第41話 真夜中の開戦
(ヴァレン・シュタイン城)
「どういう事よ。
グレッグがもう二日も帰ってこないのよ。
それにギレンの町に潜ませていた間者からも、何も情報が入ってこない。
グレッグの消息が掴めないとは、どういう事よ」
「落ち着け、シャンテ。
・・・
俺達は間違いを犯したのかも知れない」
「ゴーン、それってどういう事よ?」
「黒だ。
黒の魔女があの町に居るだろう。
俺達はその事を忘れていた」
「あ、あの女ね。
そういえば居たような。
あの町に引きこもって居たんだ」
「そうだ、あの黒の魔女に殺された可能性がある。
配下の噂では最近、夜の町を徘徊していると聞いているぞ。
可能性大いに有りだ」
「・・・
畜生め。
あの売女。
よくもグレッグを殺りやがって、私達を舐めやがっているのか。
私がぶっ殺してやるわ。
衰退した黒の一族が私達、銀の一族に手を出すなんて、これは思い知らせねばならないわ」
「落ち着けシャンテ無謀だ。
あの黒の魔女は主に匹敵する力を持っているのだぞ。
いや、それ以上の力を持っているかも知れない」
「ゴーンあなたは主を馬鹿にする気なの。
あなたでもそんな事を言うのは許せないわ」
「悪かったシャンテ、俺が言いすぎた。
謝ろう。
しかし事実は事実だ。
一対一では黒の魔女の力の方が遥かに上だ。
事実は変わりない」
「・・・
で、どうする気よ、ゴーン。
グレッグが帰ってこないのも事実な訳よね。
あの魔女にあなたは殺されたと言ったわ。
それをどうする気なのよ」
「・・・
主に相談するしかないな。
これは我々の範疇を超えている。
どうしようも無かろう」
「どうしようも無いって。
・・・
ゴーン、私は行くわ、グレッグを探しに行って来る」
「何を言っているんだ、シャンテ。
あの黒の魔女が町に居る事が分かっているだろう。
死ぬぞ、シャンテよ」
「そんなことは、等に分かっているわよ。
それでも行きたいの。
行ってあの魔女に一泡ふかしてやりたいの」
「・・・
分かった、シャンテよ。
そこまで言うなら俺もついて行こう」
「ゴーン、ついて来てくれるの」
「ああ、良いだろう。
しかし行くのは明日だ。
明日の夜に準備を整へ行くとしよう。
それまで待て。
最善の準備を整え立ち向かうとしよう。
城にある魔法武具とアイテムをできるだけ持ち出して行こう」
「そんな事して良いの」
「どのみち死ぬ覚悟で行くのだろう。
それだったらなんの問題ないではないか。
それと今のうちに配下の者をギレンの町に出来るだけ送っておく。
戦争だ。
ギレンの町を潰すことにする。
どのみち黒の魔女と俺達が戦えばただではすまないからな。
一人残らず町の奴らを道ずれにしてやるのだ」
「ゴーン、あなた最高よ。
人間だったら惚れてしまったかも知れないわね」
「・・・
そうとなれば準備が必要だ。
アラキアとカミュには話しておくが、スカーサッカとアンには話すのはやめておこう。
これはあくまで私用だからな」
「そうね、そうしましょう」
「シャンテ、一つ頼めるか。」
「なにかしら」
「宝物庫にある武具とアイテムをできるだけ持ってきてほしい。
部下に装備させる。
主は未だに寝ったままだが、気づかれないように頼みたいのだ」
「分かったわ、ゴーン。
それは任せてね」
「それとシャンテ、出来るだけお前も良い装備を整えておけ。
その恰好ではすぐに死ぬぞ」
「分かったわ、ゴーン。
そういえば、あなたの装備はどうするの」
「俺は要らない。
この鎖がある。
常に魔力を注ぎ込んでいる俺の手足である鎖がな」
「そうだったわね。
それじゃ行って来るわ」
「ああ、くれぐれもスカーサッカとアンにも気づかれないようにな」
「分かっているわ。
でも、あいつら主のところから動けないで居るのだから気づかないのではないの、護衛だものね」
「確かにそうだが、下部もいるだろう」
「それもそうね。
でもあいつ等って、私達より弱いんだよね」
「そうだな。
あれで護衛をやるとは、俺も情けないと思っている」
「頭でっかちの参謀と愛人と言った方が良いもんね」
「・・・
シャンテ俺もそう思うが言いすぎだぞ」
「はーい、気を付けるわ」
「・・・
俺は今から部下の獣人を二百人ほどギレンの町に送っておく。
明日の俺達が町に付いた時に、一斉に仕掛ける準備をしておこう。
お前が持ち出した武具は昼間のうちにそいつらに届けさせ装備させておこう」
「そうね。
それが良いわ。
あの女に目にものを食らわせてやるんだから」
「ああ、そうすることにしよう」
(次の日の夜)
「シャンテ、飯は食って来たか」
「ええ、準備は万端よ。
それじゃ行くことにしましょう」
二人の吸血鬼は蝙蝠の羽を出し宙を飛ぶ。
ギレンの町に向かい始める。
「ギレンの町は此処から飛んで一時間ほどだよね」
「ああ、そうだが。
ちょうど人間は寝静まる時間にはいる。
仕掛けるのに良いころ合いって言っても良い」
「そのとおりね。
ゴーン、これを」
シャンテは巨大な鎚をゴーンに渡した。
「ム、これは神の宝具、神装武器なのか。
巨雷神の鎚か。
お前こんな物まで持ち出したのか」
「だってなんでも持って来いと言っていたじゃない。
それに、これを扱えるのゴーンしかいないし、一応持ってきたのよ。
それともゴーンは鎖があるから必要無かったかしら」
「いや、そうでもない。
この武器は持っているだけでも魔力が増大する。
それに魔力を使わなくても雷を発生することができるのだ。
魔力を上乗せすれば威力も倍増する。
雷系の最強の武器と言って良い。
これを食らわせれば、黒の魔女とてひとたまりもないぞ。
一撃で街を半壊できるほどの力を秘めているのだ。
助かる、シャンテ」
「別に良いのよ。
私はこの業火の杖を持ってきたわ。
その他に炎系をあげる宝具をたくさん身につけてね。
でも、この杖って自分自身も焼き付くすほどの威力がでるんだよね」
「ああ、そうだ。
それも神装武器の一つだ。
その武器と合わせれば外から街を消滅させることができるぞ」
「それだったらさ。
魔女が来る前に一発ぶちかましてみない」
「なるほど、それは良い考えかも知れん。
あわよくば魔女にダメージを与えられるかも知れんしな」
「そうね。
そうしましょうよ」
「分かった、そうしよう。
向かうとするか。
シャンテお前のスピードに合わせる。
先に行け」
「ありがとね、ゴーン。
あなたのスピードでは私ついて行けないから助かるわ」
一時間後ギレンの町に近づく。
「シャンテ、ギレンの町が見えてきたな。
ここは一端スピードを落とそう」
「そうね。
そうしましょう。
どうする。
下に一端降りたほうが良いかな」
「シャンテ止まれ、何かが飛んでくる」
「え、何処」
「ジュラジャー、シャキン」
ゴーンはシャンテの前面に鎖を解き放った。
「キーン、キン、キン、キン、バキン」
鎖を放ち飛んできた何かを撃ち落とした。
「ゴーン、ありがと、私には見えなかったけど、今のは何だったの」
「撃ち落とした音からして銀製の槍だな。
!
シャンテ、油断するな。
目を凝らしてみろ、目の前にすでに敵がいるぞ」
「敵ですって」
「ああ、透明化を使って見えなくしている様だな。
先ほど放った五本の銀槍も同じように透明化していたようだ」
シャンテは魔眼を使い目の前の状況を把握する。
「ワイバーン、違うスカイドラゴン!」
「ああ、そのようだな。
五体ほど浮遊してやがる」
「そのようね。
魔法で自らを浮かしているんでしょ。
ワイバーンでは浮遊なんて出来ないもんね。
常に飛んでいるか、止まる時は羽を動かし続けているんでしょ」
「ああ、そのとうりだ。
浮遊できても少しの間しかできないからな。
それよりも乗っている奴らだ。
どうやらどこぞの騎士らしいのがいるな。
騎士のマークからして公爵家の奴等か。
五本のそれそぞれ違う剣が重なっている紋章が見える。
その剣の模様が紅玉の魔石にさしてあるように埋め込まれているだろう。
間違いなく公爵家の騎士団だな。
魔法使いも一人乗っているのか。
数は竜使いと合わせて十六人ほどいるな」
「そのようね。
でもどうしてアレキサンダー家の奴らがこんなところにいるのかしら。
!
もしかしてグレッグをやったのはこいつらと言う可能性もあるよね」
「確かにな、この状況からして公爵家が動いていた可能性も出ていてもおかしくは無い。
実際、俺達に対して銀の槍を飛ばしてきたのだからな。
装備をみて見ろ、俺達用に銀製品で整えられた武具ばかりだ」
「そのようね。
こいつ等よくもグレッグを。
どうするゴーン下に降りたほうが良いかな」
「ああ、俺は空中戦は苦手だ。
どちらかと言うと地上で戦った方が楽なのでな。
おあつらい向きに下は草原だ。
ちょうど良い場所では無いか」
「そのようね。
それじゃ、一端地上に降りましょう」
「了解した。
それとシャンテ、先に言っておく。
お前は浮遊しても問題なく戦えるのだろう」
「ええ、そうだけど。
どちらかと言うと飛んで戦った方が私は良いわ」
「そうかそれじゃ、常に浮遊して戦ってくれないか。
俺はこの巨雷神の鎚を使う。
地上に降りていると感電するぞ」
「なるほどね、ゴーン。
ゴーンて気が利いていて、頭も良いよね。
私は宙を浮いて戦おうとするわ」
「ああ、雷撃を食らっても死なないと思うが、その方が良いだろう」
「それじゃ、地上に降りましょう」
シャンテとゴーンは地上に降りたった。
「ギルディア隊長、奴らが地上に降りましたが追いますか」
「あたりまえだ。
降りるに決まっているだろう。
俺は先に行く、お前らはルイーンに浮遊の魔法をかけて貰い後から来い。
それと黄色の魔法信号弾を上げろ。
応援を呼ぶ。
飛空操縦士は騎士団がおりたらドラゴンを連れ一時拠点へ戻ってくれ。
俺らが朝まで戻らなかった時には、速やかに公爵家に知らせろ」
「了解しました」
「それじゃ俺は先に行くぜ。
あらよっと」
「隊長この高さからでは・・・」
「行ってしまったみたいだわ。
私もこのまま行くわ」
「同じく俺も行くとしよう」
ギルディアと二人の騎士団の隊員はスカイドラゴンから地上へ飛び降りてしまった。
「やれやれ、高さ三百メートルはあるというのに浮遊の魔法なしに飛び降りるとは何を考えているのでしょうね。
とりあえず私達も行きましょう。
騎士団員の皆さん浮遊の魔法唱えるので準備して下さい。
それと先に魔法信号弾の発射をお願いできますか。
あ、一応、軍用の戦闘薬も飲んでおいて下さい。
相手は吸血鬼です。
恐慌を使う恐れがありますからね」
「了解しました。
ルイーン魔法兵長」
騎士団員の一人は黄色い魔法信号弾を上げた。
駐屯している仲間に応援を呼ぶ信号弾だ。
「さてとそれじゃ行きますか。
騎士団員の皆さん準備は良いでしょうか」
「完了しています」
「それじゃ行きますね。
浮遊」
ルイーン魔法兵長は騎士団員七人に浮遊の魔法をかけゆっくり降りて行った。
・・・
地上では二人の吸血鬼と三人の騎士達が睨み合っている。
ルイーン魔法兵長は少し離れた草原へ騎士団員七人にを下した。
騎士団員はすぐさま対峙している吸血鬼の元へ駆け出して行った。
「やれやれ、早いですね。
せめて防御魔法かけてからでも良かったのでは無いですかね。
実戦では少しのミスが命取りですから、焦りますと命取りになりますよ。
とは言っても相手は吸血鬼、油断など到底できないのも皆さん分かっていますよね。
まあ、焦っても仕方ないですか。
さてと、私も行きますか。
補助魔法で支援しないといけませんからね。
支援だけですめば良いのでしょうが、無理そうな感じがしますね」
ルイーン魔法兵長は浮遊しながら吸血鬼の元へ向かう。
「これで地上に降りたやつ等が全員来たと言う事か」
「そうみたいだわ。
ねえ、ゴーン私が威圧やって良いかな。
こんなに近くだとゴーンがやったら、あいつらそれで死んじゃうかも知れないしね」
「別にかまわないが、威圧を使うのは決戦の合図ではなかったのか。
俺の部下達が町の森の近くに潜まさせているのだ。
予定では町中に入って使うはずだっただろう。
こいつらをすぐに殺って町中で使えば良いのではないか、シャンテよ」
「それも良いけど。
こちらに集まって来た奴らもいるじゃない。
結構な数の人間が向かってきているわよ」
「・・・
確かにな。
百、いや二百以上こちらに向かっているな。
一個師団以上はいるな。
あちらさんは用意周到に来ているという訳か」
「そういうことよ」
「此処で始めても問題ないと言う訳だな。
お前が仕掛けると決めたのだ。
好きにすれば良いさ」
「ありがとね、ゴーン。
それじゃやらせてもらうわね」
シャンテは大きく息を吸い咆哮した。
目の前にいる騎士団に威圧をかけたのである。
巨大な魔力が地鳴りと共に騎士団員に降りかかる。
しかし目の前の騎士団員は微動だにもしない。
シャンテの放った威圧により森に潜ませていた獣人達が気づきこちらへ向かってくる。
打ち合わせでは二人の近くにき来て暴れる事になっていたのだ。
「あちゃー、私ってこんなに駄目だったかな」
「いや、そうでもないぞ。
普通の人間だったらショック死しているだろうな。
こいつらがおかしいだけだ」
「そうだよね。
自信をなくすところだったよ」
「良く鍛錬された奴らだな。
それに匂う。
軍で使う戦闘薬を飲んでいるのだろう。
それで精神を抑制できているようだ」
「そうみたいね。
ゴーンがやっても同じだったかな」
「ああ、こいつらには効かなかっただろう。
しかしそれだけの話だ。
こいつらでは俺の相手にはならない」
「そうだよね」
「・・・
相手にならないだと、ふざけた事を言うな」
「あら、あの蒼髪の男、怒ってしまったよ。
事実を話すと逆切れして怒るって本当の事みたいよね。
ねえ、ゴーン、そう思わない」
「ああ、そのようだな。
俺と奴等では力の差がありすぎる。
それを気づかないとは思えないのだがな」
「なんだと貴様」
「ギルディア落ち着いて下さい。
まずはお話しましょう」
「お話だと吸血鬼相手に何を言ってやがる、ルイーン」
「そうは言っても彼らはまだ何もやっていないのですからね。
これでは私達が一方的に仕掛けた事になりますから。
つじつまを合わせる為に話をしなくてはいけないでしょう。
そうでなければ道理がとおりませんからね」
「道理か、確かにそうだな」
「それじゃルイーン、お前が話に行け、戦闘はそれからだ」
「駄目ですよ、ギルディア。
まだ戦闘になるとは限りませんからね。
まずはお話してから判断をしましょう。
・・・
ごほん。
私の名はゼロック・ルイーンと申します。
この国で魔法兵長のお役を承っております。
ギレンの町に不穏な動きがあると聞いて駆けつけました。
あなた方こんな夜中に何をしにギレンの町に訪れたのかお聞きして良いでしょうか」
「お聞きして良いでしょうかだって、別に話すことは無いんだけど私はね。
・・・
お前達はアレキサンダー家の騎士だね。
一応さ、私これでも爵位持ちの貴族なんだけど、騎士無勢がさ、爵位を持つ私達に対して無礼では無いのかしらね。
死にたくなかったらさ、目の前から消え失せてくれない。
そうしたら見逃してやっても良いわよ。
「これ、シャンテ、見逃すというのは無かろう。
こいつらは全員皆殺しにするのだぞ。
そこんとこ分かっているのか」
「分かっているわよ。
どうせこいつら逃げるつもりはないみたいだし。
わざと言って見ただけだわ。
でもねゴーン、私達爵位持ちの貴族なんだよね。
それも至高の主から賜っているのよ。
それってさ、私達にこいつら無礼をはたらいているってことだよね。
失礼にあたる事でしょう」
「シャンテ、確かにそれは言えるな」
「・・・
おっとこれは失礼しました。
貴族のお方だったのですね。
実は私も同じ貴族ですよ。
こう見ても男爵の地位を戴いております。
そしてこちちらにいる方もギルティア男爵です」
「ヘー、あんたも貴族なのか。
それも爵位持ちね。
そうは見えないけどな。
・・・
あたしの名はシャンテ、ペリシア・シャンテ準男爵だ。
そして彼はゴーンジャケット男爵。
そんなにお前達が聞きたいならば答えてやるが、その前に私もお前達に聞きたいことがあるんだよ。
対等に話すのだ教えてくれない」
「良いですよ。
で、お聞きしたいという事は、なんでしょうかね」
「グレッグ・・・ アサルト・グレッグ男爵と言う男を知っているか。
先日、ギレンの町に出かけたのだが帰ってこないんだよ。
私達は彼を探しに来ただけだ。
何かお前達が知っているのか聞きたいんだよね。
それともお前達がグレッグを殺したのか私はそれを聞きたい」
「アサルト・グレッグと言う人物ですか。
うーん。
確か一世代前に活躍した冒険者と言う事は耳に入っております。
竜殺しの異名を持つ彼でしたらもう二十年以上前にお亡くなりになっていると思いますが彼が生きていたのですか。
それもあなた方の仲間になっていたとは、それは存じなかったです。
私からは知らないと言っておきます」
「そうか、知らないか。
それじゃあの黒の魔女に殺られたんだね。
あの売女やっぱり、殺してやる。
ちくしょうがグレッグを殺しやがって・・・」
シャンテは怒りのまま咆哮し、周りに異様な魔気を放出した。
「落ち着けシャンテ、今はこいつらの始末が先だ。
冷静になれ」
「ハア、ハア、ハア、分かったよゴーン、こいつらを始末してからあの魔女を殺しに行くとしよう」
「ああ、そのとおりだ」
「こちらの質問良いでしょうか」
「ああ、今さっき私、グレッグを探しに来たと言ったじゃないか。
答えてやったよ。
馬鹿じゃ無いのお前、話を聞いてなかったのかよ」
「・・・
そうでしたね。
別の質問がありますので先ほどの返答の変わり答えて貰えませんでしょうか」
「なんだよ、てめえ」
「実は私達も人を探して居ましてね。
ちょっとその事をお知りたくて聞かせて貰いたいのですよ」
「人探しだと、どんな奴だ。
あっ、もしかしてあいつの事かな。
いや、違うかも知れないな。
ウップププップ。
金色の濃い髪がウェーブかかった可愛い藍色の眼のした少年とかじゃないよね。
そんな子供。
私は知ってなんかいないよ。
ねえ、ゴーン知らないわよね」
「シャンテその事とは言うな。
気づかれたらまずいだろう」
「別に良いじゃない、此処に集まって来た者を皆殺しにするのだから、知られたって全然問題は無いわよ。
それに全面戦争するのでしょう。
どうってことない話じゃない」
「・・・
まぁ、そうだな」
「貴様らやはりアルフレッド殿下を」
「落ち着いて下さい。
ギルディア、彼らを捉えはかせればすむことです」
「私達を捉えるだと。
なんて間抜けな事を言っているのかしら。
そんなことできるはずもないのに」
シャンテとゴーンは魔力を開放し戦闘態勢にうつる。
騎士団員も同じように気を開放して構える。
今まさに人知れず郊外で戦いの幕が開始されたのである。




