第33話 あれってまさか
奴隷売買の町が近くに出来ただと、それはとんでもない事では無いか。
トラブルに巻き込まれる可能性があるな。
これは即急にこの町を出なければならないかも知れない。
しかし準備があまりもなさすぎだ。
当面、宿屋を利用し情報を集めながら安全そうな町に行く算段を決めよう。
「どうやら俺達には今回の件は関係ないようだが、慎重に行動しよう」
「分かりました、ご主人様」
「それと買い物の具合はどうだい」
「はい、私は言われたとうりきっちり二十着ほど買おうと思っております。
あと二着ほど選べば目標をクリアできます」
「え、サレンあなたはそんなに購入したの?
私はまだ仕事着のメイド服を入れて、五着ほどしか買っていないけど、どうしようかしら」
「私も同じくらいです」
「別にきっちり二十着買わなくて良いからさ、必要最低限の物が有れば良いと思うよ。
もしなんだったら後で買っても良いしね」
「分かりました」
おいおい、金貨三百枚渡したが足りるのかな。
値段が此処では分からないがいくら安くても数を買えばそれなりになるだろう。
下着と生活用品を購入している訳だからそれなりに金額はいっているはずだと思う。
それにアニスさんは魔法の染薬を買ったみたいだよね。
それって高くは無いのかな?
いくらか見当がつかん。
それに加え俺の服はオーダーメイドで五着くらい欲しいと言ってしまった。
生地とか最高級の素材で用意されたらとんでもない金額になってしまうのでは無いか?
最初の店で掲示された商品の値段は高かったのだけど、ホントにぼったくりだったかも不明だし、相場があの値段で合っている可能性もあるからな。
此処は一端、ルイージさんと相談する必要があるな。
まさかサレンさんが本当に二十着も購入する予定を組んでいるとは思わなかった。
だいたいで二十着と言ったんだよ。
先ほど聞いた二人も同じように購入を考えるだろう。
例えで多く買うように言ったのだが曖昧で言うといけないな。
言葉の魔法がうまく伝わっていない可能性もあるのか。
さすがに金額がやばくなりそうなので聞いてみるか。
それに此処の商品がいくらぐらいで売られているか相場を知りたいしね。
「話はこれで終わりにしよう。
みんな気を付けてくれ。
まだ欲しい物があるならば買い物を続けてくれ」
「分かりました、ご主人様」
そう言ったらターナさんとアニスさんは急いで他の服を選びに言ってしまった。
おいおい、二人ともホントに二十着も買うつもりだな。
サレンさん、余計な事を言ってくれたよ。
「それでは私も買い物を続けたいと思います」
そう言ってサレンさんはまた服を選びにいった。
・・・まっ良いか。
「アンドウ伯爵閣下、お話は終わりましたか」
「えぇ、だいたいの話はね。
ところで聞きたいのだが金貨三百枚ほど渡したのだがそれで足りるかな。
服の相場を知らないので金額等検討がつかないのでね」
案内役のエミリアさんが答えた。
「この二階のフロアは従者や一般の方がご購入できます金額で提供しています。
参考になりますように商品を持ってきます。
少々お待ち下さい」
エミリヤさんは売っている商品の一つ手に取り持ってきた。
「お待たせしました。
この花柄の刺繡の入ったワンピースですが、銀貨五枚で購入できます」
「手に取って良いですか」
「はい、どうぞご確認ください」
マジかこれで銀貨五枚、日本円で二万五千円と言うところだよね。
生地も良いし出来具合も悪くない。
花柄の刺繡も良くできている。
女性の服の事は分からないが無難な値段では無いかと思う。
いや、むしろ安いくらいか。
最初に行った小売店では似たような服が金貨二十五枚だったぞ。
あの店の品物と遜色ない出来だと思うが、同じような製品だったらぼったくりすぎてるだろう。
買わなくて良かったと思う。
「これで銀貨五枚ですよね。
安すぎませんか」
「私どもの店舗は自社制作商品とまとめて大量に商品を仕入れをしていますのでそれなりに安い値段で提供できます。
新品は多く扱っていますのですが中古商品は滅多に出ない現状です。
魔法関連を付与したレアな商品は中古品が多く存在するのですが残念ながらうちでは扱いが少ないです。
一階貴族御用達のお店に池が少しはあるのですが現状は少ない数しか入荷していません。
いずれ多く扱うつもりだとしか今はそれしか言えません」
「なるほど魔法が付与された洋服ね。
一階にはそんな品物が置いてあるんだ」
「はい、そのとうりです。
二階は特に従者の方や一般人を相手にしていますので高くはお売りできません。
最低限採算のとれる範囲で値段を安く付けさせてもらっています。
替わりに一階で貴族の方からご購入を戴いておりますので採算は取れるのですよ」
「なるほど、従者の方々に対しては良心的に提供しているのですね」
「そのとうりです」
・・・
逆に下の階で貴族からぼったくるつもりか、貴族御用達の店行くのが怖いな。
どんな値段付けてあるか想像がつかない。
でも魔法が付与している服とかあるとはちょっと気になってしまうな。
「実は最初に言った小売店でこれと同じような品物を金貨二十五枚と言われたのでさすがに驚いてしまったのですよ」
「それは酷い話ですな。
恐らく此処の商品と質は同じものと思われますね。
中には此処で購入して高く小売店でお売りしている店もおりますから。
一つ理由は心当たりがあるのですよ」
「?
それはどういうことですか」
「貴族の中にはお金を払わない人がいるのです。
それも下級貴族がほとんどですが。
その為に初見の方にはぼったくりまがいの事をしている店もあると思います。
身元がわからない飛び入りな客ではそういう対応されます方がおりますのも事実です。
ですからその小売店を悪くは思わないで戴きたいと思います」
「なるほど、それでどの店でも紹介状が有りますかと聞かれるのですか」
「そのとうりです。
この貴族街では貴族でも商品の代金は支払うと言う暗黙の了解があります。
此処では滅多に無いと思われますが、一般街では下級貴族が踏み倒す事は良くあることですからね」
「下級貴族が貴族の品位を下げていると言う事ですか」
「そのとうりです、困った事ですね」
「・・・
それでルイージさん、今回の買い物、金貨三百枚でなんとか足りますかな」
「アンドウ伯爵閣下、誠に申し上げにくい事ですが少々足りなくなるかも知れません。
従者の方の代金は余裕を持って足りますのですが、オーダーメイドで頼んだ服が素材によってはかなりかかると思いますので・・・」
「そうか俺の服か。
オーダーメイドであればそれなりにするか。
それに素材によってはピンからキリの値段になると言う事か」
「左様で御座います」
「それじゃ追加で金貨二百枚足すからこれで頼むよ。
この金額内で足りるように仕上げて欲しいな。
生地の質とか落として良いから、店側が利益が入る程度の品物を作って下さいよ。
無理しなくて良いですからね」
「承りました。
お買い上げ有難う御座います」
「それじゃ此処で追加の金貨二百枚渡しておくよ。
そうそう袋だけは後で返して下さいね」
「確かに受け取りました。
ご理解いただけて有難う御座います。
お買い上げ嬉しく思います」
ルイージさんはにっこりほくほくした顔で笑っている。
うーん、此処では安かったけど、問題は俺の服だったか。
なんか最高級の生地とか使いそうだからな。
そうなったら確かにいくらかかるか分からないな。
こればかりは仕方ない事だろう。
「アンドウ伯爵閣下、あなたの従者の方々は美しいエルフの方々ばかりですな」
「俺もそう思うよ」
「一階に貴族御用達のエルフ専門店が御座います。
行って見てはどうでしょうか。
店長には私から忖度するように話をしますので安く購入できると思います」
「おお、それは良いな。
行って見るのも良いかな。
でもエルフ専門の店だよね。
俺も見に行きたいのだけど入れないよな」
「大丈夫です。
私から話を通しておきますのでお入りできます」
「それじゃ頼むよ」
「心得ました」
「あ、それじゃ呼んでこないといけないか」
「私めが呼んできます」
「お願いするよ」
「では私は先に話を通しに行ってきますね」
「あぁ、ありがとね」
貴族御用達のエルフ専門の店かちょっと見て見たかったんだよな。
あっ、一階は貴族専門店だから高いのではないの?
やられた、もしかしたら追加でまたお金を出さなくてはいけないかも知れない。
ルイージさんて商売上手なのね。
全員集まりエミリアさんに一階のエルフの貴族御用達の店に案内される。
階段を下りている最中はサレンさんの顔が暗く沈んでいた。
小売店でエルフの店に入るのを躊躇した時と同じように気にしているのだろうか。
「サレンさんもしかしてエルフの店には行きたくないのかな」
「そうでは御座いません。
私、規定の二十着ちょうど買ってしまったので買いたいものがあっても買えませんのです」
「あぁ、そう言う事か。
買えなくて落ち込んでいたのね」
「サレン、あなたご主人様から給金を戴いているのだからそのお金を使って買えば良いではないですか」
「それはそうですけど」
「私はまだ十着分は余裕が有りますからね。
遠慮なく買わせて貰います」
「私も大丈夫だよ」
おいおいこいつら貴族御用達の店で十着づつ服を買う気かよ。
それじゃお金いくらかかるか分からないだろうが、此処は一つ言って置かなくてはいけないな。
「あ、悪い。
下の階はそれなりに金額するそうだから一人ニ着くらいまでにしてもらいたいんだけど良いかな。
あとサレンさんも一着だけ俺が持つからその他に欲しいのがあったら自分でお金出してね」
「分かりました有難うございます」
「ご主人様ずるいです。
私達には数を少なくして」
「そうですよ。
サレンには甘くありませんか。
すでに二十着も購入しているんですよ」
「えこひいきしていますよね」
「いや別にそんな事は無いよ。
・・・
分かった、追加で一着づつ購入して良いからそれで勘弁してくれ」
「はい 有難うございます」
なんか俺って良い様に使われていないか。
奇麗な女性に貢いでいる貢君になってきたぞ。
「ご到着しました。
此処が貴族御用達の店、エルフの専門店のエレガントテイルです。
どうぞ中にお入り下さい」
俺達は店の中へ入った。
しかし店の名がエレガントテイル?
気品がある尻尾?
変な名前だな。
なんか由来があるのだろうか。
店の中に入ると色とりどりの刺繡や装飾品が縫い合わせている服などが見受けられた。
あっ、やばいこの店桁違いに高そうだ。
これは追加料金決定だな。
と言うか目の前にある女性のチャイナ服を鎧状に装飾した服が飾られているんだけどこれっていくらするんだろう。
金貨五百枚いや一千枚はするかな?
貴族でも滅多に買える品物では無いよな。
これ買われたらどうしようと内心びくびくしている。
アニスさんが購入しそうでやばいな。
案内人のエミリアさんに小さな声で此処の店で扱っている商品の相場を聞いてみる。
「エミリアさん、エミリアさん。
此処の店ってどのくらいの金額の品物から売っているの」
「この店はですね。
最低金貨一枚の品物からお売りしています。
金貨十枚程度前後の品物が平均して売られていると思います。
それもエルフ特有の魔法付与した商品がほとんどでして、魔法を付与している商品としては格安で販売していると思いますよ」
「そうなんですね。
それじゃあそこにある服もそんなに高くは無いのかな」
「えっ、あれですか。
あれはですね。
たぶん店主次第の値段んになると思いますので私には分かりません。
魔石がふんだんに装飾されていますので最低金貨五百枚はするのではないでしょうか」
「やっぱりそうですよね
あれは別格ですよね」
「はい、そうですね」
「・・・」
きらきらしているのは魔石が装飾されているのね。
あんなのを手を出す方がおかしいだろう。
アニスさんが買わない事を祈ろう。
店の奥にカウンターが有り店主を紹介される。
「私はこの店を営んでいるグリエルモと申します。
ようこそお越しになりました。
アンドウ伯爵閣下、当店は歓迎します」
「安藤です。
宜しくお願いします。
無理言って入れて貰えてすいませんね」
「いえいえ、この店では別に気にしておりませんから。
人間のお客様もご利用できますので、ごゆるりとお買い物お楽しみ下さい」
そう言って頭をさげカウンター席に戻って行った。
グリエルモさんて耳がかなり長いエルフだな。
それもピンと立っているよ。
濃い金色の髪、青い瞳に切れ長の目をしていて、雰囲気が三人のエルフと違う。
エルフの中でも別格で外人さんて思われるほど顔つきが深いんだよな。
そういえば三人のエルフの娘達はどちらかと言うとアジア系の顔つきなんだよな。
エルフって種族がいくつか別れているのだろうか?
それにしても身に着けている装飾品がすごい。
インドの王族が金ピカの装飾品を付けているみたいに頭から足元までアクセサリーを身に着けているのだ。
服はシンプルな緑色のチャイナ服のような服を着ているみたいだけどサークレット、ネックレス、腕輪等の飾りがすごい。
この人は貴族出身のエルフだろうか。
そう思わせる雰囲気を漂わせている。
「それじゃ買い物していってね。
俺は適当に店内見ているからさ」
「分かりました」
何故か急ぎ足で三人は動き始めた。
欲しい物があったのだろうか、上の階と目つきが違うんだよな。
俺は服の型紙ができるまで此処で適当に過ごそう。
!
どうやらエルフの服装はチャイナ服とアイヌの服を足して割ったようなデザインだな。
装飾品が違うだけで元は同じみたいだ。
それ所々木の革のような材料が使われている。
防具のように埋め込まれているみたいだ。
靴などは動物の革ではなく何かの木の樹脂を組み合わせたようなブーツなどが置いてあるのだ。
ターナさんがそれを見て欲しそうにしている。
たぶん買うのだろうと思う。
サレンさんとアニスさんはどうやら服の方を見ているようだな。
サレンさんは青色の服を探しているみたいで、アニスさんは派手な色合いの物を見つけているみたいだ。
エミリアさんといっしょに探して貰っている。
アニスさんがあそこにあった服を買わない事を祈るばかりだ。
?
なんだろう鍵がかかったショーケースがあるのだがおかしい事にボケて見える。
それに何かに阻まれ近寄ることも触る事さえ出来ないのだ。
錯覚では無いな。
特殊な魔法がかかっているみたいだ。
店主のグリエルモさんに聞いてみるとショーケースの中には高価な魔石やアーティファクトが入っているので王族又は爵位のある人ではないと見せられないと言われてしまった。
おっ、ちょうど俺って爵位を持っているのではないか。
見せて貰えるか頼んだらすんなり見せて貰えることになった。
グリエルモさんは呪文を唱え魔法を解除した。
ショーケースの中があらわになる。
おぉ、スゲー見たことない大きな宝石ばかりだ。
しかも原石の状態で置いてあるものもある。
加工して使えって事だよな。
そのなかに見た事のある物が含まれていた。




