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第26話 ごまかした


 宿屋のオーナーにあいさつを終え、部屋に戻って来た。


 戻ってきたら3人のエルフの少女たちが一列に並び、手を前に組んで

 「お帰りなさいませ、ご主人様」

 と言って出迎えてくれた。


 宿屋のオーナーにあいさつをしに行っただけで、出迎えのあいさつにしては大げさではないのか? 

俺はあぜんとしながらソファーに腰かける。


 彼女たちの耳を見たら、再生したピンク色の耳が、肌色に変わっており元通りに治っていた?

 いわく感がまったくない。治って良かったと安堵する。

 

 「君たちに話があるので座ってくれないか」

 3人のエルフの少女たちは言われたとおり向かいのソファーに座る。


 なぜか俺の事をじっと見ているけど何なんだろう。

 

 雇用契約の話をしようと思っただけなのに、じっと見つめられるとある意味怖いんですけど、先ほどオーナーと話しに行っている時になにかあったのかな?


 美少女たちに見つめられるのはいわく間があって違うんだよな、どちらかと言うと見つめていたいって方なんだよ。


 サレンさんとアニスさんの雇用の件をまだ話していなかったから聞いてみよう。


 そういえば人を雇った事はないな、当たり前か、会社に入って4年目だから後輩を少し面倒を見ただけだ。

 まさか異世界で雇い主になるとはな。


 ブラックな仕事は大学時代にアルバイトで身に染みているから、そんな事を彼女らにさせないよう、心掛けないといけない。


 異世界で異人種を雇うのだから難しいだろう。そう考えると人を雇うのが面倒になってきた。


 ターナさんを雇うのは決まっている。彼女だけでも良いんじゃないか?

 決して2人きりになり親密な関係になって退廃的な生活していこうとは考えてはいない。

 それでも良いんだけど、ターナさんの事情もあるからな。


 異種族だ、俺の事を好きになってくれるかわからない。

 俺は一目ぼれで好きになってしまったけど・・・


 俺の常識が通用しない異世界だトラブルは数多くあると思う。

 すでに昨日大きな事件をやらかしてしまっているからな。

 面倒な事が多そうなのでなるべく少ない人数の方が身軽で良いんだよ。


 そう考えると2人には当面生活できるお金渡して帰ってもらうってのもありかも知れない。

 ターナさんと違って故郷もあり、耳も再生したので帰れると思う。

 昨日と話は変わってしまうが、彼女たちのためには良いかも知れない。


 魔法は教えてもらいたいが、ターナさんから教われば良いだろう。一応、聞くだけ聞いて見るか。


 先ほどまでとは一瞬で心変わりしてしまったな。

 この異世界に来てなにかおかしい。ころころ考えがかわる。

 ちょっとでも楽な方向に行けばそちらに行く方向で指針を決めてしまう。

 

 情緒不安定だな、まぁ、混乱しているのは当り前か、よく考えたら異世界に来てまだ6日? 1週間もたっていないのか。

 

 助けられたとして、異世界で異人種、俺の事を彼女らは信用できるのだろうか?

 違うか、俺は彼女たちを信じきれていないと言う事か、昨日会ったばかりの他人だ信用できるのがそもそもおかしいのかも知れない。


 とりあえず彼女らと話をしてみよう。


 「サレンさん、アニスさん雇用の件で話をしたい。君達はこれからどのようにしたらいいかお聞きしたいな」

 「ターナから先ほどお話を聞きました。私はご主人さまが掲示した提案でお受けできます」

 サレンさんが答えた。


 「私も同じ意見です」

 アニスさんも同様に雇用を受ける返事をする。

 

 「俺としては有難いのだが、別に無理をして雇用を受けなくても良いのだけど、本当に良いのかな」

 「ご主人さま、それはどういう意味ですか?」

 「別に深い意味はないよ。君たちにも都合があるだろう。

 現状で君たちの目的は達成していると思う。

 奴隷から解放され、耳も治った、エルフの国へ帰れるのだろう。

 現状、俺はターナさんを雇えれば、俺は問題ない。

 君たちは好きにしても、別に大丈夫だと言う事だ。

 申し訳ないが、ターナさんには3年だけ我慢して働いてもらいたい。

 雇い期間が終わったらエルフの里へ帰すつもりだ。約束しよう。

 俺としては言葉の魔法が欲しいだけだ。言葉の魔法効果で自ら覚えなくても自然に話せるようになると言う話だから、3年あれば話せるようになっているだろう。

 それまではターナさんには我慢して働いて戴きたいんだ」

 「そんな、私はずっとご主人さまの元について行くつもりです」

 ターナさんは言った。


 「ありがとうね、ターナさん。でもね俺たちって異種族同士だよね。人間とエルフとでは生活環境が違いすぎるだろう。

 まして俺は異世界人だ。根本的に君たちとはまったく違う存在だ。

 俺がこの世界に適応し自立できるようになるまではお世話になりたいと思っている。

 300日あれば、こちらのシステムがだいぶわかると思う。

 それまでで良いと思っている。

 君たちの生活もあるから俺の都合で引き留めてしまっては申し訳ないのだよ」


 「言ってる意味が良くわかりません」

 サレンさんが問いかける。


 「なんていうか君たちの人生を俺の都合で決めてしまうのが悪いって事なのかな。

 エルフの里へ帰れる算段はついているのだろう。俺としては無理に強要したくないと言う事だよ。

 それに何分、人を雇用したことがないので、どう接して良いのかもわからなくてね。

 ひどい仕事はさせたくないし、俺の居た世界では法律で決まっていてそれなりに責任負わせられるから、ひどい仕事はさせる事は少ないんだけど、ここでは別みたいだから。

 この世界で自分の行動に自制できるかがわからないんだ」


 「ご主人さまが私達を気にかけている事は、理解いたしました。

 私は決してどのような事をされても構いません。

 恩義もあります。

 お返しできますまで、お仕えできませんでしょうか。

 せめて奴隷として解放して下さった分は働かせて戴きたいです」

 サレンさんは言った。


 「サレンさんそんなこと言うと、夜のお仕事とかやってもらう事になるよ。夜のお仕事とはどういうことかわかるよね」

 「ご主人さまが望むなら私は喜んでお引き受けしたいと思います」

 「・・・ 困ったな、俺の国では夜の相手など強制させると法律違反で捕まってしまう。 

 捕まらなくても世間に知れれば厳しい非難を受ける」

 「刑罰を受けるのですか?」

 「そうだよ。法律があるからね。

 サレンさんが俺を強姦罪で訴えたりして裁判になることもできるんだよ」

 「貴族でも刑罰を受けるのですか? ご主人さまの住んでいた国は厳しいですのね」

 「厳しくはないよ。犯罪行為をやらなければ、何も不自由なく生活できるからね。

 俺が居た世界とこの異世界では常識の差がありすぎて判断できないんだよ。

 この世界では貴族相手に夜伽とか強制させたりするのがあたりまえに起こっているのだろう。

 俺はキースに勝って貴族の権限を手に入れている。

 貴族の権限を持っていたら、欲に溺れて元の世界での犯罪行為をし放題になる。

 人として駄目になる感じがして怖いんだ。

 すでにこちらの世界で何人か殺しているから。

 この世界に来てまだ6日しかたっていないのに、心が荒れすさんでいる。

 元居た世界では人など殺したこともない、傷つけた事がない俺がだ。

 殺人は重犯罪で死刑になるほど罪が重い。

 抑制力があった世界で生活していた俺には考えられない事だ」

 「ご主人さまの異世界と言う国はそんなに法律が厳しい国なのですか」

 「あっ、違う、違うよ。たぶん勘違いしている。俺から見てこの世界が異世界と言う事だよ。

 ん、なんて言って良いか君たちから見て、まったく異なる世界からやって来たって事なんだけど理解できるかな」

 3人はキョトンとした顔をして考えている。

 

 少ししたらサレンさんが考えが纏まったようで話してきた。


 「ご主人さまは、この世界とは異なる別世界から来たのですか?」

 「さっきからそう言っているけど、今は理解できたようだね」

 どうやら理解したみたいで驚きの余りサレンさんはぽかんと変顔をしている。


 「ご主人さまは、東の大陸の異世界と言う国から来たのではないのですか?」

 ターナさんは言った。

  

 「ターナ、それは違います」

 「ではどこから来たのですか?」

 「ですから異世界です」

 「サレンどう言うことですか、私たちにわかるように説明してもらえませんか」

 アニスさんも理解できていないようだ。ターナさんはそもそもわかってもいないみたいだ。


 「アニス、ご主人さまは、神界と呼ばれる天神界、夢幻界又は竜神界、魔神界から来た人だと言う事ですよ」

 「そうなのですか。それでは神人と言うことなのですか」

 「そう判断して良いと思います」

 えぇー、サレンさんも理解していなかった。思わせぶりな態度を取ったのはなんだったんだ。


 と言うかこの世界には天界と魔界って存在するんだ。

 そんな世界があるならば、どう説明するのか難しそうだけどやらなくてはいけないのか、ながいながい話になるぞ。


 俺は3人にできるだけわかりやすいように話した。


 「要するに夜になると星が見えるよね。 

 光って見える星の中に、俺が住んで居た地球って言う星があるのかも知れないと言う事だよ。

 こちらの場所とまったく違う遠い遠い所からやって来た可能性があるって事かな。

 その星で君たちと同じように知的生命体がいて人類が発展した世界のことなんだよ。

 どうしてこの世界に来たかわからないが、来てしまったんだよ」

 「そんな話、聞いたことも本で読んだこともありません。

 その宇宙でしたか、その中にあるこの世界と同じどこかの星とかがそもそも信じられません。

 世界って平らではないですか、どうして丸い星とか言うのに人が住めるのですか? それこそ理解が出来ませんよ。

 ご主人さまにはその事を説明できるのですか?」

 「あぁ、できるとも、とりあえず話は長くなるので聞くだけ聞いてくれ」

 ・ ・・ ・・・

 「どう、説明はしたが理解は・・・できていないよね」

 3人の顔を見れば何となくわかった。頭から煙が出そうなくらいぽかんとしている。

 

 「俺の言う世界では学校で習ったことで誰でも知っている事なのだよ。

 科学技術が発達していて、地球外から見えるような機械がある。

 外からわかってしまうのだ。

 確かに星は丸いからおかしいと思うけど、良く考えて見な地平線が見えるのだよ。

 平らだった広い海や荒野でも、正面から見れば大きい山や建造物とか見えるはずだよね。いくら遠くても見えるはずだろう。

 丸いから見えなくなるんだよ。

 そうだオレンジ、オレンジに小さな棒を挿して回して見れば良い。

 回していくと見えなくなるだろう。だから世界は平らでないってわかるんだよ」

 俺も説明が下手で頭の中がこんがらがってしまい意味不明な事を言ってしまう。


 「俺が居た世界ではそれが常識でこの世界と違って魔法とか神様とかも存在しない世界だから」

 「ですがご主人さまは私たちに魔法を使っております。それはどう説明するのですか。

 ! 申し訳御座いませんご主人さまにとっては秘密な事だったのですよね。どうかお許しください」

 サレンさんはソファーから立ち上がり、床に座り頭をつけ深々と土下座した。


 俺がエルフの少女たちにチート能力を使っていたのを気づいていたのか。

 そうなると、冒険者ギルドでチート能力を使って人を殺したのも知っていると判断できる。


 悪い事をしたな、彼女達は怖かっただろう。

 神罰ではなくチート能力で殺していたとわかっていたのだからな。

 

 俺が持っているチート能力を正直に話すしかないな。


 でも脳みそをプリンに変えるって言うの言い換えて即死能力が使えるって事にしよう。

 プリンと言うお菓子の事は知らないだろう。


 よく考えたら俺のチート能力って、物質を変化させる能力ではないのか?

 俗にいう変化形の能力か。

 脳みそをプリンに変えられると言う変わった能力だけど、もしかしたら他に変化させられるかも知れない。


 クレージー・ダイアモンドではないけど触れた物を変化させる能力が使えるのかも知れないな。


 「サレンさん、顔を上げてください。そこまですることはないですよ。

 そこまでされたら俺の方が困ってしまいます。どうか立ち上がってください」

 俺はサレンさんのもとにかけより手をかす。

 

 サレンさんは申し訳なさそうに俺の手を取り立ち上がった。


 俺が悪いな、なんて誤った方が良いかわからないがきちんと説明しておこう。

 俺が使っているチート能力は魔法の類なのか、その点も話し合いで吟味してみよう。


 「サレンさん、すまなかったね。

 魔法は使った覚えはないんだが、君が言ったとおり魔法をかけられたと言うのは俺がこの世界に来た時に使えた異能だと思うんだ。

 その異能については俺にもわかっていない。

 この異世界に来たら使えたとしか言いようがないんだ。

 異世界に来た時からの事を、一から説明しよう。 

 わからない事が多い、できれば一緒に考えて協力してくれないだろうか」

 「わかりました、ご主人さま。許してくれるのですね」

 「許すも許さないもないのだけど、許すと言っておくね。

 サレンさん今回の件は俺が悪かった。謝罪させてもらうよ」

 サレンさんに対して深々と謝罪のお辞儀をした。

 

 「ご主人様、お顔をお上げください。助けられたのは私たちです。そのような事をされたら困ります」

 「許してくれるのかい」

 「はい、許します。どうかお顔を上げてください」

 「ありがとう、サレンさん」

 俺はサレンさんに近寄り、眼を見つめ手をとり握る。


 なぜかその方が良いと思ったのだ。


 サレンさんを見つめていると恥ずかしそうに顔を赤らめた。

 その表情がとてもかわいい。


 白い顔が赤く染まり、耳先が赤くなっている。 

 再生して元に戻った耳も赤らめているのだ。


 サレンさんて本当に美人さんだよな。

 青く透き通った瞳に雪のような白い肌、銀色の細い髪がサラサラ美しく光る。

 そんな彼女を見ていたら思わず抱きしめてしまった。


 「あ、あのご主人さま」

 「すまなかったね、サレンさん」

 そう言って俺は抱きしめてしまった事をごまかす。


 定番の謝りネタだが、サレンさんがかわいかったのでつい抱きしめてしまったのだ。


 サレンさんはターナさん同様に良い匂いがした。フローラルな香りかな? 花の気品を漂わせた匂いがするので、つい堪能してしまった。


 「本当にすまなかったねサレンさん。俺にわかる範囲だが事の経緯を話そう。

 ソファーにかけてくれ」

 そう言って抱きしめたことをうまくごまかし、手を引いてソファーに座らせた。



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