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第8話 夢心地の戸惑い

 

 昨日はよく眠れたな。

 窓から入る日差しがまぶたを照らし目を覚ます。

 やはり異世界か、夢ではなかったようだな。


 天井を見上げると、なぜこんなに高く造ってあるの? と思うくらい奥行があり一面に天使の羽が舞降りてくるような絵が描かれていた。


 天井にまで絵が描かれているとは、どういう事だよ!


 壁に大きく書いてあった天使の絵を題材にしてこの部屋一面に描かれているのか?


 神がかった成金趣味の部屋になっているのではないか。

 あまりのゴージャスな絵なので逆に悪趣味な感じがしてくる。


 大きな12枚の羽根をはやした天使の絵が描かれている。

 天使長ミカエルかな? 大天使って感じなんだよな。


 いったい何をモチーフにして描かれているのだろうか。この世界で実在する天使なのかも知れないな。


 この異世界では天使や神様が関係している事柄があるのかも知れない。

 まるで天使がここへ居ますよと、言っているみたいなんだよな。


 神など信じていない俺には縁が遠い世界だ。


 そんなことはどうでも良いか、それよりもこれからどうするか考えるべきだな、朝からこんな豪華な部屋に泊まっているのに憂鬱な気分になっている。


 日本で暮らしているサラリーマンだったら、一生かかっても縁のない世界だろう。

 今まさに夢の中だとしか思えていない。


 現実は異世界だという事は変わらず、この事実でなければ良いところなのだよ。


 海外旅行でカリブ海などの高級ホテルで満喫しているのであれば良いのだけど。


 朝起きるのが早い方だが、目を覚ましたらすでに2人の従業員らしいメイドさんが部屋の扉前に立っていた。


 就寝中とはいえ部屋へ入ってきたのも気づかず、俺が不用心な気がするが、大丈夫だったのだろうか?


 部屋に中にすでに入ってきているとはね。こちらで呼び出ししたりするまで廊下の扉前で待機しているとかと違うのかな?

 異世界ではこれが常識なのか、それともこの宿屋の方針なのかわからない。


 寝込みを襲われ金品を取られたりする可能性もあったが、さすがに高い宿屋に入ったのでそれもなさそうだ。


 首輪をつけている従業員のメイドさんを見た時、ちょっとやばいかもって思ったけど今のところは問題は起きてはいない。今は安心して良いだろう。


 ベットから起き出したら、従業員のメイドさんが近寄ってきて昨日、着替える時に借りていたスリッパのようなサンダルを履かせてくれた。

 ここまでしてくれるのか、まさに王様対応で逆に怖くなってきたよ。


 奇麗なメイドの従業員さん達に接するのは、なんとも居心地が良いのだが、一般サラリーマンの俺には心臓に悪すぎる。


 サンダルを履かせてもらったら、大きな扉が開いてどうやら俺をどこかへ連れて行ってくれるみたいだ。


 言葉が話せないと言う問題はあるが、昨日から話していないのに対応できているのが不思議でならない。案外話せなくてもいけるもんだな。


 従業員のメイドさんの誘導に従い後をついて行ったら昨日の湯あみした脱衣場へ案内された。


 そこには昨日と同じように、首輪をつけたメイドさんが待っていた。


 1人は昨日、夜の相手をしてもらった女性だったので、なんか気まずいなと思っていたら、奴隷の首輪が外れておりにこやかな顔をしている。


 もしかして昨日渡した金貨が足しになって役にたったのかなと思い、少しだけ安堵した。


 渡した金貨がどう役にたったのかはわからないが、借金の足しになって奴隷と言う立場から解放されたのだったら、こちらとしては喜ばしい限りだ。


 なんにしても美人のメイドさんが俺にほほえみをかけてくれるのが嬉しいので、異世界に転移して良かったなと思ってしまったよ。

 俺って現金なやつだな。


 こんな娘だったらお持ち帰りしたい。この異世界に来て欲望が膨らんでくる。


 昨日と同じように服を脱がしてもらい、湯あみをする。裸のメイドさん2人に体を奇麗に洗ってもらった。


 さすがに俺の息子は昨日の件があって少ししか反応しなかったが、それでも奇麗にしてもらった。


 脱衣場へ入ると俺が着ていたスーツが洗濯されており、真っ黒に汚れていた靴下も、奇麗に汚れが落ちている。


 裸だった2人のメイドさんは下がり、他の従業員のメイドさんが着替えを手伝ってくれた。


 ほんとにいたれりつくせりって感じだな。来た時に金貨1枚渡したがあれでは絶対に足りないだろうな。帰りの支払いが怖いな。


 過剰請求が来ても、まだお金があるから別に良いか、どうせあのおっさんから奪ったお金だし、少しくらい減っても問題はないだろう。


 問題がおきたらお金で解決をはかろう。それしか俺にはできそうにない。


 会社に行くスーツに着替えが終わる。

 奇麗になっているな。


 丸洗いできるスーツとシャツなので皺とかも自然にとれてくれる。洗い方はあるが、洗濯機でも洗えるとコメントが書いてあったので購入を決めたのだ。


 ネット通販で頼んだもので某洋服店で一般用の一番値段が高い物を選んだ。

 それでも8万円前後だったから安くて良い方だろう。


 2万~8万円が相場みたいだったので、値段が高ければ良い品なのかと浅はかな考えで買ったが、思った以上に良く出来ていて満足している。


 紺をベースにした縦に白の生地を織り込んだスーツだ。派手でもなく落ち着いた感じでそれでもおしゃれな感じのスーツになっている。


 2着目が半額になるクーポン券が使用可能だったのでついでに2着頼んで、結局シャツとネクタイとか全部そろえたら15万円前後になってしまった。


 靴は別だったので以外に出費がかかったな。仕事着なので仕方ないのか、でも満足できる逸品だと思っている。


 ネット通販でも、おしゃれで高級感が出ている服で良かったと思っている。


 先輩には作った方が良いと言われたが、そんな金あるわけないじゃないか。

 オーダーメイドではきりがない値段になってしまうからな。


 それも丸洗いが出来ずクリーニング店直行だ。毎月いくらかかるかもわからん。


 大学出て働きだしたところだし、そんな余裕はなかった。

 それに服装などはそれまでまったく気にした事はなかった。


 特に学生時代は服装など気にしなかった。それよりもソシャゲにはまって何万と課金した記憶がある。と言うかどうしてあれほど課金したのかわからない。


 課金した金を使えばスーツなど何着も買えただろう。一時期の過ちってあるのだと思ってしまっている。


 バイト代を全部突っ込んだしな、もやし生活も経験したし、しかしなぜあれほど課金したんだろう。


 今思うとスーツ代よりも、ゲームで使った課金代の方がはるかに多いってどういう事だ。後悔しているんだよな。


 上司に入社前に言われた、食品関係を取引するのだから清潔な格好で回ってくれと、しかし中には気にしないでいる人もいるらしい。


 そういう人ほどだらしなく営業成績が悪いらしいから、取引相手もそういうのは当たり前に気にするよね。


 だらしない服装だとその会社の社員教育が行き届いていないと判断され交渉する前に敬遠されるからな。


 身だしなみは大切か、ここへ泊れたのもスーツを着ていてそれなりに見た目だけは良かったからかな、足元は汚れていたけど。


 おっと余計な事を思い出してしまったな。さてと、服を着替えはしたけど問題は靴だ。


 今はサンダルを借りて履いているけど、どうしたものか? 

 靴が欲しいんだけど、どこかに売っていないのかな。


 靴を売っている店を聞きたいけど言葉が話せないのでどうにもならん。


 サンダルだけ売ってもらおうかな、ジェスチャーして金貨1枚だせばさすがに買えると思うんだけど、どうなんだろう?


 あ、やばいかジェスチャーはまずいな、どう言う意味合いにとらえられるかわからない、困った事だ。


 脱衣場から出たら、昨日対応してくれた支配人が待っていてくれて、なぜか俺に膝まずきながら、真新しい茶色い革靴を用意してくれていた。


 欲しかった靴を用意してくれていたのね。それも靴は日本で履いていた物と似ているのではないか。


 これは良いな。これって日本のおもてなし以上のサービスではないか。欲しいものが手に入ってしまったよ。


 夜の過剰なサービスもついてきているんだけど、今は何よりも靴の方が欲しかった。


 これってサービスでもらえるのかなと思って受け取ってみる。

 支配人らしき人は笑みを浮かべているので問題はないのだろう。

 遠慮なくもらっておくことにしよう。


 帰り際にチップとして渡せばたぶん問題ないはずだ。


 靴は結構良く作られていてスーツにも合う、サイズがちょっと大きくかかとが緩めだがそれはいたしかたないか。


 せっかく用意してくれたのだ、有難く使わせてもらおう。


 脱衣場から出て、着替えが終わり万全な体制になったら、元居た部屋に案内された。

 入って見ると昨日の夜より豪華な朝食が用意されていた。


 朝からこんな物が出てくるとは、用意されているのだから食べてしまうか。


 高級宿屋ってこういうものなのかなと、考え深く思ってしまった。

 今後の事をどうするか食べながら考えはじめる。


 この宿屋、正直居心地は良い、と言うかこんな贅沢したことがないのでかなり気分が良いのだ。


 従業員のメイドさんは奇麗で、それだけでも満足でいるのだけど気になることもある。


 昨日、宿代用に渡したのは最初の金貨1枚だけだった。あきらかにこれほどのサービスをしてくれるのならば安すぎるのではないか?


 朝食の食事代だけでも金貨1枚あっても良いのではないかと思えてきた。と言うか夜のお相手してくれたメイドさんにも金貨1枚渡しているんだよな。

 これってやばくないか。


 それとも金貨ってそんなに価値があるの? 金貨の価値もわからず物価も相場も全く知らない。


 あとから過剰請求がきそうなので、怖いのだが現状はあのおっさんが金貨をかなり持っていたのでたぶん大丈夫だろうと思う。


 帰る時にかなりの金額の支払いを催促されるかもしれない。

 一応、今から覚悟だけはしておこう。


 言葉が話せないので一泊いくらで泊まれるか聞けないのが残念な話だ。


 正直、持っているお金の半分くらい使える分はここに泊まっても良いかなと思っている。


 金額のことも気になるのだが、過剰なサービスがしすぎなんだよ。


 夜のお勤めだけは、別にやらなくても俺は良いのだよ。と言うか風呂場で十分すぎる。それが困るところなんだよな。


 もしかしてこちらの世界って性に対する対価って相当安いのかな? 奴隷制度があるみたいだから人権問題は相当低そうだよな。


 それにここに来る前に見た、汚らしい格好した首輪の付いた人や獣人、あきらかに立場的に低く扱われていそうだ。


 ここにいる首輪の付いたメイドさん達も同じ立場なのだろうが、まだ良い方なのかもしれないと思えてきた。


 奴隷としてもっとひどい目に合っているのがこの異世界ではいそうでならない。


 俺もこの異世界に来てしまったのだから、そうならないようにしなくてはいけないな。


 チート能力で人を殺めてしまっても、奴隷に落ちるのはまっぴらごめんだね。


 金貨を渡した夜伽をしてくれたメイドの女性は、先ほどは首輪つけていなかったし、なんか俺の言動で良い事かそれとも良くないことが後からおきるのではないかと心配になってきた。


 安全は確保したいので一か八かで、この高級そうな宿屋に入ったのは正解だったのか?

 サービスが過剰すぎて怖いんだよな。


 それに正直、食事はまずい。

 朝だと言うのに、こんな肉ばっかりの豪華な朝食だ。


 まずく感じられるのはこの世界の人たちと味覚が違うのかも知れない。それについては何も言えないだろう。


 しかし朝食からして材料のコスト代だけでも相当な金額になるだろう。こんなにたくさん出されても困るね。


 肉以外にパンらしき物があるけど硬そうで、べったり甘い蜂蜜のような物がこれほどかというくらいかかっている。


 朝から胃もたれしそうな食べ物ばかりなんだよ。見ているだけで胸やけがしてくる。


 高級宿屋だからお金持ちが泊まるのだろうけど、金持ちってこんな生活しているのかな? なんか疑問に思ってきたな。


 食べ物の事を考えると、この宿屋はイマイチだ。しかし他の宿屋で同じならばこちらの方が良いのだろうか。


 そういえば昨日、露店で買ったオレンジ食べてみたら結構甘くてうまかったんだよ。そうなると料理の仕方と味付けだけだよな。


 やはり俺の舌がこの異世界の味付けに、あっていないという事なのか。


 確かに人間以外にも獣人やエルフとドワーフとかを見かけたので、食に関しては多種多様な感じがする。


 エルフは確か肉や魚類が駄目だったのではないかな? 逆に獣人は肉ばっかり食べるイメージだったな。ドワーフは酒好き設定で有名だし。


 あくまで空想の世界でのことだけど、この異世界では日本人の味付にあっていないのかも知れない。


 そう考えると、これから食べ物に関してはうまいものが食えそうになく思えてくる。


 燻製肉とかはとても食えたもんではなかった。我慢して食べて見事に当たったからな。


 それになんの肉だったんだろう。今考えると怖いな、と言うか目の前の肉は何の肉だろう?


 ここの宿屋のは油でかなり揚げてあり火は通り過ぎているので大丈夫だと思うのだが、高級宿屋でこれだ。


 下手をすると安い宿屋とかでは肉や魚類一斉食えないかも知れない。食べ物だけはなんとかしたいけどこの世界では、うまい物は食えそうにないな。


 自分で料理するしかないか、でも日本で生活できるくらいの料理しかできないんだよ。材料がないのは非常に厳しいだろう。


 逆に日本では材料が用意できれば誰でも料理はできる。

 材料は加工されてるし、調味料も調整されて良く出来ている。

 良く考えると便利なところだな日本は。


 似たような食材を探すしかないか、調味料の選別もし、調合しなくてはいけない。

 購入できる物があるか問題だし何よりも言葉が通じないのが痛すぎる。

 どうしたものかと考えてる間に食べ終わる。

 

 まずかった、胃がもたれている。そんなことは言えないけど。


 今は食後の紅茶のような飲み物を差し出されたので飲んでいるがこの紅茶もまずいんだよ。


 見た目はしゃれた高級そうな紅茶のティーカップに入っているが中身は渋くてまずい。

 紅茶の色をしているからたぶん紅茶に似た物だろう?


 しゃれたティーカップの中に、小さな鮮やかな緑色をした葉が1枚浮かんでいる。


 いかにもおしゃれって感じしているのだけど、この紅茶は渋くてまずいんだよ。


 砂糖もないしミルクもない、こんなまずいものよく飲めるなと思ってきた。

 先ほどパンにかかっていた蜂蜜みたいなものを、入れてみたいなと思ってしまったよ。


 郷にいったら郷に従えの精神で我慢して飲んでしまうか。もしかしたらお金持ちのたしなみかも知れないな。

 薬だと思って飲んでしまおう。


 確かどっかの国でもそんな風習があったはずだ。日本でも茶道ってもんがあるだろう。


 渋くて飲めたものではないけど作法の方が重要なんだろう。

 権力者が見た感じかっこ良いから、やってみたってだけって感じしかしないんだよな。


 嗜みと言う権力維持で下の者に従わせる。上からの習わしみたいなものとしか俺は思っていないから。


 今はちゃんとした礼の茶道という事になっているが、権力者達がたまたまはじめた嗜みを下の者に従わせるって事だろう。


 あんな苦くてまずいお茶を、その場でまずいとは言えないし、無理に飲まなくてはいけないのだから。そう考えてもおかしくない事だよな。


 さて、考えて見たけどここはチェックアウト決定だ。

 この街を見てみたいし、それになんか気がかりな事がある。


 この高級宿屋怖い感じがするんだ。

 気のせいだったら良いのだけど、一端ここから撤退したほうが良いだろう。そんな気がしてならなかった。

 

 そう撤退だ、へんな言い方だけどその言い方が良いだろう。


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