第46話 ヴァレン・シュタイン・アークランド
(ヴァレン・シュタイン城)
日が落ちたとたんに、城内にある魔法の蝋燭が自然に火を灯す。
夜の住人達が目を覚まし動き始めるのだ。
王の間の玉座で一人の若い青年が座ったまま眠っている。
すでに二十日足らずも眠り続けているのだ。
玉座の隣には、幹部である側近の一人が、何時目覚めるか待ち焦がれて泣いている。
すでに二十日も眠っている。
このまま再び永い眠りに就いてしまうのかと危惧しているのだ。
彼の一族は銀の一族と呼ばれる吸血鬼達だ。
この地を代々治めてきた貴族だ。
しかし三百年前にこの地にやって来た魔獣ヒュドラと戦い一族は敗れた。
それどころか魔獣ヒュドラとの戦いで勝てないと分かり、この地を捨て早々と去ってしまった。
彼は此処へ一人だけ残り、魔獣ヒュドラと戦っていたのである。
しかし魔獣ヒュドラには勝つことができず、彼自身も深い傷を負ってしまった。
彼は傷の回復の為に自らを封印し、城の奥で深い眠りに付いていた。
封印が解け目を覚ましたのは二百五十年ほど歳月を経てからだ
目を覚ました時にはこの地は廃れており、魔獣ヒュドラもこの地から倒され居なくなっていた。
魔獣ヒュドラを倒したのは同じ吸血鬼の黒の一族の者だ。
黒の一族の者は戦闘にたけている。
前々から口だけたっしゃな弱い銀の一族に対し不信感を持っていた。
勇者殲滅戦時に最初から戦いもせず逃げ出した弱い奴等だと罵っているほどだ。
彼らが逃げたせいで吸血鬼である自分達も弱いと思われるのが許せないでいる。
千年前の勇者との戦いも、銀の一族は防衛と称し、城に籠ったままで戦いには参加はしなかった。
それ以前にも不信感が漂っている。
吸血鬼同士だが、大きな溝があり敵対していると言っても良い関係だ。
その銀の一族の彼が目を覚まし動き出したことによって最近さまざまな災いが訪れる事になった。
弱い奴なのに出しゃばって他種族を見下し、混乱させているとはそれが気に入らない者達も出てくる。
その者達も怒りで限界に達して、動き始めた者もいるのだ。
・・・
廃れた城の中で一人目覚め、自分が持っていた威厳と権威を取り戻す為に動き出した。
二百五十年前の事など、人間では覚えている者などほとんどいない。
そして、彼を知っている者もいないのだ。
ただ爵位を賜っている彼は、この五十年間、自身の権威を取り戻す為に人間、獣人かまわず取り込み、こび諂ってきた。
国の内政政策にも関わってきたし、交流を深める為にくだらない人間の貴族の社交界まで顔を出してきた。
今はそのおかげで人脈もでき自らの持っていた伯爵位の権威も回復してきたところだ。
彼には野望があり、いずれはこの国の王になると言う夢を持っている。
古き時代にあったと言われる貴族中の貴族、吸血鬼が支配する楽園を創ろうと夢を見ている。
しかし今まさに転換期が起き始めている。
彼にとっては最悪の事態が起こってしまったのだ。
身内が起こしてしまった失策をどうするのか、七夜鬼の幹部の一人であるスカーザッハは悩んでいた。
飼いならしていた冒険者ギルドの幹部連中と同じ仲間である七夜鬼のグレッグ、ゴーン、シャンテが殺され居なくなってしまったのだ。
特に、幹部の七夜鬼である三人を失ったのは痛い。
彼らに替わる強さを持つ者など同胞の勢力には居ないのだ。
この失態を主に知れれば殺されるかもしれない。
失態を取り戻す為に模索中なのだが、運が悪いのかあのお方が目を覚ましてしまった。
「お寝覚めですか主、アークランド様」
「アンか、私はどのくらい眠ったままだったのだろうか」
「今日で二十日ほどお眠りで御座いました」
「そうか二十日か。
くだらない人間との交流を続けていたせいで疲れが溜まっていたのかも知れないな。
こんなに休息を取るとは五十年ぶりか」
「そうですよ。
私は目覚めないかと思い、毎日泣いていましたのですからね」
「そうか、アン、心配かけたね」
そう言ってアンと呼ばれる銀髪の女性の髪を撫でた。
アンは猫が頭を撫でられたように嬉しそうな顔をしている。
「アン、腹が空いた。
食事を用意してくれないか」
「すでにご用意はできています。
お持ちしますね」
アンと言われる七夜鬼の幹部の一人は食事の用意を自ら出しに行った。
※ ヴァレン・シュタイン・アークランド 男性 吸血鬼真祖
銀色の髪の毛をおかっぱ上に切り揃えた優男に見える二十代前半の男性。
若く見えるが、この世界の日数で千年以上は生きている。
銀の一族と呼ばれる純粋な吸血鬼。
純粋な吸血鬼は真祖と呼ばれる事がこの世界での常識だ。
吸血鬼の中でも種族の違いがあって主に髪の色で判断できる。
銀の一族は支配の能力にたけた者が多い。
血の烙印で強制的に自分の配下にする能力を持っていたりする。
洗脳系の魔法や魅了の魔法系も得意で人心を惑わす事もでき、心なき者が上に立つと国が衰退すると言う事が言われている。
本人達は自分達が貴族中の貴族で上位の存在だと本気で思っていて他種族を見下している。
自己中心的な迷惑きわまりない吸血鬼の一族だ。
※ ロコイド・アン 女性 吸血鬼。
主、アークランドに血の洗礼を受け吸血鬼になった。
元々、ヴァレン・シュタイン城の近くにあった農村の村長の孫娘の一人であった。
アークランドが目覚めたことで、村の為に生贄として捧げられた若い女性だ。
吸血鬼になり五十年前から主に使えている。
年齢二十歳前後の女性で、それなりの器量をした美しい女性だ。
生贄を出した村は彼女によって滅ぼされなくなってしまっている。
自分を犠牲にした事で恨んでおり、村の者を自ら皆殺しにした経緯を持っている。
アークランドに誠意をこめ使えており、信頼の高い存在になっている。
信頼性を評価されアークランドの血とアイテムによって儀式をおこない主人により近い存在になった。
吸血鬼としての力は弱いが昼間も太陽の元に過ごせるようになる。
アン本人は心から主であるアークランドを愛しているが、彼は彼女を信頼できる哀願動物として可愛がっているようだ。
その事は彼女はまったく気づいていない。
※ スカーザッハ 男性 吸血鬼
五百年以上前に執事としてアークランドに使えている元人間の商人だった男性だ。
洗礼を受け吸血鬼になった。
背の高いやせ細った五十歳前後の中年に見える。
三百年前に傷ついたアークランドを眠りをつく手助けしてずっと見守ってきた忠誠心の高い吸血鬼だ。
元商人だったので頭の回転が速く、策士として用いられているが期待するほどの功績は上げていない。
本人は自称、銀の一族随一の策士としてアークランドに使えている。
スカーザッハもアークランドの血とアイテムにより儀式を受け昼間でも活動できる吸血鬼となっている。
「主様、お食事の用意ができました。
こちらをどうぞ」
そう言ってストローのような管をアンは差し出して来た。
管の先には一人の目隠しをされた頭に棘のような冠を付けた意識のない少年が台座に横たわっていた。
生きているが意識はないようだ。
様々な魔道具が身体に埋め込まれており、太ももなどの肉片をそぎ落とされた形跡もある。
魔道具によって死ねない身体に改造されているようだ。
取り付けられている魔道具の一部から管のような配管が何本も出ており、その一本をアークランドは持っていた。
アークランドはいきよいよくその管を吸い込んだ。
吸い込んだ中から赤い血が流れ出てくる。
少年の血を飲んでいるのだ。
「おお、有難う、アンよ。
これだ、これが吸いたかったんだ。
旨い、旨いよ」
「お気に召してくれて有難うございます。
主様の為、努力をした私が報われます」
「ああ、本当に良い子だなアンは。
これからもずっとお願いするよ」
「お褒めを戴いて有難うございます。
誠心誠意この身体朽ちるまでお仕えしたいと思います」
「これからも宜しく頼むよ、アン。
それよりもスカーザッハ、そんな柱の物陰に隠れて何をしているのだい。
こっちに来たらどうかな。
それとも私の傍に来られない理由でも出来たのかい。
いつも我先にと来るのがお前だったじゃないか」
「・・・
主様よ、失礼します」
スカーザッハはゆっくりアークランドの傍に近づいて行く。
「その様子だと、私が眠っている間に何かトラブルがあったのだね。
言ってごらん、怒らないからさ」
「・・・」
「分かっていると思うが嘘や誤魔化すのはやめてくれよ。
面倒な事を後から追及するのは嫌なのでね。
あと分かっていると思うが私には嘘は付けないからね。
心音ですぐに分かってしまうから」
「・・・」
「スカーザッハ、聞いているのかい。
私が寝ている間に何があったかを教えてくれないか」
スカーザッハはここ数日間で起きた事と知り得た情報をすべて包み隠さずにアークランドに話した。
それは勿論アン・ドウと言う東の国から来た貴族の事と同胞である七夜鬼の三人が死んだ事をだ。
スカーザッハは主の怒りで死ぬ覚悟を決めていた。
怒り狂って八つ裂きにされるだろうと予想している。
しかし、主は何故か話を聞いても、不快感は募らせるが怒る事は不思議と無かったのだ。
それが逆に不気味に思える。
「なるほどな。
そんなことがあったのか。
グレッグ達、三人が死んだのは戦力的には痛いな。
特にゴーンは惜しい。
彼が本気を出せば、私でも敵わない潜在能力を持っていたからね。
でも剣聖が出てきたんでしょう。
どうにもならないよ。
彼の強さは私も良く知っているからね。
・・・
それに宝物庫に合ったアイテムも持ち出し、特に神装武器の二つが奴らの手に渡ったか、失ったかか・・・。
でもあれはレプリカだから問題はないだろう。
本物はこの城のどこかにあると聞いているが、私も封印してある場所を知らないからね。
ただキースが死んだのは痛かったな。
ん、彼の存在自体じゃないよ。
死んでも彼には別に問題はないしね。
彼には私に協力すると言う名目で破邪の剣を預けたのだから。
あれはレプリカではないんだよな。
それもキースは金に物を言わせ、破邪の剣を強化したと言うじゃないか。
あの剣は我々の魂さえ斬れる剣だから厄介と言わざる得ない。
それがそのアン・ドウと言う奴の手に渡ってしまったのだろう。
これは厄介な事案だね。
それに従者にはキースが奴隷としていたエルフが付いているんだったね。
本当に面倒な事になったよ」
「おっしゃるとうりで御座います。
しかしならば、私めはどうすれば良いで御座いましょうか。
この失態、私の身一つでお許し下さるならば幸いです」
「スカーザッハ、そのような事を微塵も考えていないと言うのに言うのでは無いよ。
逆にその事で私は不快感になりお前を八つ裂きにするかも知れないからね。
今はあの旨い血を飲んでご機嫌なんだよ。
それにお前は今までの功績があるしね。
運が良かったね、スカーザッハ」
「申しわけ御座いません。
どうかお許し下さい」
「そうそう、そういうふうに素直に謝れば一番なのさ。
今回は特別に許してあげよう」
「・・・
主様、怒りはしないのですか。
五十年間あなた様がこの国でしていたことを台無しにしてしまったのですよ」
「確かにそうだね。
それについては頭にきているよ。
でも今回の件で転機が訪れたのかも知れない」
「転機ですか?」
「そうそう。
お前が最初に話した冒険者ギルドの幹部連中を殺したと言う、アン・ドウと言う彼の事だ。
「アン・ドウですか」
「そうそのアン・ドウだ。
東の蛮族の国から来た貴族だと言う話だったよな。
彼をこちら側に付ければ転機が訪れるかもしれない」
「そんな事が出来るのですか」
「お前の話が正しければね」
「・・・」
「公爵家は東の森からフレア・ドラゴンが町を襲撃させたと言ったのだろう。
面白い嘘だよね」
「確かにそうですが。
町主自ら発表したと言っておりました。
彼は私の子飼いです。
公爵家の者がそう言えと打診があったと言っておりました。
間違いありませんが、それがどうしたのですか。
!
まさか」
「そうだ。
恐らくそのアン・ドウと言う東の国から来た貴族は殺されるはずだ。
公爵家の手の者によってな。
なにせ身内であるキースを殺っているのだから、公爵家も黙っていないだろう。
それに言い分もすでにできているじゃないか。
冒険者ギルド幹部を皆殺しにし、町を無防備にさせている。
まあ、ゴーンとシャンテがやった事は突然の事で、まったく彼には関係なく、冒険者ギルドへは連絡も行きようもないけどね。
その話の成り行きでフレア・ドラゴンが夜に町を襲ってきたと言っているのだぞ。
それも東の森から来たとね。
あきらかにアン・ドウが関係しているのだと疑わせることができるではないか」
「確かにそう考えられますね」
「しかも何故だか、公爵家の騎士団がギレンの町に来ていたとは考えられないよね。
私等関連で動いたのではなくアン・ドウを殺しに来たのではないかと考えて見てもおかしくないかい。
公爵家の騎士団が先に動いているなんてよほどの事だよね」
「主様のおっしゃるとうりです。
私達に対して動くのだったら早すぎます。
内通者が城内にいるかも知れませんが、それでも対応が早すぎます。
特に今回の件は私等、七夜鬼にも知らされておらず、ゴーンとシャンテがあのような事を企てるとは、グレッグについてもまったく知りませんでした。
アン・ドウを殺すか捕える為に騎士団が動いた可能性が考えられます」
「そうだね。
それだとアン・ドウの指示で魔獣を町へ襲わさせたのだと言う話が旨くできるではないか」
「確かにそのとうりです」
「ギレンの町では彼がやったとか、すでに噂と流れているんじゃないかな。
アン・ドウを殺す為に公爵家の手の者が噂を流している。
なんてね」
「有り得ますね。
至急、町に忍び込ませている間者に連絡を取り確認いたします。
しかしながら、主様よ。
アン・ドウを仲間に引き入れることが我々に何の特がありますでしょうか。
東の蛮族の貴族ですよ。
確かに力はそれなりに持っているようですがそれほど私達にメリットは無いと思われますが。
それとも東の蛮族の力を引き入れるというのですか?」
「うん、それもあるね。
それもあるけどそれ以上に興味深い事をお前から聞いたからね」
「私が何か言いましたでしょうか?」
「キースとの決闘の事だよ」
「決闘の事ですか?」
「聞いた話、彼って恐らくは特殊な能力者だよね。
それも即死系の特別な魔法を使う。
私が思うに神技系の魔法を恐らく使うのだろうな」
「神技魔法ですか」
「そう神技魔法だ。
キースとの決闘で白き天使が降りてきたんだろう。
それも町の中に突然現れたとか」
「はい、そう聞いております。
それに決闘の証明書も発行されたとか言っておりましたね。
そのおかげで私の子飼い達が全員殺されましたけど・・・」
「それは気の毒だったね。
しかし神の使いである天使が現われるなんて、そんな事は滅多にない。
いや、無いと言って良い。
神殿で祈りを捧げ事前に神の使いと交渉をしていなければ見る事も会う事も出来ないだろう。
それが目の前に現れるなんてありえるのかい」
「確かに言われるとうりです。
現れるなんて絶対ありません。
・・・
それだとまさか、自ら呼んだ。
神降ろしの奇跡の魔法」
「そう、彼は神降ろしができる可能性がある」
「やはり神降ろしの魔法ですか。
なんとまあ、恐るべき事を・・・」
「そうだ、恐るべき事だよね。
神が一国の王を決め挿げ替える事もあるのだからね。
でもこれは私にとってチャンスではないのかな」
「確かに・・・
ですが危険です」
「そうだね、危険だね。
そのアン・ドウと言う彼は東の国で神官でもやっていた貴族の可能性が出てくる。
神を呼び寄せ、一時的に力を得る能力かも知れないな。
そうなれば即死系魔法も簡単に使えるだろう。
そういう輩が東の国でいると聞いたことがあるからね」
「確かに私もあります。
神との対価交換で召喚と言う形で神を自らの身に下すことができる者がおりますと聞きおよんだ事があります」
「冒険者ギルドの幹部連中をあっさり殺したみたいだし、それにグレッグも恐らくは奴に殺されたのだろう。
グレッグもかなり強かったはずだよ。
それをあっさり殺せるとはね。
それとキースも殺されたか、一発殴られてあの世逝きだったみたいだね。
ハハハッ ハハッ
それほどの力のある彼を見過ごすことができないのでは無いかな。
お前もそう思わないかい」
「確かにそうですね」
「公爵家はアン・ドウを向かい入れる事は無いだろう。
もしかしたら彼の力を知って、騎士団を派遣させたのだと言うのも納得できる。
公爵家の手の者に殺される前に、私の仲間として引き入れても良いのではないかな。
そうすれば彼の能力を使って新王を簡単に殺すこともできるはずだからね。
それとも神降ろしの議をおこなって貰って、私が直接この国の王に挿げ替えて貰おうかな。
この城には幸い財宝が腐るほどある。
それを差し出せば良いだろう。
何ならこの国の女でも無制限にあてがってやるのも良いな。
人間は性的欲求が無制限だからね」
「確かにそうですな」
「新しく王になったウズベルトはまだ子供がいない。
と言うか彼は男色化なんだよ。
それも幼子を好むと言う。
そんな奴に世継ぎがいるわけ無いか。
スカーザッハは知っていたかいこの事実を」
「いえ、知りませんでした。
まさかそのようなご趣味を持っているとは」
「ウズベルトが死ねば。
国が乱れる。
国が乱れる事になれば、俺にとって都合が良すぎるのではないか。
その為にこの五十年間、嫌な人間の社交界も出ていたのだからね。
人脈はあるし何より公爵家を疎んでいる奴らが多くいる。
そいつらと共に兵をあげれば良いだけでは無いかな」
「確かに私も思います。
しかしながら剣聖がいますよ」
「そう、そうなんだよな。
しかし剣聖はあの方との約束で私には手を出せないだろう。
同じ依頼を受けてしまっているのだからね」
「確かにそれがありますな。
同様に黒の魔女も動けないと言う訳ですね」
「黒の魔女か、そうだった彼女も居たのか。
彼女はどうか知らないが、あの方の怒りを買いたくないだろう。
彼女でもあの方の望みは叶え慣れないからな。
剣聖も試したようで無理だったらしい。
私もあの方の望みが叶う方法を探している最中だからね」
「私はあの方にあった事はありますが、何者なんでしょう。
私では理解できない存在なんです」
「それは私も分からないよ。
どうやったらあんな姿になるのか見当もつかない。
おっとこれ以上は言うのはやめておこう。
私もまだ死にたくはないのでな」
「これは失礼しました。
私も言い過ぎたと反省します」
「そうだね。
でも、もしかしたら、アン・ドウと言う輩があの方の望みを叶えてくれる可能性もあるな。
しかし神ごときの力であの方の望みが叶うとは思えないけど」
「確かにそうですね」
「いずれにしろアン・ドウを私のところへ向かい入れたいな。
試してみても良いだろう。
それほど彼は潜在能力を私は持っていると思うよ。
あくまで感だがね」
「そこまでおっしゃいますなら、我々は主に従うのみです」
「うん、ありがとね。
それと私が眠る前に冒険者ギルドから提供を受けたあの八人はどうなったかな。
洗礼で生き残った者はいるかな?」
「はい、半分ほど生き残っております。
S級冒険者一人とA級冒険者が二人、B級冒険者が一人ほど生き残りました。
こんなことは稀な事です。
今地下で幽閉されております」
「運が良いな半分も生き残っているのか。
それもS級冒険者が生き残ったのかい。
それは良いじゃないか」
「はい、かの有名なベヒモス殺しの彼です」
「おお、それはすごいじゃないか。
血の烙印をして仲間に引き入れてしまおう。
グレッグ達の変わりはそれでお釣りが来るな」
「左様で御座います」
「アン、スカーザッハ、私は近日中にギレンの町に行く。
アン・ドウと言う彼に会い、仲間に引き入れるぞ。
準備をしとけ」
「了解いたしました」
「まあ、私が行くまでに公爵家の手の者に殺されていなければの話だがね」




