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第5話 町への移動

 

 もう朝か、一晩中下痢に苦しめら酷いあり様だった。


 今は落ちついてきたけど、その分眠くて仕方がない。異世界で知らない人に食べ物など戴くことは絶対してはいけない。


 教訓する。


 もったいないがおっさんが持っていた肉と魚類の食料はすべて廃棄だ。危なくて食べられない。


 とりあえず眠いのだが、穴を掘って死体を放置したままだったのでかたずけてしまおう。


 おっさんの頭を切り裂いたまま遺体を放置しておくなんていったいどうゆう異常現場だよ。それほど俺のおなかは非常事態に陥ったのだ。


 腹が痛くなったとしても、あまりにも奇行なおこないすぎて夢だと思いたいよ。

 しかし現実らしいので早く片付けなくてはいけない。


 掘り下げた穴におっさんと商人らしい2人を埋葬し、ついでにいらない物を埋めてしまう。


 「土にかえってください。南無阿弥陀仏」

 腹の調子はまだ悪いのだが、今後のことを考えないといけないな。いここは川辺だ。水はたくさんある。


 昨日はそれで助かった。水は澄んでいて飲めるのだ。


 それ以上に下痢で悩まされていたから、お尻の用をどうするか悩んだが、川の水で洗えたのでそのことだけは救いだった。


 危険な生物もいなく、腹の痛みと戦っていただけなので危険なことはおきなかった。


 これからどうする? まずは水と食料問題をどうするかだな。

 この川で水はできるだけくんで持っていこうと思っている。


 確かゲームとか漫画では収納カバンの中に入れれば、時間が止まっている空間らしく食料とかは腐ったり劣化したりはしないのだろう。それを期待してできるだけ多くの水を持っていこう。


 まずは水が入りそうな入れ物を出して、川の水で奇麗に洗浄してみる。


 お菓子を作る食品会社に勤めていたので洗浄するのはやったことがあるのだ。


 営業の部署に配属されたのだが、会社の方針で1年目は製造部門に応援派遣されることになっていた。


 自社の製品を知ることと、コスト面でいくら材料費がかかるとか実際に現場で体験し営業に活かせる方針を学んで来いと言われたな。


 研修期間で製造部門に入って来た時、営業の人が単価を間違えて出してしまったらしく、完全な赤字商品として出している製品があったのだ。


 入社してすぐに応援派遣された時に、起きたことなのでそんなことがありえるのかと内心驚いたよ。


 自社製品の価値を知らないので良く営業できるなと思ってしまった。最低ラインの売り込み基準を見てなかったとしか思えない。

 完全な赤字ラインだと営業部長は嘆いていたからな。


 そのために、1年目の研修は製造現場でやっているのにこんなミスがあるとは、やっている意味がないと営業部長も怒っていたね。

 

 その時は後1年のばされるかと私はびくびくしていた。

 おかけでなぜミスがおこったのかを対策と感想文を書かされ提出させられた。

 

 こちらは研修で製造応援で来ていてへとへとで疲れているのに、居残りで残業代もつかずに書かされたからな。


 1年間は赤字で商品を取引先のお店に出すと言う話だった。幸い小さな店舗だったので、良かったらしい。

 大手チェーン店にでも納品していたら大赤字だったそうだから、それもたぶん次年も同じ値段で交渉を吹っ掛けられるだろう。


 新商品で短期製品受注で注文を受けたのが幸いだったようだ。それでもあからさまにわかりきった赤字製品を造っているので上司達は嘆いていた。


 2年目の営業を始めてまわっていた新人が小さな店舗をまわっていてやってしまったらしい。


 普通は先輩と2人でまわるのに、たまたま風邪をひいて休んでいた時に起こった出来事らしいな。


 個人で営業成績を出そうとして焦って間違ってしまったのだろうか。たぶん、一人でできる良いとこ見せたかったのだろうと思っている。

 

 新人は新たに受注を取れる店など滅多にない。上にあがる人の後釜引き継ぐことで取引先で受けられるお店が多くまわってくる。


 だから俺は先輩にこびを売って受注できそうな店舗を教えてもらっている。


 こびを売るのは嫌なんだけど仕方ないことだと割り切って付き合いをしているのだ。そのせいで酒の席はかならず付き合わされる。


 先輩が昇給して管理職になれば、営業でまわっていた店舗の後継に俺を指名してくれるだろう。それを期待しているからね。


 取引先を引き継げるから営業まわりも楽になるだろう。出来る人はそうやってうまくまわしているみたいだから。


 出来ると言うか要領がうまい人と言って良いだろうな。


 しかしまさか店ごとに単価が違うのだと入った当時は知らなかった。それも金額の差が激しい店舗があるのだ。


 大量注文してくれるところはそれなりに安くなるからな。

 あとは古参からお世話になっている小さな店舗はほとんど利益が出ない金額でおろしている。


 受注を受けなるべく高く下せといわれているけれど、忖度とかされている店舗があるからおかしいとか疑問に思っていた時期があったよ。


 入社した当時いろんな製造部門を回り、夜勤の製造ラインも経験させられた。


 一番最初に教わったのが、道具と機械の洗い方だ。特に次の製品の切り替えの時に、洗浄作業が重要でみっちり洗い方を教えらる。


 洗剤は使ってはならないという事だったので汚れを落とすのが大変だった。


 水とお湯で丁寧に奇麗に洗い流すんだから、洗剤を使うと成分が付着して残った時に大変なので使えないらしい。


 たわしも駄目で特注のブラシとスポンジを利用して奇麗に洗わされた。それも植物油で出来たプラスッチックなので一応食べても大丈夫らしいからな。


 バットの入れ物も全部食べられるよと言って先輩がカッターで端を削って食べて見せたのが衝撃的だった。教えるのにそこまでするのと思った時があるよ。


 プラスチックを食べたよりも持ってきたカッターの方を気にしていたね。金属の管理は重要だ。

 異物が入ったら大変だし、まして刃物など間違って入ったらとんでもない事になるからな。


 食品会社はかなり細かい点を気を付けているのが入ってからわかってきたんだよな。

 お金を稼ぐのは大変だときずかされた。


 そのせいか洗い物は得意になってしまったよ。


 おっとなぜか元の世界の事を思い出してしまったよ。そんな事よりも川の水でおっさんが持っていた使えそうな容器を出して奇麗に洗ってしまおう。


 ガラスの瓶とかあったのだがどれも汚れがひどくこびりついており、落ちが悪かった。


 お湯が使えれば良いが、火がおこせないのであきらめてしまった。


 おっさんがだらしないのか、この世界で水が貴重なのかわからないが汚れた物ばかりだ。


 日本では水をふんだんに使って洗うのが当然だけど海外では皿など拭くだけで水洗いしない地域とかもあると言うので、この異世界ではどちらの部類に入るだろう。


 最初に戴いた水を飲んだかぎり後者のような気がするな。


 大きな川がここにあるので水については、それほど苦労はしないと思うのだけどどうなんだろうか?


 この際だから持っている物をすべて奇麗に洗浄してしまおう。


 水を入れる容器は用意できたけど、瓶にふたをしても水がこぼれてしまうのがあるのだ。


 蓋がぴったり閉まらない? 瓶がいびつでうまくふたとかみ合わない容器が多い。

 ふたをを占めるのに必要なパッキンとかないのは当然か。


 木を削ったふたなのでうまく合わさっても水だと漏れ出してしまう容器がほとんどだ。布を間に入れるのか?


 でも奇麗な布などここにはないぞ、間に入れても衛生的に問題があるぞ。


 困ったな、これでは収納カバンの中に入れられない。水を入れられそうな容器が少ないのだ。


 この異世界では物造りがこの程度の技術しかないのか? これはおもった以上に大変なところに来てしまったと感じてくる。


 水が入る容器がないので、おっさんが持っていた革袋の水筒らしい物の中に水を入れて持っていくことにする。これだけしか水を入れる物がないのだ。


 せめて煮沸沸騰した水を入れたいがここでは無理な話だった。


 水を沸かして沸騰させてから入れようかなと思ったのだが、鍋らしきものはあったのだけど火をつける方法が見つからなかったので諦めてしまった。


 おっさんが持っていたアイテムの中から火をつける道具が見つからなかった。もしかしたらあったのかも知れないがどれだか見当がつかない。


 火をつけるアイテム、もしかしたら魔法とかで火を起こしていたのかも知れないな。


 火が付けられる魔法がこの異世界ではありそうだな。現状の俺ではそんな夢の話はできないからな。


 火をつける事さえ出来ないとは本当に情けない。


 これからの課題、水の問題、火の問題、それに言葉の問題、それらを優先的になんとかさせないといけない。

 結構考えたらいろんなことで不便な点がありすぎるぞ。


 現代社会に育った俺にはこの異世界で生活していけるのだろうか?


 金らしいものはおっさんが、結構持っていたのでそれを使えば何とかなるだろうと考えているが何とも言えない。


 この異世界に来たばかりだ。あまりにも知識がなさすぎる。恐らくお金を使ってもぼったくりには必ずあうだろう。


 そんな事を考えてると憂鬱になってくる。


 トラブルを回避する為に、お金の種類もわけておかないといけない。財布を何個か用意してひもでもつけておくか。


 幸い俺の財布には金属のチェーンが付いていたので良かった。


 やることが結構あるな、昨日の夜、腹をくだした時間がもったいなく感じる。とりあえずこの場で出来るだけの準備をしておこう。


 奪った道具を整理し、川の水を革袋へ入れて収納カバンへしまう。


 あと気になる点は食料の問題か。

 昨日、倒した人面木樹マッドツリー のところへ行き、金色の林檎をできるだけ持って行こう、と言うか全部取って行こう。


 金色の林檎が俺の今のところの生命線だな。あの辺には、異様な感じはあったが、他のモンスターはいなかった。


 人面木樹マッドツリー のせいで生物のいない場所になっていたと推測される。

 それだったら逆に安全と考えて良い(かも知れない。


 一端戻り眠いので一晩、あの場所で過ごすことにしよう。


 急いで人面木樹マッドツリーのことろへもどって来た。幸いなことに盗賊やモンスターにも出くわさなかった。


 目印を付けていたので時間はかかったがすんなり目的の場所へ戻れたので良かった。


「あった、昨日と同じ状態で金色の林檎が残っているぞ」

 金色の林檎は変わらず実っており、人面木樹マッドツリーの大木は真ん中が風穴が開いたままだ。


 「よし、人面木樹マッドツリーは完全に死んでいるな」

 眠いのと腹が減ったが、まずは金色の林檎の回収をしておこう。


 かなり眠いが林檎をすべて捥ぎってから休むことにする。

 ・・・

 ・・・

 ・・・

 すべての林檎を、捥ぎ取って収納カバンに入れてしまう。


 「ふう、やっと林檎の回収を終えたか」

 最初に捥ぎ取ったのを含めれば、382個ほど集まった。


 「382個しかないのか」

 これではどこまで、生きていけるかわからないが大切に食べよう。俺の最後の生命線だ。


 腹の痛みも治まったので良かった。それじゃ腹が減ったので林檎を食べるか。

 

 「もしゃ、もしゃ、もしゃ」

 やっぱり林檎はうまいな。


 しばらくこの場所で休憩を取ってから動くとするか。あとは必要な物を整理してから、人間がいそうなところを探してみよう。


 しかし、ここは薄暗く、異様な感じがするな。今は大丈夫だと思うのだが。


 人面木樹マッドツリーがいたので他の動物やモンスターは寄り付かなかったのだろう。ここら辺一帯の動物など殺され栄養分にされてしまったのかも知れないな。


 今は深い事を考えるのはやめておこう。なるようにしかならないからな。


 アイテムの整理が終えたので、おっさんが持っていた全身を覆うローブらしきものをまとって休んでしまう。


 「うーん 朝かな?」

 生きているな。


 日差しが眩しいな、良く寝れたなと自分でも思う。ここで死んでいても不思議はなかっただろう。

 残念なのは、やはり夢の中ではなかったか。ここはやはりあきらめるしかないか。


 俺の体内時計感覚では、10時間くらい寝たのではないかな。

 よく襲われなかったものだな、運がよかったのか。


 さてと移動しましょうか。


 収納カバンから2つの金色の林檎を出し両手で持って交互にかじりながら、昨日通った道なりを歩いて行く。


 靴下のままでは痛いので、何の革かわからないがタオルのような布があったのでそれを足裏にうまく撒いて歩いて行く。


 靴下よりはだいぶましだな。ちょっとだけ痛かったんだよね。でもおっさんが履いていた靴を履くよりかはましだろう。


 道なに2時間ほど早歩きで歩いてきた、町のようなものが見えた。


 「やった、あそこに行けばなんとか助かる」

 急ぎ足で俺は町に向かった。


 「おお、そこそこ大きい町だな」

 町のまわりにはレンガで壁がこしらえてある。


 大きなゲートがあり門番のような男が2人ほど立っていた。

 後ろにも複数の鉄鎧を着た者達がいる。体格のいい屈強な男たちに見える。


 その後ろに受付窓口? があり行きかう人を審査しているみたいだ。


 今は20人ほど並んで審査を受けているみたいだ。

 俺もその列に並んだ方が良いのかな。


 そう思っていたら、受付窓口の処から1人の中年男性が俺に気づいたようで駆け寄って来た。


 「東国から来られた貴族の方でごらっしゃいますな。お話は聞き及んで御座います。

 こちらへどうぞ」


 ? 何か言われたがさっぱりわからない。


 手ぶりでなんか示しているのでこちらに来いと言っているみたいだ。それになぜか行業しく頭を下げているので付いて行って見るか。

 後を付いて行ったら街に入る入り口の門の横に豪華な大きな扉がありそこへ案内された。


 先ほど案内した中年の男性が扉を開け、頭をさげお辞儀している。


 ? どういうこと通って良いのかな。

 扉の向こうは隣にある門の入り口と変わらないのだが、別に豪華な大きい扉が横にあるだけなんだけど?


 まっ良いか、町に入れるのだったら入れてもらおう。どうせ言葉はわからないんだ、何言っても通じないしね。


 そのまま豪華な扉を通り待ちの中に入ってしまう。

 素通りで、町の中に入れてしまった。


 ボディイチェックとかまたお金を払って中に入ると言うこういはなかったのだ。


 横目で入り口付近を見たら、念入りにボディーチェック受けている人もいるし、お金だって払っているみたいだぞ。


 てっきり俺もあそこに並んで審査を受けると心配していたのだがこれで良かったのか?


 まっ良いか、理由はわからないがこの中年の男性が通って良いと判断しているのでお言葉に甘えさせていただこう。


 町の中へすんなり入り込んでしまった。


 町中に入ったが、後ろを振り向いて見ると先ほど案内した中年の男性がまだ頭を深々と下げている。


 なんかこれって別の意味でやばくないか、わからないが深く考えるのはやめておこう。


 それより町の中へ入れたのだ。いろいろ見てまわろうとするか。

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