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第38話 侵入者

 もうそろそろでギレンの町か。

 空を飛び続けて四十分、見えてきたな。

 あそこか確かに大きな橋があった町だ。

 

 !

 「なんだこの気配は、やばい これはいかん」

 一端、町に進むのを止め空中で浮遊する。


 主に匹敵する力を感じるな。

 そうかこの町には奴が居たのか。

 奴が居るのを忘れていた。

 下手に手を出すと俺でもただではすまない。


 町を徘徊しているのか?

 これは迂闊には行動できんな。

 幸い奴は俺の事を気づいた気配は感じない。


 奴の気配が大きすぎて、こちらが先に分かった事は幸いだったな。

 魔力を抑え、気配を極力消し、町の中へ侵入するとするか。

 あれだけでかい魔力を放出していれば奴の位置は此方でも把握できる。

 奴の行動に注意して動くことにしよう。

 

 しかし厄介な事だな。

 此処は力を替えるアイテム、偽りの御霊を使い力を下げるしか無いのか、しかし偽りの御霊を使ったら力そのものが変わってしまうから厄介なんだよな。

 それでも奴に見つかるよりは良いか。

 スターテスそのものが変わってしまう。

 上方修正に変わるのだったら良いが下げるとはナンセンスな話だ。

 それでも奴に気配を察知されるよりはまだ良いだろう。

 奴は主を特に目の敵にしているからな。

 鼻も利くから此処は慎重を重ねてアイテムを使用しておこう。

 今の俺の力では到底及ばない。


 偽りの御霊の使用時間は三十分くらいが限度か。

 それまでにアン・ドウを殺る。

 今は人間は眠っている時間だ。

 上空から飛来してホテル内に侵入すれば到底奴らは分かるはずもない。


 厄介なのはホテル側が掛けている防御用の魔除けの魔法か、それをすり抜けていくとなると、今の状態だと結界破壊のアイテムが必要だが今回は持ってきていない。

 魔紅石の結晶は持ってきている。

 それを使うしかないがそうなると俺もアイテム使用範囲に入ってしまうので魔力が抑えられてしまう。

 しかし結界は通り抜けられるだろう。

 一瞬だけ使えれば問題ないと思うが、スターテスを下げた状態で使うのは躊躇するな。

 結界を通り抜けられたとたんに空から落ちてはたまったもんではない。

 此処は迷わず使うしかないのか。


 しかし何故俺は、此処まで慎重になっている?

 以前にも同じような事があったのだろうか。

 頭に引っかかるのだが思い出せない。

 モヤモヤ感が残るが気にすることはないな。

 それより仕事を優先しよう。

 

 今回来たのは急ぎ足だったな。

 奴がこの町に潜んでいることを頭から抜けていた。

 要注意人物だと主にあれほど聞かされたのに。

 奴が居なければ正面から乗り込んで直ぐに終わりになる楽な仕事だっただろう。

 息巻いてでて来たのだ今更手ぶらで帰ることも出来ん。


 とりあえず予定どうりアン・ドウを殺しに行くか。

 時間を調整して上手く立ち回ろう。

 偽りの御霊で三十分の間に町に侵入し、ホテルに付き次第、魔紅石の結晶を使って結界を破壊そして侵入、侵入したらホテルの者を全員皆殺しにして撤退。

 ただそれだけの単純で楽な仕事だろう。

 奴が居なければの話だったがな。


 奴がいるせいで今回はしんどい仕事になったか。

 もし俺の事を気づかれたら確実に殺されるだろう。

 此処は念を入れて慎重に行動するしかないな。


 アイテム、偽りの御霊をグレッグは使った。

 小さな青い球から白い霧のような噴煙がのぼり、身体に入り込む。

 自分の自身のスターテスを下げる効果を発揮する。

 魔力と気配を弱める事に成功する。


 どうやらアイテムの仕様は成功したみたいだな。

 これでなんとか気づかれずに済むだろう。

 しかしそのせいで飛ぶことがやっととは情けない。

 早めに行きたいがこれではな。


 空中を浮遊しながら町の中を見渡す。

 ホテル、サン・シャインはあそこだな。

 上空から見ると赤と白色の建物の特徴があって分かりやすい。

 それで奴の位置はホテルから八百メートル前後か、気づかれては未だにいない。

 なんとかなるだろう。


 グレッグは上空から町の中へ侵入した。


 さすがに王都と違い、こんな町では上空まで結界は張っていないな。

 見張りにもどうやら気づかれてはいない。

 ちょろいもんだな。

 あとはホテルに近づき防御結界を通るだけか。


 グレッグはホテルの上空まで近づいた。

 吸血鬼特有の能力の一つ魔眼を使いホテル側がしかけた魔除けの魔法防御結界の範囲を調べる。

 ホテルに張っている防御結界は強力で分かりやすく吸血鬼の魔眼で見ればはっきり浮き出ている。


 なるほど、強力な魔除けの結界だ。

 今の魔力の俺でもはっきり見える。

 此処の結界を突破するのは問題はないな。

 衛兵も居るが眠っているのか?

 これでは護衛の意味が無いだろう。

 抜けてる奴らだぜ。

 魔眼は結界外からも使用でき見えるので中の人間の位置はだいたいだが分かる。


 俺の事はまだ誰も気づいている様子はない。


 !

 あの部屋か、思い出した。

 理由はわからないが確かキースの居た部屋から中庭にある噴水が見えたはずだ。

 何故知っているのが不明だが、しかしこれは幸いだ。

 三階のあの部屋にアン・ドウは居るのだろう。

 

 中には確かに四人ほど部屋に居るのだが妙だな。

 三人が一纏めに休んでいるのがわかるのだが、別に一人いるのが気になる。


 スターテスを下げたせいで魔眼の能力も下がっているから位置が分かる程度ではっきりは見えない。

 確か聞いた話では従者は三人いると言う話だったか。

 それもエルフの女だと言う。


 エルフは我々にとって天敵だ。

 しかし今は夜だし休んで寝ている。

 如何に天敵と言えども寝首をかけば問題なかろう。

 魔力を使われる前にこの剣で身体を切り裂けばすぐ終わる話だ。


 問題はどちらにアン・ドウが居るかだな。

 奴だけは確実に仕留めないとな。


 確かアン・ドウは若い男だと言っていたな。

 なるほど、エルフの二人と先ほどまでお楽しみしていたと予想出来る。

 それでは恐らく三人で休んでいる方だろう。

 

 それじゃ三人を纏めて一気に切り裂いてしまうか。

 まあ、アン・ドウも楽しめていたのだろう。

 此処で殺されても何の未練も無いな。

 むしろ夢心地で逝けるのは幸いではないか。

 ハハハッハ。


 おっと時間が少なくなったな。

 早めに始末をつけるとしよう。


 グレッグは魔紅石の水晶をホテルに張ってある結界に投げつけた。

 「バチッ」て一瞬音が聞こえた。

 しかし誰も気づいた様子が無い。


 結界の一部が穴があきその穴から中へ入り侵入する。

 

 くっ、ホテル内に進入できたのは良いが魔紅石の水晶のおかげで俺の魔力も影響受けたか。

 力が今より下がってしまっている。

 なんとか落ちずに浮遊できたことは良かったな。

 さてと、ちょうど良いベランダがある。

 あそこに降りての窓を蹴破り侵入するとしよう。


 グレッグは浮遊しながらベランダに近づいた時異変を感じた。

 

 何?

 どういうことだ身体が動かない。

 落ちる?

 これは結界か?

 まさか別に結界が施してあったのか?

 エルフが居たのだそう考えてもおかしくないか。

 でも魔眼で他に結界が張ってあったのは見えなかった。

 どういうことだ、力を抑えたせいで見えなかったのか。

 油断したのか俺は。


 「ドサリ」

 グレックはベランダに近ずくことも出来ずに上空から落ちてしまった。


 ググッツ、こ これは結界ではない。

 なんなんだいったい。

 身体の自由がまったく利かない。

 落ちた時の痛みもない。

 それに指一本も動かせはしない。

 それなのに意識はある。

 これはどういうことだ。


 グレッグは身体が動かないまま意識がある状態で地にひれふしている。

 

 何故だ意識があるのに身体が動かないとは、俺は吸血鬼だぞ、夜では至高の存在だ。

 それなのになぜ俺はこんなところで地にひれふしている。

 !

 いかん、このまま時間が過ぎれば朝が来てしまう。

 どうする、どうするんだ、俺は。

 死んでしまう、この吸血鬼の俺が死んでしまうぞ。


 グレッグは吸血鬼でありながら恐怖を感じている。

 朝が来るまで数時ほどその葛藤に苦しむ事になる。

 しかし残念ながら非常にも時間が過ぎ朝を迎えてしまった。


 うーん、朝か起きるとするかな。

 まだ少しうす暗いが朝日が入ってくるので目を覚ましてしまったよ。

 いつも通りの時間? と言ったところだろう。

 

 ? 

 あれおかしいぞ、俺の息子が立っていない。

 今日は元気が無いな。

 昨日ターナさんに洗浄魔法をかけて貰った影響がまだあるのだろうか。

 でもなんかスッキリした目覚めで気分が良い朝なんだよな。


 こんなに頭が冴えている目覚めをしたのは初めての経験だな。

 俺の息子に余計な血が回ってないからこれほど良い目覚めが出来たのかと思ってしまったよ。


 俺が起き始めたらターナさんも起き始めてきた。

 そしてこちらに来て挨拶をしてきた。


 おぉ、可愛い、ターナさんの水色のパジャマ姿をみれた。

 スマホでシャメを取っておきたいが、まずは脳内メモリーに保存が先決だ。

 あっ、スマホは無かっな。

 しかし携帯電話を昨日手に入れたのだ。

 使えるか分からないが一部の望みがある。

 使えたら適当に理由を付けてシャメをとらしてもらうことにしよう。

 

 「お早うございます、ご主人様」

 

 ?

 あれ言葉が話せる魔法をまだ使って貰ってないのに言っていることが分かるぞ。

 魔法の効果はすでにきれているはずだよな。

 良く考えて見たら昨日は一度しかかけて貰わなかったな。

 一日、三回くらいかけないと駄目だったはずだがどうなんだろう?


 確か言葉の魔法を使っていると自然に話せるようになると言っていたのでそれの影響があるのだろうか。

 

 ターナさんに俺が「お早う」と言って見るが、どうやら俺の言葉が分からないようだ。

 俺は聞きわけが出来るみたいだが、ターナさんはどうやら俺の言っている言葉が理解出来ていないみたいだな。


 ターナさんは俺に対して言葉の話せる魔法を使った。

 緑色の淡い光が部屋を包み込む。

 あれターナさんてなんか昨日より魔力上がっていない?

 気のせいだろうか。

 

 「お早うございます、ご主人様」

 「お早う、朝早いね」

 「私は朝早い方なんです。

 今日も頑張りますので宜しくお願いします」

 「こちらこそ、宜しくね」

 どうやら言葉の魔法のおかげでターナさんも俺の言っていることが分かるみたいだな。


 でもターナさんの仕事って言葉の魔法をかけてくれるだけで十分だから、もう半分くらい終わっているんだよね。

 あとは服を奇麗にしてくれる洗浄魔法をかけて貰うだけだから。


 昨日もスッキリさせて貰ったし、彼女の存在は重宝するな。

 ずっと傍に居て貰いたいけど中々それは難しい問題だよね。

 なんとかうまい事いかないか考えなくてはいけないか。

 でも彼女の都合があるので無理がある事は分かっているんだよな。


 俺は起き始め、いつも着ているスーツに着替え始める。

 とりあえずシャツは昨日買った新しいシャツに替えておこう。

 似たようなシャツがあったのは幸いだった。

 ちょっとだけ赤い糸で花柄の刺繡が入っているのが気になるけど、まぁ、それは良いだろう。


 靴下と下のスラックスだけ履いてとりあえずおくかな。

 !

 靴、靴を買い忘れた。

 あぁ、後でまた靴を探しに行かなくては行けないのかよ。

 予備靴欲しいのでまた言って来るしかないな。


 あとは洗浄魔法かけて貰いたいのだが、あれって周りの物を全体にかける事ができるので、いつもは三人まとめて使っていると言っていたよな。

 それだったらサレンさん達が起きてからで良いだろう。

 まぁ、今のところ臭う訳でも無いしな。

 

 サレンさんとアニスさんはターナさんと違って未だに寝てるし、案外お寝坊さんなのね。

 と言うか、まだ日差しがさし始めたばかりで早いから仕方ないのか。

 とりあえず起きるまで待って居よう。

 

 「キャー」

 そんなさなか外から女性の悲鳴が聞こえた。


 ?

 殺人事件でも起こったのかな。

 ドラマで聞いたような女性の悲鳴が聞こえたのだ。

 窓を開け、外の様子をみて見る。


 あっ、人が倒れている?

 あれ?

 遠目で見るが、あれって人なのかな?

 此処から見る限り様子がおかしく見える。

 それよりも、窓を開けたら下がベランダになっていて降りられるのか、今更ながら気づいてしまった。


 ベランダになっていたのね。

 何処から行けるのだろうか。

 よく見たら部屋の隅に小さな扉があるのに気づいた。

 恐らくは此処から開けてベランダに出れるはず。

 ベランダから下を覗いて見ようかなと思ったのだが残念ながら鍵が閉まっていて開けられなかった。


 うーん、残念どうしようかな。

 朝からやる事無いし、とりあえず野次馬根性で見に行ってみるか。


 そう考えていたら、サレンさんとアニスさんも起きてきた。

 さすがに今の女性の悲鳴が聞こえて起きてきたのだろう。


 二人は俺の元に来て挨拶をしてきた。

 「お早うございます、御主人様。

 何かあったのでしょうか?」

 「お早う、下でどうやら倒れている人? みたいな人がさっき見えたね。

 これからちょっと見に行こうと思っていたのだけど」

 「そうなのですか。

 それでは私達もすぐに着替えてきます。

 少々お待ちください」

 そう言って部屋の隅に着替えに行ってしまった。


 しかしなんだアニスさん。

 なんて厭らしいネグリジェを着ているんだ。

 薄い桃紫色のシースルーのネグリジェに黒の下着が見える。

 昨日は夜でうっすらとしか分からなかったがばっちり見えるぞ。

 それに胸の〇〇が見えるんだよ。

 これって問題があるのだろう。


 それと違いサレンさんは白いワンピースみたいな寝間着だけどこの差はなんだと思ってしまった。

 もしかしてエルフでも種族の差があって生活習慣が違うのかなと思ってしまった。


 おかげで頭は冴えていたが余計に目が覚めてしまったよ。

 でも何故か俺の息子は一向に反応がしていない。


 アニスさんが厭らしいネグリジェを着ていると言う事が言えるだけでその後の欲望が沸いてこないのだ。

 うーん、どうしたのだろう。

 まっ、良いか、それより殺人事件の方が問題だろう。

 そう思いながら着替えを待っていた。

 

 三人ともメイド姿に着替えて来たので下の倒れている人?らしい所へ行って見る。


 従業員に何かあったのか聞いて中庭に案内され来た。

 中庭に行ったら宿屋の警備兵と従業員、それと宿屋で止まっている人らしい野次馬が集まっていた。

 赤と白色した軍服を着た警備兵とメイド服の従業員達が特に近くで様子を伺っているのがわかる。


 「どうした警備兵何かあったのか」

 オーナーのレイズさんが駆け寄って来た。

 髪が立っていない。

 赤い長い髪を靡かせている。

 それも相当な美人に見えるのだが、何故あんな変な格好で髪を逆立てているのかと疑問に思えるな。

 勿体ないなと思ってしまった。


 「レイズ様、それがその侵入者が入ったようで、中庭に侵入者が居たようです」

 「馬鹿な侵入者だとお前達は何をやっていたのだ」

 「申し訳御座いません」

 「状況を説明しろ」

 「はい、侵入者は中庭で倒れており、その様子がおかしくミイラ化した人らしいのです」

 「ミイラ化した人だと。

 馬鹿か、そんなことがあり得るのか。

 お前達どうかしているのではないか、それとも言い訳で言っているのではないよな。

 それに魔除けの結界はどうした。

 このホテル全体を囲むように昨日も確かにかけたはず、結界が利いていなかったと言う事なのか」

 「どうやら魔除けの結界の一部がこじ開けられたようでして、先ほど結界魔導士に確認したところ、上空の一部に破損が見られると言う話です。

 今しがたも異常がないか他の結界を調べると言う事でした。

 今すぐに呼んできたいと思います。

 「ああ、そうしてくれ」

 衛兵はすぐさま結界を張った魔術師を呼んできた。


 「なんだと、上空の結界が破損して形跡が見つかっただと?

 それでは何故気づかなかったのだ」

 「それは、あまりに小さなモノで瞬時に再生した可能性があります」

 「結界に綻びを造り中に入ったと言う事か」

 「そのように考えられます」

 「そいつは飛行して侵入を試みたと言う事なのだな。

 どんな奴だ、その遺体を見せて見ろ」

 「こちらです。

 お通り下さい」

 オーナーのレイズは人だかりが集まっている中に入りその奇妙な遺体を確認する。


 「こやつはもしや吸血鬼か」


 !

 吸血鬼だと、やっぱりこの世界にはそんな危ない伝説級のモンスターが存在するのね。

 なんて危険なところなんだよ。

 この町から早めに撤収した方が良いのじゃないか。

 つくづくそう思えた。



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