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第17話 奴隷契約のリング


 キースが借りている宿屋に入り、一休憩する。


 エルフの娘たちの話が聞きたいな。


 しかし無事、宿屋へ入れたみたいで良かったよ。奴隷の立場では入れられないと断られてしまったからな。

 奴隷の扱いはひどく公共機関は利用できない。

 あまりにも世界観が違っているので戸惑う事ばかりだ。


 「ご主人様、今日はこのような場所に私たちを入れてもらい有難く思います。今日の夜は精いっぱいご奉仕したいと思います」

 「夜の事は別にいいから、それよりもいろいろお話がしたくて君たちの事を連れてきたんだよ。お話できるかな」


 ? キョトンとした様子でエルフの少女たちは首をかしげている。


 「わかりました。どのようなお話でもしたいと思います。

 気に触ったのならばどうぞ痛めつけてください」


 「え、そうじゃなくてね、今後の事を決めたいと思って、お話したいんだ、聞かせてくれないかな」

 「私たちはご主人様の元でしたらどのようなところでも行きます。ご心配なさらずいてください」


 いまいち話がかみ合わないな。話が通じるだけども良いんだけど。今まで命令された事だけ実行してきたみたいだ。


 とりあえず、少しずつ砕けた話をしていこうかな。

 現在、俺と彼女たちの間に相当巨大な壁がある。もっとも会ったばかりで他人だしそれも種族が違う。


 外国人さんて言うレベルではないぞ、でも奇麗な少女たちなのでなぜかいわく間なく接することができるんだよな。なぜか不思議だ。

 かわいいって事は正義だと言う事なのか、今痛感してわかってくる。


 「お互いを知るために、まずは自己紹介からしましょうか。

 俺の名前は安藤明アンドウ アカリ 26歳の独身サラリーマンだ。

 おっと、すまいなサラリーマンて言うのは忘れてくれ。

 これは元居た世界での職業の一つにあたるものだ」

 サラリーマン、職業の一つとして判断して良いだろう。ここ異世界では、職業なんて気にしても仕方ないだろうな。


 「職業の事は気にしなくていいよ。

 君達の名前を聞かせてくれるかな。

 それじゃ右にいる君、金色の髪の女の子からお願いしようかな」


 「私の名はターナです」

 ・

 ・・

 ・・・

 「えーと、次の亜麻色の髪の娘さん、お願いします」

 「私の名前はアニスです」

 ・ ・・ ・・・

 「えーと、次の銀色の髪のお嬢さん、お願いします」

 「私の名前はサレンです。ご主人様よろしくお願いします」

 ・ ・・ ・・・

 話がここで途切れてしまった。

 何を話せば良いのだ。話したい事がいっぱいあるのだけど、彼女たちには現状精気がなく、死んださかなの目をしているんだよ。


 うぅ、痛い、痛すぎだ。こんな奇麗な娘さんたちがだよ。死んださかなの目をしている。


 どうしたら良いのかこの時点でわからなくなってきた。とりあえず俺が知りたかった事を聞いてみよう。


 「それじゃ、君たちに質問するが、君たちは奴隷なんだよね。

 どうして奴隷になったのか聞かせてくれないかな。

 金髪の髪のした君は、確かターナさんだったよね。教えてくれないかな」


 「私は村が魔獣に襲われ、逃げている時に人間の里に入ってしまい、奴隷商人に見つかって捕まり売られました」

 「え、そうでしたか、そんなことがあったのですね。お気の毒ですね」

 あまりにも気の毒すぎて聞きづらく感じ、だんだん俺の声が小さくなってくる。

 「そ それでは亜麻色の髪の色をしたむすめさんは、アニスさんでしたよね。あなたはどうしたのですか?」

 「私の村が人さらいの冒険者に襲われ、捕まって売られてしまいました」

 ? 人攫いの冒険者に売られた。冒険者って人さらいもするの?


 冒険者ってお金のためならばなんだってやるんんだ。


 確かに俺も最初に襲われたし、冒険者ギルドでも所長が平気でうそをつくやからだったからな。

 わからなければ平気で悪いことをする。そういうやつらが多いんだ。怖いとこだなこの異世界は。


 「そ、そうでしたかお気の毒でしたね。

 では、次に銀色の髪をしたお嬢さんはサレンさんでしたね。お聞かせ願いませんか」

 だんだん丁寧な言葉遣いになっていった。


 もとから丁寧に話そうと思っていたが、なぜかあまりにも気の毒で聞くのもつらくなってきた。一言づつしか話していないのに。


 「私は父親に買い物に来た時に迷子になって、人さらいにさらわれ奴隷商人に売られました」

 「な、なるほどそうでしたか」

 ちょっとまて、なんなんだこの世界は人さらいが横行しているのか。


 いや、海外でもよくあると聞くけど、絶対に1人では子供を外にだしてはいけないと。

 なぜか今になって海外の事情がわかるような気がしてきた。

 日本て安全だったのだと痛感してくる。


 い、いたい、痛い、心が痛すぎる。

 この現状は、元の世界での常識とかけ離れすぎている。と言うか、そこら辺に犯罪の温床があるのか、またとんでもない異世界に来てしまったのではないか。


 異世界に来て、人を殺している俺が言うのも何なんだけどな。


 こんな話を聞いたらなんて話してかけて良いかわからないぞ、これってあきらかに聞いてはいけなかった話ではないか。


 「そ、それじゃ質問を変えるね。

 君たち奴隷なんだよね。奴隷の事と、奴隷の契約について教えてくれないかな。

 まずは、君達はキースと奴隷の契約をしてしまったんだよね。

 現状、どうなっているのか教えて欲しい」

 また、とんでもない質問を聞いてしまった。


 銀色の髪をしている大人びた少女のサレンさんが答えた。

 どうやら契約魔法が関係しているらしく、魔法の事が一番詳しいサレンさんが答えてくれた。


 「現在は私たちはアンドウ様の持ち物として契約をしています。

 契約の神との意向により自動的に移行しています」

 「持ち物? 奴隷って物として扱われているってことかな」

 「はい その通りです。私たちは生きている道具です」


 「・・・ それじゃ聞くけど君たち奴隷が、俺に何かしたときペナルティーのような事が起きるのかな」

 確か漫画とかアニメでは魔法で罰を与えることができる。


 「例えばさ、苦しんだことがおきたり、最悪死んでしまったりするとか」

 「御座います。私たちについているこの耳飾りが、奴隷契約の証になっております。

 ご主人様に逆らった行動をすれば、激しい痛みを感じたりすることがおきます」

 「そのリング、気になっていたが耳まわりがうんでしまっているよね。もしかして奴隷契約でおきている事なのかな?」

 

 「違います。このリングに使われている金属の性質上のことです。

 私達の体に変化が生じ炎症が出てしまっています。

 このリングに使われている金属のクレリアは魔力をふんだんに含んだ金属でできています。

 私たちエルフ族は魔力が強いので、直接肌につけると反発してしまうのです。

 その副作用で私達の体に異変がおこってしまっているのです。

 クレリアの金属に特別な加工をし、奴隷契約魔法をリングにかけてあります。

 そのせいでより強い魔法力の塊のリングになってしまっています。その影響の副作用です」


 「な、なるほど、それって自分では取れないのかな」

 「取ることはできません。

 クレリアの金属の効果と奴隷契約魔法のせいもあり、常に痛みを伴っています。今も痛くて触る事さえできません」

 「なるほど、ひどい話だね。取る方法はあるのかな」

 「それは、魔法をかけた術者と奴隷の契約者は取り外しをできるはずです」

 「それじゃ俺だったら取れるんだよね」

 「それはできません」

 「? どうして」

 「この金属が特別なんです。クレリアは特殊な魔法金属です。

 硬く、傷つけても自動的に魔法の効果で修復してしまう。

 再生能力があるのです。

 それも私たちの魔力を吸って瞬時に再生してしまうのです。

 一度エルフがこのようにつけられたら、死ぬまで取れないと言われています。

 特殊な器具を使わないと外すことはできません」

 「そ、そうなんだ」

 あまりの痛々しい事を聞いたのでなぜか恐縮してしまう。


 「サレンさん、俺がその奴隷契約のリングを触っても大丈夫かな。

 一応、確認してみたいんだ。痛みとか出るんだったらやめるけど、どうかな」

 「どうぞお触りください」

 彼女は目をつむり私の方へ左耳をかたむけた。


 「それじゃ失礼させてもらうよ」

 目をつむって左耳をこちらに向けている。


 奇麗な娘さんだな、なんか色っぽくみえるな。銀色の透き通るような髪が美しく触ってみたいと思ってしまった。


 駄目だ、駄目だ、駄目、なにを考えているんだ俺、目的は奴隷契約のリングだぞ、こんな時によこしまな事を考えているんだ。

 

 邪念を捨てて、俺は奴隷契約のリングを触ってみる。


 「クゥーン」

 ちょっと触っただけでも、サレンさんが痛みに耐えられず声を漏らしてしまった。


 悪い事をしたな、でも触った感じ俺の力で壊せるような感じがした。 

 この世界では俺の力が増している。今の俺の力だったら壊すことができるのではないかな?


 試しにおもいっきり奴隷のリングの一部を引き裂いてみるか。やってみる価値はあるか、サレンさんを傷つけないようにうまくやってみよう。


 「サレンさんちょっとだけ、我慢してくれないかな、歯を食いしばってれ」

 俺は、クレリアのリングに力を入れる。目をつむりながらサレンさんは悲痛な顔をしている。


 これはいけそうだ。指に力をこめ、つぶすようにリングの一部を引き裂いてみる。


 「アウゥー」

 サレンさんの悲痛な声が漏れる。


 「パキン」

 お、お折れたぞ、なんだこれって簡単に取れそうじゃないか。


 その前にサレンさんの色っぽい声が聞こえたのでドキッとしてしまった。

 何を考えているんだ俺、こんな時に、でも壊すことができたのでよこしまな考えは良しとしよう。


 そう思って心を落ちつかせる。と言うか違う意味で心を落ちつかせてどうするんだ。


 「サレンさんもうちょっとだけ我慢してね、今取り外すからね」

 リングの一部が壊れたので、取り外しやすいように曲げる。


 どうやら奴隷契約のクレリアのリングは瞬時には再生しないみたいだ。

 本当に再生するのか? 再生の兆候ないんだけど、案外はずされないために誰かが嘘を言ってだましたのではないか?


 これだったら問題なくはずせるだろう。

 俺はサレンさんの耳から奴隷契約のクレリアのリングを外してあげた。


 外す時はかなり痛そうだったけど、問題なく外れてしまった。

 俺の手の中にある外れたリングを見てサレンさんはびっくりしている。


 ターナさんとアニスさんも驚きのあまり口を押さえてしまっている。


 こんな反応もできるんだな、かわいいな。おっと不謹慎だったか。

 彼女たちは大変な目にあっているのだった。


 「さてとそれじゃ、次はターナさん君のリングも外してみよう。

 こちらに来て目をつむって左耳を、俺にむけてくれないかな」


 「はい、わかりましたご主人さま」

 ターナさんは大きな声で返事をした。


 外してくれると言う期待があるのがわかる。この奴隷契約のクレリアのリングはよほど嫌なものなんだろう。


 俺はターナさんの左耳の奴隷契約のクレリアのリングに触り、砕いて外してあげた。

 やはり取るときはかなり痛そうだが、問題なく外れた。


 「よし、一丁あがり、次はアニスさん、こちらに来てくれるかな」

 「はい、わかりました」

 「・・・ 大丈夫、大丈夫だよ、最初だけ、最初だけ、ちょっと痛いだけだからさ」

 俺は変な言葉づかいで言ってしまった。いやらしいことは考えてないよ。


 アニスさんは俺の元に来て、目をつむりリングの付いている左耳を傾ける。

 よほど奴隷契約のリングは嫌なんだろうな。


 しかし俺が悪人かも知れないのに不用意に近づいてくるとはね。と言うか俺って悪い人ではないはずだけど、いや、違うかも知れない。

 この世界ではかなりの人を殺しているので悪人だろうな、自覚はしている。


 せめてこのエルフの少女たちを救ってあげられるかな。

 真面目な顔に戻り、アニスさんの耳についている奴隷契約のクレリアのリングも砕いて外してあげた。


 ふぅ、これで良かったのかな、3人ともあぜんとしながら左耳を触っている。

 今まで奴隷契約のリングのおかげで痛くて耳も触ることができなかったのだろう。


 「その君たち、驚いているみたいだけど良いかな」

 「はい、ご主人様」

 3人ともこちらに振り向き謙遜した目で俺を見ている。


 「そのリングが外れたことによって、俺との奴隷契約は解除されたんだよね。

 それとも奴隷契約は自動的に続いておこなわれているのかな?」


 「奴隷契約は解除されております。

 契約者のアンドウ様の意思で外されたので魔法の効果が消えております」

 サレンさんは答えた。


 「そうか、それは良かったね。

 奴隷の解除されたのは良いが、今後の事どうしようかなと思ってね。

 俺としては君たちが苦しんでいたのが助かって嬉しいのだが、今後の事が心配になってきてね。

 俺はこちらの世界の言葉が話せないから、君たちの力が必要で居なくなってしまうと非常に困るのだよ」


 「助けていただきました。私はあなたに一生ついて行きたいと思います」

 サレンさんが答えた。


 「私も同じです」

 「私もです」

 ターナさんとアニスさんも答える。


 「なるほど、俺としては嬉しいのだが、せっかく奴隷としての契約が解除され解放されたのだよ。

 これからの自分の事を、もっと考えても良いのではないかな」


 「私たちは行くところが御座いません。ご主人様に頼る事しかできないのです」

 3人はそう言ってうつむいてしまった。


 悪い事を言ってしまったな、現状ではそれしかないよな。


 「それじゃこうしないか、君たちを従者として俺がお金で雇うって事でどうだろう。

 俺もこの異世界に来て数日、何もわからないんだ。

 それで君たちの使える言葉の魔法が欲しくてキースと決闘をすることにしたんだよ。

 本来は言葉の魔法が欲しかっただけなんだ。

 でもね君たちのような奇麗な娘さんが奴隷として苦しんでいるのが見えたので、助けてあげたいと思ったのは事実だよ。

 もしよかったら俺のもとでしばらく働いてみないか。

 お金はそれなりに出すから、君たちが自立できるくらいまで支援するからどうだろう」

 本当は俺がこの異世界で自立できるまでお世話になりたいんだよな。


 「わかりました、私は働かせていただきます」

 「私も同じです」

 「私もです」

 「それは良かった、助かったよ。俺の提案を受け入れてくれて有難う。そしてこれからよろしくな」

 「よろしくお願いします」

 3人の声が唱和した。

 彼女たちの目には少しだけ精気がやどりはじめたのがわかった。


 「これからの事を、相談したいと思うのだが、その前に腹が減ったよね。

 夕飯を食べてから今後の事をゆっくり相談しよう」


 「わかりました、ご主人様」

 ご主人様って言われ方は夢のようで良いのだけど、なんかしっくりはこないな。


 なんかえらそうに思われるのは好きではないんだよな。

 日本でのお客さん程度の扱いがちょうど良いと思えてしまった。





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