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第39話 ミイラ化した吸血鬼

 吸血鬼だと。

 なんだその伝説級のモンスターは、真祖とかいないよな。

 そんな奴らが居て揉め事などを起こしたら大変だぞ。


 そういえば昨日の昼間あったゴシックロリータの服を着たお姉さん、吸血鬼ではなかったのではないかな?

 あきらかに異様な雰囲気を出していたし、闇に消えて行ったぞ。

 どう見ても尋常ではない力を持っているのは感じたし。

 でも普通に昼間出てきたけど、吸血鬼って夜しか行動できないんじゃなかったのかな。

 この世界では違うのだろうか。


 しっかし、そんな化け物とは関わりたくないな。

 早くこの町から立ち去る算段を付けよう。

 命がいくらあっても足りない。


 レイズさんは俺が此処へ来ていたのに気づき挨拶をしてくる。


 「お早う御座います。

 アンドウ伯爵様、朝からとんだトラブルをお見せしてしまって申し訳御座いません。

 ご機嫌を損ねたのならば、謝りたいと思います」

 「あ、別に良いよ。

 でも、中庭で人が死んでいるとは物騒な話だね。

 こんな事が良くあるのかな?」

 おいおい、なんでこんな時に俺の事を気づいて話しかけてくるんだよ。

 俺よりそこで死んでいる吸血鬼、ミイラ化している吸血鬼の問題が先だろうが。


 俺は余計な事には関わりたくないからそっとしておいてくれよ。

 野次馬根性で此処へ来たのは悪かったけど、それにしては声をかけるのはおかしくない。

 何かのフラグが立ってしまっているのかと思ってしまうよ。


 「アンドウ伯爵様、このような事は滅多に御座いません。

 私共のホテルでは魔除けの結界が張り巡らせています。

 ご安心はできると思いますでしょうが、今回はたまたま吸血鬼が侵入を試みたと言って良いでしょうね。

 彼らは誰構わず襲いますから」

 おいおいたまたまって、侵入されていちゃまずいだろうが、それもよりにもよって吸血鬼だよ。


 「魔除けの結界により、吸血鬼は恐らくは侵入はできたのは良いが魔法の影響を受け力付き死んだと推測されます。

 当ホテルは強固な魔法の守りを用意していますのでご安心ください」

 本当に安心できるのか疑問が出てくる。


 それに死んでいても朝まで気づかず放置していたじゃないか。

 衛兵が居たよね。

 衛兵って何をしているんだよ。

 案山子か、案山子じゃないよな。

 眠っていたわけじゃあるいまいし、誰も気づかないでいるなんて危なくて仕方がないと突っ込みを入れたいよ。

 でも言えないのが悲しい事だよな。

 変に揉め事を起こしたくはないからね。

 

 それよりも中庭で死んでいるって、ちょうど俺がいる部屋の目の前では無いか。

 まさかと思うが俺のチート能力が発動していないよな。

 発動していたら問題だよ。

 俺の異能で殺したのでそれが無ければ侵入され襲われてたと言って良いだろう。


 「ご覧になられますか」

 えっ、何をご覧になるの?


 もしかしてミイラ化した吸血鬼を見せるのか。

 気になるので見てみたいけどこれってどうなのよ。

 一応、見ておくか。

 何かあったら困るので、攻撃魔法を使えるサレンさんを近くに呼んでおこう。


 「うーん、見せてもらおうかな。

 あっ、サレンさんちょっと良いかな。

 確か攻撃魔法を使えるんだったよね。

 何かあったら対処してほしいんだけどお願いできるかな?」

 「分かりました。

 お任せください」

 よし、これで準備はOKだ。

 とりあえず死んでいるみたいだし見てみる事にする。


 レイズさんに案内されミイラ化した吸血鬼の死体を拝見する。


 うわぁ、本当にミイラ化しているよ。

 それにおかしなこと服に劣化している?

 装備しているのは革鎧かな。

 これも同じように劣化しており乾いた感じで干からびているのだ。 

 触ったら粉々に壊れてしまいそうだ。

 

 !

 装備や服だけでは無いな。

 所持している武器もか。

 かなりの大きな大剣を所持しているのだが、こちらも何故か劣化している。

 どういうことだろう。

 気になって仕方ないが、俺の知識では知り得るこてはないだろう。

 なんたって吸血鬼は空想上の生き物で存在していなかったのだから。

 まぁ、宇宙人て説もあるけど居ないのは同じ事だろう。


 「サレンさん、どう見るかな」

 「間違いなく吸血鬼ですね。

 これは太陽の光を浴びて死んだと思われます。

 それに衣服が劣化していますのも頷けます」

 「?

 衣服が劣化しているのがどうして吸血鬼だと判断できるのかな」

 「吸血鬼は自分の魔力を服や武器などに付与することができるのです。

 魔力を帯びた服は吸血鬼の血肉と同じような作用が施されます。

 武器などにも魔力付加できまして形を変えたりすることが可能なのですよ」

 「そうなんだ。

 身に着けている物が魔力で変えられると言う事なのだよね。

 それってすごい能力じゃないかな」

 「そうですね。

 ですが吸血鬼には弱点も多くあります。

 真の吸血鬼でない限り昼間には行動できません。

 このように太陽の光を浴びただけで肉体が朽ちてしまうのです」

 「えっ、真の吸血鬼は昼間でも動けるの?」

 「はい、昼間は行動は人間並みになりますが、普通に行動していますね。

 町中でたまに見かける事もありますよ。

 私達はそれを狙って狩りをすることがあります」

 「えっ、エルフって吸血鬼を狩るの」

 「そうですが、なにか疑問がありますか」

 「いや、知らなかったのでね。

 もしかしてエルフって吸血鬼キラーだったりして」

 「そのとうりですが、ご主人様。

 エルフの中にはヴァンパイアハンターを職業として生計を立てている人もいますから、いたって普通の事ですね」

 「そうなの」

 「ただし、それは国から追われた犯罪者を狙う者達です。

 しかしほとんどの吸血鬼は何かしら犯罪行為を起こしているので懸賞金がかけられています。

 ですから対処できるものは少なく割と有利なエルフが吸血鬼を狩るのです。

 彼らは人間の生肉と生き血を吸う事で生きているのですから、人間から考えられる犯罪行為は必然的におこなっているのですよ」

 えぇ、そうなの空想上の話では聞くが実際に血を吸われるとなると怖いな。


 エルフのヴァンパイアハンターがいるのか。

 なんか、かっこ良いな。

 前に見た煌びやかな男性のエルフ、その姿で狩りをするのだったらかっこよすぎて羨ましいよ。

 なんかあれを思い出したら不公平な気持ちになってしまったのだがどうだんだろうか。


 まっ、そのことは此処では別に良いかな、それよりもミイラ化した吸血鬼の事だな。

 こいつが俺のチート能力で死んだかが気になる。

 解剖とかは出来なさそうだけど何か分かる手はないか。

 とりあえず触ってみたいな。

 直接触るのは嫌なので近くに落ちていた木の枝を拾って突っついてみるか。


 小枝の拾い、安藤明は重要アイテム小枝を手に入れた。

 安藤はミイラ化した吸血鬼を突っついてみる。


 「ツンツン」

 「ポフン」

 !

 なんだこれはミイラ化した吸血鬼の遺体が灰になって消えてしまったぞ。

 それどころか身に着けていた衣服と大剣も灰になって消えてしまったのだ。

 だが問題はそこから起こった。

 黄色いスライムのような潰れた物体が残されていたのだ。


  レイズさんが皆に声をかける。

 「なんだこれは、皆者、退避、退避しろ、吸血鬼が死んで灰になるのは当たり前だがこんなことになるのはおかしい。

 アンドウ伯爵様、お下がり下さい。

 今すぐ特殊魔法憲兵を呼びたいと思います。

 どうぞ、早く早く、お下がり下さい」

 ・・・

 やはり俺のチート能力が発動していたみたいだな。

 プリンが残されている。


 潰れたプリンが残されているな。

 けど思ったより大きくない。

 この吸血鬼の脳みそって小さかったのかな。

 この異常事態の中で冷静に考えてしまった。


 「サレンさん、この潰れたプ、物体を消滅させられる魔法ってあるのかな。

 なんか危険そうなので此処で処分しておきたいんだけどどうなんだろう」

 「はい、私には消滅可能な魔法があります。

 この黄色いスライムを消滅して見せましょう。

 ご主人様はどうぞお下がり下さい」

 「うん、それじゃ任せたよ、サレンさん。

 気を付けてね」

 俺はひとまず後ろへ下がった。


 サレンさんは両手を合わせて呪文を唱え始めた。

 呪文内容は俺には全く分からなかったが、ただ何かから力を借りるような事を言っているようだ。


 巨大な魔力がサレンさんの両手に集まり始めているのが分かる。

 それがまるで辺り一帯から魔力を吸収しているみたいに集まり始めているのだ。

 元気玉でも作るのかと思ってしまった。


 「神聖火炎ホーリー・フレア

 サレンさんは魔法を唱え、手のひらから金色の光が潰れたプリンに放たれた。

 放たれた金色の光がプリンに直撃した瞬間に、金色の巨大な火柱が登り始める。


 「おぉ、金色の炎だ。

 それもかなりでかい」

 つい口走ってしまった。

 

 巨大な金色の火柱が潰れたプリンを焼き尽くす。

 

 !

 おいおい、いくら消滅できるくらいと言ったのだけど火柱が大きくないか。

 直径三メートルくらいの円状の火柱が十メートルくらい登っているのだよ。

 キャンプファイヤーだってこんなにでかくは無いのに。


 かなり下がって離れているけど熱量を感じる。

 近くで魔法を唱えているサレンさんは熱く無いのかな。

 自分にも何か防御魔法でもかけているのか?

 そうでなければあんな近くで唱えられないよな。

 自爆して自分が焼け死ぬことも考えられることもあるのだから、それくらい魔法の火柱が激しく燃え大きいのだ。

 

 ・・・

 あっ、甘ったるい焼けたプリンの匂いがする。

 間違いなくこれはプリンの匂いだな。

 でも甘いプリンの香りを吸ってしまったけど大丈夫なのかな。

 潰れいたプリンって元は吸血鬼の脳みそだよね。

 なんか後から変な事起きないかな?


 うーん、まぁ、大丈夫だろう。

 少し匂いを嗅いで吸っただけでは何ともないと思うが、それに吸血鬼ではなくプリンに変化したのだから問題は無いと思う。


 サレンさんは両手を巨大な火柱に向けるのをやめると炎は消え始る。

 少したって完全に消えたのだが地面が円形上のへこみが出来、土が「グチュグチュ」と泡を出しているのだ。


 おいおいなんて高温なのだよ。

 土まで燃えているのかよ。

 いろいろ突っ込みどころが満載だが改めて攻撃魔法の恐ろしさを見てしまった。


 あんなの人間が食らったら即終了だよ。

 と言うか火が服に燃えうつっただけでも大騒ぎになるだろう。

 全身火傷で三十%~四十%の皮膚が焼けただれると生死の境目になるとか聞いたことがあるな。

 この世界で炎系の魔法を受けたらそれくらいの%の火傷を簡単に受けてしまうのではないか。

 そう考えるととても怖い事だよな。



 今回見た炎の魔法はそれどころの話では無いよ。

 ある意味即死魔法って言って良いのでは無いか。

 誰もあんなの食らって生きている人がいないよ。

 いたら化け物って言って良いだろう。


 「ご主人様、終わりました。

 完全に消滅したと確認もできました」

 そう言ってにこやかに笑いかけてきた。

 

 ある意味俺は心の中でドン引きしている。

 これほど魔法が強力なモノだとは知らなかった。

 ターナさんがかけてくれた魔法はあくまで生活魔法だという事を再認識する。

 それほど攻撃系の魔法は恐ろしいのだ。


 「ご苦労さん、サレンさんありがとね。

 レイズさんこれで大丈夫らしいけど、どうなんだろう。

 確認して貰えるかな」

 「確認するほどの事は御座いません。

 間違いなく消滅していると判断できます」

 レイズさんも先ほどの魔法を見てドン引きしているようだな。

 そりゃそうだよなあれだけ大きな火柱見ればな。


 「レイズさんお聞きしたいのだけど、吸血鬼って町中に居るのかな」

 「普通に居りますがどうしてでしょうか」

 「えっ、そうなの」

 「この国でも一地域には吸血鬼が住まう国が自治しております。

 ただ国での約束事があり、人間を襲わないと言うたてまえがありますが守られておりませんのが実情です。

 それに最近ですが、この町でも野良の吸血鬼が出没し、噂では人を浚ったり血を吸われグールかする人間がおります聞いています。

 もしかしたらその噂の吸血鬼が先ほどの奴だったかも知れません。

 私達のホテルが施した魔除けの魔法が利いたのでしょう。

 魔法効果により力尽き朝になって太陽の光によって朽ち果てたと私は断言できます」

 えぇ、違うよ。

 俺の特殊なチート能力が発動したんだよ。

 レイズさんそうドヤ顔で断言しないでよね。


 それだったらチート能力発動していなかったら襲われていたのではないのかな。

 それって問題があるのではないか。

 でもそんな揉めるような事は俺からは言えない。

 それにチート能力の事も話せないしね。


 「なるほどね。

 吸血鬼でも野良のっているのか」

 「普通に居ますね。

 人知れず夜を徘徊している輩が居ますのは確かです。

 洗礼を受けた者達と推測されますが」

 「洗礼ですか、それってどういう意味ですかね」

 「?

 アンドウ伯爵様はもしかして知らないのですか。

 いえ、失礼しました。

 洗礼とは吸血鬼に血を吸われ生き残り吸血鬼になった者達の事です。

 ほとんどの者が死んでしまうか屍鬼グールになるかどちらかなのですが生き残る者が稀に居て、人間から吸血鬼になりかわるのです。

 吸血鬼になった者達は別の人格に生まれ変わるとも聞いております」

 「そんな事があるとは・・・

 いや失礼こちらの話です。

 とりあえずこれで事件は解決ですかね」

 「そうですね。

 アンドウ伯爵様、ご協力有難うございました」

 そう言ってレイズさんは俺に対し頭を下げた。


 レイズさんて頭を下げられるじゃないか。

 髪を逆立てていたから、頭を下げられないでいたのか。

 確かにあんな髪形でいちいち頭を下げてたら首がおかしくなっちゃうかも知れないしね。


 とりあえず部屋に戻ろう。

 いろいろ考えて見たい事がある。

 まずは吸血鬼の事だ。

 野良の吸血鬼がいるなんて知らなかったし。

 それも国で吸血鬼が自治しているところもあるなんて、そうであればこの国の何処へ行っても危険では無いのか。


 なんて危険な異世界に迷い込んでしまったんだよ。

 心の中で不平不満が渦巻く。

 


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