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第30話 ニュートリビアデパート

 此処がニュートピアと言う店か、思った以上に大きな店舗だな。

 あれほど人が居なかったのに此処だけは賑わいを見せている。

 人と言っても人種はいろいろいるな。


 俺達が入って来た方向では人が少なかったが此処は違う。

 人の流れ的に橋がある西側区域に集まるみたいだ。

 まぁ、橋を渡る中継地点と考えればどうしても橋側付近に人が集まるのだろう。

 そう考えると俺が来た方面は人の出入りが少なかった東側地域だったのだろう。


 どうやら東に辺境の国があるらしいがあまり交流がされていないみたいだ。

 北側にも大きな門があるらしいが何処へ通じるのかは聞いていないからな。

 情報が欲しいな。

 俺はどうやら辺境の東の国から来たと勘違いされているようだからあとあと問題が出てくるかな。

 東の国? まったく違うところから来た異世界人だからそんなの知る訳もない。

 まぁ、なったらなったで仕方ないのか、その時になったら適当に考えよう。

 

 一応キースに決闘で勝って貴族の位を受け継いだ。

 それも神の使いのお墨付きでね。

 普通の人よりも貴族と言う立場なのだから優遇されているので動きやすいと思う。

 貴族の証のペンダント見せればこの国ではある程度融通が利くのでそれだけが救いな事か。

 この町の情報を集め終わったら橋を渡って川向こうの大きな街に行くのも良いだろう。


 それでは中に入ってみよう。

 入り口には赤と白色を基調にした軍服を着ている衛兵がいる。

 細い奇麗な槍を持っているな。

 奇麗な装飾品がところどころ付いているが飾り槍ではない。

 実戦用にこしらえてある槍だ。

 刃先の鋭さが目にひかる。


 中に入ろうとするが特に止められたりはしない。

 しっかし、此処の外装もそうだが、いたるところ赤と白がやけに目に付く。

 赤と白が貴族の間で何かの意味があるのだろうか?

 

 服装もメイン色は赤と白を基調しているし、宿屋のレイズさんの燕尾服の色も赤と白だった。

 もしかして貴族の間で赤と白を用いた服装が流行しているって事も考えられるのか。

 一般人であんな服を着ているの見かけなかったし貴族の間で何かの意味合いがあるのだろう。

 赤色を用いれば三倍速く動けるって事はさすがに無いよな。


 衛兵の間を通り中へ入ってみる。

 すんなりと通れた。

 ?

 あれなんか造りが今利用している宿屋に似ていないか?

 フロントの位置とか同じ位置で内装もまったくと言って良いほど変わっていない。

 ただ違うのは階段など複数あり、ガラス越しで他の店舗が個別に入っているのが分かる。

 規模はこちらの方が大きいのだが今いる宿屋を改装した感じの造りに見えるのだ。

 まぁ、設計建築した人が同じだったら似ている仕様になるだろう。

 そう考えて見れば特におかしい事は無いか。


 とりあえずフロントへ行って見る。

 三人のエルフの少女達も問題なく入れて俺をの後を付いてくる。

 

 「いらっしゃいませ。

 貴族様、初見の方ですね。

 どなたかのご紹介状はありますでしょうか」

 宿屋と同じメイド服に似た服装をしている受付嬢の女性が声をかけてきた。

 

 「あぁ、レイズさんからの紹介でね。

 この店を是非利用したい」

 俺は紹介状を出し受付嬢の従業員に渡す。

 

 「お手紙預からせて貰います。

 中を拝見させて貰って良ろしいでしょうか」

 「どうぞご確認下さい」

 「それではご拝見いたします。

 ・・・

 アンドウ伯爵閣下御座いますか。

 これは大変失礼しました。

 今すぐオーナーを呼んできますので少々お待ち下さい」

 受付譲は慌てた感じでフロント奥に駆け込んでいった。


 俺の事を伯爵閣下と聞いた周りの客達がいっせいに見だした。

 うむ、確かにキースから伯爵号を奪ったのだが、準伯爵だよね俺って、伯爵扱いで良いの?

 それと何故、伯爵閣下と言われているの?

 閣下を付けるのは余計だと思うのだけどどうなんだろう。


 俺がキョロキョロ目線を見だしたら他の客は俺との目線をそらし俯いてしまった。

 中には貴族らしい人もいて帽子を取って俺の方に頭を下げている。

 うむ、爵位持ちってのは貴族の中でも違うらしいな。


 そういえば無役の貴族とかもいるそうだけど、そういう人達ってどういう役割をしている人達だろう。

 役職持ちは地域を統治できるらしいけど、無役の貴族って何をしているのか良く分からないんだよな。

 まさか何もしなくて威張り散らかしているだけって事は無いと思うけど、そんな夢の職業は無いだろう。

 何か重要な役割があると思うんだけど今は分からないから後で調べてみようと思う。

  

 フロントの奥から一人の若い男性が急ぎ足で近づいてくる。


 その男は頭を髪の毛の左半面を剃り落とし右側の髪の色を赤く染め長く伸ばしている。

 服装は宿屋のオーナーと同じ赤と白の燕尾服を着ている。

 どこぞのパンクロッカーと思われるいで立ちだ。

 

 「ようこそ、アンドウ伯爵閣下。

 当店にお越しくださって誠に有難うございます」

 そう言って頭を下げてきた。

 

 「どうも安藤です。

 えーと、あなたのお名前は・・・」

 「これは失礼しました。

 私の名はルイージです。

 当店のオーナーを務めさせていただいております。

 アンドウ伯爵閣下におかれましては以後宜しくお願いします」

 「ルイージさんね。

 こちらこそ宜しく。 

 それで早速で悪いが後ろにいる従者の服を整えたいのだが店内を見せて貰えないだろうか。

 他の店では入れなくて困っていたんだよ。

 何とか融通を利いて戴きたいな」

 「左様で御座いましたか。

 当店は従者の方でも買い物ができますのでご安心ください。

 それに姉上から紹介状を戴いております。

 ご配慮いたしますので存分に買い物お楽しみ下さい」

 「レイズさんの弟さんだったのですか」

 「左様で御座います。

 姉上はホテルを経営し、私は洋服店を営んでおります。

 我がアルバトロス家から代々引き継がれた物です。

 アンドウ伯爵閣下のような爵位持ちではありませんが、私も貴族として代々受け継がれた店を守っていく所存で御座います。

 若輩者ですが宜しくお願いします」

 「なるほどそうだったのね。 

 ルイージさんて貴族出身だったんだ。

 それじゃレイズさんも貴族の位を持っているんだ」

 「左様で御座います。

 姉上共々今後とも宜しくお願いします」

 「うん、宜しくね。

 それじゃ頑張って下さいね」

 「暖かいお言葉有難う御座います」

 見た目は変だがこの青年中々好印象が持てるな。


 融通が聞きそうだし、此処へ最初から来ればよかったと思える。

 まぁ、今までの事は経験として残るから別に良いけど、だいぶ遠回りしてしまったな。

 此処は気持ちを切り替えて買い物を済ませてしまおう。

 

 「ところでルイージさんこの店はどういうところなんだい。

 よく見ると多人種が多くみられるし、洋服だけではなく雑貨製品なども置いてあるようだが。

 先ほど君が言っていたように従者の方も買い物できると聞いたので気になってしまったよ」

 「当店は貴族御用達の品物を全般的に置いてあります。

 その中には従者がお仕えする作業着や貴族関係で役立つサポート用品を多く揃えております。

 貴族が暮らしやすいアイテムを豊富に揃えていますのですよ。

 はたから見れば節操のないごちゃまぜの貴族ご用達品を売る店と言って過言では御座いません。

 ですが私はそれで良いと思っています。

 なにせ此処へ来れば必要な物が一度に手に入りますからね。

 余計な手間もかかりません」

 「なるほどデパートって事なのね」

 「!

 アンドウ様、失礼ですがデパートとは・・・」

 「あぁ、単一の企業が複数の分野の専門店を統一的に運営し、多種類の商品を展示陳列して販売するお店の事だよ」

 「!

 おお、なるほど私共の店はデパートと言うのですね。

 そのように異国では呼ばれているとは思いもよりませんでした」

 「俺の国ではそう呼ばれているね」

 「!

 アンドウ様、提案が有ります。

 この店の店名を替えたいと思いますが宜しいでしょうか」

 えっ、いったいこの人唐突に何言っているの?

 別に俺に効かなくとも店名など後で変えれば良いんじゃないの。


 「別に良いけど、唐突にどうしたのかな」

 「!

 今、私の頭の中に神が降臨しました。

 神のお告げでこの店の名をニュートリビアデパートと替えろと啓示があったのです。

 「そ そうなの?

 神の啓示があったのならば良いのではないかな」

 「はい そうしたいと思います。

 ・・・

 皆さん聞いて下さい。

 この店の名前をニュートリビアデパートと改名します。

 以後皆様方、宜しくお願いします」

 オーナーのルイージさんは手を広げ声高々く宣言した。

 従業員と周りに居た客達は皆喜びを示し拍手を捧げている。


 なんだこれって、いったいどういう事よ。

 なんかの宗教か?

 俺は唖然として拍手喝采を聞いている。


 「えぇと、ルイージさん。

 喝采の余韻に浸っているところ悪いけど、早めに買い物を済ませたいんだ。

 誰か案内してくれる人を用意していただけると助かるのだが」

 「了解しました。

 すぐに案内人を用意いたします。

 そういえばどのような品物をご所望ですか」

 「まずは俺の従者の服と靴だ。

 それと生活必需品を購入したい。

 彼女達の物を優先的に買いたいと思っている」

 「左様で御座いますか」

 「それと俺の服と同じものをオーダーメイドで頼みたいと思っている。

 そうそうお金については、これでお願いしたい。

 足りなければ追加で出そう」

 俺は魔法の収納カバンから金貨百枚づつ入った袋を三つほど取り出した。


 今までの経験でさすがにこれだけ出せば買い物ができるだろう。

 でも金貨三百枚で日本円で三千万円だよ。

 これってなにかおかしくないか。


 オーナーのルイージさんにお金を渡す。

 

 「こ これは」

 「金貨三百枚あるはずだ。

 これで彼女達の服を買えるだけ購入したい。

 足りなければ追加で出す。

 あっ、金貨が入っている袋だけは返して貰えないかな。

 袋があると何かと重宝するんだよな」

 「心得ました」


 「金貨三百枚だって、あんな見すぼらしい服を着た従者に使うなんて信じられん」

 近くにいた若い男性従業員が小声でつぶやいた。

 俺はその従業員の男性を睨みつける。


 「あぁん、俺がどうお金使おうが文句あるのか」

 その男性従業員に怒気を混じった声で言い放つ。


 それを見ていたルイージさんが男性従業員にすぐさま近づき殴りつけた。

 「ドガン」

 男性従業員は顔を殴られ床に這いつくばる。


 「馬鹿者、アンドウ伯爵閣下に対して何と言う不敬を、貴様死んでお詫びしろ」

 ルイージさんは男性従業員に説破つまったように怒鳴り散らした。

 

 殴られた男性従業員は顔をあげ、申し訳御座いませんとルイージさんに土下座した。


 「この馬鹿者目、謝る相手が違うだろう。

 アンドウ伯爵閣下に誠意をこめてお詫びするのだ」

 男性従業員は俺に対し平謝りし土下座を繰り返した。

 

 ルイージさんが鬼気迫った感じで怒ったのを見て俺はドン引きしてしまい。

 冷静に戻ってしまった。

 他の人が一人で怒ったりすると周りの人が引いて冷静になることってあるよね。

 今そんな感じがしている。


 ちょっとだけムカついたのだがルイージさんが取った行動で逆に俺は冷めてしまったのだ。

 別にそこまで怒らなくては良いのではと思ってしまったのだ。


 「アンドウ伯爵閣下、この者できましたらお許し願えませんでしょうか。

 私が後できっちり教育し直します。

 どうか命までは取らないようにお願いします」

 えっ、なんで俺が命を絶つことになっているの、死んで詫びろと言ったのはルイージさんあんたじゃないか。


 それが俺が言ったようになっているみたいだけどどういう事よ。 

 さすがに俺もそこまでさせるとは思わないし、と言うかその前に頭に来れば特殊能力でこっそりと殺しているから。


 あっ、そういえば今気づいたのだけどこの貴族街に入って今のところ、俺の特殊能力で誰も死んでいないな。

 関わった人は変な人ばかりだったけど俺に対して特に危険な事は無かったと言う事なのか。


 あの危ないゴシックロリータファッションをした女性も死んではいなかったし。

 確かに貴族街外の方が危ない人がいっぱいいそうな気がするな。

 一応変な人はいるけど此処の方が秩序が守られていると言う事なのか。


 それよりもこれをおさめなくてはいけないな。

 何故、俺がおさめる事になってしまっているのかわからないが適当に許して先に進もう。


 「あぁ、此処はルイージさんの顔御立て許してやろう。

 次は無いからな」

 「アンドウ伯爵閣下、有難うございます。

 ほら、お前もお礼を言え」

 男性従業員は許してくださり有難うございますと土下座して言っている。

 

 何故俺はこんなに上からの目線で言っているのだろう。

 最初にムカついたのは確かだが、こんな大事になってしまったのは想定外だ。

 すいませんの一言で済んだ話ではないのか。

 それも俺が土下座させて謝らせているみたいで罰が悪いなと心の中で思っている。


 とりあえず服を買いに行こう。

 早めに買って面倒な事を避けてしまうのだ。


 「エミリア、アンドウ伯爵閣下の案内を頼む。

 失礼が無いようにお願いするぞ」

 「心得ております。

 アンドウ伯爵様、私、ルイージ様の秘書をしていますエミリアと申します。

 店舗の案内は私目にお任せ下さい」

 「あぁ、宜しく頼むよ」

 「それではこちらへどうぞ。

 二階に従者専門のメイド服をご用意できる店が有ります。

 こちらから用意したほうがよ良いでしょう」

 「うん、その点は任せるね」

 「あと別に普段着でも良いのでメイド服とかではなくても別に良いから着やすい服を頼むよ」

 「分かりました案内させていただきます」

 うむ、秘書のエミリアさんか、さらさらした美しい緑色の長い髪をしている大人っぽい女性だな。

 秘書と言うよりルイージさんの愛人に見えるのだけどどうなんだろう。

 案外あっているのかも知れないな。


 それじゃ俺もついて行って見るか。


 「アンドウ伯爵様、下申し訳御座いません。

 二階は主に従者などの一般人が多くみられます。

 アンドウ伯爵様が来られますと皆さま委縮してしまうと思われます。

 私が従者の方案内しますので一階ロビーで寛いでいただけませんか」

 「あぁ、そうか、そうだね。

 それじゃ俺の服を新調したいのでオーダーメードを頼みたいと思うのだけど誰か案内して貰えるかな」

 「それでは私、ルイージが案内します。

 三階が男性服を扱っているのでどうぞこちらについて来て下さい」

 「それじゃそうしようかな。

 エミリアさん従者の方は任せるね。

 サレンさん達好きな服を買って良いから、それと替えを何着か用意したほうが良いからさ、何だったら一人二十着くらい買っても問題ないからね。

 お金は俺がすべて持つから気にしないでね。

 あと靴と下着も買い忘れないように、買ったものは別に見せないで良いから魔法の収納カバンに入れて持っておいて良いからね」

 「了解しましたご主人様」

 三人のエルフの少女は元気よく返事をした。


 とりあえず一人二十着くらい買っても問題ないからと言っておいた。

 こうでも言っておかないと遠慮して一着しか買わないかも知れないからな。

 お金はあるしその点は問題ないだろう。


 一言多めだがなんか言っていたほうが良いと思ったんだよな。

 俺ってほんとはこんなに気をつかう奴じゃないけど彼女らの今までの境遇から考えると優しくしてあげなくてはならないと思ってしまう。

 まぁ、半分下心があり良好な関係を築きたいと思っているだけかも知れないけど。


 さて、俺も服を見てこようかな。

 オーダーメイドって言っても他に男性の服も置いてあるのだろう。

 こちらの世界の服を買ってお洒落な格好を整えて見ようかな。



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