第34話 横暴な貴族
こ これは、一昔前の携帯電話、カラゲーでは無いか。
なんでこんなところにあるの?
と疑問に思うところなのだが俺がこの異世界にいるのだ。
人だけではなく物も来ているのだと判断できる。
ありそうな話だと思い直す。
「グリエルモさん。
あれは何なのかな。
あの銀色のやつ」
「あれはアーティファクトです。
数年前に持ち込まれたものですが私どもにも何なのか分かっておりません。
高位の鑑定士にお願いしたのですが、鑑定できませんでした。
分かっていることは光を当てると奇麗に光出すことがあったと確認しております。
魔法がまったくと言って良いほど感知されません。
魔法アイテムではないと思われます。
危険なアイテムでは無いと判断され、装飾品などのアイテムに分類するアーティファクトとされました。
先に考古学などの専門家に売りに出したのですが買取がつかずに、私どもの店にまわされてきました。
装飾品のショーケースに置きました次第です。
故障? しているようですが一応、アーティファクトになっております」
「なるほど、そうなんですか」
「持ち込み当時は光を当てると七色に光り輝く事が確認されておりました。
それと奇妙な音もなりました。
今は残念ながら光らなく音も鳴らない状態になっております。
それを踏まえてご購入を考え下さい」
「へー、そうなんだ」
「興味があるのでしたら格安でお売りできますよ」
「ほほう。
いくらくらいするのかな」
「そうですね、アーティファクトに入りますので金貨五百枚でどうでしょうか」
「買った。
金貨五百枚、出そうじゃないか」
「はい?
買うのですか?
壊れていると思いますよ。
直すにも無理だと判断できますが・・・」
「別に良いよ。
購入させて戴こう」
おれは魔法の収納袋から金貨五百枚を取り出し店主に渡す。
「これで間違いないかな」
少しお待ちを。
・・・
確認できました確かに金貨五百枚お受け取りました」
「あっ、すいません。
あの金貨が入っていた袋は返していただきたいのですが」
「分かりました。
これをどうぞ。
もしよければ小物売り場り装飾された袋が置いてありますので宜しかったらどうですか」
「おお、袋は欲しかったので助かるよ」
「後で見させて貰うね。
おまけでつけてはくれないよね」
「申し訳御座いません。
こちらも商売ですのでお許しください」
「あ、やっぱりそうだよね」
うーん、甘かったか、おまけでつけてくれても良い思うんだけどな。
こればかりは仕方ないか。
元の世界の携帯電話か、良い買い物ができたな。
しかし壊れているかもしれない。
恐らくバッテリーは無くなっているので使えないのは分かる。
ただ光を当てると光ると言うのでソーラーシステムがある携帯では無いかと期待したのだ。
確か昔限定で作られた機種があったはずだ。
値段が馬鹿高くてそれにソーラーだけでは動かず、すぐに電池切れしてしまうから充電がどうしても必要で買う人がいなかったとき聞いたことがあるな。
もったいない商品だね。
技術が進めば充電なしで使える携帯電話できたかも知れないのにな。
今はスマホ主流で高電流使用だからソーラーでは絶対無理だろうな。
しかしカラゲーがこの世界に落ちて来ているとは。
カラゲーは今ガラパコス化しているから触った事もないな。
使い方を知らないけど元の世界にあった物だ、何となく分かるだろう。
それに壊れていても別に良いんだよ。
元の世界の物を手元に置いて触っていたいと思ってしまった。
ただそれだけで良いと思ったんだよな。
何故か懐かしさも感じるし、迷いなく金貨五百枚を店主のグリエルモさんに渡せたんだよな。
普通だったらこんな物を買わないだろう。
「お買い上げ本当に宜しいのですか」
「ああ、全然問題ないよ」
「・・・
ご購入有難うございます。
化粧箱を用意しますのでお待ちください」
「あっ、別に手渡しで良いのでそのまま戴けないかな」
「かしこまりました。
どうぞお受け取り下さい」
「ありがとね」
俺は携帯電話、カラゲーを手に入れた。
とりあえず魔法の収納カバンに入れておこう。
本当に大切な物は人には見せない方が良いからな。
宿屋に帰って使えるかを確認して見るのだ。
此処で使えるか確認しても良いけど、店主のグリエルモさんが使えるの分かって惜しくなってトラブルとか起きたら大変だからな。
恐らく使えるのだったらグリエルモさんが目の色変えてしまう事が予想されるからね。
アーティファクトだからって壊れているかも知れない分からない物を金貨五百枚付けるのはおかしいだろう。
使えるのだったらいくら付けるのか分からないな。
さて、良い買い物ができたな。
エルフの少女達の買い物はどうなっただろうか見に行ってみるか。
おっ、ターナさんは先ほどいた靴のところでじっと見ているな。
欲しいのだったら買えば良いのにどうしたんだろう。
「ターナさんどうしたの先ほどから靴ばかり眺めていて」
「ご主人様、私、どうしてもこのブーツとあのブーツ二つ欲しいのです。
先ほど服は二着ほど買ってしまったのでどちらか選ばないといけないんですよ。
どちらが良いでしょうか」
!
うーんなんか悪い事をして怒られ罰が悪くなった子犬のような顔をしているよ。
おれに対してどちらか選んでと言っているのではなくどちらも買ってと言う感じがしてならないのは気のせいだろうか。
こんな顔をされたら二つ買って良いと言うしかないじゃないか。
ホントに俺って貢君になってしまったようだ。
「あぁ、わかった二つ購入しても良いよ。
だけどこれはサレンさん達には内緒にしといてね」
「有難う御座います、ご主人様」
とびっきりの可愛い笑顔を俺に向けた。
こういう笑顔を向けられると弱いんだよな。
俺って甘いとつくづく思う。
?
なんだ変な感じがするな。
魔力かな?
奇妙な曰く間が店内で感じられるのだ。
あちらか行って見よう。
「ナタリア殿、言いがかりはよして下さい」
エミリアさんの声が聞こえた。
サレンさんとアニスさんが大柄な褐色の女性と言い争いをしているのだ。
「俺はさ、奴隷のエルフが何故此処で買い物しているのだと聞いているんだよ。
事実だろうが言いがかりとは失敬ではないか」
「私達はすでに奴隷ではありません。
奴隷の魔法も解けているでしょう。
それに耳だって直っています」
「ハッ、どうかな。
奴隷だったと言う事実はかわらないぜ。
それに国に帰ってもお前の居場所はすでに無いのだからな。
お前の親父もすでに免職になって地位を失っている。
父親共々落ちた奴だ。
奴隷と何ら変わらんだろう」
「それはどういう意味ですか。
父に何かあったと言うのですか」
「親父だけではない。
お前達一族はもういなくなったのだ。
いやお前達一族に関わっている者すべて排除された。
今はテレス様の庇護の元に纏まっているのだよ。
どういう意味なのかお前だったらわかるよな」
「テレスですって、なぜ彼が祭りごとに関わっているのですか」
「それは俺が言う事では無いな。
ちなみに俺は冒険者としての貢献で国王様から貴族の地位を戴いている。
お前が奴隷でなくても平民風情が話しかける事さえおこがましい事なんだよ」
「おい、サレン、お前はアニスだったか、貴族の俺の前だ、失礼では無いのか。
頭を付いて膝間づいたらどうだ」
「・・・」
「ん、どうしたのサレンさん達、トラブルかな。
トラブルだったら俺が聞くけどどうなんだろう」
「ご主人様」
「なんだ、てめいこいつ等の雇い主か。
その恰好、貴様も貴族だな。
それも中級貴族か、俺もてめえと同じ貴族なんだぜ」
「なるほどね。
それでどうしたのかな」
「おめえの従者が俺に対して失礼な事をこきやがったんだよ。
どう落とし前を付けてくれるんだ」
なんだこのエルフ、俺とか言ってるけど女性だよな。
粋がって言っているのかな?
大柄な褐色のエルフの女性だ。
褐色と言っても本来の肌の色ではないな。
日焼けして黒く焼けたかんじがする。
背は俺と同じくらいか、筋肉質でガタイが良い。
軽微な装飾品を付けた革鎧を着ている。
俺よりも大きく見えるな。
長い金髪していて毛先を赤く染めているな。
貴族と言うより冒険者のように思える。
現に背中には大きな長剣を担いでいるのだ。
エルフのアマゾネスっているの?
そう思える容姿をしているのだ。
しかし幸いな事に俺達を殺すほどの悪意とか感じないな。
それだったら、等にチート能力であの世に言っているばずだからな。
厭味ったらしくいちゃもんを付け文句を言っているチンピラのようにも思える。
貴族の地位とか貰うと粋がって威張り散らす輩がいるんだよな。
その類に奴らだろう。
あっ、俺もこいつと同類か。
ちょっと違うと思うけど端から見れば同じように見られているのだろうな。
今後、言動も気を付けようとしよう。
「俺の名は安藤と言う。
一応これでも準伯爵と言う爵位持ちなんだけど、あなたは貴族の間でどんな立場の人かな」
「て、てめえがアンドウだと。
昨日あのA級冒険者キースを倒し、冒険者ギルドと国営銀行の幹部連中を皆殺しにした殺人鬼か。
こんな痩さ男が殺人鬼とは恐れ言ったぜ」
えっ、殺人鬼?
もしかして、ちまたではそういう事になっているの?
でもまだ昨日の事だからそれほど広がっていないと思うのだけどどうなんだろう。
今から殺人鬼と言われているのではそのうち尾ひれがついてとんでもない噂が広がらなくない?
なんかとんでもない事になってるようだけどどうしようか。
これは慎重に行動しないといけないな。
言葉を選んで穏便に解決させた方がよさそうだ。
でもこの人相手に出来るかが分からない。
「殺人鬼とは失礼な言いようではないのかな。
俺はキースと正式なそれも神の元の決闘で勝ったし、冒険者ギルドと銀行ではキースの持ち物を取りにいっただけで、持ち物を全部返して貰えなかったから神の意向を使っただけなんだけどそれがおかしい事だったかな。
その過程で神罰が当たって、嘘を言っていた皆さんが神の元に召したのではないですか」
「馬鹿な事を言うな。
神罰だってそんな事は有り得ん話だろう。
爵位持ちのあんたの事だ。
貴族の地位かざして無抵抗の者を嬲り殺しにしたんだろうが。
冒険者ギルドであれだけの事件が起きていながら、誰も昨日あった事を話さないでいやがる。
お前が卑劣な手を使って口封じさせたんだろう。
爵位持ちのお前だったら簡単にできる事さ」
「うーん、完全な勘違いしていると思うのだけどな。
まぁ、俺の事はどうでも良いじゃないか。
それより先ほどうちの従者が何かしたのかな。
俺はさ身内には優しいんだよ。
敵になる者は徹底的に排除するけど、ナタリアさんて言ったかな内の従者が何をしたのか言って貰いたいな」
「あんた、俺を殺す気か」
「失礼な事を言うな。
私の従者があなたに対して失礼な事したのかと思ってね。
そうだったら俺が謝罪しなければいけないからな。
どういうことがあったか聞きたいんだよ」
「そ、それは・・・
・・・
別に何もしていない。
こちらの勘違いだ許してくれ。
いや、許して下さい」
ナタリアと言うエルフは片膝をついて俺に謝ってきた。
「勘違いか。
ふん、どうしようかな。
クロートさんから良い話を聞いたんだよね。
なんか爵位持ちはさ、貴族の位与えたり剥奪したりできると言っていたな」
「そ、それは」
「公爵以上は条件を満たせば爵位を与えることができるんだってね。
残念ながら俺は準伯爵だから与える事は出来ないけど、伯爵位から下の爵位を剥奪できると聞いたんだよね。
当然他の種族でも当てはまるでしょうな。
なんせ神様が決めた特権だと言う話だからね」
「俺の貴族位を剥奪する気なのか」
「さあ、どうしようかな。
それはあなた次第だな。
誠意を見せて戴けるならば考えてやっても良いのだがね」
うぅ、悪人の言うセリフだな。
何故か話の流れでこういうふうに言ってしまった。
でもこれって仕方が無い事だよね。
それ以外チート能力で殺すしか思いつかないのだから。
とりあえず反省するならば許してやろう。
「どうか許して下さい」
そう言ってナタリアと言うエルフの女性は土下座をし頭を床に付けた。
土下座するほど頭を下げたのだ。
それになんでもないトラブルだから許してやろう。
そう思っていたのだが・・・
「うん、そこまでするのだったら許してやろうかな」
「そ そうかそれだったら助かる。
俺が悪かったと言っておこう」
なんか言い方が悪いけど、まぁ良いか。
これで解決して終わりだ。
「それじゃ俺はこれで失礼する」
そう言って立ち上がり帰ろうとした時に、床を故意に蹴ったのが見えた。
俺はそれを見た瞬間激高した。
「待て」
「まだ何か用か」
「お前先ほど何故床を蹴った。
それは先ほどの事が気に食わなくて取った態度かよ」
「そ そんなことはありません」
「気が変わった。
お前の貴族の位を剥奪する。
このアンドウ伯爵の名を持って永久に貴族位を剥奪しよう」
「おい 俺は謝ったではないか」
「馬鹿かお前謝ったくらいで許されるなら警察なんか要らないんだよ。
それとも何か此処で死にたいのか。
死にたいのだったら楽に逝かせてあげるぜ」
「・・・」
「すまない店主、グリエルモさんこいつをこの店いやこの貴族街から追い出してくれ。
即急にな」
「は はい 分かりました」
ナタリアと言う女性は放心状態でグリエルモさんとエミリアさんに連れていかれた。
せっかく元の世界の携帯電話を手に入れて気分が良かったのになんだって言うんだよ。
この世界の貴族って横暴すぎるぞ。
あっ、それって俺の事だったか・・・




