第60話 甘い物好きなサレンさん
煮豆の下準備も終わり、その後は、朝食が来るまで適当に、ターナさんと魔法の練習をする。
「ご主人様、だいぶ魔法が上達しましたね」
「そうかな」
「私も頑張らなくてはいけません。
まだ、覚えきっていないサレンさんとアニスさんに習った魔法が多くありますから」
「そうなんだ。
そういえば、サレンさんとアニスさんはどちらの方が魔法が得意なのかな」
「魔法はアニスさんの方が得意だと思います。
でもサレンさんは細かく丁寧に教えてくれるので、最初に習うにはサレンさんの方が良いですね。
それにサレンさんは剣技も使えるので、魔法剣士のような事が出来ますよ。
物理強化魔法に適した、魔法を多く知っています。
「ほほう」
「アニスさんは、氷結系と雷系の遠距離広範囲攻撃が得意ですね。
それと状態異常系を誘う、魔法も得意としています」
「ヘー、そうなんだ。
確かに、サレンさんにナイフで切られた時の太刀筋、スーッ見事に入って来たから驚いたよ
切り口もスパッと切られて血が後から出てきたからね。
切られてから熱い痛みが来るとは思わなかったし。
あんな痛みの感覚があると、初めて知ったよ」
「ご主人様。
あんな危険な事は、もう二度としないで下さいね」
「うん、分かったよ。
ターナさんに言われたのだったら守るしかないな」
「ご主人様・・・」
「コンコン。
失礼します」
「おっ、朝食が来たようだ。
着替えて、ソファーで待って居よう」
「分かりました、ご主人様」
スーツに着替えて、ソファーに寛いでいた時に、朝食を準備していた従業員の一人が大き目な瓶を二つほど抱えて持ってきた。
おぉ、これは蜂蜜じゃないか。
こんなに早く手に入れてくれるとは思わなかった。
嬉しい限りだな。
それと、外のベランダへ出られる扉の鍵も渡される。
それから朝食の片付け時後、俺が頼んでいた調理道具一式を持ってきてくれると言っていたな。
オーナーのレイズさんには感謝するしかない。
これで、甘煮豆ができる。
朝食を食べ終わったら、二人に作業して貰おう。
朝食の用意が出来、従業員が帰って行った。
帰ると同時に、のそのそと、サレンさん達が起きてきた。
今日は、普通に起きられたようだね。
でも、動きは、まだ二人ともぎこちが無い。
朝食をいただき終える。
かたずけ時に、調理道具を持ってきてくれた。
一応、持ってきた人に、みんなで何か、美味しいのを食べてと言って、金貨を一枚渡して置いた。
チップだな。
これくらいは出しても良いだろう。
それじゃ、昨日、水戻しした豆で甘煮をの作って貰うとするかな。
豆を砂糖を入れながら煮るだけだから、炊事を少しでもやったことある人は誰でも出来るので、サレンさん達には問題ないだろう。
と言うか、料理はしないが、ポーションは作った事あると言うので簡単に出来るはずだ。
ポーション作りの方が、難しそうだな。
その前に、さっき戴いた蜂蜜を使って、オレンジの蜂蜜漬けを作ってしまおうかな。
瓶は別のが有るので移し替えてしまおう。
蜂蜜が入っている瓶の方が、作るのにちょうど良い大きさなんだよな。
蓋もしっかりしているしね。
入れ替えの瓶は、洗浄う魔法を使って消毒してもらう。
調味料とか材料に、洗浄魔法かけられるか聞いたら、やめた方が良いと言われた。
あくまで身体や物を奇麗にする魔法なので、食の用途で使うのは問題が出ると聞いた。
しかし、詳しい理由を説明してくれなかった。
ただ、危ないと言うだけで口を濁すのだ。
疑問に思ったが、もしかしてサレンさん達も良く分かっていないんじゃないかと思ったので、それ以上は追及はしなっかった。
分からない事は、分からないしな。
とりあえず朝食で出ていた、酸っぱいオレンジを取り置きしていたので、それを使ってみよう。
水魔法で奇麗に洗って、風魔法で乾かし、蜂蜜漬けにしてしまおう。
しかし、その過程でちょっとだけ、問題があったのだ。
蜂蜜の瓶をサレンさんに見せたら目の色が変わったのだ。
ものすごく、物欲しそうな顔をしている。
口からよだれを出しそうな雰囲気を、かもしだしているのだ。
「ご ご主人様、それはどうしたのですか?」
「あぁ、昨日頼んでいた物が、朝方、二つほどだけど持って来てくれたんだよ」
「それって、蜂蜜ですよね」
「蜂蜜を頼んだから、蜂蜜だと思うよ。
蜂蜜だって言っていたしね」
「ゴクリ、蜂蜜なんですね」
「まだ中身は、確認していないから分からないけどね。
どう見ても、蜂蜜だと思うよ。
・・・
もしかして、サレンさんは、これが欲しいのかな」
「・・・
ご主人様、何が望みですか。
譲ってくれるなら、私に出来る事でしたら何でもしますよ」
目の丸くして、サレンさんは言ってきた。
「えっ、本当に、でも今は別に望みは無いけど。
・・・
そんなこと言うと胸を見・・
いや、なんでもない。
・・・
なんか、サレンさん目つきが変わって怖くなったよ。
たかだか、蜂蜜じゃないか。
そんな真剣な、怖い顔しなくても良いじゃないのかな。
アハハハッハ。
ハッ」
サレンさんは、危ない目つきで蜂蜜の瓶を見ている。
おいおい、これってやばくない。
下手をするとこの蜂蜜に何かあったら殺されそうな気がするよ。
瓶を落として割ってしまったらどうなるだろう。
発狂して襲われそうな気がする。
気のせいではないよな?
と、とりあえず、使う分だけ残し、空間魔法に閉まっておこう。
「ちょっと待ってね」
「あああぁぁぁー」
蜂蜜の瓶を一つだけ残し、後はしまってしまう。
「サレン、気を確かに」
「ハッ、私は何を・・・」
「もう、サレンたら甘い物には目が無いんだから」
「ご主人様、失礼しました。
とんだ醜態を見せてしまった様です。
お忘れ下さい」
「別に良いよ。
サレンさんて蜂蜜が好きなんだね」
「確かに、好きですが、甘い物を嫌いな人はいないと思います。
それに蜂蜜はかなりの貴重品なのですよ。
手に入れるのに、命がけですからね」
「へー、そうなんだ」
「蜂には種類有りますが、五十センチ近くの凶暴な肉食の大型の蜂とがいます。
蜂蜜を取るのには、命がけなんですよ」
「そうなの、でも肉食の蜂って確かにやばいな。
それにでかいんでしょう。
?
でも肉食で花の蜜集めるのかな」
「これ、サレン、それは蜂のモンスターでしょう。
御免なさい、ご主人様、サレンは、気が動転してモンスターの蜂と混合しているのですよ。
もう、冷静になって下さいな」
「・・・」
「確かに、蜂蜜を取るのは危険ですが、命がけではないのでご安心を。
でも貴重なのは確かかも知れませんね」
「なるほどね。
サレンさんの中ではとてつもない貴重品だと言う事が分かったよ。
使い終わって余ったの分を譲ってあげるから、そんな怖い顔しないでよ。
顔付きが、変わってしまっているよ」
「本当ですかー。
余った蜂蜜を、貰えるのですよねー」
「あぁ、そうだけど」
「約束ですよ。
約束破ったら、ご主人様を呪いますからね。
ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハア」
「・・・」
「もう、サレンたら。
ご主人様、お許し下さい。
サレン、落ち着いて下さいな」
俺とターナさんはサレンさんの意外な一面を見てドン引きしている。
「失礼しました。
つい取り乱しました」
「別に気にしてないから」
「それで、ご主人様、蜂蜜をどうするのですか?」
「この蜂蜜で、オレンジを切って漬けようと思ってね。
蜂蜜のオレンジ漬けって言うのが有るんだよ。
正確にはレモン漬けの方が正しいかな。
レモンの方が多くやっているから、でもこちらの世界では無いのかな?」
「そうなのですか。
それで、どうすれば良いのでしょうか。
何かお手伝い出来ますか?」
アニスさんは興味深そうに言ってきた。
「それじゃ、朝食で残った、オレンジを奇麗に洗って、乾かし、輪切りにしてもらいたいんだけど良いかな」
「お任せ下さい」
アニスさんにオレンジを輪切りにしてもらう。
「輪切りにする感覚は、七ミリくらいで均等に切って貰えるかな」
持って来てもらった、調理台を用意し奇麗な布を引いて切って貰う事にした。
ちなみに切るナイフはごつい。
果物ナイフじゃないよな?
出刃包丁だよな。
とても俺には使えそうにない気がする。
いつも、家で使っているのはステンレスナイフのプレスで平たくした薄い包丁だから、まったくと言って良いほど違う。
此処では、そんな物は無いので、こちらのナイフを見て驚きを見せている。
俺にはちょっと練習しないと革剥きも難しそうだな。
さすがに、扱いなれているせいか。
アニスさんはサクサク切って行くね。
「ありがとね。
それで十分だよ」
とりあえず三つ分のオレンジを切って貰った。
同じ大きさの良いところだけ、使おう。
とりあえず一瓶だけだ。
蜂蜜に漬けても、美味しとは限らないからな。
一端、蜂蜜を別の容器に移す。
蜂蜜が入っていた容器が漬けるのにちょうど良いので、それに輪切りにしたオレンジを蜂蜜を交互に一枚づつ入れていく。
それだけの作業なのだ。
「Oh no・・・」
サレンさんが突然大声を上げた。
頭を抱え、ムンクの叫びのような容姿になっている。
「ど、どうしたのサレンさん」
「ご主人様、なんて勿体ない事を、正気ですかあぁぁぁ」
えっ、蜂蜜にオレンジを漬けたのが気に入らなかったのか?
サレンさんは床に手お付き、この世の終わりのような顔をしている。
おいおい、たかだが蜂蜜にオレンジの輪切り入れただけでそんな顔する事は無いじゃないか。
身体から黒いオーラが出て来てだんだん、容姿が貞子に見えてきたよ。
これって不味くない。
「サレン落ち着いて、美味しそうな物が出来そうじゃないのよ」
「なんですってアニス、あれが美味しそうに見えますか?」
サレンさんはアニスさんに掴みかかって言った。
やばいな、これは・・・
素早く作業をしてしまおう。
「サレンさん、サレンさん、落ち着いて、もう使い終わったから、残りあげるから」
「・・・」
三分の一ほど、残っている蜂蜜をサレンさんに渡した。
サレンさんから出ていた黒いオーラが消え、おとなしくなった。
サレンさんは蜂蜜を一指し指につけ、舐め始めた。
「美味しい」
そう言って、にこやかな顔をして、まるで子供のように蜂蜜を舐めているのだ。
三人ともドン引きしている。
「ご主人様、サレンが甘い物好きだと知っていたのですけど、これほどだとは知りませんでした」
「そうだね。
人が変わるほど蜂蜜が好きだとは、俺も思わなかったよ。
これは迂闊に蜂蜜を使えないな。
もし、瓶など落として割ってしまったら、殺されそうな気がするよ。
今は満足するまで、放置しておいた方がよいな」
「そうですね。
しばらくは、あのままほおって置きましょう。
それで、ご主人様、その蜂蜜漬けは完成なのですか?」
「このままニ 三日漬けて置いて、蜂蜜が浸透すれば完成だね。
どこか涼しい場所あったら置いて置きたいんだけど、無いかな」
「そうなのですか。
それでは魔法で、冷却空間を作ると言うのはどうですか?」
「冷却空間?」
「そうです。
魔法陣を作って範囲の物を冷やして置くことができるのですよ」
「おぉ、そんな事が出来るのね」
「商人が使う倉庫や馬車などで、腐りやすい物を置いて置くときに便利な魔法なんですよ。
壁や床などに、冷却の属性魔法陣を描いて作るのです。
これだと長く持ちますし、それに炎系の魔法陣を作ったりすると暖かいんですよ」
「なるほど、冷却して持ち具合を長く持たせるのか、良い発想だね。
それに炎系だと温めも出来るのか」
「魔法陣を一回かけるごとに、十分から長くて八時間ぐらい持ちます。
効果は術者次第ですが、長時間持続させる魔法です。
それなりに魔力を使います。
持続魔法を何回も繰り返し、かけ直しをしなくてはいけないので大変なのですよ」
「うむ、確かに、大変なのが分かるな」
「それででして。
私が魔法を使っても良いですが。
大変なので、それなりに負担になります。
できれば、ご褒美を貰いたいのですよ。
宜しいでしょうか」
「うむ、それは仕方ないな。
それで何が欲しいのかな」
「その、先ほど作った蜂蜜のオレンジ付けを、私には多めに貰えないでしょうか?」
「分かった。
別に良いよ。
でも美味しいとは限らないからね。
それで良いのだったら別に良いよ」
「やりました。
交渉成立ですね。
それじゃ、邪魔にならないところに魔法陣を作りますね」
そう言って、アニスさんは凍結系の魔法陣を作り、冷える空間を作った。
アニスさんて案外、こういうところちゃっかりしているんだよな・・・
サレンさんはどうなったのだろう。
おっ、だいぶ大人しくしているな。
なんか美味しそうに指をしゃぶっているけど、端から見れば危ない人だぞ。
満足するまで待つとしようかな。
それじゃ、とりあえずアニスさんに、昨日用意した豆の甘煮作って貰おうかな。
料理は余りした事無いと言っていたけど、薬の調合やポーション造りで、火を使う作業やった事が有ると言うので問題は無いだろう。
ポーション造りの方が絶対大変そうに思えるからね。
「アニスさん、昨日話した豆の甘煮作って戴けるかな」
「お受けしますわ」
「それじゃ、下ごしらえはしといたから、外のベランダで作業をして欲しい。
あそこに見える扉から行けるみたいだから、結構広くベランダが作ってあるみたいだね。
十分スペースが合ってできるでしょう。
昨日、説明して貰った、魔法の炊き出しセットかな。
あのアイテムでお願いするよ。
鍋と容器のボールは、さっき借りられたから使わせて貰おう。
最初は、とりあえず一通り教えるからさ。
ターナさん材料を運ぶの手伝って貰えるかな」
「分かりました」
ベランダへ、材料を持って行き準備をしてしまう。
「サレンさんは、後で良いだろう。
とりあえずアニスさんに教えるからさ、サレンさんと二人でやって下さい。
「分かりました」
「まぁ、下準備はしているのでやることは、お湯を沸騰させて煮るだけなんだよ。
簡単だけど、豆によって煮る時間が違うから、それと灰汁が出るので取って戴きたいんだよね。
金時、豆は一時間、大豆と小豆は三十分くらいかな。
すでに水戻しと、ちょっとだけ灰汁抜きやってあるからさ」
「あらら、豆が大きいですわね」
「昨日の一晩水で浸して置いたからね。
だいたい水戻しで、この三種類の豆は八時間から十時間てところかな。
あとは灰汁を取りながら柔らかく煮るだけだからね。
柔らかく煮終わってから一度水切りをして、再度砂糖を入れて煮直すと言う事だけだから、時間は二十分くらい砂糖水で煮て欲しいんだよね。
焦がさないように火下限と水分調整でをでうまく煮るだけだからさ、簡単でしょ。
分量はだいたい豆の十割に対して砂糖は七割くらいだったかな。
目あすだとこのくらい砂糖が有れば良いと思う。
それで先にこの砂糖をお湯で溶かして、水飴状態にしてもらいたいんだよな」
「直接、砂糖を入れないのですね」
「そうそう、水飴状態にして入れれば、粉堪りと焦げ防止になるからね。
使い勝手が良いのだよ」
「なんか、回復ポーションとか作っているみたいで面白そうです」
計量しながら料理をするなんて、そんな事しませんから」
「そうなんだ。
でも計り無いから、あくまで目分量で合わせているけど」
「回復ポーション造りもそんなもんですわ」
「そうなの」
「原料を最初のうちは計ってやりますが、慣れてくれば目分量ですね。
少しくらい材料残ってしまいますと結局全部入れてしまう事など有りますからね」
「えっ、大丈夫なの」
「薬草などの余りは、どうせ捨ててしまう事になるので勿体ないですし。
他の保存できるアイテムが残っているのだったら多めに入れて手探りで作ってしまうのですよ。
ですがそれで失敗する人は多くいるのですけどね」
「そりゃ、そうだろうな」
「もともと、回復ポーションなんてムラが有りますから。
回復の良い物と悪い物が合っても、仕方がないと分っていますからね。
効果がイマイチでしたら、効果小ポーションとして扱えば良いのですから。
値段だって人それぞれですし、効果が無い、まがい物だって有りますからね」
「うわー、いい加減な・・・」
回復ポーションだぞ。
効果が無いのつかまされたら堪ったもんではないじゃないか。
そう言うのが売っているの店も有るんだな。
確か魔法の本も偽物が有るらしいから。
これは買うのにも気を付けないといけないな。
鑑定と言うスキルが欲しいところだ。
「・・・
今日は試しなので、見たとうり三種類の豆を同じ量くらいし用意してないのだ。
砂糖液はまとめて作るから、三分の一づつ使ってくれないかな。
お湯で砂糖を溶かし、完全に溶かして貰えば良いから。
まずは砂糖液用意する。
「このくらい水を使い、どろりとした感じで良いからね。
蜂蜜より、かなり水ぽっいけどこれで十分だから。
これを、三分の一づつ入れて貰えれば良いから。
豆を甘く煮る時に、水も入れるからさ、砂糖液は今回はこのくらいで良いからね。
他で使う時は水分調整は別にするからね」
本当は糖度計でブリックス値を計りたいけど、そんなもの無いし、数値も曖昧で覚えていないからな。
どうせ、試しで作るだけだからな目検討で良いだろう。
「それじゃ、やり方教えるから、後はお願いね。
まずは金時豆からやりましょう」
昨日やり方を教えたので、問題ないと思うが念の為、もう一度説明する。
煮る時間と、豆の硬さ具合、指で潰して芯が残らないように煮て貰う事、そして水切りして砂糖液で焦がさず煮る事を説明した。
火の扱いは、アイテムで出来るから俺より扱いは良いだろうな。
と言うか、後で俺もアイテムの使い方を教わらないといけないんだよな。
そっちの方が難しそうだ。
「それじゃ、お願いね。
あっ、そうそう、味見で食べても良いけれど、ほどほどにしておいてね。
今日は試しなので、量は少ないからさ。
それと砂糖の染み込み具合で味も変わるから、もしかしたら甘みが足りないかも知れない。
そうしたら直接砂糖を入れても良いからね。
その時は焦げないように注意してね。
一応、念を押すけど、味調整の過程で、味見で食べても良いけど、くれぐれも味見だけだから、全部食べてしまう事は無いようにね。
柔らかく味が染み込んだら、完成だからね。
簡単でしょう。
煮汁は残っていると思うけど、まぁ、お昼に試食するからそのまま、鍋に入れておいて良いよ。
本当は別のボールや皿に移し替えたほうが良いけど、そのまま、染み込ませても良いからね。
そうそう、何かあった時は、別に止めても大丈夫だから、火事だけは気を付けてね」
「承りました」
・・・
もう、ご主人様ったら、サレンじゃあるまい、私が全部食べてしまう訳ないじゃないの。
失礼しちゃうわね。
「ご主人様、サレンを呼んできますんで、ちょっとだけお待ちを・・・
サレン仕事ですよ。
来てくださいな」
そうだった、サレンさんも居たんだったな、忘れていたよ。
「サレン、もうあなたたらこんなに手をべたべたにして。
仕事ですよ、来てくださいな。
「ハッ、仕事ですって。
私は何をして、確か蜂蜜を見た時から記憶が飛ん・・・
・・・
そうだ、蜂蜜だ。
おいしい蜂蜜舐めていたんだった。
もう少し待って下さいな。
舐めたりませんわ。
もうちょっと、もうちょっとだけ舐めさせて下さい」
「駄目ですよ。
今から仕事ですからね。
それにサレン、そんなに舐めていると無くなってしまいますよ。
明日の分も取って置いた方が良ろしんではなくて、全舐めてしまって後悔するのは貴方なのですからね」
「そ そうですわね」
「今から甘い豆の煮を、私達で作るのですから、それを戴きましょう」
「そ そうなのですね。
分かりました。
行きましょう。
アニス、早くいきますわよ」
「もう、サレンたら、本当に甘い物に目が無いんだから・・・」




