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第68話 悪い顔しているよな

 「ご主人様、おからクッキーとは難しいのですか?」

 「そうではないけど、材料と道具次第かな」

 「あくまで、君達が食べられる仕様で作ると難しくなるって事かな」

 「そうでしたか、私達に気を使わして、申し訳御座いません」

 「気にしないで良いよ。

 使用できないものを、代替えする事なんて当たり前に有る事だからね。

 それに、クッキー関係のレシピは人それぞれの好みで違うから、かなりの数が有るんだよ。

 数が合っても、俺が知っているレシピは一つしか知らないんだよな。

 まぁ、材料違えど、うまく配合の割合を変えれば済むはずだから。

 それに、配合だって数知れず有り参考にはなるが、自分の好みで完全に良いって言うのもないしね。

 材料とある程度の配合具合を知っていれば出来るのものだからそれほど難しくは無いんだよね」

 「そうなのですか。

 よく分かりませんが、お手伝いはします」

 「それじゃ、ターナさんにもいっしょにやって貰おうかな。

 クッキーの作り方を教えるよ。

 食べ終わったら準備をしようか。

 良くっ考えたら、作るのに時間がかかるんだよね」

 「分かりました。

 午後からは教えて貰いたいと思います」

 おぉ、これは良いな。


 午後からは可愛い嫁さんとクッキー作りか。

 これはトレーニングを後回しになっても良い事案だな。

 

 しかし、問題は材料の代替えか、俺の知っているおからクッキーのレシピは 

(四センチ丸形おからクッキー 約25枚分)

材料

おから 約三十グラム(乾燥させた市販の物)

片栗粉 二十グラム

小麦粉 四十グラム

バター 百グラム

砂糖 ニ十グラム

牛乳 八十㏄

簡単にフライパンで子供でも出来るクッキーだ。


 大学時代、正月に里帰りした時、親戚の子供達が来ていて、学校で作った事が有るから、みんなで作りたいと言い出して手伝った事が有るんだよな。

 

 ザクザクして硬かったけど、結構おいしかったんだよ。

 てっきり、おからって生のを使うと思っていたんだよな。

 まさか乾燥しているおからが有るとは知らなかった。

 乾燥させたおからが市販で売っていると、その時知ったよ。

 作った事が有るので、測らなくとも目検討で材料の量がなんとなく分かる。


 乾燥おからはすでに手に入った。

 残りの代替えが片栗粉とバターと牛乳だ。

 まず牛乳は豆乳で代替えできる。

 出来れば濃い豆乳が良かったが、二人がやらかしたのであれを使うしかない。

 それに片栗粉、これの代替えは普通は小麦粉なのかな?

 でも小麦はすでに入っている。

 替わりが無いので、小麦粉を多くするしかないのか。

 それよりも思ったのだが、おからクッキーなのに何故小麦の方が多く入るのかと疑問に思えるが、まぁ良いだろう。


 問題は、バターだ。

 植物オイルで代替え出来るかが問題なんだよ。

 まぁ、定番で味を誤魔化す為に濃く作ってしまえば良いんだけど。

 バターの風味はさすがに出ないから、甘くして誤魔化すしか無いか。

 そうすると蜂蜜が有るのでそれを入れても良いな。

 でも、あまり砂糖とか多く入れると焦げやすいんで注意が必要なんだよ。

 別に蜂蜜を入れないで、焼きあがったクッキーに漬けて食べても美味しいと思うけど。

 それに餡子をのせるか、挟んで食べても美味しいよな。


 しかし、油か、いやな事を思い出してしまったな。

 食用油については、いやな感じしか俺にはない。

 

 仮にも食品会社に勤めていたんだ。

 それなりに知っている。


 会社でビスケット生産している工場の一郭が有ったからな。

 それにチョコレート関係、ラスクにチョコレートを染み込ます菓子を研修でやらされた事が有る。

 どれも、かなり食用油が入っているのだ。

 ビスケットなんて、油と砂糖がかなり使われている。

 生地に油を練り込んでフライヤーで焼くのだ。

 

 いろいろ手法が有るが、うちの会社でやっている方法は、生地に食用油を練り込んで焼く方法だった。

 長い五十メートルは有るフライヤーで一気に焼いてしまう。

 まぁ、工場だからそうだろう。

 その練込む油の量が多いの何って、ビスケットが油と砂糖の塊と思ってしまったほどだよ。

 よくこれが子供向けのお菓子だと言えるなと、思えるくらい入っているのだ。


 それにチョコレートもそう。

 ラスクに染み込ませるチョコレートは油の塊だ。

 特注でチョコレート会社に作ってもらうのだが、油の量をわざと多くしてもらっている。

 カカオの成分が多いとチョコがラスクと分離してしまい染み込まないのだ。

 油でラスクに染み込ませていると言う。

 品管の新製品で作るのを聞いたけど、油を多くしないとまったく染み込まないと嘆いていたよな。

 まぁ、カカオの成分が少なければコスト的に安くて済むとか言っていたけど。

 油の塊と、知っていると食えないなと言っていたよ。

 自分で制作していてそれは無いんじゃないの。

 味見で食わされるのは俺なんだから、それも出来た正規品と違うの食わされているんのはなんなのと思う次第だ。


 まぁ、なんでもそうだけど原料見てしまうとなんだかなぁと思うんだよな。


 手作りで作った方が健康で良い物食べていると思える。

 今回、作るにはちょうど良い事なのかも知れない。


 食事も終わり、いつもの時間に給仕の人がかたずけに来る。

 給仕の人に頼んで小麦に相性の良い植物オイルを用意して貰う。

 宿屋側で使っている良い植物オイルが有るので、オーナーに話せば持って来られると聞いた。

 早めに欲しかったので、金貨一枚のチップを渡して話を通して貰う事にする。

 さすがに、チップで金貨一枚は多いと思ったのでついでに、豆と砂糖、それに小麦を追加で貰えるか頼んでみる。


 うーん、海外でチップって出すと言われるけど、日本にはそんな風習は無いから曰く間があるな。

 でも、いくら宿屋を利用する客でもよそ者が、何かを頼み事をするには出さなくてはいけないと感じてくる。

 チップはある程度必要な事なのだと認識した感じだ。

 しかし、貴族はまったくお金を出さなくて良いと言う話はレイズさんに聞いたが、そんな事は俺にはできないと思ってくる。

 お金は多く出すか、無償で分捕るように待遇を受けるか。

 どちらかと言うとお金を多く出した方が良いなと思ってしまう次第だ。

 まぁ、いまのところお金が有るからそんな事を言えるんだろうな。


 さてと、持って来てくれるまで、準備をしてしまうかな。

 道具の確認をしておこう。


 サレンさん達に、炊き出し用のアイテムの使い方を教わった。

 炎燃石の調整が上手くできず、断念してしまった。

 炎燃石は魔法習いたてでは出来ないよ。

 魔法力の調整が必要なので難しすぎる。

 サレンさん達があまりにも簡単に炎の調整をやっていたので出来ると思った俺が馬鹿だった。

 舐めてしまっていた事を思い知らされたな。


 炎燃石が使えないと何も出来ないので頭が上がらない。

 これは、つまみ食いなどしても、何も言えないなと思ってくる。

 その事をサレンさん達に気づかれてはいけないと思った次第だ。

 魔法の練習ついでに炎燃石を調整をしたいが、火を使うので問題なんだよ。 

 俺みたいペイペイだと間違って火事を起こすだろうな。

 これはもう少し魔法を練習してから、取り扱いたいと思う。


 準備を終えた頃に、給仕の人が、頼んだ材料を持って来てくれた。

 オイルはサレンさん達が言っていたグレシードの種を濾したオイルだったね。

 小麦と混ざりが良いと聞いたので最適だな。

 これで、また一つ解決したな。


 さてと材料が手に入ったので作って用意してみるとしましょうか。

 生地を使って一時間冷蔵庫で冷やした方が良かったかな?

 まぁ、どちらでも良いかな。

 幸い人間冷凍装置がいるので問題なく冷やせられるから。

 それも積極的に手伝ってくれると思うので問題は無いはず。


 「それじゃ、始めようか。

 材料はこれだね」

 代替品で今回用意した材料だ。


 目検討だが、覚えていたおからクッキー二十五枚分の材料を用意する。


 「おからは乾燥してあるけど、粒がかなり大きいので、すり鉢でできるだけ粉の状態にしてしまおう」

 「ターナさんやって貰えるかな」

 「分かりました」

 「あら、私がおこなっても良いですよ」

 「アニスさんはあっちで塩の生成を頼むよ。

 今回はターナさんにやって貰うからね」

 「まぁ、ずるいですわ。

 それでは試食で食べられ無いですよ」

 「生地を寝かせる下準備が有るので、約一時間以上はかかる。

 その後プライパンで焼くからもっと時間はかかるよ。

 手間がかかるので、すぐには食べられないよ。

 それまで、塩の生成お願いね」

 「そう言う事でしたら、仕方ありませんわね」

 「まぁ、そう言う事だ。

 塩の生成頼むよ」

 昼食前にあれだけ豆乳の飲んで、その上果物をかなり食べた。


 果物はほぼ水分だけど、それにしても食いすぎでは無いか。

 それに加えまだ食い足りないと言うのか。

 お腹が膨れた感じもしていないのに、前から思っていたけど何処へ食べた物が言っているのか不思議に思えるよ・・・


 「最初におからをすり潰して粉にしてから、豆乳を少し入れ、その後砂糖、砂糖が解けたら小麦とオイルを少しづつ足して混ぜながら練って行けば良いからね」

 「こうですか」

 「そうそう」

 「それで、豆乳の入れぐわいで生地の柔らかさを調整するんだ。

 豆乳は用意した物全部使わなくても良いから。

 あくまで目あすで用意したから。

 一応、前に作った時はこの量だったけど、材料とかで生地の具合が変わるから、同じ量では無いんだよ。

 小麦の量とかで調整してお良いけど。

 量がだんだん多くなってくると、甘さとか変わるのでまた砂糖とか足したりしなくてはいけないから、水分調整でミルク・・・おっと豆乳か。

 豆乳で調整したほうが良いからね」

 「分かりました」

 「生地が出来て来たね。

 柔らかさはこんなもんだね。

 このくらいを覚えておいてね」

 「分かりました」

 「生地の柔らかさで、出来具合はかわってくるから。

 焼き加減で調整も出来るけど、なるべく一定の方が良いからね。

 まぁ、これは回数こなしコツを掴めば誰でも良くできる。

 慣れてくれば、配合とか自分の好きに変えて、固さと甘さなど自分好みに調整しても良いしね」

 「そうですね。

 自分好みに作れるって面白いですね」

 「そうだね。

 面白いね。

 でも、余りやり過ぎて失敗すると、自分で食べて始末しないといけないんだよな」

 「そういう時には、私にお任せください。

 多少の失敗でも私は問題は有りませんから」

 「それじゃ、失敗したらサレンさんに後始末は任せるよ」

 勿体ないので、黒焦げとか、生焼けとかでも、食べて貰うからね」

 「大丈夫です。

 そのくらいは許容範囲ですから」

 「そうなのね」

 ずいぶんと許容範囲が広そうだな。

 

 俺が思っている失敗品と、サレンさんの失敗品は大きな違いが有るのかもしれない。

 それだとある程度の物は大丈夫そうだな。

 これだと安心して作れる。

 

 そう思っていたのだが、後々俺は間違っていた事に気づくのだった。


 よし、生地はそのくらいで良いだろう。

 「ターナさん、それでOKだ。

 混ぜるのやめて良いよ」

 「分かりました」

 「これで、出来上がりなのですか?

 試食して良いでしょうか」

 「えっ、サレンさん。

 まだ焼いていないから全然出来てないよ。

 さっき、フライパンで焼くっていったじゃないの?

 これから一時間ほど冷やして寝かしてから、小さく生地を成形して焼くんだよ」

 「そうなのですか?

 この状態でも美味しそうに見えますが」

 「いやいや、これはさすがに食べられないでしょう。

 そもそもサレンさんてクッキーが何なのか知っているのかな?」

 「知りませんが、なにやら響きが美味しそうです。

 それに、お菓子と聞きましたから。

 エルフの里ではお祭りの特別な時に、果物を焼いたお菓子が振舞われるのです。

 作り方は秘匿にされていますので知りませんが、とても甘く美味しお菓子が有るのですよ」

 「それって、どんなやつ」

 「大きな林檎を焼いた菓子なのですが、とてつもなく甘いのです。

 蜂蜜のような味がしますのですよ。

 じゅるり。

 おっと失礼しました」

 「・・・

 焼き林檎の事かな。

 林檎の蔕から取っ芯の繰り抜き、バターと蜂蜜を入れ丸ごと焼いたモノじゃないかな。

 赤い革がしおれた紫色になっている奴かな」

 「そう、それです。

 なぜ、エルフの秘匿のお菓子を知っているのですか?

 エルフの里にスパイしに入ったのですか?

 怪しいですね、ご主人様」

 「いやー、煮たようなお菓子かな?

 あるのでね、確かクリームチーズとか入れても良かったんだよな。

 会社で、作ったから食べてと言われて戴いた時があるんだよ。

 たまたま知っていただけだよ」

 「そうなのですか。

 蜂蜜を中に入れて焼くのですよね」

 「良い事を聞きました。

 今度作っていただけませんか」

 「うーん、どうしようかな。

 あれは難しいんだよ。

 崩れないように焼くのが難しかったはず。

 オーブンで焼かなくては出来ないから、そんなもんないし、温度設定も知らない。

 此処ではパンを焼く窯みたいのないと作れないと思うよ。

 それが有れば出来ると思うけどね。

 まぁ、簡易の小さい窯作って、炎然石で君達の魔法をうまく使えば出来るかもしれないが・・・」

 「そうなのですか。

 それは困りましたね。

 ご主人様の地位を傘に、人間の店を一つ譲って戴くしかないですね。

 考えて見てはどうでしょうか?

 協力しますよ」

 「いやー、俺は別にそこまでして作りたくないけど・・・」

 「そうなのですか。

 それは残念です。

 気が変わったら教えて下さい。

 お手伝いしますからね」

 「それについては、ノーコメントと言っておこう」

 「ちぃ」

 おいおい、なんか舌打ちしたぞ。

 

 蜂蜜が入っていると聞いてから人格が変わってしまったよ。

 本当に悪い顔しているよ。


「・・・

 そんな事をしなくても、林檎の皮を剥いて細かく切って、砂糖で煮詰めれば良いんじゃないの。

 前俺がジャムとか言っていたよね。

 それの前工程で同じような物が出来るからそれで良いんじゃないのかな。

 まるまる一個林檎を焼く必要は無いしね」

 「そうなのですか。

 それでは今度食事の時に、林檎の確保をしておきますね。

 作り方を教えて下さい」

 「教えるだけで、俺はやらないけど良いかな」

 「構いません。

 やり方を教えて戴いたならば、私で研究しますので」

 「それだったら別に良いけど」

 「了解いたしました」

 サレンさんて蜂蜜好きなのは、林檎の菓子に魅了されてしまったからなのかな。

 

 祭りの時に特別に食べられる菓子か。

 でも頑張れば作れるよね。

 もっとも俺も、そんな特別な菓子は滅多に食べないけどな。


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