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第51話 面倒な話

  (ホテル サンシャイン)


 「アンドウ伯爵閣下、ご機嫌麗しく御座います」

 「あっ、ルイージさん、麗しいね」

 「?

 ご注文頂きました服が出来上がりましたのでお持ちいたしました。

 当店でこの上ない最上級に仕立てられた服です。

 ご覧ください」

 ご機嫌麗しいと言われてなんて答えて良いか分からなくなってしまったよ。 

 とりあえず麗しいと答えたがルイージさんは困惑した顔をしているな。

 

 それにルイージさんてなんで俺の事を伯爵閣下って呼ぶのかな?

 意味が良くわからんよ。

 他の人は閣下とか付けたりしないのにな。

 確かにキースから奪った伯爵位はあるみたいだけど、と言うか準伯爵だし、キースって伯爵閣下って呼ばれていたのか?

 理解が苦しむ。


 まっ、その事は置いといてとりあえず服は出来たようだ見て見よう。


 ルイージさんと秘書であるエミリアさん、服の仕立て職人のイグニスさん、それにこのホテルの支配人のレイズさんとお供を何人か連れて部屋に入って来た。


 心なしかルイージさんとレイズさんはにこやかな顔をしている。

 二人とも姉弟と言う話だから、久しぶりに会って嬉しいのだろうか。

 なんかそんな感じが見受けられるのだ。

 姉弟が中が良いと言う事は良い事だね。


 ルイージさんはすでに俺が来ていたスーツの色違いの服を着ているな。

 赤と白色のストライプ状の上着と赤一色スラックスにはサイドには金の鳥を描いた刺繡が絵描かれている。

 鳳凰のデザインかな。

 飛び立ちだしそうな刺繡が施されているのだ。

 派手だが洒落た感じの服を着ているんだよね。

 なんかカッコ良いぞ。

 ルイージさんの髪形は問題だけど、服の仕立て具合が良く出来ているので感心してしまった。

 ちょっと派手だけどなんか欲しいと思ってしまったよ。


 ・・・


 「どうやら、頼んでいた服が出来たようだね」

 「お待たせしました。

 こちらにご用意できています」

 「有難とね。

 ところでルイージさん、あなたがいま着ている服は俺のスーツの色違いバージョンだよね。

 早速着ているんだ。

 似合っているじゃないか」

 「お褒めを戴き、有難うございます。

 私もこの服の出来、「非常ぉーに」満足しております。

 これほどのよく仕立て上げられた服は、私は今まで着た事は御座いません。

 アンドウ伯爵閣下には感謝しか御座えません。 

 ご注文を頂いた服も、この服以上の出来に仕上がっています。

 どうぞ、ご覧になって下さい」

 「それじゃ、見せてもらおうかな」

 「どうぞ、こちらで御座います」

 仕立てを頼んでいたイグニスさんが布包みを開け丁寧に見せてくれた。


 「おぉ、これは良くできているな」

 と言うか俺が今着ているスーツより出来が良くないか?

 生地なんか俺が来ている服より格段に良い生地を使っているよな。

 それに色が紺でも少し明るい色なんだ。

 これってちょうど欲しかった良い具合の色合いだよ。

 通販ネットで頼んでいたのは同じくらいの色だったけど届いた時には違っていたからがっかりしたんだよな。

 まぁ、画面の色合いで表示が違うから仕方ないと思っていたんだけど・・・


 「着替えてきて良いかな」

 「どうぞ、宜しくお願いします」

 「それじゃ、ちょっと着替えてくるよ」

 「お手伝い致します」

 そうイグニスさんは言ったのだが、サレンさんが遮り、私達でおこないますと言ってきた。

 

 サレンさんとアニスさんが持ってきたスーツを受け取り、俺に「こちらへどうぞ」

 と言って手洗い場に誘導された。

 

 !

 えっ、今までこんな態度をしたサレンさん達は見たことはないぞ。

 なんかしっかりと良くできたメイドさんみたいな事をしてくれたのでちょっとだけ驚いてしまったよ。

 今まで俺に対してそこまで厳格な態度をしてなかったのにな。

 最近は虐められているのかなと思っていた次第だ。

 気を聞かせて主人に仕えるメイドさんの態度で接してくれたのかな。

 今までとは大違いだぞ。


 一人で着替えられるから別に良いのだが、貴族と言う立場上、見栄があるのかな。

 別に気にしなくて良いと思うのだが、サレンさん達の行動が違うのでそれに合わせようと洗い場まで付いて行く。

 貴族って見栄を張るので、面倒でこういうのは嫌だよな。

 着替えくらい一人でできるのにとつくづく思う。


 着替えを手伝って貰い、みんなの前に姿を現す。


 「おお、アンドウ伯爵閣下、良くお似合いで」

 「有難う、ルイージさん俺も思った以上に良くできていて頼んで良かったと思うよ。

 この服の生地って触り心地が良く、良い素材だよね。

 高くなかったのかな?」

 なんかあまりにも良すぎる生地なので、つい無粋だが値段の事を聞いてしまった。

 貧乏性の俺には、すぐに値段の事とか考えてしまうんだよな。


 「我が店の在庫があった中でも最高級の生地、ヘルモスの蜘蛛の糸を使用ています。

 生地の値は少々高いのですが、ご予算以内になる生地を使用させていただきました。

 ちょうど良い色合いの生地が有りましたので、色染もおこなっておりません。

 このヘルモス蜘蛛の糸で編んだ生地は魔法の関係を付与しやすいたいへん丈夫な生地です。

 ご納得いただける一品と思っています」

 「確かに良い品だよ。

 本当に満足いく品物だね」

 「お褒めを戴き有難う御座います。

 お頼みされている残りの服も随時お届けしたいと思います。

 その事で少々お話があるのですが、宜しいでしょうか」

 「別に良いよ。

 俺もちょっと聞きたいことがあったのでね。

 先日起こった魔獣襲撃の件、その話しを詳しく知っていたら聞きたいと思ってね。

 なんせ部屋に引き籠って居たばかりだったから詳しく知らなくてね。

 世間話をついでに話そうじゃないか」

 「分かりました。

 私で知っている事ならばお話したいと思います」

 「アンドウ伯爵様、応接間が御座います。

 良かったらこちらへどうぞ」

 レイズさんに同じ階にある応接間に案内され、お茶を出して貰う。


 「ヘー、そんな事があったのですか。

 さすがに従業員に話を聞くのとは違っていますね。

 そうか、そうだったんだ」

 ルイージさんから聞いた話は大げさだったが従業員達から聞いた話以上の事の情報が入った。

 

 剣聖と言う者がこの国にいるらしく、その者がドラゴンを斬り倒したのだとか。

 剣聖か、なんかカッコ良いな。

 でもなんか厄介事が起こりそうなので会って見たくはないのだけど・・・

 ちょっとでも危なそうな人には近寄らないのは越したことがないからな。

 剣聖は今現在王都に滞在していると言う話も聞けた。


 「アンドウ伯爵閣下、お聞きしたいことがあります」

 「ん、何かな?」

 「アンドウ伯爵閣下はアレクサンダー公爵家に就くのですか?」

 「!

 ルイージさん、なんか意味深な事を聞くね。

 俺は仮にもキースを殺しているんだよ。

 就くと言うか、公爵家が受け入れる事などできるのかな。

 まぁ、執事のクロートさんは神の契約の元に正式な決闘をしたので問題は無いと言っていたが、公爵家がこのままでいると思えないし、微妙なところだよな。

 公爵家で何か接触があるならば聞いてみたいのだけど今現在までは会ってないし、判断はつかないと言ったところだね」

 「そうですか」

 「それに今この町に公爵家から派遣されている騎士や兵達がいるんだろう。

 それで俺に接触無いと言うのはルイージさんの話を聞いて疑問に思ってしまったよ。

 俺の事を関係なく放置しているのだったら、それが面倒ごと起こさなくて一番良いのかも知れないんだけど・・・

 それとも俺に対して何か企んでいるのかも知れないしね」

 「そんな事は滅相も御座いません。

 神が決めた事は絶対ですから、公爵家がアンドウ伯爵閣下を陥れようとは絶対に有り得ません」

 「それは本当の事かな?

 口先だけなら誰でも何とでも言えるから、こればかりは信用できないね」

 「・・・」

 「まっ、今のところ何もないから良いか。

 それよりルイージさんは公爵家の騎士達がこの町に来て良かったと言っていたがどうしてなのだろう。

 先日の魔獣襲撃事件以外で、この町で何か起きていると言うのかな。

 公爵家の者達がまだ滞在しているなんておかしくない。

 それともやはり俺のせいなのかな」

 「アンドウ伯爵閣下、あなたのせいではないと思います。

 実はこの町で前から異変が起こっています事をアンドウ伯爵閣下にはお知らせしたいと思っていました。

 お話したいと思います。

 是非聞いて下さい」

 ! 

 やばい何かフラグがたったのか、この町で他に何か起きているのか。

 不味い事になって来たな。

 別に話さなくても良いよルイージさん・・・


 「実はですね。

 この町で町民の誘拐事件が多発しています。

 それも誘拐された者達が新しくできたザルバの町で奴隷として売り買いされていると言いう噂が囁かれています」

 「マジですか?」

 「はい、ザルバの町は新しく領主になったこの地域を治めるガスタリア子爵の肝いり政策で造られた奴隷売買できる町だと話を聞きいております。

 この町の南に新しくできた町だと聞き及んでおります」

 「ほほう」

 「奴隷になる条件はあるのですが、非合法に落とされている現状だと聞いております。 

 王国にいえ、キース様に前々から調査員を派遣させて貰おうと頼んだのですが一考に調査員は来ませんでした。

 先日の魔獣襲撃事件で公爵家の者達が来ましたので内々に調査を依頼したところです。

 その関係で公爵家の騎士と兵達は先日の魔獣襲撃の安全を確保理由にしてこの町に滞在している限りです。

 今、現在も調査の為、動いていると思います。

 これは内々に進めている事なので他には話さないで戴きたいです」

 「分かりました」

 うわー、町の人攫って奴隷売買しているの、それってかなりやばい案件ではないの。


 それに奴隷になる条件て言うのもあるんだ。

 てっきり攫われてマフィアに奴隷として売られてしまうと思っていたよ。

 それじゃエルフの三人の娘達は非合法に攫われ奴隷として売られたってやつね。

 それはあんまりじゃないのかな。

 

 しかも新しく領主になった奴が奴隷売買の町を造り仕切っているだと。

 それも自分の領地の市民を浚って奴隷にしているとか、頭いかれちまっているんじゃないのか。

 

 これは国家を愚弄する犯罪行為ではないの?

 公爵家が動くのは当然だよな、何やらキナ臭くないかな。

 なんかひと騒動あるかも知れないな。


 「なるほどね。

 とんだ闇の事件が起きているんだこの町は」

 「まだ調査している最中だと思われますが、公爵家が動くのは間違いないと思います。

 そうなるとシュタイン家との争いに発展する可能性がありますね」

 「?

 シュタイン家、何それ」

 「此処から南の地域を治める吸血鬼一族のヴァレン・シュタイン家です。

 今から五十年前、領主が長い眠りから覚め、現在も南の地域を治めている次第です。

 この町からは非常に近いのです。

 私はこの地域を治める領主が彼ら貴族派閥には入っていないと思っていたのですが、どうやら違っていたみたいでした。

 先代領主が亡くなれてから新しくなった領主はシュタイン家に加わった可能性があります。

 新たな領主が着任してから、この町の現状が変わってしまったのです」

 「・・・」

 あぁ、これは貴族同士の派閥争いってやつが絡んでいるのね。

 それも吸血鬼の貴族が絡んでいるって、やばすぎではないか。


 確か門閥貴族とかアニメで有名なのを聞いたことがあるな。

 有力貴族が集まって王以上の権力と軍を持ち政治も関係しているとか聞いたような。

 たしか小説の銀河英雄〇説が有名で、門閥貴族とかそれで知ったような気がする。

 貴族は外道その者だと話があったね。

 それで門閥貴族が広まったとWikで書いてあった気がするな。


 最初は門閥貴族ってなに? って思っていたからな。

 調べて見たら何故か銀河英雄〇説が出てくるのだよ。

 不思議と思って読んでいたら分かって来た次第だ。

 貴族の事を世界史でちょっとだけ習った事はあるが、どちらかと言うとアニメで教えられるのが多いんだよな。

 ネットで検索していろいろ情報を知り得ると言うのは定番な事だから。


 よりによって吸血鬼の貴族だと、そんなの居るの?

 まったく嫌な話を聞いてしまったよ。

 とんでもない事だよな。

 

 「いずれ争いが起こるやも知れません。

 前々からアレキサンダー家とシュタイン家は仲が悪かったのですから」

 「なるほどね」

 あちゃー、こりゃ争い確定な事案だよな。

 不味い時にこちらの世界に紛れ込んっでしまったか・・・


 「うーん。

 俺が聞きたい話は、聞けたのでこのくらいでお終にしよう」

 「左様ですか」

 ルイージさんはまだ話がしたいようなそぶりを見せた。

 でもこれ以上俺は関わりたくないのだ。

 だいたいの現状が分かったので早めに切り上げさせて貰おう。


 「そうだルイージさん。

 今度お店にお邪魔させて戴いて良いかな。

 それと次回の服の事で話があるんだったよね」

 「そうでした。

 ご注文を戴いた服の事で相談が有ります。

 次の納品がどうしても遅れてしまうので、その件でのお話がしたく思いまして、生地の在庫なく取り寄せ無くてはいけないのです。

 取り寄せ期間がどうしてもかかってしまい。

 早くても仕立てが出来るのは五十日くらいはかかってしまうと思います」

 「なるほど、次回の服は別に何時でも良いよ。

 替えが一着できたので当分は問題ないしね」

 「そうでしたか。

 ご配慮、助かります。

 私の話は以上です。

 いつでもどうぞご遠慮なく私共の店にご来店下さい。

 あ、失礼しました。

 他の何かご利用でしたか?」

 「靴が何個か欲しくてね。

 買うのを忘れていたのだよ。

 今、履いている靴と同じような靴が欲しいのだが頼めるかな」

 「ご覧になって宜しいでしょうか」

 「別に良いよ」

 「拝見させて戴きますね。

 イグニス、この靴はどうだ」

 「こ これはベヒモスの革で造られた靴では無いですか。

 こんなものどうして・・・

 失礼しました取り乱だして、あまりにも高級な魔獣の革で造られていた一品なのでびっくりしました」

 「えっ、そうなの。

 実はこれ、この町に訪れた時に最初に寄った高級そうな宿屋で貰った靴なんだよ。

 こちらに来る前に靴を失くしてしまってね。

 それでその宿屋からサービスで貰った靴だったんだよな。

 あの時は本当に助かったよ。

 今は言葉の魔法かけて貰っているから話せるけど、まったく話せず意思疎通も出来なかったのに対応してくれたからすごく良い宿屋だったね」

 「それはエンジェル・ハイロウと言うホテルでは無いですか」

 何故かレイズさんが食いついて来た。


 「失礼しました。

 アンドウ伯爵様、恐らくその店は私のライバル視している店でして気になりました。

 お取り乱して申し訳ない」

 「あっ、別に良いよ。

 そうなんだね」

 「はい、何やら北欧の方式のホテルを模しているようでして、以前からどのような所か気になっていたのですよ。

 評判は前々から聞き及んでいましたから」

 「かなり良い所だったよ。

 大きな浴場があったし、部屋に通された時には壁一面に大天使ミカエルの絵が描かれていたからね。

 それも朝起きて気づいたのだが、高い天井一面にも天使の羽が描かれていてまるでそこの神がいるのではないかと思われるほどのすごい豪華な部屋だったね。

 サービスもすごく良いところでしたし」

 「大天使ミカエル?

 そのような神がおられますのでしょうか。

 初めて聞きました」

 「あっ、その、なんだ。

 たぶんですが、こちらの天の使いもいると思うのですが、恐らく同じ天の使いでも名前が私も故郷で言われる名が違っていると言う話ですかね。

 この国では違う名で呼ばれているとか、そういえばミストラーとかなんとか言っていなかったかな」


 「契約の神ミトラース様ですか。

 なるほど他国では呼び名が違う神がおりますのですね。

 確かにそう考えてもおかしくない事情はありますから」

 「そうですよね」

 俺は適当に言ってごまかした。

 大天使ミカエルなんて空想のモノだよ、要る訳ないじゃないか。


 「アンドウ伯爵様、立ち寄られたエンジェル・ハイロウはどのようにすごかったか詳しく聞きたいので宜しいでしょうか。

 お願い、お願いします」

 うぅ、なんか今度はレイズさんが食いついて来たよ。

 もう話切り上げて魔法の練習でもしようと思ったのに、まぁ、適当に話しして切り上げてしまおう。


 ・

 ・・

 ・・・

 しかし何故か小一時間話をしてしまった。

 

 「そのようなサービスがあるのですか。

 私は待ったくもって知りませんでした」

 「うーん、そんなに知りたいのでしたら実際行って見れば良いのじゃないですかね。

 変装して行けば分からないんじゃないですかね」

 「そんな事は出来ませんよ。

 ライバル店です。

 従業員の顔も一人一人確かめており、覚えてます」

 「そうなのね。

 ライバル店ですか。

 敵を知り己を知れば百戦殆からずと言うことわざがあるし、百聞は一見に如かずと言うことわざもあるからな。

 自分の目で確かめた方が良いと思うんだけどね」

 「それはどういう意味ですか?

 アンドウ伯爵様」

 「えーとですね。

 敵と味方の情勢をよく知って戦えば、何度戦っても敗れることはないと言う意味あいと、人から何度も聞くより、一度実際に自分の目で見るほうが確かであり、よくわかると言う意味合いの事ですけどそれを今話したことに当てはめた話ですよ。

 実際、話で聴く事よりも見て違っている事などざらにあるでしょう。

 特に貴族の間では大袈裟に話を盛るのが有りますから」

 「確かにそうですね。

 しかし私はライバル店に足を運ぶことなどできません。

 そこが口惜しいですね」

 「それは仕方ないんじゃないかな。

 俺から話した事は嘘も大袈裟にも言った事は無いので信じて貰えるか分かりませんが一応そういう待遇は受けたと言っておきます。

 一晩だけお世話になっただけですが、それに困っていた時だったから余計に良く思えたのでしょう」

 「そうでしたか。

 アンドウ伯爵様の話を信じたいと思います。

 良い話を聞かせて貰って有難う御座います」

 「いえいえ、別に良いですよ」

 うーん、カッコいいことわざ並べたけど、それって俺にも当てはまるのではないか?


 魔獣がこの町を襲った話とか、それに奴隷売買とかこの国で起きてることが本当の事か実際に自分の目で見ていないから分からないからな。

 自分の目で見ても解釈の違いで勘違いだってざらにある。

 

 それにこの世界での常識がまったく掴めていない。

 良く考えたら昔、イギリスで奴隷売買とか国単位でやっていた時代があったよな。

 それが、その当時の常識だった事だろう。


 この世界でもそれと同じ常識だよな。

 ルイージさんはこの町の領主が奴隷売買の政策おこなっていると言った。

 つまりは領主指導の下に合法でやっているのではないのか。

 法律なんて新しく領主が着任すれば都合よく造ってしまうのだろう。

 日本だってお隣のり地域の国が政権変わると良くやることだからな。

 特にあの国は法律替えると前に起こした事件でも有罪になると言うおかしな国だよな。

 普通にありえん事だろう。

 それに遺産が子供に引き継ぐ過程で死んだ者にも権利が引き継げると言うありえない事だよな。

 それですでに本人は亡くなっているのに偽徴用工問題で子供達が権利を引き継ぐことができるから訴訟しているのだったよな。

 七十年前の話だよ。

 それも虚偽の話だ。

 証拠もなにもないのに、本人達の口から出る感情論で裁判が決まってしまうと言うおかしな話だよな。

 

 政権が変わると都合よく替えるらしいから、それに国際法より国の法律の方が優先と言うアホな考えをしている。

 ある意味、感情優先で法律さえ変えてしまうと言う恐ろしい国だよな。


 そう言う国が現在でもあるのだから、この異世界で簡単にまかりとおってしまうのだろう。

 領主が決めたルールならば仕方がないのではないのかな。

 それに国の決まりがあると言う話だが、ルイージさんは詳しくは言っていないんだよな。

 聞いたのだが口を濁すように話さなかった。

 なんか話せない後ろめたいことがあるのだろう。


 しっかし、敵勢力である公爵家が入り込んで調べていると言うと粗を捜して居るんだよね。

 これって単なる貴族同士の派閥争いをしているのでは無いのか。

 奴隷売買とかを口実にして争いごとしようとしている?

 そんな事が頭にふとよぎってしまった。


 これは考えすぎか恐らく俺の気のせいだったと言う事だろう。

 ルイージさんが何か隠しているようにも思えるが俺には関係ない事だよね。

 奴隷売買の件は悪い事だと思うけど領主が認めているんじゃどうにもならんだろう。


 余計な事に首を突っ込んで痛い目を見るのは嫌だからな。

 此処は何も言わず静観していることにしよう。

 奴隷売買の事も国である公爵家が解決してくれるだろう。


 「どうしました、アンドウ伯爵閣下」

 「いや、なんでも無いよ。

 それよりルイージさん素材は何でも良いから似たような靴合ったら売って貰えないかな。

 オーダーメイドでなくて良いよ。

 さすがにベヒモスとかいう魔獣の革では無くて良いからさ、ちょっとだけしっかりしている物だったらサイズが合えば別に良いからさ。

 それと出来ればこの靴が少し踵が緩いので調整して貰えると良いのだが、イグニスさんお願いできるかな」

 「承りました。 

 同じ靴は無理ですが、似たような物でよければご用意させて戴きます。

 それでは何時頃ご来店にならせますか」

 「うーん、ちょっとやりたいことがあるから一週間、おっと失礼、七日で良いかな。

 いや待てよ。

 ・・・

 十日あれば用意できるかな?」

 「了解いたしました。

 十日後までにはご用意いたしますのでお待ち下さい」

 「うん、それじゃそうするね」

 「十日後にご来店お待ち申し上げております」

 そう言って話を切り上げ帰って行った。


 十日後の方が良いだろう。

 この世界では一年は百日で十日サイクルで物事が動いているらしいから。

 一日も約二十五時間だから計算はしやすいのかな?

 まぁ、時間は時計がないようなので計算のしようが無いけど、日数の計算は分かりやすくて良いみたいのだけど。

 でも季節感が無い見たいので時の移り変わりが分かりづらいのかな?

 とりあえずこの世界のサイクルで合わせていたほうが良いだろうな。

 

 しかし嫌な話を聞いてしまったな。

 ますます力を付けなければいけないじゃないか。

 面倒な事に巻き込まれなければ良いんだが、そうもいかないのがこの世界の生業かな。



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