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第77話 騎士団長の憂鬱 ③

 夕食の時間になり、食事の用意をしてもらう。

 テーブルの一郭を開けて貰い、炊き出し用のアイテムをセットする。

 傷がテーブルに付かないか慎重に行うのだ。

 強化魔法をかけて有ると言うが、見た目まったく分からない。

 白銀にうっすら光っていると言う話だが俺には全く見えないのだ。


 豆乳を七十度くらい目あすで判断し、にがりを入れて見る。

 少しだけかき混ぜあとは五分くらい待てばできるはずだ。

 だがしかし、今回は上手くいかなかった。

 ヨーグルトみたいに中途半端に固まっている。


 「あちゃー、やってしまったか。

 これは失敗だ。

 固まってはいない」

 「そうですか?

 固まっているように見えますけど違うのですか」

 「うーん、完全に固まってしまうのだよ。

 この状態では湯葉も出来ないな。

 どうしようか、廃棄するのは勿体ないな。

 とりあえず食べて見ようかな」

 温かいうちにみんなに余所って分ける。

 

 食べて見たら、水っぽくて余り美味しくなかった。

 塩を多めに振りかければなんとか食える範囲かな。

 それと温かいのが救いか。

 冷めたらこれは絶対美味しく無いだろうな。


 そう思っていたのだが、三人は美味しそうに食べてしまっている。

 

 「ご主人様、これって結構いけますわよ」

 「美味しいですよ」

 「うん、悪くない味だわ。

 私は塩を入れない方が良いわね」

 「えっ、本当に?

 水っぽく無いかな」

 「そんな事は御座いませんね。

 温かくて柔らかくて美味しいですわよ」

 「でも量が足りないですわ。

 もう無くなってしまったのです」

 「確かに少ないですね」

 「うーん、失敗作なんだけどなんか俺が感じているのと違うらしいな。

 君達はまず量が少ない事が問題なのね」

 「そうですね。

 量が少なすぎます」

 「次回は大目に作ろう」

 「それが良いかも知れません」

 「?

 しかし何故失敗したのだろう。

 温度設定が違っているのか?

 それともにがりの成分が思った以上に少なくて固まらなかった。

 それとも豆乳が薄かったので塊が悪かっただがどれだと思う。

 サレンさん」

 「・・・

 わ 私にはちょっと分かりませんね。

 何回か作ってみれば答えが近づけるのではないですか。

 現に少しですが塊はしたのでしょう」

 「確かにそうだね。

 にがりは取れていると判断して良いだろう。

 次は配分を変え、上手く調整してやろうかな」

 「その方が良いですわね。

 豆腐とやらがまだ私達は分かりませんが、これはこれで十分美味しいと思いますよ」

 「なるほどね、喜んで貰えて嬉しい限りだな」

 「美味しかったですよ」

 「それじゃ、明日も作ってみようかな。

 豆乳は毎日飲みたいのでたくさん作ろうと思うけど、アニスさん達作って貰えるかな」

 「お任せ下さい」

 「それは、良かったよ」

 「ご主人様、残っていた生のおからでしたか、全部乾燥させないで残しておいて良いですかね」

 「別に良いけど」

 「食事に出したいと思っていたのですよ」

 「そうだね。

 結構量が出るから、良いかも。

 まぁ、乾燥して残しておいても良いけど栄養価高いので俺も食べておきたいと思っていたところだから。

 乾燥して粉にするのは後でも良いからね」

 「それは良かったです。

 あの生おからも美味しいですよ」

 「確かに根野菜など細かく刻んで煮るか蒸して入れ、砂糖と混ぜたのも定番でおいしいからね」

 「そんな食べ物まで有るのですか。

 そちらの方が私は興味深いです」

 「サレン、貴方は砂糖が入っているから食いついてきたのでしょう。

 でも聞いて見るとおいしそうですね。

 今度やってみても良いかも知れません」

 「別に良いけど、これ以上やると料理の域になってしまうからね。

 おれは料理は余り知らないけど、前段階の加工するまでは分るんだよね」

 「ご主人様が言っている意味は分かりませんが、私達がオリジナルで料理しても良いのですよね」

 「別に良いけど、あんまり変な物作って無駄にするのは止めて下さいよ。

 不味くても勿体ないから責任もって自分の腹の中に処分して下さいね」

 「そういう訳でしたら問題はありませんね。

 特にサレンは食いしん坊さんだから大丈夫だと思いますわ」

 「確かにそうみたいだね」

 「そんなに私は食いしん坊ではないですよ・・・」 


 (とある宿屋の一室)


 「団長いつまで、その公爵家から渡された手紙と睨めっ子をしているのですか。

 今日も、一日中机の上で見ているだけですよ。

 それとアンドウの見張りの件はやらなくて良いのですか?」

 「見張りの配置はどうでも良い。

 余りにも危険すぎる。

 公爵家からすでに手紙を預かっているのだ、問題はないだろう」

 「そうですよね。

 でしたら早く渡しに行かないと、いけないのではないのですかね。

 もたもたしているとシュタイン家の当主がこの町に来てしまいますよ。

 「・・・

 まだだ、まだ今は動く時期ではない。

 俺にはもう少し考えたい事が有るんだ。

 もう少し待ってくれ」

 「本当にそうですか?」

 「・・・

 分かった、決めたぞ。

 俺の変わりにお前を行かせる事にしよう。

 クリス、副団長の務めを立派に果たしてくれ。

 死んだらちゃんと家の者には、立派な最後だったと告げておくからな」

 「嫌ですよ。

 公爵家が団長に直に渡せとの言いつけですよね。

 それになぜ僕が死ぬ前提で話しているのですか。

 それはあんまりではないですか」

 「・・・

 もうちょっとだけ、だもうちょっとだけだ。

 考えさせてくれ」

 「・・・」

 「ドンドン」

 「失礼します。

 お話の途中、遮ってしまい申し訳なく思います。

 団長に緊急なお話がありますが宜しいでしょうか」

 騎士員の一人が聞いて来た。


 「なんだ、何かあったのか。

 この前の件ですが、団長があの後逃げ帰って来た時に、途中ごろつきに絡まれましたよね。

 その件でお話があります」

 「ああ、俺が半殺しにして、宿屋の地下室に閉じ込めている奴らの事か」

 「そのとうりです」

 「どうせあんな夜中にうろついている連中だ、悪い事をやっているのに決まっているだろう。

 処分しといて構わんぞ。

 剣の試し切りでやっておくのも良いだろう。 

 どの道、王家直属の聖騎士団の俺に絡んで来たのだ。

 生きて帰れなくてもおかしくはないだろう。

 クリスお前は人を切った事は有るのか」

 「いえ、有りません」

 「ちょうど良い。 

 お前の剣の筆おろしには良い相手だろう。

 女は紹介できなくて、下の筆おろしはやってやれないが、人を殺せる機会が出来たのだやっておいた方が良いだろうな。

 シュタイン家との戦争が始まれば嫌でも人を殺さなくてはいけなくなるのだからな。

 前もってやっていたほうが良いだろう」

 「こ 心得えました」

 「団長お待ちを、その件で問題が有るのですよ」

 「何がだ。

 言って見ろ」

 「実はですね。

 そのごろつきの中に貴族のボンボンが居ましてね、引き渡しを要求していますのですよ」

 「ああん、なんだと。

 なんであんなごろつき連中の中に貴族が居るんだよ。

 おかしいだろうが」

 「どうやら親のすねを齧って悪さをしていたようですね。

 どうしましょうか?」

 「そいつの親は役職持ちの貴族なのか」

 「言え違いますね。

 ただ公爵家に綱らる下っ端の男爵家に付いている奴ですね」

 「おいおい、なんでそんな下っ端の貴族が俺らに言って来るんだよ。

 俺らは王家直属の騎士団だぞ。

 一応だけど」

 「公爵家に綱らる貴族なんで、話をとうしたいとの事ですね。

 男爵家からの手紙を預かっております。

 読みますか」 

 「分かった、読ませて貰おう。

 ・・・

 ・・・

 ・・・

 なんだこれ、上から目線で何を言ってやがる。

 こいつは今回のシュタイン家との争いに参加しないのか?」

 「そうらしいですね。

 参加したとしても役にたたない小物のですから、呼ばれもしなかったのではないですかね」

 「なるほど、そう言う事か。

 クリス話は聞いたか」

 「はい、聞きましたけど何ですか」

 「お前の家の権力でこいつらを潰して来い。

 お前の親父の地位だったら簡単に出来るだろう」

 「えええ、何ですって。

 そんな事は出来ませんよ」

 「今回はお前の家も参加はしていないのだろう」

 「そのとうりです。

 領地の治安を守れと言う話が来ていますようですね」

 「それだったらちょうど良いではないか。

 俺からこいつ等が国家反虐罪の恐れがあると手紙を書いておく。

 おまけにシュタイン家とこいつらごろつき共が繋がりがあると書いておくので問題はないだろう。

 それで済むはずだ」

 「そんな無茶苦茶な」

 「クリス物は考えようだ。

 今の情勢それで万事なんでも解決できる。

 シュタイン家に加担する裏切り者だから、公爵家は容赦しないからな」

 「それが許されるのですか」

 「実際、俺はアンドウを見張れと言う重要な任務を受けていた。

 ついでだがあの悪魔の事で話を聞いていたのだ。

 そんな時に業務妨害してきたのだからな。

 問題なくごろつき共は処分できる」

 「それは分っていますが」

 「良くある話だ。

 それに俺は今、最重要な任務をおおせ使っているのだぞ。

 お前が代わりに行ってくれるか。

 それだったら俺は喜んでその男爵のところへ殴り込みをかけるぞ」

 「それは遠慮したいです」

 「そうだろうな。

 こちらの任務を達成できなかったら、どの道そいつらが妨害したとして処分されるのだ。

 同じだろう」

 「・・・」

 「どの道悪い事をやっていた奴らだ。

 加担している男爵家ごと、潰してしまえ」

 「男爵家は加担していないと思いますが」

 「別にそんな事はどうでも良いんだよ。

 業務妨害が問題だろうが」

 「・・・

 分かりました。

 団長の命令で仕方なくやるんですからね。

 他の貴族に恨まれても知りませんよ」

 「構わん。

 いらん奴らだ。

 処分したほうが良いだろう」

 「了解しました。

 お受けさせて貰います。

 その代わり手紙の方は速く届ける事をお勧めします」

 「・・・」

 「それでは、任務に取り掛かりたいと思います」

 「ああ、そうそうお前は伝えたらすぐに帰ってくるんだぞ」

 「なんでですか」

 「決まっているだろう。

 お前も、アンドウの所へ行くからに決まっているじゃないか。

 副団長も居なくては失礼にあたるだろうが」

 「そんな・・・」

 「なんだ不満か」

 「いえ、滅相も御座いません」

 「手紙をすぐに書く。

 しばし待って」

 「了解いたしました」

 ああ、僕ってこうやって汚れていくんだな・・・


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