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第23話 えぇ、勘違いしているよ


 「サレン、あなたは本当にそれで良いのですか?

 エリクサーを持って帰ればあなたは」

 アニスさんが言った。


 エリクサーを持って帰れば? アニスさんが意味深なことを言ったけど、サレンさんはエリクサーが欲しかったのかな?


 ! なんかやばい、やばい気がする。

 気のせいだよね、俺を殺してエリクサーを奪ったりしないよね。

 ちょっとだけ脂汗が出てきた。

 

 「ご主人さまが良いと言っているのです。

 ご主人さまのご要望どうり、あり難く使わせて戴きましょう」

 

 勘違いだったか、俺を殺して奪うそんな事はないだろう。

 俺って本当に人間不信に陥っているな・・・


 「それで良いと思うよ。さっそくエリクサーを使用してみようか。

  サレンさんどう使ったら良いかな」

 「この瓶の量でしたら、飲んで使用できるのは1人分しかありません。

 回復魔法を使用しながら傷口にエリクサーをかける方法をとりたいと思います」

「なるほどね、回復魔法をかけながら、エリクサーを使えば再生効果が格段に上がると言う事だね。

 それだと、液をかける場所が耳だから、ちょっと難しそうだね。

 スポイトがあれば良いんだけど、この世界にはあるのかな」

 「スポイトとは何ですか?」

 「やはり知らないか。

 細い筒状のガラスで出来た棒管に丸いゴム製の袋を付けて液を吸い取ることができる道具なんだけど、君たちは知らないよね」

 「すいません。知らないです」

 「別に良いよ、悪かったね。他にやり易い方法はとっ・・・

 あっ、傷口に付ければ、別に良いんだよね」

 「そうですが」

 「それだったら良い方法があるよ。

 ガラス棒に液を付けながら少しづつ傷口に塗れば良いだけの方法ができるな」

 「ガラス棒にエリクサーの液を付け塗るのですか?」

 「そうそう塗ると言うか、棒に垂らして少しづつ付けていくって感じだね。

 前に足の親指に魚の目ができた時に、イボコロリを使った事があるんだよ。

 あれと似た感じで棒先に液を付けて垂らせば良いんじゃないのかな」

 「イボコロリとは何ですか?」

 「あ、それはちょっと説明が難しいので後で機会がある時に話すよ。

 用は棒の先に液を付け少しずつ垂らして塗っていくと言う感じかな。

 まぁ、見てみればわかると思うよ。

 ガラスでできた細い棒とかあるかな。

 ないのであったら、木の棒などで代用するしかないが・・・

 あっ、ちょっと待ってね。

 キースが持っているアイテムの中から代用できるものを探してみよう」

 俺は魔法の収納カバンからキースが持っていたアイテムを出し代わりになるものを探してみる。


 「使えそうな物が1つあった。これで代用できるか、これってなんのアイテムだろう?

 使いたいのはガラスでできたこの部分の棒なのだが、これって折ってしまっても問題ないのかな」

 「私にもこのアイテムはなんなのかわかりませんが、この棒はガラスではなく水晶を削って出来ているようですね」

 「水晶なの」

 「そうですが、どうかしましたか」

 水晶って俺は扱った事が無いんだけど。


 前に水晶でできたグラスが欲しかったけど、セットで売っている値段見て高すぎると思って買うの辞めてしまった事があるんだよな。それくらいしか見たことがないんだよ。


 ガラスと似たような物だからこれで良いのか。


 「水晶でも問題はないと思う。それじゃ折ってはずしてしまおう。

 何のアイテムかわからないから、別に壊しても良いでしょう。

 どのみちわからなく使用できないアイテムは倉庫の肥やしで永遠に眠る事になるからね。

 貴重なアイテムかも知れないが、ここはあきらめて壊してしまいましょう。

 それに奇麗に折れば直せるかもしれないしね」

 使えそうな水晶の棒の部分だけへし折って外してしまう。


 綺麗に折れた、これはちょうどいいな、良い水晶の棒が手に入った。


 「ご主人さま、その水晶の棒をどのように使うのですか」

 「簡単だよ。瓶に入っている液を棒につけ垂らすだけだからね」

 「?」

 「まぁ、見てればわかるよ。それよりちょっと聞きたい事があった。

 エリクサーって瓶のふたを開けたらすぐ使わないと変質してしまうのかな?」

 「それは、私にもわかりません。早めに使用した方が良いと思われます」

 「そうだよね。それじゃ段取りをどうしようか考えるか。

 ・・・ 回復魔法ヒール を使えるのは確かアニスさんだったよね。

 それも中級回復魔法のライトヒールだったかな。

 ターナさんかサレンさん、どちらか先に用意して使って見ましょう」

 「回復魔法は私を含め全員が使えます。

 でも私だけは初級魔法のヒールしか使えないのですけど」

 ターナさんは申し訳なさそうに言った。


 「全員が使えるんだ。それは良いね」

 瓶のふたを開けたら早めに使いたい、3人まとめて使用すれば均等に塗れるしね。


 ふたを開け閉めするのが多ければ、時間がたつだけ変質してしまう可能性が出てくる。

 効果がなくなってしまえば意味がないだろう。

 効果時間もどれくらいあるかもわからないからな。

 3人同時に回復魔法を使って、端から交互に塗って行く。

 変質する事が少しでも避けられるだろう。

 

 頭の中でやり方のイメージはシュミレーションできた。

 早速、始めてしまおう。


 「それじゃ、俺の指示に従ってくれるかな」

 「わかりました」

 「壁側に向いて3人並んで座ってくれる。

 左からターナさん、サレンさん、アニスさんと並んでください」

 「わかりました」

 3人は俺の指示通りに従った。

 

 「両耳に対し手を当て、少しだけ間を開けながら回復魔法ヒールを使用してくれるかな。

 あっ、髪の毛が耳にかかってしまうか。

 ひもで結ってしまおう」

 「わかりました」

 魔法の収納カバンに入っていたひもで3人の髪を束ねてしまう。

 

 よし、これで良いだろう。皆さん奇麗な髪をしているんだよな。

 なんかひもで結ったらうなじとか見えて、色っぽくみえるぞ。


 「準備はそれで大丈夫だろう。

 その状態で、耳の傷跡にエリクサーを垂らしていくから。

 エリクサーを塗ったと同時に回復魔法ヒールを使い始めてくれ、できれば回復魔法を持続させるように使ってほしい。

 交互にエリクサーの塗るとどうしても間が開いて時間がかかると思うが早めに塗るからね。

 耳に直接かけるのさすがに難しすぎる。

 飲んで治すのが一番良いと思うのだけど量が少なすぎるからな。

 やはり棒を垂らして塗っていくのが良いだろう。

 成分の変質が気になるので、俺もなるべく早く塗って行くからね」

 「わかりました」

 「そうそう、もと通りに戻るようにイメージをして回復魔法ヒール をかけたほうが良いと思うよ。

 肉体のトレーニングで、理想の筋力を造るイメージトレーニングがあるんだ。

 イメージでトレーニングするのとしないのでは、肉体改造で雲泥の差が出ると話を聞いたことがある。

 イメージが強ければ、理想の筋力イメージどおり筋力が付きやすい話があるんだ。

 だから、もとの耳に戻るようにイメージを強くもってね」

 「わかりました」

 「ターナさんから順番に塗っていくね。

 エリクサーの液がついたのがわかったら回復魔法ヒールを使ってもと通りに治るようにイメージして。

 それじゃ、さっそく始めますよ。

 ターナさん用意は良いかな」

 「大丈夫です」

 「よし始めるとするか」

 俺はエリクサーが入っている瓶のふたを開け水晶の棒を中に入れる。


 水晶の棒に付いたエリクサーの液をターナさんの耳に塗っていく。


 まずはターナさんの左耳の切られた傷口からつけていく。

 エリクサーの液を付けたと同時にターナさんは回復魔法を使う。

 液を付けた耳の切られた傷口の肉が赤く盛り上がり、少しづつ再生していくのがわかる。


 「おぉ、すげえ、切られた部分の肉が盛りあがって本当に再生していっているよ。

 でも少しずつしか再生してはいないな。

 ターナさん効果はあるみたいだよ」

 そう声をかけたがターナさんは顔を顰め、痛そうにしている。


 「大丈夫、ターナさん、もしかしてかなり痛いのかな」

 「ちょっとだけ痛いですが大丈夫です」

 「そう、それじゃ右耳も付けていくね。痛いと思うけど、頑張ってね」

 「お願いします」

 俺は右耳にも液を付ける。

 付けたと同時に切り裂かれた右耳の肉が赤く盛りあがり再生し始めた。


 ターナさんは痛そうな顔をしている。


 「頑張ってね、ターナさん間違いなく治り始めているから」

 「頑張ります」

 「それじゃサレンさん次は君に付けるけど、用意は良いかな、あと痛いようだから覚悟はしといてね」

 「わかりました、大丈夫です」

 「それじゃ、付けるね」

 俺はサレンさんにもエリクサーの液を付け始めた。


 「アウゥー」

 サレンさんは痛みのあまり声を漏らしてしまう。


 そんな中でも回復魔法を使い始めた。同じように付けた部分の肉が赤く盛り上がり再生し始める。


 サレンさんの使う回復魔法は中級のライトヒールだ。

 見た限り少しだけだがターナさんよりも再生の仕方が早い。

 やはり高レベルの魔法の方が効果が良いのだな。

 それだと低レベルの回復魔法のターナさんは不利と言うか、あまり良くないか。

 完全再生ができないかも知れない。


 元々エリクサーが1つしかないのが問題なんだよ。

 無理してこんな場当たりで考えた方法取っている事態、無謀なんだよな。


 効果が出ているのでそれだけでもましなのか。

 ある分しか使えないから仕方ない事なので完全には回復はできないかもしれない。それはどうしようもない事だと思う。


 今のペースで行くとサレンさんと比べてターナさんが一番直りが悪いな。

 何回か交互に分けて塗っていくから、ターナさんには忖度して多めに付けてあげよう。これは内緒の話だ。


 にしても、再生している時ってかなり痛いのか、2人とも苦しそうな顔をしているんだよね、それがなんか妙に色っぽいんだよ。

 

 やばいな、そんな姿を見ていたら興奮してきたぞ、決して俺はSではないと思うのだが、なんか気持ちが高まってしまった。

 耳が再生して治ってきているから、嬉しくて興奮しているだけだと思うのだけど、たぶん。 

 

 おっと、そんな事を考えているよりも、アニスさんもいるのだ。  

 エリクサーが変質する前に早めに塗って治してあげよう。

 

 アニスさんにも同じようにエリクサーを塗っていく。塗った傷跡から肉が徐々に盛り上がり再生をしていく。


 「クウゥン」

 かなり痛みがあるようでアニスさんも声を漏らしてしまった。


 「頑張って」

 それしか俺は言えないな。


 交互に少しづつ垂らしていくがやはりエリクサーを付ける時が特に痛いようでサレンさんとアニスさんはどうしても声を漏らしてしまう。

 ターナさんは我慢強いのか声を漏らすことはない。


 しかし徐々に肉が盛り上がって直って行くのは面白いな、塗って行くのが面白くなって来た。


 決っしてエリクサー塗る時に、ビクンと体を震わせ声をあげると言う事を楽しんでいるわけではないよ。


 驚きだ全員の耳が再生してきたのだ。

 すでに人間の耳くらいまで再生し始め、見た目てきに大丈夫なくらいな大きさに戻っている。


 再生した部分の耳が赤くなっているのだけど、奇麗に戻るはずだよな?

 再生している最中だから赤くなっているだけだと思うけど。

 

 む、しまった。エリクサーが無くなってきた。

 こればかりは仕方ない容量が少なすぎるんだよ。


 「申し訳ない。エリクサーが無くなってしまった。

 もう付けられない。

 3人とも耳が確実に再生したのがわかるけど完全に元に戻るのには難しそうだ。

 無理な事を言うが、後は何とか回復魔法で対処してもらいたい。

 すまない、それしか今の俺には言えないんだ」

 「はい」

 3人とも返事をした。こればかりは仕方ないな。


 頑張ってと思っていた時に、

「コンコン」

 ドアをたたく音が聞こえた。


 反射的に

「ハイ どうぞ」

 と言ってしまった。


 どうやら宿屋の従業員達が朝食を持って来たらしく中へ入ってきてしまった。


 やばい、この状況をみたらどう思うのだろうか。

 はたから見れば朝からエルフの少女たちを壁に並べ拷問しているようにしか見えないのだが、すでに遅かったか。


 従業員達はこちらを見てあぜんとしている。


 朝から何をやっているんだこいつって感じで俺を見ているんだ。

 1人の若い従業員の女性と目を合わせてしまった。


 「失礼しました。お楽しみの最中邪魔をしてしまいました。

 すぐさま朝食の用意をして出ていきますのでお許しください」

 目を合わせた若い従業員の女性はそう話して何も見なかったように振舞い朝食の用意に取りかかった。


 ちょっと、ちょっと、何か勘違いしていないかな。

 俺は朝からエルフの少女たちを拷問しているわけではないよ。

 エリクサーを使って切られた耳を再生しているだけだよ。


 確かに、はたから見ればエルフの少女たちを正座させ、え、座ってと言ったが正座している。


 それに耳辺りに手を当て苦悶の表情をしている。

 完璧にこれってはたから見ればやばい状況ではないか。


 先ほど目を合わせた若い従業員の女性、お楽しみの最中邪魔をとか言っていなかったか。


 別に楽しんでいないよ。と言うかそんな趣味ないし、それとも貴族ってこんな拷問みたいなことをして楽しんでいると思っているの?


 まるで当たり前のようにおこなわれているように言われたので貴族って何なのよ。

 勘違いしているよね、絶対に勘違いしているよ。


 これでは俺が変態にしか見えないのではないか。


 そうこうしていると朝食の準備が終わり、従業員達は部屋から出ようとした。俺はすぐさま声をかけた。


 「ちょっと待ってください」

 「・・・」

 「食事の用意、有難うございます。

 それでね、今見た事を誰にも言わないでくれるかな」

 バカ、何を言っている俺、これじゃ勘違いしたまま帰すところではないか。

 と言うか言い訳の弁なんてなんて言って良いかわからないよ。


 「ご安心ください。当ホテルは守秘義務は必ず守るので誰にも言いません。

 アンドウ様にはこれからも存分にお楽しみください。

 それでは失礼します」

 えぇ、やはり勘違いしているよ。でも何もこちらとしては言えない。


 「あ、まだ話はあるのだが頼み事があるのだが良いかな」

 「はい、どのような事ですか」

 若い従業員の女性は震えた声で答えた。俺が何かすると思ったのだろうか、恐れたような顔をして聞いている。


 「オーナーに挨拶したいので会いたいのだが時間が空いている時はあるかな、それが聞きたかったんだ。

 会える時間があるのかお伝えしていただきたい」

 「わかりました。

 オーナーにアンドウ様が挨拶したいと言う話を伝えておきます。

 お食事の片付け時には、お返事をできると思いますのでそれまでお待ちください」

 「あぁ、それで頼むよ」

 「失礼いたします」

 そう言って早々に宿屋の従業員達は部屋から出ていってしまった。

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