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第31話 ピエロの洋服

 「アンドウ伯爵閣下、こちらへどうぞ」

 俺は三階にある男性服専門店へ案内される。

 うむ、アンドウ伯爵閣下って言うのをやめて貰いたいのだけど言えないので困ってしまう。


 三階のメンズニュークリエイトと言う店に案内された。

 此処の店主であるイグニス・バレットと言う男を紹介された。


 「お初にお目にかかれます。

 私、メンズニュークリエイト店の店主イグニス・バレットと申します。

 以後お見お知り置きを」

 「安藤です。

 こちらこそ宜しく」

 店主のバレットさんと挨拶をかわし握手をする。


 ふむ、バレットさんて見た目は普通の人だな。

 背が高く三十代前半の端整な顔つきの男性だ。

 長袖の白シャツを肘までまくり紐で結わいている。

 黒い七分丈のズボンを履いているな。

 いかにも職人気質を伺わせる感じがするのだ。


 しかしこの店で売っている品物は派手な赤と白色の洋服ばかりだ。

 中世貴族が着ていた服装にかなり似ている。

 この貴族街であった貴族が着ている服と同じものが売られている。

 何人か貴族らしい客もいるが同じような服装をしている。

 この店で買った品物だろうな。


 「バレット、アンドウ伯爵閣下だ。

 決して失礼な事は無いようにお願いするぞ」

 「分かっております。

 ・・・

  伯爵閣下様、今日はどのような服装をご所望でしょうか」

 「うん、今着ているこの服と同じものをオーダーメイドで何着か頼みたいのだができるだろうか」

 「ご拝見しても宜しいでしょうか」

 「ああ、それじゃお願いするかな」

 俺はとりあえず上着だけ脱いでバレットさんに渡した。


 「お預かりします。

 ・・・

 ・・・

 ・・・」

 「どうしたバレット、額から汗がでているぞ。

 お前としては珍しいな」

 「ルイージ様、この服は私では作ることが困難です。

 伯爵閣下様、誠に申し訳御座いません。

 ご注文の方お受けできない事を申し上げます」

 「何を言っているのだバレット、お前は正気かアンドウ伯爵閣下の申し入れを断るとは。

 お前は国内でも有数な仕立て職人では無いか。

 王宮にだって専属の職人として選ばれるほどの腕の良さだ。

 私だって認めているぞ。

 それが出来ないとはどういうことだ」

 「ルイージ様、これをご覧ください。

 この細かな糸の均一な通しをできる者など、この国ではいないでしょう。

 私ではこんなことできません。

 それにこの素材です。

 今しがた手に取ってスキル鑑定をして見たのですが、私の鑑定スキルでは何の材料を使っているのかも判断できませんでした。

 今までの経験で触ってみればどんな材料でもある程度は分かります。

 知らない素材でも経験で対応が分かるのですがこれは別物です。

 まったく扱ったこと無い未知の素材です。

 こんなことは以前鑑定したアークファクト以外に経験が有りません。

 この素材はとても質の高いとだけが私で分かる事です。

 恐らくは未知な私の知らない魔物の素材で仕立てられているのでは無いかと思われます」

 「お前が知らないと言う事があるのか」

 「はい、東の辺境には私達が知らない強力な魔物が存在します。

 その魔物から取れた素材で作られている可能性がおおいにあります。

 ルイージ様、失礼ですが私では出来ない事を申し上げます」

 「なにを言っているんだ、バレット。

 もう一度確かめて見ろ、間違えかもしれないぞ」

 「ルイージ様もご覧下さい」

 「!

 こ これは・・・

 確かに私も見た事のない未知の素材だ。

 それにこの均一の糸の縫い目ありえないほど細かくできている。

 こ これは確かに。

 ・・・

 アンドウ伯爵閣下、残念ですが当店ではこの品物は扱えない代物です。

 残念ですが私からも出来ない旨を伝えたいと思います」

 「あ、ルイージさん別に素材とか仕上げの出来具合とかはそれほど気にしないので替わりになる材料で良いですよ。

 仕立ては機械で縫ってあるからそんな事は人間の手では無理だしね。

 ある程度で良いから何着か作って戴きたいだけだから」

 「機械で縫ってあるとはいったい」

 「それについては機密事項かな」

 「機密事項ですか、大変失礼しました。

 ですが、それで良いのですか?

 私は納得いかないのですが、アンドウ伯爵閣下はそれで良いのでしょうか」

 「うん、まったく問題ないよ。

 替えように似た洋服を作って戴きたいだけだからね。

 でも一つ注文を付けるけど良いかな」

 「それはなんでしょうか?」

 「色だね」

 「色ですか」

 「この店に置いてある赤と白の色合いだけはやめて戴きたい」

 「アンドウ伯爵閣下、それはどうしてですか。

 この赤と白の組み合わせこれほど良く目立つ色彩は無いと思われます。

 是非当店と同じ色合いの仕立てにしていただけませんか」

 「いやー、あんまり派手なの好きではないので落ち着いた色合いにしたいんだよ」

 「そうなのですか、残念でなりません」

 「まぁ、赤色になれば三倍で早く動けると言う事ならば別だけど、そんな事にはならないよね」

 「? 

 アンドウ伯爵閣下それはどういう意味ですか」

 「あっ、別にこちらの事だ気にしないでくれ。

 出来ない事は分かっているから今言った事は忘れてくれ」

 「分かりました。

 今、言われたことは聞かなかったことにします」

 「ありがとね。

 それより質は落ちても良いからさ、似たような服を何着か作って戴きたいのだよ。

 欲しい数は五着くらい、余裕をもって持っていたいからね。

 色は目立たない色合いだったらなんでも良いけど、できれば紺色を基準にしてほしいな。

 俺的に好きな色だし、それと出来れば早めに作っていただけると助かるんだが。

 どうだろうバレットさんお願いできるかな」

 「分かりました。

 そこまで言いますならばお引き受けしたいと思います。

 それではこの上着の型紙を取らせて貰います。

 しばらくお時間を戴けませんか。

 できましたら下の履き物の方もお願いします」

 「あぁ、そうだね。

 シャツは似たような変わりになる品物はあるみたいだからね。

 あとはズボンだけで良いでしょう。

 脱ぎたいのだが替わりになる服を借りられるかな」

 「もちろん大丈夫です」

 「アンドウ伯爵閣下、私に選ばさせて貰えませんでしょうか」

 「え、別に良いけどもしかしてこの店で売っている品物を着れと言う事かな」

 「それは当然で御座います。

 ニュートリビアデパートで人間用の貴族用男性服はこの店だけですからね。

 他の種族の店などもありまずが、そんな物などアンドウ伯爵閣下には着せられません」

 「いや俺は別に獣人が着る服でも良いと思うんだけど。

 なんか窓からちょっとだけ見たけど結構カッコ良い服では無いのかな」

 「そうはいきませんよ。

 今から私が選びますのでどうかしばらくの間お待ちください」

 「バレット、上着の型紙取り任せるぞ。

 アンドウ伯爵閣下を待たせるわけにはいかないからな。

 即急に対応してくれ」

 「分かりました。

 すぐさま取り掛かりたいと思います。

 伯爵閣下様、しばらくの間お借りします」

 「あぁ、お願いしますね」 


 しばらくしてからルイージさんがこの店で選んだ服を持ってきた。

 おいおいマジか上着はなんとか着れると思うけど下は赤と白と金のストライトが入ったカボチャのパンツだぞ。

 それを俺に着ろって言うのかどうかしているのではないか。


 でも脱がないと渡せないし、下着姿ではいけないだろう。

 待っている間に下着と寝間着など用意したいと思っていたので此処は我慢して着るしかないかな。

 俺は我慢してルイージさんが持ってきた服を着た。


 「良くお似合いですよ」

 「そ そうかな」

 大きな鏡台の前に立って全身を見るがどう見ても仮想大会に参加しているピエロの服装だろう。

 しかし以外に着心地は良いのだ。


 かぼちゃのパンツは柔らかくふっくらした綿が入っておりなんか暖かくて着心地が良いんだよな。

 腰回りは紐で縛るようでそこがちょっと気になるのだけど着心地良さに関しては問題は無い。

 ひざ下が出ているがそう快感があるのでそれがなんとも気持ち良いんだよな。

 でも膝の下の毛が見えて汚いんだよ。


 どう見てもピエロにしか見えない。

 まぁ、仮想大会の衣装と思ってしばらくはこれを着ていようか。


 「どうですかアンドウ伯爵閣下」

 「うん、着心地は悪くないね。

 でもちょっと派手で落ち着かないな」

 「何を言いますそれが良いのでしょう。

 この赤色を見ていると自然と興奮してくるのですよ。

 その感覚が心地よいではないですか」

 牛じゃあるまい赤を見て興奮するとはおかしく無いか。

 ルイージさんて何か変な性癖とか持っているのではないか?

 そんなことが思えてくる。


 「ルイージさん店の中を見ても良いかな。

 下着と寝間着を用意したいんだ」

 「どうぞご覧ください」

 「あぁ、そうするよ」


 男性従業員が突然走ってきた。

 「ルイージ様大変です。

 お話を聞いてもらえないでしょうか」

 「馬鹿者、私はアンドウ伯爵閣下のお供で忙しいのだ。

 面倒事が起こったならばお前達だけで対応しとけ」

 「しかしそれがあの」

 「あっ、別に良いですよルイージさんこちらは適当に下着を見ているので」

 「そうですか。

 それでは失礼します」

 ルイージさんは男性職員と少し離れたところで話している。


 「それでどうしたのだ。

 それが二階の一般売り場で見知らぬ者が倒れたらしいんですよ」

 「客が倒れたのか」

 「言え違います。

 うちの従業員の服を着た若い女性が倒れたらしいのです」

 「ハア、それはどういうことだ」

 「ですからうちの従業員の服を着た若い女性が紛れ込んでいてそれで突然に倒れてしまったらしいのです。

 それも息をしておらず亡くなっております。

 身元を確認しようとしましたが一斉いまのところ確認できる物は御座いませんでした」

 「間者か」

 「可能性が有ります。

 あの件のお返事をまだしていないでしょう」

 「そうだったな。 

 それでこちらの動向を伺っていたのだろうな。

 おっとこの話は内密な話だったな。

 声を小さくして話をしよう」

 「・・・」

 「・・・」

 「それで対応してくれ」

 「わかりました」

 男性従業員はすぐさま戻って行った。

 

 何やら二階で不審者がいたようだな。

 エルフの少女達が買い物をしていたはずだけど大丈夫だったかな。 

 と言うか突然倒れたって言うのは俺のチート能力で倒れたのでは無いのか?

 そんな気がする。

 それだとエルフの少女達に危害を加えるような事があったのだろうか。

 ちょっと気になるな、見に行って見たい。


 「アンドウ伯爵閣下、失礼しました。

 ちょっとしたトラブルがありまして」

 「そうなのね。

 二階は一般の女性用の商品とか置いてあるんだよね。

 それも今俺の従者が買い物していると思うのだが何かあったのか気になるな」

 「そのような話は御座いませんのでご安心を」

 「そうか、そうだったら良いのだがね」

 ・・・

 「失礼します、ルイージ様」

 「どうしたバレット、何かあったのか」

 「いえ別になにも御座いませんが。

 型紙を取るのが思った以上に時間がかかりそうなので伯爵閣下様にお知らせしたく思いまして」

 「そうなのか」

 「我々の知らない製法ですので型紙取りを複数用意しなくてはいけないのです。

 私が知らない新しい製法をしているので細かくとりたいと思います」

 「伯爵閣下様、誠に申し訳御座いませんが今しばらく時間を取らせて貰いたいと思います。

 何分ご容赦をお願いします」

 「別に良いよ」

 「有難うございます」

 そう言って置くの作業場らしいところへバレットさんは戻って行った。


 とりあえず、下着と寝間着はこれで良いかな。

 幸いにも下着類は同じ感じの品物があり、それに白がほとんどでこれだけは良かったな。

 寝間着はローブのような感じの品物が多かったがこちらも白色なので問題なく使えるだろう。

 靴下もあったがどちらかと言うとこれは厚めの足袋と言って良いだろうな。

 さすがにあの収縮している製法は出来る事はないか。

 まぁ、無いよりはましなのでこれも購入しておくか。


 とりあえず此処で欲しかった品物はこれくらいか。

 取り置きで置かせて貰おう。


 「ルイージさんとりあえずこれを購入したいのだが宜しいかな」

 「ご購入有難うございます。

 購入した品物は私共がホテルまでお届けします」

 「魔法の収納カバンがあるので持って帰えれるから別に届けなくても良いよ」

 「左様で御座いますか」

 「それよりまだ時間がかかりそうなんでしょう」

 「左様で御座います」

 「二階にいる従者の事を確認したいのだが、見に行って良いのだろうか。

 それとも男性は入れないのかな」

 「男性従者用の商品も少しだけ置いてありますので入れますが、貴族様の用入りは少ないので出来ましたら遠慮の方をお願いしたいのですが」

 「うん、でもさっき不審者が紛れ込んでいたとか聞いたから心配で気になるんだよな」

 「左様で御座いますか。

 分かりました私もついて行きますのでご案ない致します」

 「そう、ありがとね。

 それじゃ行って見ようかな」

 俺はエルフの少女達が心配だったので見に行こうと思ったのだけど、そういえば今ピエロのような服装を借りているのを忘れていた。

 今になって気づいたので少し焦ってしまう。


 とりあえず見に行くって言ったので行って見よう。 

 しかしこの姿を見せるのは恥ずかしいな。

 でも以外に快適に着こなしている。 

 デザインは悪いが品物としては良いなと思っている。


 

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