第59話 異世界では調味料もまともに使えないのか?
朝か、良い朝だな。
隣には可愛い婚約者が寝ているし、目を覚ますのが待ち遠しく思う。
こんなに嬉しい事は無いな。
サレンさん達が、筋肉痛で体調を崩しているせいで、俺のところで一緒に寝ていても何も言われない。
普段だったら何か言って来るだろうな。
婚約しているのだから、一緒に眠るくらいは良いだろう。
しかし、ソファーで寝ているのでちょっと曰く間がある。
新たなベットを用意して貰おうか。
でも、そんな事をしたら、俺の息子が我慢できないかも知れない。
一つだけ気になるのは、俺の息子がまったく起きないと言う事だ。
どの道、使いたくても使えない事情があるから、今のところはこれで良いだろう。
しかし、使えなくなるって事は他に欲が出てくると言う事なのかな?
性欲はまったく沸かないのだが、食欲と強くなる欲が増してしまった。
食欲は、身体を動かすトレーニングを始めたから、単に腹が減り具合が良くなっただけであろうな。
強くなるのは別の事かな。
婚約者ができたので、強くなると思うのは必然なのだが、それよりも鏡台を見ながらトレーニングしている自分の姿がカッコよく見えるのだ。
筋力もあきらかについているのが、目に見えるように分かる。
ナルシストではないが自分の身体の筋肉が美しく見える時があるのだ。
そんな訳で、辛くてもトレーニングは飽きずにこなせると思う。
もっと魔法を取り入れた激しいトレーニングをやっても良いだろう。
強くなる欲求が余計に増してしまったのだ。
それとは別に、無くなった性欲が気になる。
これは洗浄魔法のおかげで一時期だけ、なっていると思われるがちょっとだけ気がかりかな。
宿屋のオーナーのレイズさんが、洗浄魔法が危険だと言っていたのが頭に残っている。
何が危険なのかは、サレンさん達にも教えられていない。
しかし、性欲を失うと、他の感覚が機敏になり、セブンセンシズではないけど何かに目覚めることができるかも知れない。
まだ、俺の息子は無くなった訳ではないが、何かに目覚めてしまったのかも知れない感覚に陥っているのだ。
確か中国で宦官と言うたまたまを取られた人達が居たらしいな。
たまたまがないので性欲が沸かず、欲と言えば出世欲くらいしか持っていなかったと聞いた話がある。
出世欲がすごく、頭の良い人ばかりだから、出世したい為にありとあらゆる手段を使ってのし上がったと聞いた。
官僚の偉い人を排斥し、宦官達が偉くなる仕組みを自ら作って皇帝を裏から操るって事をしたのだからな。
宦官が皇帝を操っていた結果、漢が滅ぶ原因になったと言う。
たまたまを取られても、それだけのエネルギー持って宦官が国を裏から動かしていたのだからすごいと思えるよ。
国を牛耳、滅ぼすまで出世欲で、できるのだから恐ろしい事だよな。
まぁ、その前に王宮に入る前に、大事なたまたまを取られるのが恐ろしい事なんだけど・・・
とりあえず、今日もトレーニングに没頭しよう。
まだトレーニングを始めて、間もないと言うのに筋力が付いているのが分かる。
こんなに早く筋力が付くのが面白いので、のめり込んでしまいそうだ。
あっ、そうだその前に今日は、昨日材料が手に入ったので、それを先にかたずけてしまわないといけないか。
先に甘い煮豆を作る作業をしなくてはいけないな。
俺の筋肉も甘い物が欲しがっているのでちょうど良いだろう。
基本的には俺はやらない。
簡単な誰でもできる作業なので、ちょうどよく動けない暇な人がいるので作り方を教えてあげれば済む事だ。
美味いと納得すれば大人しくなるかも知れないからな。
あちらさんは俺の筋肉と違って、頭に甘い物がいった方が良いだろう。
糖分が足りないから、怒りっぽくなるんだろうな。
改善と餌付けも出来るし、自ら作って貰う事にする。
俺の手間が省けてこの上なく良い事だ。
しかし、その過程でおかしいアイテムが見つかった。
あの野外用の魔法、炊き出しアイテムおかしく無いか。
昨日の夜、ちょっとだけ使い方を説明受けたけど、あんな便利なアイテムは狡い。
現代に存在したら重宝すると言うレベルを超えている。
そのアイテムは火を起こす火燃石と呼ばれる物が有るのだ。
火の魔法を使って石に火を灯すと言う、簡単な馬鹿げたアイテムだ。
魔力を使うが、うまく調整するだけで火を自由に操ることができる。
こんな便利なアイテムが有るのに、なぜ経済など発展できないのか不思議に思う。
科学技術を発展させればエネルギー問題はマナで解決できるし、その媒体になる物が存在するから発展できる要素が有りすぎるのだ。
それがこの世界ではおこなわれていないよな。
誰かが故意に隠匿しているのか、余り余るエネルギーがある為、発展しても文明がそのものが滅ぶ行為を繰り返ししているのかと思えるくらいだ。
アーティファクトと言う古代のアイテムが有るらしいので、あながち合っているのかも知れないな。
火燃石は普通に活火山地域に存在していると言うので、危険はあるが、誰でも手に入るようだ。
しかし、流通が少なく貴族しか持っていないらしいな。
沢山採取し、一般家庭にも、普及させれば、誰でも魔法は使えるらしいから、重宝するのは間違いない。
生活も楽になるだろうな。
それが使われていないのは、誰かが故意に使用させていないと言って良いだろう。
やはり王族や貴族が止めているのかな。
一般人が、知識や力を持つと支配できづらくなるから、わざと止めている可能性は大きいか。
何処の世界でも同じような事をやっているのだと推測される。
まぁ、これは支配者にとっては仕方がない事なのかな。
・・・
昨日、乾燥豆は水戻ししておいたので、湯煎をかけて笊で水きりをしておこう。
それだけは済まして、朝食を取ったら後は二人に作業をやって貰うことにしよう。
一応、説明は昨日していたので出来るだろうな。
誰でもできる簡単な作業だ。
火燃石の調整は彼女らの方が得意だから、あとは焦がさないよに調整をして貰うだけだからね。
一つ気にかかるのはつまみ食いとかされて無くなってしまうかが心配なのだが。
試しなので少ない量をやってみたいと思う。
つまみ食いなどされたらすぐに無くなってしまうだろうな。
二人とも見た目は若いが歳がいっているみたいだから、それは無いだろう。
ただ、二人に俺が考えている常識と道徳心がどのくらいあるかが分からない。
この際、俺が思う常識と道徳心がどのくらい有るのか諮るのも良いだろう。
わざとたき付けるような事を言って、定番な味見と称し食べさせて、食いつきを誘う。
味見で全部食べたら駄目だよと、釘をさしておくようにわざと言い、良識が有る用に促す。
それで、出来た甘煮の豆の残り具合を見るのだ。
半分、残っていれば良識あると俺は考えるのだがどうだろうか。
見て見るのも面白いかも知れない。
?
外が騒がしいな。
朝からなにかあったのだろうか?
また吸血鬼とか死んでたりして、まさか、そんな事はないだろう。
誰か従業員が来たら聞いて見よう。
野次馬根性で見に行く必要もないから。
さてとそれじゃ、豆の戻し具合を見て見るか。
昨日サレンさんに、持ってきた豆を見て貰って、どうやって食べているか聞いたら、どれも水で煮て食べられると聞いた。
生であった大きい豆はやはり皮に毒があるらしく、皮をむいて灰汁取りが必要みたいだ。
ちなみにキースにいつも用意されていた食事用の豆はこれだったらしい。
恐らくだが革に毒があるの知っていて渡していたのだろうな。
他に安全に食べられる豆が存在するのだから。
食べ物でもそういう仕打ちをするとは、まったく酷い奴だよ。
まずは、起きていつものようにカラゲーの時間を六時に合わせてしまおうか・・・
「おはようございます」
「あっ、おはよう。
また、起こしてしまったようだね」
「気にしないで下さい。
本当はご主人様より早く起きるのが務めですから」
「別に気にしなくて良いのに・・・」
しかしなんだな。
本当に奇麗で可愛い娘さんだよな。
髪の毛も光に照らされ、金色に輝いてる。
エメラルドグリーンの瞳が神秘的に輝いて美しい。
俺が本当に嫁に貰って良いのかと思うくらい素敵な人なんだよ。
こんな状況なのに俺の息子が反応しないのが許しがたい事だ。
女性に対して失礼にあたるのかも知れない。
「さて、それじゃ起きるとするかな。
今日も一日頑張りますとしましょうか」
「ご主人様、今日は何をなさいますか」
「昨日、水戻ししていた豆があるから、先にそれを加工しようと思ってね。
それが終わったら、いつもどうりのトレーニングかな。
とりあえず、戻し具合を今から見ようと思うんだけど、手伝ってくれるかな」
「分かりました」
昨日、宿屋で借りた鍋の中に入れていた水戻した豆、三種類の大豆と小豆と金時豆を見に行く。
「おっ、良い具合に膨らんでいるじゃないか。
水戻しも元居た世界と同じニ倍超って感じか。
二点四倍とか言われるがどうなんだろうな。
まぁ、ちょうどよい大きさになったから良いだろう」
「これを砂糖と一緒に煮るのですか」
「そうだよ。
まぁ、一度柔らかく煮てから、水飴で煮直すだけなんだけどね。
先に、二 三回、灰汁取っておいた方が良いだろう。
今日はサレンさん達にあくまで試験的に作るだけだからね。
美味しいとは限らないから」
「そうなのですか。
聞いた話では美味しように思えます」
「そうだったら良いね。
豆の種類で工程がちょっとだけ変わるけど、どの豆も灰汁は有るからね。
それに、こちらの豆は毒素があるのかも知れないから熱を通して少しでも抜いておきたいんだよね。
まぁ、熱で毒が分解するならばの話だけど。
あんまりやり灰汁抜きやり過ぎると、旨味が逃げてしまうかも知れないが、これだけはやっておいたほうが良いと思う。
俺はこの世界の事良く知らないから、念の為にね」
「そうなのですね」
「それにある程度下準備しとけば、ただ煮るだけだから、誰でもできるからね。
まだサレンさん達は本調子じゃないから、下準備は後で教えようと思ってさ。
体調の悪い暇人にやって貰うだけだからね」
「・・・」
「ターナさん達は、乾燥した豆をそのままお湯に入れ、野菜と塩で煮るだけかな」
「そうですが。
普通に乾燥した豆をそのまま入れて煮るだけですよ。
水戻しと言う事を、初めて知りました」
「それって、豆とか硬くないのかな?」
「硬いですけど、豆って硬い物では無いのですか?」
「なるほど、こちらでは硬いのが当たり前なのね」
そうなのか、豆って硬いのが当たり前なのか。
その時点で豆の認識が違うんだ。
当たり前に、芯が残っている状態なんだ?
芯があっても、関係なく食べてしまうんだね。
味付けも塩だけみたいだけだし、当然だしとか調味料も入れてはいないのだろうな。
うーん、なんだかなぁと思う次第だな。
異世界の事だから仕方ない事か。
中世の世界感と同じ時代のようなのだから、一般人の生活も似たような感じなのかな。
水と食料があって食えるだけましだと言うからな。
飢える事だって普通にある世界だろう。
飢えが有る世界か!
飢えとは実際、飢えを経験したことが無いと分からないと言われるからな。
断食とかそういう自分で決めてやる事ではない。
断食もつらいが、そんなの自分で選べるのだから、比較にならないほど辛いものだと聞いた。
最終的に手足が痺れてきて、動くのもままならなくなると言う。
そのまま、野垂れ死になるしかないのだろうな。
某隣国でも、有ると言う話だから。
上に立つ支配者が間違った政策をすると、国民が苦しむのだな。
この異世界も、同じような事が、起きているのかも知れないとは、恐ろしい限りだよ。
戦後、子供達に飢えをさせない為、日本人は食に関して頑張ったんだって先人は言っていたから。
飢えの恐ろしさを知っている人には、子供達には絶対経験させてはいけないと言う思いが強かったらしいね。
なんかの話で、ひぃおばあちゃんが話していたような事を聞いた気がする。
当時はじゃがいもばかり食べていたので、今は食べるのが嫌いになったと言っていた。
それでも食べれる物があっただけましだと言う話を言っていたような気がする。
そういえば、芋類を頼むのを忘れていた。
有るのだったら、追加で頼んでおこう。
いつもの食事には芋は入っていない。
生の物で食べれる物を用意して貰っているからそうなったのかな?
それともこちらでは芋類は野菜に含まれないのだろううか、ちょっとだけ気になる。
「とりあえず、水きりしてボールに移しておこう。
やり方は教えるからさ。
誰でもできる簡単な事だからね」
「分かりました」
「煮るのはまだ本調子ではないサレンさん達にやって貰うつもりだから。
お昼にはできると思うのでその時、みんなで食べて見ることにしよう。
美味しくできれば良いね」
「そうですね。
楽しみにしておきます」
「それじゃ手伝って貰えるかな」
「分かりました」
一通り準備してしまう。
あとは、砂糖液作り置きしたいのだが、この砂糖で大丈夫だろうか。
湿っているし変な匂いがする。
これって雑菌が多く無いか?
煮て使うのだったら良いけど、砂糖液を作っておくのはやばいかもな。
と言うか、研修で一年間、工場で作業した時には砂糖を直接使った事が無いんだよな。
きび砂糖だけかな、直接使ったのは。
大量に作るから玉になる恐れがあるので直接は使いずらいらしい。
浸透具合もムラになるから、大量生産だと直接は使えないのだろう。
きび砂糖を使った時には慎重になった事を覚えている。
グラニュー糖を溶かして水飴状態にして使うのが当たり前だったし、ソルビトールとマルトースも液状の水飴だったしな。
しかし、この砂糖は本当に雑菌が入っていそうで怖いな。
工場では砂糖液を作るのにも、慎重におこなっていたしな。
砂糖液作る専用の人が居たし、研修で三日だけやったけど、大変だったんだよ。
糖液は機械で自動撹拌と温度調整でやるから焦げる事はないんだけど、と言うか配管にボイラー通して温めるから、よほどの事が無い限り焦げたりなどしないんだけど。
糖度をブリックス計で一定にするだけなので簡単ではあるが、グラニュー糖を入れるのが大変だった。
一日、トンクラスで造るから、グラニュー糖を入れるのに重くて苦労した。
グラニュー糖、一体、三十キロはあるから、クレーンで釣って入れても結構骨があったな。
しかも一日、三十~多い時には五十袋入れたからな。
それも入ってくるときにゴミとか埃とか袋についていると大変なので一度すべての袋をエアーガンで掃除すると言う。
これが重くて嫌になるほどきつい。
三十キロの袋を一つづつ、エアーガンで拭いて汚れを落としパレットに積み替えなければいけなかった、それが大変だった。
それも袋が汚れている訳でも無いのにやらされるのだからな。
埃がかかっている事が、たまにあるそうなので仕方なくやるのだけど。
これって毎日やっていたら腰が痛くなると担当者が言っていたね。
大変な作業だと分かっているので会社の方も一年置きに必ず担当者を替えていると言う。
それも三年以上勤務している社員が担当する仕組みになっているみたいだから。
作業はこれと言って難しい事ではないので、続けてやりたい人が居るらしいが、実際ぎっくり腰やっている人が何人か居るので長くは絶対やらせないと言う。
砂糖液を作るのにもかなり気を使っていたんだよな。
一日で使い切らないといけないかったので、衛生面でかなり気になって居たのだろう。
ゴミや誇りなど入ると問題だしな。
今回は、砂糖に雑菌が多そうなので作らない方が良いかな。
魔法の収納カバンに入れておくと悪くならないのは分かるが、そもそも最初から怪しそうだ。
直前に砂糖液作って入れる事にするか。
砂糖をそのまま使っても良いけど、その方が良いだろう。
大量の作り置きは止めておこう。
燻製肉を貰って当たった時のようになりたくないしな。
ん!
砂糖でつけたレモンとかも出来ないのか。
直接かけるのも危なそうだな。
さすがに糖液を作るのに煮えたつことは出来ないだろう。
ゆっくり温度を上げ溶かしていたからな。
そう考えると簡単にできる砂糖のレモン付けも必然的に出来ないのであろうな。
この世界でやらなかったのも当然なのか。
砂糖に雑菌が最初から入っているのであれば出来ないのも当たり前か・・・
蜂蜜だったら大丈夫だろうか?
糖度が高ければ雑菌の繁殖も抑えられているから。
固形資質が高ければ、悪くなりにくいんだよな。
それだと蜂蜜でレモン漬けを作るしか無いようだな。
砂糖でもやってみたかったけど、それは奇麗な砂糖でやれる事だから、こちらでは無理そうな気がするな。
せめて一度強火で煮たてたりしないと雑菌の煮沸消毒は出来ないであろう
なんか良い方法が無いか後で考えてみるか。
うむ、やはり異世界か、衛生面が違うのでどうしようもないのかなこれは。
あっ、洗浄魔法があったのか。
でもあれって食べ物にかけても良いのかな。
ちょっとその辺が分からないな。
もっとも上位魔法らしく使える者が少ないらしい。
それにターナさんは洗浄魔法使えるけど、そんなには詳しくないみたいだから、得意なサレンさんに聞いてみようとするか。
それから使えるか判断してみよう。
この世界だと、たかだか砂糖のような調味料を使うのにも難しいのね。
これだと料理も発展しないはずだな。
原料の衛生面状態で躓いている。
なんとなく旨い料理が無いのが、分かったような気がした。




