第32話 フラグの前兆
下の階に降り、エルフの少女達を探してみる。
おぉ、メイドだ、メイドさんがたくさんいる。
二階はかなり盛況で、貴族に使える従者達が買い物に来ているようだ。
それに一般の客もみられる。
でもこの人達ってお金持ちなんだろうな。
身なりが普通の人よりかなり良いんだよ。
二階は店舗ごとに仕切りがあるだけで営んでいるみたいだ。
ほんとにデパートって感じの様子だ。
フロアの端にはバザー会場みたいにシートを敷いて商品を置いてあるところもある。
こういう露店も出してあるんだな。
ルイージさんて貴族としては商売上手じゃないか。
それに一番気になったのは値札だ。
どうやらほとんどの品物に値札が付いているようで分かりやすくなっている。
ワゴンセール品も置いてあり一律の金額で出ているようだ。
文字が読めないのでいくらかが分からないのが問題だけど。
なるほど従者仕様の品物はお手頃に買えるようになっているんだね。
それに貴族の服装を着ている俺が居てもまったく問題はなさそうだな。
まぁ、貴族に使えている従者がほとんどだから、俺を見てもさほど気にした様子にはならないんだろう。
それと何か暗黙の了解とか決まりがあるのかも知れないな。
特に俺やオーナーのルイージさんが来ても挨拶しに来る人がいないからね。
さてと、エルフの少女達は何処にいるのだろう。
探そうとしていたらターナさんの声が聞こえた。
「ご主人様どうかなされたのですか?」
「ターナさん此処に居たんだ。
ちょっと気になった事があってね。
それとオーダーメイドで服の注文したので、今型紙を造っているから時間があるので見に来たんだよ」
「そうでしたか」
「それよりもターナさんその服に合っているじゃないか。
見違えてしまったよ」
「えへへ、有難う御座います」
「ご主人様もその服に合っていますよ」
「いやー、これはあくまで借りものだから変な格好していると自覚があるので、別に褒めなくて良いよ」
「そんな事はありません。
私はとても似合っていると思います」
「アハハ、そうかな」
やはりこの世界の美的センスが違うんだろうか。
見られないスーツを着て歩いていた俺は相当他から浮いていたように見えたかも知れないな。
見た人はどう思っていたのだろうと気になっている。
しかし、ターナさんて服を着替えたら見違えるように可愛いな。
濃い緑色で染められたワンピース、白いヒラヒラしたレースがところどころに模様として入っているので女の子らしさを強調している。
金色の長い髪と色合いがあっているので、可愛らしさがアップして見える。
見違えたと言うか俺のドストライクにあった服装しているよ。
元が良いので何を着ても似合うと思うのだが、それでも今着ている服は特に似合っていてとても可愛らしく見える。
こういう姿を見れるとキースと命を懸けて戦って良かったと思うな。
一応、これからも見れると思うがこの容姿も脳内メモリーに保存しておこう。
俺の可愛いアルバムに記憶しておくのだ。
「ターナ、此処に居たのですか。
あ、これはご主人様。
ご主人様も此処へ来られたのですね。
これは失礼しました。
誠に申し訳ございません」
「?
失礼ですがどこぞのご令嬢さんで・・・
わたくし、あなたと会った事が無いと思うのですがどちら様でしょうか」
「嫌ですわ、ご主人様。
アニスです」
「えっ、アニスさん、アニスさんなの?
これは見違えてしまったよ。
あれ髪の色、亜麻色ではなかったのかな?
どうして桃色になっているの」
「髪の色ですか。
魔法の染薬で色を変えて見たのです。
どうです似合いますか」
「うん、似合う似合う。
とても似合っていますよ。
しかし、どこぞのご令嬢さんに声をかけられたと思いまして驚きましたよ」
「お褒めを下さって有難う御座います」
驚いたな、耳がちょっと尖って長いだけでアニスさんとはまったく分からなかった。
髪の毛を桃色に染め後ろにひとまとめに結んである。
それにアニスさんてスタイルが良かったんだ。
ローブで見た感じでは分からなかったが海外のモデルさん並みにスタイルが良く見える。
出るところが出ているし、引っ込ん出ることろもくびれがすごい。
着ている服のせいもあるな。
紫色の魔導士が着る服みたいなのだが、身体のラインが服とぴったりあって怪しく淫陽に見える。
特に胸が大きく弾けそうなくらい見えるので目のやり場に困ってしまうよ。
こんなあられもない姿を見せつけられれば、今夜興奮して眠れなくなってしまうのかと今から思ってしまう。
できればもう少し胸の露出を隠して欲しいと思ってしまった次第だ。
「どうかいたしましたか、ご主人様」
「いや、別に何でもないよ。
それよりサレンさんはどうしたのかな」
「サレンでしたらあちらで買い物をしています」
「あ、ホントだいた、いた」
!
でもなんでサレンさんだけメイド姿の格好をしているのだろう。
好きな服を選んで良いと言ったのだが欲しい服が見つからなかったのかな?
案内人のエミリアさんと何かを探しているみたいだけど俺に気づいてこちらに駆け寄ってきた。
「ご主人様どうかなされたのですか。
此処は従者がご利用する一般店舗ですよ。
なにか不都合が御座いましたか。
もしかしてあの事が・・・
言え、なんでもございません」
「あっ、ちょっとだけ気になった事があったので来たんだよ。
それと時間潰しかな。
オーダーメイドで頼んでいるから、型紙を取るらしくそのせいで時間がかかるみたいだからね」
「そうでしたか、私達を気をつかって見に来て下さったのですね。
有難うございます」
!
やはり何かあったのだろうかサレンさんは何かに気づいているようだ。
「あ、別に良いよ。
特に今は変わった事は無いみたいだね。
それよりサレンさんはどうしてメイド姿なのかな。
もしかして此処で気に入った服は見つからなかったの?」
「そういう訳では御座いません。
普段着用に何着かはすでに買い物をしています。
今も掘り出し物が無いかと探していたところですから」
「で、なんでメイド姿なの」
「それは簡単な話です。
私はご主人様に雇われている立場ですから、それなりに身なりはきちんとしようと考えています。
いわばこれは仕事着です。
仕事で来ているのですからそれなりの服装しないといけませんですわ。
ターナ、アニスあなた達は何故そんな服装しているのですか。
ご主人様に失礼では御座いませんの。
私からしてみてはおかしく思いますよ」
「えー、だってご主人様は着やすい服を選んで良いと言ったじゃないですか」
「そうですよ。
それに私達だって仕事用のメイド服を何着か買っております。
此処で着る必要はないのではないかしら、サレン」
「そういう訳には行きません。
私達は高い給金で雇われているのですからね。
それに見合った仕事着を着なくてはなりません。
まずは服装から整え気持ちを切り替えると言う事です。
あなた達は何故それをしないのですか」
「そんな事言われても・・・」
「あぁ、別に良いよ。
今日は仕事で来ている訳でもないからね。
気にしないで結構だよ」
「ほら、ご主人様だって言っているじゃないの」
「こらターナ、調子に乗るんじゃありません。
ご主人様、本当に申し訳御座いません。
今度から気を付けたいと思います」
「気にしないで良いよ、俺が悪かったからさ、三人とも仲良くしてくれ」
「分かりました、ご主人様・・・」
ふぅ、ひとまず落ち着いたか、しかし三人ともそれぞれ個性があり感情的になるんだな。
最初見た時とはえらい違いだ。
それだけキースにひどい目に合っていたのだろう。
気の毒に思う。
それにしても、サレンさんて服装から入る人なんだ。
確かにスポーツでも形から入る人いるんだよな。
最上級の商品一式揃えて、いざ始めてみると一早くやめてしまうって人が多いんだよ。
見た目だけカッコ良く見せたがるから、実際やってみると上手くいかずそれであきらめてやめてしまうと言う。
カッコから入ると現実では上手くいかないからギャップが有りすぎて飽きやすくなるとも聞いたことがあるな。
だから始める時はほどほどの物を最初に揃えた方が良い。
出来るようになって面白くなれば良い物買えばいいだけだからな。
でも一級品買えば上手くできると勘違いしている人が多いから。
そういえば知り合いでテニス始めようとしてそういう奴がいたな。
一ヵ月後オークションで買った物売りに出したと聞いたが、売れたのは良いが半分も還ってこないと嘆いていたよ。
それだったら安易に始めなければ良いと突っ込みたくなったよな、あの時は。
あ、でもそれだったら俺も同類か。
一応、仕事用のスーツは新人にしては高いの買ったし見た目から入っているしな。
そう思うとサレンさんの考えも分かるような気がする。
それより先ほど何か変な事が起きなかったか聞いてみるか。
俺のチート能力が発動していたら厄介事に巻き込まれるかも知れない。
今のところは無いと思ったのだが油断していたか、気を緩めず警戒しておこう。
なんせ昨日やりすぎたからな、何かしらあるかも知れない。
とりあえず人けのない所で聞いてみようとするか。
「ルイージさんちょっと席を外して良いかな」
「了解しました」
「ターナさん達こちらへ」
俺は人けの少ない所へ三人を連れて行き話を聞くとこにする。
特にサレンさんが何か知っているみたいだね。
「サレンさん先ほど此処で何かあったのかな」
「はい、この店舗の女性従業員が一人突然倒れました。
どうやらお亡くなりになられたみたいです」
「やはりそうか」
「ご主人様はどうしてその事を知っているのですか」
「なに、先ほどオーナーのルイージさんに従業員が知らせに来たらしいからね。
倒れているだけだったら言いには来ないだろうがどうやら死んでしまったらしいと聞いていたからね。
それも確認したら、この店で雇っている従業員ではないらしい」
「そうなのですか」
「それで気になって降りてきたんだよ。
突然倒れたんだよね。
もしかして俺が使っている君達にかけた特殊能力が発動したのではないかと気になった。
サレンさんは分かるかな。
特殊能力が発動した可能性があるのかと」
「ご主人様、それは無いと思います。
ただ、倒れる前に嫌な気配がしました」
「嫌な気配?」
「闇の属性を纏った気配です。
その気配がしてから突然、その女性が倒れたみたいです。
実際私も遠目に居たので騒ぎになってから見にいきました。
ただ倒れた女性の首周りに強い闇魔法の痕跡が見られました。
そのあとは連れていかれてしまいましたので私にはわかりません。
嫌な気配がしたのはそれっきりなくなりました次第です」
「闇魔法の痕跡と嫌な気配か、まったく分からない事だな」
「警戒はしていたのですが、私達に対しては悪意など感じられなかったと思います」
「なるほどね」
「ターナさんとアニスさんは何か気づいたことはあるかな」
「私はまったく気づきませんでした」
「私もです」
「なるほど。
それじゃ俺達を何者かが狙ったと言うわけではないか。
そうなるとやはりルイージさんの関連の話かね」
「この店のオーナーに何かあるのですか?」
「ちょっとだけ先ほど聞いたのだは何かトラブルがあるらしいな。
まぁ、これだけの規模の店舗を運営しているのだから何かと面倒ごとがあるかも知れないね。
俺達関連ではないと思うので少しは安心できるかな。
でも何かと面倒ごとが起きそうなので注意はしておこう」
「そのようですね」
「特にアニスさんは注意して欲しいんだけど」
「え、私がどうしてですか」
「言いたくはなかったんだが、その悩ましい格好だ。
外を歩けば目に付きすぎるぞ。
特に胸だ、そんなに強調していたら不審者が群がってくるのではないかな。
帰りがけは他の服に着替えるかマントのような物を買って隠すようにして貰えると助かるのだが」
「そうですか。
私この服気に入っていますのに」
そう言ってアニスさんは胸を手で触り大きく揺らした」
「アニス、ご主人様の前です。
はしたないですよ。
もうちょっと露出の少ない服を選びなさい」
「はーい、そう怒らなくても良いじゃないサレン」
「もう、トラブルをなるべく避けるように注意を気づかうのですよ。
自由になれても又攫われたりしたら元もこうも無いのですからね。
特にこの町の近くに奴隷を売り買いする街ができ、新たな領主が来たとキースが話していたではないですか。
気を付けなくてはいけませんよ」
「はい、はい、分かりました」
「もう、適当な返事をして、本当に分かっているのかしら」
「大丈夫ですよ。
私達の事はご主人様が守ってくれますからね」
「確かにそうですがね」
なぁに、今物騒な話していなかったか。
奴隷売買する街が近くに出来ただと知らなかったぞ。
それって俺がトラブル起こすフラグ立っているのではないか。
絶対なにかあると思う。
これは早めにこの町を去る算段を付けないといけないな。
これ以上トラブルに合うのは御免こうむりたい。




