第37話 ヴァレン・シュタイン城
王都から川を越え南東に進むと、大きな尖った岩山が無数にある山岳地帯にはいる。
その場所に、人気のない荒野が広がった一郭があり、古びた大きな城が聳え立っている。
城の上空には灰色の雲が常にかかっていて、昼間だと言うのに薄暗く、まるで誰かが魔法で天候を操ったように暗雲が立ち込めている。
夜になると城内は灯だし、夜の住人達が動き始める。
彼らは夜を統べる支配者の一郭だ。
ヴァレン・シュタイン城、代々吸血鬼が住まい支配する城だ。
その一室で、あのお方と呼ばれる者に使える貴族達が集まっている。
夕食時。
テーブルの上には豪勢な食事が並べられている。
五人の者は貴族とは思えないほどの下品な食べ方で料理を貪っている。
皆が一様に食べながら話し、意思疎通が出来ているのかわからないほどそれぞれ身勝手な話をしているのがいつもの日常だ。
しかし今日はいつもと様子が違った。
全員が同じ共通の話をしているのだ。
昨日あった一件の為に皆が一様に機嫌が悪い。
自分達の息のかかった者達が何者かに殺されたと聞いて息巻いているのだ。
食卓には七夜鬼と呼ばれる五人の貴族達が向かい合い座っている。
貴族とは思えない服装をそれぞれ着ているのだが彼らはまぎれもなく貴族位を持っている。
冒険者、魔法使い、シスターと思われる格好をしたものが中にいるのだ。
しかし彼らは人間ではない。
あきらかにわかる異様な雰囲気をだして食事を取っているのだ。
食事の内容も一見豪華そうに見えるが人が食ってはいけない物が当たり前に入っている。
部屋の周りには彼らに従う従者とおぼしき人間や獣人のメイド達を百人以上を立たせた中で皆一様に生肉をほおばり赤い血を飲んでいるのだ。
彼らは吸血鬼、自ら至高の存在と称し貴族中の貴族と謳っている者達だ。
「グレッグ、昨日の話は聞いているよね?」
「ああ、聞いているよ、シャンテ」
「どうやらアレキサンダー家の奴らが私達に仕掛けてきたみたいなんだよね。
あの件がバレたのかな?
それともキースが裏切ったみたい」
「シャンテ、その話は間違っているぞ。
俺が聞いた話では公爵家が仕掛けてきたと言うのは嘘だ。
バレてもいないだろう。
なんせキース本人が死んでいるのだからな。
まだ確認中で正確な事は言えないが、東の辺境から来た蛮族の貴族がキースを殺ったと言う事だけは聞いている。
名は確かアン・ドウとか言う奴だったか。
そいつが冒険者ギルドと銀行の奴らを皆殺しにしたと言う話だ」
「そうなんだ。
私にはそんな話は聞いてないけど、どういうことかしら。
これは、従者の獣人にお仕置きしなくてはいけないわね。
まったく獣人なんてこれだから使えないわ。
人間の配下も私には欲しいわね」
「何を言っているんだシャンテ、お前にも何人かつけておいただろう。
あいつらをどうしたんだ。
俺はその事を聞きたいぜ」
「あいつらね。
気に入らなかったので殺して食べてしまったわ。
それで適当に獣人の下僕を付けて貰ったの、何か問題はある」
「・・・
問題は無いが、ほどほどにしとけよ。
ただでさえ、従者の入れ替えが激しいんだ。
使える道具なんだ。
大切に扱え」
「分かったわよグレッグ、それで先ほどの話もうちょっと詳しく聞かせてくれない」
「ああ、そのアン・ドウと言うのはな・・・」
※ アサルト・グレッグ男爵 吸血鬼、元A級冒険者、とある町で冒険者家業を営んでいた強者。
年齢二十五歳くらいの若い容姿をしている。
背が百八十センチ、体格が良く、銀髪で短い髪を逆立て赤い眼をしている。
好青年に見え、人間だった頃はさぞモテたと思われる容姿をしているのだ。
冒険者六人パーティーの暁の牙のリーダーをやっていたが、現在の主人である吸血鬼と対峙して敗れ、仲間全員を殺され一人だけ生き残った。
血を吸われ死んだかと思われたが吸血鬼となって生き返ったのである。
吸血鬼に血を吸われ、生き残った者は洗礼を受けたと世間一般的に言われている。
グレッグはその中の一人だ。
本来は死ぬか、屍鬼になってしまうかどちらかなのだが、運が良いのか悪いのか吸血鬼として生き返ってしまった。
生き返ったのは良いが生前としての記憶が曖昧にしか残っておらず、断片的に思いだすことがあるが思考回路事態、全く別人に変わっている。
洗礼を受けた時に隷属の刻印を施され、絶対服従と言う事になっている。
本人は訳がわからなく主人に仕えている感じがある。
冒険者としてあった腕は今も健在で吸血鬼になった為に戦闘力は前の五倍以上の力を宿している。
七夜鬼の中でも一、二を争う強者だ。
冒険者のリーダーだった経験が残っているせいか、七夜鬼の中でまとめ役としてリーダー的な存在になっている。
※ ペリシア・シャンテ準男爵 吸血鬼、元大魔法使いシャン・ガルデの弟子として見習い修行を受けていた。
年齢一七歳くらいの若い容姿をしている。
背が百六十センチくらい、痩せた華奢な体形をしている。
長い銀髪をツインテールに纏め、赤い眼をした可愛らしい女の子だ。
百年前に主人の吸血鬼が配下に下るよう、大魔法使いシャン・ガルデの元にやって来たが申し入れを断わった。
断わった事により、怒りをかってしまいシャン・ガルデと戦闘になった。
大魔法使いシャン・ガルデは善戦はしたのだが敗れて死んでしまった。
手傷を負った吸血鬼は怒りのもとに弟子達を襲い、血を食らうように飲んで凌辱し続けた。
その時に一人だけ生き残ったのが彼女ペリシア・シャンテである。
彼女も生前の記憶が曖昧にしか残っておらず別人の人格に変わっている。
見習いだったせいで初級魔法しか使えないが、吸血鬼になった事により膨大に魔力が上がり上位の魔法使い以上の力を持っている。
炎系の魔法が得意で、すべてを焼き尽くす炎獄鬼として恐れられている吸血鬼だ。
「ヘー、あいつらを皆殺しに出来る者がいるんだ。
あのおっさん連中、元はそれなりに名をはせた冒険者だったよな。
見た目は太った豚ばかりだったけどね、アハハハ。
これは厄介な事になったよね」
「こらカミュはしたない、食事中ですよ」
「ごめんね、アラキア姉。
でもそれってさ、僕達の出番て事じゃない。
僕って、最近運動不足だからそいつの事を殺しに行っても良いよ」
「カミュ、それはいけないですわ。
主人にことわりを入れないとまた怒られてしまいますからね。
先日だって南の森の魔獣を倒しに行っくと言ってあなたは逃げ帰ってきたばかりじゃないですか。
あなたが逃げ帰ったせいで近くにあった村が魔獣の怒りによって滅んでしまったばかりですからね。
そのせいであの方はお怒り心頭だったのだから。
あなたはどこかに隠れていたせいで知らないでしょう」
「ええ、そうだったの知らなかったよ」
「あの村からでも少しは税収は取れたのですから、今後は同じ事は無いように気を付けませんといけませんわよ」
「アラキア姉、分かっているよ」
「本当に分かっているのかしら、あなたは弱いのですから。
尻無食いをするのは私なのですよ。
気を付けて下さいね」
「ええ、弱いって言うのは酷く無いか。
あの魔獣がちょっとだけ強かっただけだよ。
確かにアラキア姉はあの後、魔獣を倒したみたいだけど、あの魔獣がちょっとだけ強かっただけじゃないか。
僕は弱くわないよ。
現に魔獣のせいで村が一つ壊滅したんでしょ、やっぱりあいつが強かっただけだよ。
それに夜だったら死にはしないのだから別に良いんじゃないか」
「そんなことをまた言って誤魔化さないで下さい。
いつか神罰が当たるのだから気を付けないといけませんわよ」
「分かったよ、アラキア姉。
姉貴の事は言うことは聞くよ」
「まったく本当に分かっているのかしら」
「それよりアラキア姉、口の周りがべとべとだけど鏡で見たほうが良いんじゃないか。
あ、俺達姿が映らないんだったよな」
「もう、話を関係なく逸らして、揚げ足取りなどして誤魔化すとは、そんな子に育てた覚えはありませんわよ」
「ごめんなさい、アラキア姉」
※ シスターマザー・アラキア準男爵 吸血鬼 元修道院を運営していたシスター、主人である吸血鬼に修道院が襲われ彼女も洗礼を受けて吸血鬼となった。
元は五十歳前後の中年の女性だったのだが、現在二十八歳前後の若い容姿をしている。
生前と同じ修道服を着ていて容姿は良く分からないが顔立ちが端正に整っていることはわかる。
同じように血走った赤い眼をしている。
吸血鬼になる前は高位のプーリストだったが、主人との戦いに敗れ弟子を殺され修道院を焼き払われてしまった悲しい過去を持っている。
やはり生前の記憶が曖昧にしか残っておらず、本人も意味が分からずに主人に仕えている。
光魔法が使えるが自ら自傷行為を得る為に使えないでいる。
替わりに護身用で習った棒術にたけ吸血鬼の力を生かして戦う事が出来る吸血鬼だ。
※ カミュ 貴族 吸血鬼 シスターマザー・アラキアが運営していた修道院で学んでいた弟子の一人。
中学生くらいの体格で、短いボーイシュな銀色の髪形をしている。
同じように赤い眼をしておりそれ以外は可愛い男の子の容姿にも見える。
男口調な話し方をするが女の子であり、生前の記憶が同じように曖昧にしか残っておらず親しくしてくれたアラキアを本当の姉と思い慕っている。
吸血鬼となって力があるが使いこなせる技術がなく、無鉄砲なトラブルメーカーになっている。
「それよりホントにアラキア姉、そんな骨肉を手に持って口をべとべとにしながら言っても説得力無いぜ。
姉貴の方がよっぽど行儀が悪いよ」
「まあ、カミュ、失礼しちゃうわね。
それにまた話を逸らして誤魔化すのではないですよ。
都合が悪い話になると関係ない話に持って行くのは良くない事です。
直しなさいね、カミュ」
「分かったけど、姉貴も口のまわりを拭いてね。
気になってしょうがないよ」
「まあ、カミュったら」
「・・・
お前達の話はもう良いか。
本題の話をしよう。
東の国から来たアン・ドウと言う貴族の処分だ。
誰が行くかだ」
「ぁ、俺が言っても良いぜ」
「!
珍しいなゴーンお前がしゃべるなんて」
「・・・
別に珍しくもない。
話す用事が出来たので話しただけだ」
「そうなのか、いつも無口だから、俺は人間の言葉がもしかしたら話せないと思っていた。
それはすまなかったな、謝罪するよ」
「・・・
必要な事以外は俺は言わない」
「なるほど、失礼したな」
※ ゴーンジャケット男爵 吸血鬼 体格三メートルはある巨人族の青年だ。
青白い肌をしており頭はスキンヘッドで毛が無く、顔立ちはのっぺらな平たい顔つきをしている。
吸血鬼特有の赤い血走った眼をしているのも特徴だ。
全身には赤黒い魔法の鎖を身体中に巻き付けさせて、異様な容姿をしている。
巻き付かせている鎖は身を守るのと鎖を使った攻撃などを行う為にワザと身体中に巻き付かせてあるようだ。
自らの魔法力によって収縮自在に鎖を操ることができる。
鎖はかなり重そうに見えるが平然と軽々扱う事が出来る怪力を持っている。
以外に頭も良く器用な面もある。
吸血鬼になる前は巨人族の村で鍛冶屋兼鉱物学者をやっていた。
鉱物採取の為、人間の村近くに出向いたところ、村が現主人に襲われていたので見かねて人間達の加勢に加わった。
しかし力及ばず村の者は皆殺しに合い、自らも戦いに敗れてしまう。
主人に洗礼を受け吸血鬼となって復活する。
七夜鬼の中では一番に未知な力を秘めている巨人族の青年だ。
「へー、ゴーンて喋れたんだ。
僕は知らなかったよ」
「私も」
「私もですわよ」
「まあ、別にそれは良いか、喋れて良かったね、ゴーン」
「・・・」
「それよりグレッグいきなり処分とはね。
主に相談してからで、良いではないの」
「そうだよ、お前ってホントにせっかちな奴だな」
「あの方は眠ったままでしょう。
相談するにも出来ないし、せめてスカーサッカかアンに相談してからでは良いのではないかしらね」
「あいつらには別に言わなくて良い。
話はどうせ聞いているはずだ。
それに俺達と違い奴らは昼間も行動できる。
主人に近い存在になったのだからな。
今回も手柄を横取りされては、俺達とは差がつくばかりだ。
それが気にいらない」
「そうなの、知らなかったな。
あいつらのこと気に入らなかったんだね。
仲良くしているじゃないか」
「私も気に入らないわ」
「私もそうよ」
「僕も同じ、同じ」
「・・・
今の話は聞かなかったことにしよう。
どうせ今からお前が行くのだろう。
これでこの件は解決か。
俺は此処で飯を食っているぜ。
しかしこの量では飯が全然足りないな」
そう言って元巨人族のゴーンは立ち上がり、右腕に巻き付いている鎖を一振りした。
振り回した鎖は長く伸び、周りに立っているメイドの女性の一人の首に巻き付く。
そのまま力まかせに引き寄せた。
一瞬の出来事に周りのメイド達は驚愕している。
連れ去られたメイドがどうなるのかを知っているからだ。
鎖で引き寄らされたメイドの女性はすでに事は切れているらしい。
それは幸いだったかも知れない。
ゴーンは引き寄せたメイドを頭からガブリついた。
「んん、生肉はやはり旨いな。
新鮮でとても旨い。
お前らもどうだ分けてやるぞ」
「うーん 僕は良いかな」
「私も遠慮しとく」
「私はちょっと食べたいけど・・・
ゴーンおすそ分けで良ければいただけないかしらね」
「俺は要らない、今から獲物を狩りに行くからな。
その必要無いな」
「そうか、それじゃアラキアお前には分けてやろう。
この部分はどうだ胸の部分は柔らかくて食べやすいぞ。
俺には歯ごたえが無くて物足りないがな」
「有難う、ゴーン。
ゴーンて気が利いて優しいのね。
それじゃこのお皿の上に置いて貰えるかしら」
ゴーンは自分専用の大きなナイフとフォークで器用に殺したメイドを解体しはじめた。
「羨ましいな。
ゴーンてさ、そんなでかい図体してなんでそんなに器用に出来るのさ。
それってズルくない。
僕には出来ないのに・・・」
「・・・
俺もどうしてできるかは知らん。
教える事もできん」
「ちぇ、羨ましいな。
ゴーンてさ、前は何をやっていた人なの。
そんなでかい図体で器用な手先しているのは絶対おかしいよ。
何かさ、特殊な仕事をやっていたに違いないよ」
「さあな、昔の事などまったく覚えていない。
お前だってそうだろう」
「そりゃ、そうだけど」
「・・・
お前ら話は良いかな、俺は今から言って来るけど良いんだな」
「構わないよ、いってらっしゃい。
僕は此処で寛いでいるから後は頼むね」
「そうね、後は任せたわ」
「確かにそうだわね」
「・・・」
「お前達の了解は得た、問題はなかろう。
俺が始末しに行く事にしよう。
主には帰ってから報告すれば問題ないだろう。
なあに、朝まで終わる仕事だまったく持って問題は無い」
「そうだね、全然問題ないね」
「ええ、問題ない」
「問題ないわ」
「・・・」
「でも朝までには戻って来てね」
「そうよグレッグ、戻って来ないと灰になって死んじゃうんんだから」
「ああ、分かっている」
「グレッグ、この闇夜のリングを持って行くかしら、このアイテムは光を遮ることができる闇のオーラが発生できるわよ。
マントと合わせれば移動だけだったら昼間でも問題なく動けるわ」
「シスター・アラキア、ご配慮は助かるが、それを借りるのはやめておこう。
お前が主から戴いた物だろう。
俺が借りるのは十八番違いだ。
武勲をあげて新たに貰うことにしよう」
「そうなの?
私はただ子供をさらって来ただけなのに、それで褒美として戴いた物だわ。
楽な仕事だったわよね。
そうよね、カミュ」
「そうそう僕が声をかけたら呑気について来たからね。
アラキア姉を見たら安心もしていたし。
まあ、城の外へ出て見たかったらしいから彼も願いが叶って良かったんじゃないかな。
まあ、願いが叶った代償はちょっと大きかったかも知れないけどね。
今は最下層の地下に幽閉されているのかな?」
「カミュ、その話はしないの、誰が聞いているか分からないわ」
「あ、そうだったか、ごめんアラキア姉」
「別に良いわ。
でもあの子ってもうそろそろ死んでいてもおかしくわないわよね。
主人の餌として重宝しているから魔法とアイテムで特別に生かせてあるのかしら」
「え、そうなの」
「あの子供って特別な血が流れていてオドが高いのよ。
だから美味しいらしいよ」
「へえ、そうなのそれは知らなかったよ。
旨いご馳走なのね。
僕も飲んでみたいな」
「駄目よ、あれは主が好んでいるからそれにもう死んでいるかも知れないわ。
主人が起きている時は、毎日のように飲んでいたらしいからね」
「そうなの、生きているのだったら嬉しいな。
僕が手柄を立ててご主人様におねだりすればおすそ分け貰えるかも知れないしね。
グレッグ僕もいっしょに言って良いかな」
「駄目よそれは、あなたは弱いのだから、足でまといになるのに決まっているでしょ。
あなたに何かできるのかしら、問題を起こして後始末とあなたの代わりに怒られるのはもうこりごりだわ。
先日だって何故か私が怒られたのですからね」
「ちぇ、アラキア姉はもっと僕を信用しても良いんじゃないの、しないと又いたずらしてしまうよ」
「分かったわ。
信用しているわ。
あなたの今後の活躍を期待しているから今回は遠慮しなさい」
「分かったよ、えへへ、嬉しいなアラキア姉、僕の事信用してくれてるんだ」
「はいはい、カミュあなたを信じているわ」
「・・・
話は終わったかな。
それじゃ言って来るとしよう」
「いってらっしゃい」
「行って来ると良いわ」
「お土産宜しくね」
「・・・」
「ああ、それじゃ言って来る」
そう言って席を立ち、黒い二枚の蝙蝠の翼を出して窓から飛んで行ってしまった。
ギレンの町か方角は確かこちらで良かったはずだな。
しかし今日は青い月明かりが眩しい。
眩しすぎて気持ち悪いくらいだな。
確かキースが借りているホテルの名はサン・シャインだったかな。
嫌な名前だ。
そのホテルの確か三階の部屋だったか。
一度何かで通されたはず、しかし曖昧でどうだったか忘れてしまっている。
どうしてキースと会ったのかも思い出せないな。
それはどうでも良いことか、そんなことより、目的の奴、アン・ドウだったか、奴がそこにいるはずだ。
此処から飛んで行けば一時間もあれば着くだろう。
名前だけで顔も分からんが、ホテルの奴らを全員皆殺しにすれば問題なかろう。
それじゃ、さっさと片付けて戻ろうとするか。
しかし今日は本当に月明かりが眩しくて嫌な夜だな。




