、ずっとついていきますね」
「あぁ、宜しく頼むよ」
「・・・
ご主人様」
「それじゃ、俺はトレーニングに入るから」
「分かりました」
「あっ、そうそう君達は剣聖と言う人物をどのくらい知っているのかな。
情報が欲しいな」
「それは、サレンさんが一番詳しいと思いますよ」
「そうなのか」
「これ、ターナ、人の秘密を言ってはいけませんよ」
「秘密、何かあるのかな」
「別に何もありませんわ」
「・・・
なんかあるのね。
ターナさん三時のおやつの時間にオレンジの発蜜漬けを一瓶開けるので、渡しとくね」
「分かりました」
「サレンさん、三時のおやつの時間に良い話が聞ける事を楽しみにしているよ」
「きょ 脅迫するのですか」
「別にただ、今日は三日前ちょうど良いぐらいに漬け置きができたので奮発して出そうと思ってね。
まぁ、話は聞けなくても良いんだけどね。
後々、どうなるかは知らないけれど」
「くう、卑怯ですよ」
「さぁ、なんの話やら」
「ご主人様、おからクッキーを私が焼いても良いですか」
「別に良いよ。
レイズさんが気前よく材料を補充してくれるので、このところ欠かさないからね。
もし、多めに作れるのだったら、取り置きしておこう。
魔法の収納袋へ入れておくのだったら持つのだろう」
「分かりました」
「ターナさんは焼くのが上手くなったからね。
おからクッキーに蜂蜜付けて食うと美味しいよね。
サレンさん、そう思わないかな」
「くう、卑劣な」
「まぁ、三時のおやつの時間は楽しみにしているよ。
それじゃ、俺はトレーニングを開始するから宜しくねターナさん」
「分かりました」
「あっ、そうそう焼く人は味見しても良いけど、その他は駄目だからね。
今回はターナさんに頼んだからそれ以外は焼いてはいけないよ。
ちなみに、つまみ食いしたらペナルティがあるので覚悟しておいてね」
「くう・・・」
「三時のおやつが楽しみだな」
「・・・」
トレーニングを再開し、理想の姿に近づける。
魔法気を発生させ、身体を強化する。
手首から指先へ、速く鋭い手刀で何もも切り裂くイメージをしてトレーニングに励む。
イメージどうりの手首の使い方ができてきた。
次は足の方を何とかしたいが、これが思うようにイメージが難しい。
どうやって足で切り裂くのか悩むところである。
下段蹴りで足を折るイメージは出来るのだが、切るのはさすがにイメージが浮かばない。
トレーニング積むしかないみたいだな。
一端、三時のおやつタイムのお呼びがかかったので、休憩に入る。
サレンさんの前にクッキーとオレンジの蜂蜜漬けを多めに置いたら、まるで自白したようにすべてを語った。
かつ丼を食って話す犯罪者のドラマかな?
コントだったか?
昔あったようだが、それを想像してしまった。
実際に見た事はないけど、聞いた話ではこんな感じで話をすのだろうか?
別にエルフの内情の話迄して貰わなくて良かったのだが聞いてしまったのである。
と言うか、俺にとって都合の悪い話を聞いていないか?
余計な話も聞いてしまったのかも知れない。
「なるほどね。
まさか、サレンさんが剣聖の血を引く人間とのハーフであったとは、それもエルフの一族の中で王族の剣の指南役を任される貴族の家系出身なんだね。
お嬢様だったと言って良いんだ。
ふーん」
「何ですか、その疑いの目は」
「いや別になんでもありませんよ。
で、浚われた理由も違っているんだね。
俺が聞いた時とちょっと違ってはないかな」
「そ それは身を守る為です。
本当の理由などは言えるはずはないですから」
「確かに、そうだね。
でも、俺ってあの時本当にそうだと思って信じてしまったんだけど」
「それは、ご主人様が余りにも世間離れした考えをしているからですよ。
少しは思慮深く気を付けた方が宜しいかと思います」
「そうかも知れないね。
けどだいぶ考えているんだけど、それでも甘いのかな」
確かに迂闊にも真に受けて信じてしまっていたのかも知れない。
それは日本人の性分だから仕方はないだろう。
平和ボケしていたからな。
まぁ、聞いた話とは違っていたが、似たような理由で浚われ、奴隷にされてしまったのだから同じようなものか。
話から推測すと計画的と言うか、何かの意図が有って浚われてしまったみたいだね。
ルイージさんの経営する店で、エルフの冒険者が言っていた事が何か関係が有るのかも知れない。
エルフの国でおかしな状況になっているのだろう。
余計な話を聞いてしまったな。
俺は剣聖の事を聞いたのに、まるでサレンさんがエルフの国の内情に俺を巻き込むような意図さえ感じるよ。
剣聖と俺とが同郷の者かも知れないと思って何か俺を利用する良からぬ事を考えたのではないよな。
そう願いたいのけど、話した意図が分からない。
面倒事は困るんですけどね。
「で、結局剣聖、伊三郎の事は詳しくは知らないんだね。
良い話を聞けると思ったけど残念な話しか聞けなかったか。
エルフの国の内情は俺にはまったく関係ないので聞かなかった事にするよ。
と言いうか、剣聖、伊三郎の話だけ聞ければ良かったんだよね」
「・・・」
「本人に会って聞くしかないか。
それじゃ、おからクッキーとオレンジの蜂蜜漬けはこれで終ってしまおうとするか。
ターナさん、サレンさんの前にあるクッキーとオレンジの蜂蜜漬けを片付けて下さい」
「分かりました」
「そんな、あれほどの情報を言ったのにあんまりですよ。
さげないで、さげないで下さい」
「有益な情報は得られたかった。
クッキーの配分は此処までだよ。
当然の事だよね」
「ううう」
剣聖、伊三郎には会うしかないな。
エルフの国の内情はともかく、こちらを先に会って話をしてみたいな。
もしなんだったら、その時にそれとなくエルフの国の事を話しても良いだろう。
血縁が有るのだろう。
どうなのか、サレンさんが話して協力を仰いでも良いだろうな。
さてとティータイムは終わりだ。
尋問になってしまったがな。
トレーニングを再開する。
始めようとした時に、床に見たことが有る一枚の紙きれが落ちていた。
!
「なんじゃこりゃ」
「どうしたのですかご主人様」
「こ これを見てくれ」
「それはキースと決闘をした時に発行された契約証明書ですか。
どうしてこのようなところに」
「そ そうだよ。
あの悪魔、もとい神の使いの天使だったか。
契約の神ミトラースの使いだったか?
そいつが発行した奴だよな。
君達も知らない文字で書いて有るのだろう。
魔法陣のような模様も入っているおかしなボロ紙だ」
「ご主人様、その言い方は大変神に失礼ですよ。
見ているのかも知れませんからね」
「見ているの。
本当に?」
辺りをキョロキョロ見渡してみる。
だが、見られている感じはしないな。
「神様はいつも見ていると言う話ですからね」
「そうなのね」
「でも、どうしてこの契約証明書が此処にあるのでしょうかね。
ご主人様は執事のクロートに渡していったはずですが」
「そうなんだよ。
それがなんでこんなところに落ちているのか不思議なんだよ。
俺は危ないものだと思ってクロートさんに預けて処分しようと思ったのだから。
これを公爵家の者達に見せて納得を得られようと思ったのだからね」
「役目を終えたから、ご主人様の元へ戻って来たのではないですか。
先ほど来ました公爵家の使いが確認しましたよね。
それで証明は出来たと言う事で」
「えっ、そうなの。
証明が出来れば俺のところへ自然に戻って来るものなのか」
「それは、分かりませんがそうとしか考えられません」
「そういうもんなの?
もしかしてあの悪魔、もとい神の使いが近くに居るのではないよね」
「確認、確認してくれるかな」
「ご主人様、そのような事はないと思われますよ。
私達も常に警戒していますから、このホテルを含め半径二百メートル範囲内にはそのような者は確認されていないと断言できます。
魔法で私は常に警戒しているので」
「本当に」
「はい、大丈夫だと思います」
「マジでか、でもこの紙が落ちているのを誰も気づかなかったよね」
「そうですね。
確かにおかしい事はおかしいと思いますが。
神のみ使いが寄こしたモノですから害は無いでしょう。
むしろ運があがる良いアイテムかも知れませんよ」
「えぇ、それは無いと思うのだけど・・・
一応、念の為だが警戒を強めてくれないかな。
誰か近くにいないか気になるんだよね」
「分かりました。
上位魔法を使い索敵の制度を高めて見たいと思います」
「頼むよ、アニスさん」
「お任せください」
警戒を強めて見たが、特に何も感じられる者はいなかった。
この紙切れは、危ない物なので魔法の収納カバンにしまってしまおう。
しかし、なんでこんなところにあるのか未だに不明だ。
俺が見たのはレッドアリーマみたい赤い小悪魔だったからな。
キースの魂を食ってしまったように見えたからな。
さすがに気になって仕方がない。
とりあえず、警戒をしながらトレーニングを続けた。
何もなく夜に入ってしまった。
すでに就寝の時間帯になる。
「ご主人様、いっしょに寝ましょう。
・・・
どうしました不安な顔をして」
「うーん、大丈夫だよ。
ちょっと気になっただけだよ。
あの紙切れがね」
「そうなのですか。
でも神の使いから貰ったものですから心配は無いと思いますよ」
「そうだね」
「私がご主人様に付いているので大丈夫ですよ」
「それは心強いな。
それじゃ寝ようか」
「はい」
俺はソファーにモーフをかけターナさんと一緒に横になった。
これは気を紛らわせよう。
ターナさんにいたずらしてみるか。
「ターナさん、昼間触っても良いと言ったよね」
「言いました」
「それじゃ、触っていたずらさせてもらおうかな」
俺はスキンシップをはかる為にターナなさんの身体を軽く触り始めた。
毛布の中だから、サレンさん達には気づかれない。
お触りだけだが、今日の誤解と信用を取り戻す為に触ってスキンシップをはかるんだ。
サレンさん達は俺の事を未だに怪しい眼で見るが、俺はそっちのけがないんだよ。
せめてターナさんにだけは、誤解を解いておきたいからな。
「ご主人様、有難うございます。
私をこんなに思ってくれて」
おぉ、身体を触る事は何処の世界にも愛情表現になるのね。
まぁ、そうりゃそうだけど、エルフの年齢だったらまだ未成年らしいから、こういう事はまだ早いかも知れないな。
しかし、なんだ俺はそこそこ興奮しているのだが、一向に俺の下半身の息子は目を覚まさないぞ。
どうなっているんだ。
この世界の仕様で髭が伸びないのと関係しているのか。
分からん。
男としてなんか不甲斐なさを感じるぞ。
まぁ、今のところはそれで良いけど。
でも、エッチしてしまったら俺の息子がサレンさんによって切られてしまうかも知れない。
それに変な疑いをもたれているから尚更危ういな。
まぁ、信用を得られるために、ターナさんとは少しだけ触ってスキンシップを高める事にしよう。
決して俺はあちらのけがないと証明しなければいけないからな。
・・・
・・・
・・・
(ヴァレンシュタイン城)
「スカーザッハ、明日の夜に出かけるするとが、準備は整えてあるかな」
「はい、主様。
アレキサンダー家の者との戦闘は主様が出かけて、一時間ほどしたらこちらから先に仕掛けます。
予定どうり進行する手立てです」
「そうか、そちらの件は頼むぞ。
それで、アン・ドウを引き入れる件で良い案を考えてくれたか」
「申し訳御座いません。
情報が余りにも少なく、考えつきませんでした。
私には男をあてがう事くらいしか、考えられませんでした」
「そうか、それは残念だ。
仕方ないだろう。
私が実際会って、何が出せるか判断しよう。
謎の多い人物らしいからな」
「左様であります」
「それでは、公爵家の者達の始末を頼むぞ」
「私はアン・ドウを引き入れ、我が陣営に向かえる事にしよう」




